第48回 データ主権の重要性
データの保管場所が分からない……は危険信号
データ主権とは、データ所有者が自分のデータを制御および管理する権利のことである。まだインターネットがなかったパソコンの黎明期には、自分のデータを自分で管理することは難しくなかった。というのも、データは全て自宅(ローカル)に保存されていたからだ。データを外敵から守ろうと思えば、フロッピーディスクやハードディスクの保管場所に鍵をかけるだけで、セキュリティーは確保できた。
しかし、インターネットが普及した今日ではそういうわけにはいかず、データ主権の維持は格段に難しくなってしまった。自分のデータがどこに保存されているのかを把握しきれていない方も多いのではないだろうか。デスクトップパソコンかノートパソコンか、それとも携帯電話に保存したのか。はたまた米国、中国、あるいはどこか別の場所のクラウドに入っているのか……。さらに誰が自分のデータにアクセスでき、何の目的でどのようにデータが処理されるのか、自分にはどのような権利と義務があるのか、完全には分からないという方もいることだろう。
自分たちでデータを安全に管理するには?
コロナ禍で浮き彫りになった事実は、いかに多くの人や企業がデータ管理において「どこまで信頼できるか分からない企業」に依存しているかということだ。利便性やコスト的な理由からデータ主権を手放してしまったために、問題が起きてもデータを握る企業に対して、何もできずに泣き寝入りするケースが多発している。
このことから、コロナ禍以降多くの企業がデータを取り戻し、オフィスのある建物の地下に小さなデータセンターを設置したり、インターネットに接続しない社内ネットワークを利用する動きが強まっている。また、データ主権を維持するためのもう一つの方法は、強力な暗号化だ。暗号化を利用し、自分だけがデータの読み取りや変更に必要な「鍵」を持つようにしていれば、安全ではない可能性があるクラウドにもデータを保存できる。
以上のことから、重要なデータを持っている場合、インターネットに接続されていないコンピューターに保存することは今もなお有効な手段だといえる。さらに、自分だけが物理的にアクセスできるハードディスクやSSDにバックアップを取っておくことも大切だ。
重要なデータをどのように保管するのか、コロナ禍の今見直してみよう