新・ニュースを追跡


総選挙まであと1カ月

2005年9月に行われた前倒し選挙で、シュレーダー政権(社会民主党=SPD)からメルケル政権(キリスト教民主・社会同盟=CDU・CSU)に交代して4年。任期満了に伴い、第17回連邦議会選挙(総選挙)が9月27日に実施される。総選挙まであと1カ月に迫った今回は、選挙の仕組みと選挙後の展開について見ていこう。

小選挙区で1票

全国民を代表する連邦議会の議員598人(基本定数)を「普通、直接、自由、平等、秘密の選挙(基本法第38条)」により選ぶ。選挙権はドイツ国内に3カ月以上居住する満18歳以上のドイツ国籍所有者に与えられる。有権者は約6220万人に上り、それぞれが2票を行使する。

第1票(Erststimme)は小選挙区制(Mehrheitswahlrecht)で行われ、各選挙区の議員候補者の中から最多票を得た1人が当選する。選挙区は全部で299。つまり小選挙区で、定員の半数である299議員が確定するのだ。


©AngelaMerkel/VeraLengsfeld (CDU), Bundestagswahl2009

比例代表でもう1票

第2票(Zweitstimme)では比例代表制(Verhältniswahlrecht)が採られ、有権者は1政党を選ぶ。もちろん第1票で選んだ候補者が所属する政党と違う政党に投じても良い。

得票率により、各党に配分される議席数が決まる。各党は、与えられた議席数から小選挙区で当選した所属議員数を差し引き、余った議席があれば、各州があらかじめ用意していた候補者名簿の上位者から補充していく。小選挙区で獲得した議席数が、配分された議席数を上回った場合は、「超過議席(Überhangmandat)」として認められる。

人物的要素に基づいた比例代表制

総選挙はこのように、小選挙区制と比例代表制の組み合わせで行われるが、小選挙区で直接当選した候補者が優先されることから、「人物的要素に基づいた比例代表制(Personalisierte Verhältniswahl)」と呼ばれている。ただし小選挙区で選ばれようが、比例代表で選ばれようが、議員の権利はすべて同じだ。

なお小党が分立し、ナチスによる政権掌握を招いた過去に対する反省から、「5%阻止条項(Fünf-Prozent-Hürde)」が設けられており、得票率が5%に満たない政党、また小選挙区での獲得総議席数が3席に満たない政党には、議席が与えられないことになっている。

いざ政権樹立へ

政権樹立には、政権を担当する政党が過半数の議席を占める必要がある。前述のように、第1票と第2票で異なる政党に投じたり、超過議席が生じることは、ここで重要となる議席数に影響が出てくる。大政党が支持を失う一方で、小政党が躍進している最近は特に、複数の政党が連立(→用語説明)して過半数を満たすことになり、選挙後は各党がそれぞれの議席数を加味しながら、連立交渉を繰り広げていく。

前回の総選挙ではCDU・CSUが35.2%を獲得、34.2%にとどまったSPDから辛うじて第1党の座を奪った。議席数は超過議席が16席(CDU7席、SPD9席)生じたため614人となり、CDU・CSUはうち226席を獲得。しかし連立を希望していた自由民主党(FDP、得票率9.8%、議席数61)と合わせても過半数には届かず、SPD(222席)と大連立を組むことで合意に至った。なお投票率は77.7%だった。

今回の選挙では、メルケル首相の再選となるのか、それともシュタインマイヤー外相を首相候補に推すSPDが野党の協力を得て政権奪回となるか──。SPDは経済危機の中、2020年までに400万人の新規雇用を生み出すとする「ドイチュラントプラン」を発表、支持率低迷の打破を狙っているが、CDU・CSUにますます水をあけられているのが現状。8月13日に発表された世論調査(→グラフ参照)では、SPDの支持率は過去最低にまで落ち込み、CDU・CSUとFDPによる連立政権誕生の可能性が高くなっている。


世論調査「ドイチュラントトレンド」による各党の支持率
(2009年8月13日時点)
Quelle: Infratest dimap/ARD DeutschlandTREND

景気後退の中、今回の選挙戦ではいかに国民の負担を軽減するかが最大テーマとなっている。主な政党の選挙公約を、①税制、②労働、③家庭、④医療、⑤教育、⑥環境の面からダイジェストで見てみよう。

CDU・CSU(中道右派)
①所得税率の全体的な引き下げ
②生活保護受給者の財産控除額引き上げ
③3人目の子どもから、児童手当引き上げ
④公的疾病金庫の財政問題改善
⑤国内総生産(GDP)の10%を教育費に
⑥現在運転している原発の稼働期間を延長

SPD(中道左派)
①低所得者への所得税率を引き下げ、高所得者へは引き上げる
②時給7.50ユーロの最低賃金制を拡大
③両親手当の支給期間を16カ月に延長
④民間保険会社も、医療保険基金に加える
⑤全日制学校の増設。大学授業料の廃止
⑥原発廃止。再生可能エネルギーの発電量増

FDP(リベラル)
①根本的な税制改革。税率は3段階に
②年金支給開始年齢をフレキシブルに
③児童手当の引き上げ。保育園の無料化
④一律となった保険料率を、再び自由設定へ
⑤奨学金受給の学生を10%にまで増加
⑥燃料に課す付加価値税を7%に軽減

緑の党(環境保護)
①高所得者への所得税率を引き上げ、低所得者の税負担を軽減
②時給7.50ユーロの最低賃金制導入
③0歳から預けられる保育施設の増設
④医療保険基金の廃止。診療手数料の廃止
⑤大学の授業料廃止。学生に月200ユーロ支給
⑥再生可能エネルギーへの完全シフト。アウトバーンでの時速制限

左派党(旧東独政権の流れをくむ)
①低・中所得者の負担減、高所得者の負担増
②時給10ユーロの最低賃金制を導入
③保育園の無料化。両親・児童手当増
④四半期ごとの診療手数料(10ユーロ)を廃止
⑤GDPの7%を教育費に。大学授業料の廃止
⑥再生可能エネルギーに切り替え。アウトバーン時速制限

用語解説

連立 Koalition

現在議席を持つ政党は、CDU・CSUとSPDの2大政党およびFDP、90年連合・緑の党、左派党の5つ。各政党はそれぞれの政党カラー「黒」「赤」「黄」「緑」「赤」で表されることも多く、現大連立政権は「黒赤連立」と呼ばれる。次期政権は「黒黄連立」か。「信号連立(赤黄緑)」「ジャマイカ連立(黒黄緑)」といったユニークな名称の連立政権が誕生する可能性も?

<参考文献>
■ Bundeszentrale für politische Bildung „Wahl zum Deutschen Bundestag“ www.politische-bildung.de
■ Deutscher Bundestag „Wie wird der Bundestag gewählt?“ www.bundestag.de
■ „Die Wahlprogramme der Parteien im Vergleich“ -dpa (29. Juni 2009)

内田 由起子(うちだ・ゆきこ) 東京外国語大学ドイツ語学科卒業。在学中、卒業後とドイツを行ったり来たりしながら語学勉強を続けた後、英語ニュースの翻訳に携わり、ジャーナリズムの世界に入る。04年1月からハンブルク在住。渡独後は主に、ドイツニュースの発信に努めている。
最終更新 Mittwoch, 05 Juni 2019 11:05
 

付加価値税は引き上げられるのか

経済危機の影響で、戦後最大額の新規国債発行を決めたドイツ。これを埋めていくためには増税が必要になるだろう。しかし各党は9月の総選挙を前に、所得税を中心とした減税を約束。景気後退の今だからこそ国民の負担を軽減しようというのだ。とはいっても増税の必要性を唱える声は後を絶たない。今回は引き上げの“ターゲット”になっている付加価値税に焦点を当ててみよう。

付加価値税とその意味

付加価値税(Mehrwertsteuer=MwSt.)は、すべての商品やサービスの消費に対して課される、日本で言うところの「消費税」。国民にとって最も身近で、税収入のうち最も大きな割合を占める重要な租税だ。同税は生産、製造、卸売、小売のすべての段階で売り上げに対して課されるが、仕入れにかかった税額は控除されることから、一般に付加価値税と呼ばれている。しかしこれらの課税分は最終的に、消費者が売り上げに対する税として支払う仕組みとなっており、正確には「売上税」(→用語説明)という。

現在の税率は19%(内税)。最近では2007年1月に国債を減らすため、また失業保険料を引き下げて新規雇用を促すために、16%から3ポイント引き上げられた。

日用品には軽減税率

付加価値税は一律であるため、高所得者より低所得者への負担が高くなる。そのため食料品の大半や書籍、バスの運賃、劇場のチケットなど、日常生活に必要なものへの税率は低減され、7%となっている。レシートを見ると分かるが、牛乳には7%だがワインには19%、肉類には7%だがロブスターには19%という具合に、誰しもが必要な“日用品”には低減税率の7%、日常生活で必ずしも要しない“ぜいたく品”には一般税率の19%が課されている。

また、レストランなど店内での飲食には19%が課されるが、テイクアウトの場合は7%。どちらも消費者が支払う額に変わりはないが、店内での飲食にはテーブルのセッティングや食器の片付けなどのサービスが付随することによる。7%の税率は1983年以来変わっていない。

なお、家賃や医療費、口座維持費、教育関係費などは非課税となっている。

付加価値税引き上げ問題

日本の消費税率5%と比べれば、ドイツの19%は非常に高いと思われるが、EU加盟国と比べてみると平均以下(→図表参照)。EUでは付加価値税率を15%以上(低減税率は5%以上)に設定するよう決められており、スウェーデンやデンマークでは25%が課されている。低減税率もフィンランドでは17%と、ドイツの一般税率とあまり変わらない高さだ。

では、税収を増やしたい今、比較的低い付加価値税率を“標準レベル”にまで引き上げるのはどうか。キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)が減税を公約として掲げている中、バーデン=ヴュルテンベルク州のエッティンガー首相(CDU)が、低減税率を一般税率の半分となる9.5%にまで引き上げると提唱し、物議を醸している。

メルケル首相、ポファラ書記長、グッテンベルク経済相らCDU・CSUのトップ陣は、「国民の税負担を増やしたら購買力が衰え、景気回復には逆効果になる」と猛反対。さらに国民の不安をあおらないようにと、「次期政権下でも付加価値税は引き上げない」と繰り返し強調し、議論を終わらせようと躍起になっている。

当の国民はというと、付加価値税の引き上げには大半が反対しているものの、次期政権下では公約に反し、増税が行われると予想する国民が78%にも上っている(世論調査「ドイチュラントトレンド」調べ)。増税なしで経済危機を乗り越えていこうとするメルケル首相と、これに疑念を抱く国民──。付加価値税問題が、総選挙およびその後の新政権でどう展開していくのか、注目だ。

フィンランドの低減税率は、17%のほか8%と0%もある。


EU加盟各国の付加価値税率(%)*2008年1月時点
Quelle: Bundesfinanzministerium

「消費税」を文字通りドイツ語に訳すと「Verbrauchsteuer」。でもこれは一般の消費税とは違い、ビールやたばこなど、一定の品の消費に課される「個別消費税」を指す。個別消費税は以下の9種。ビール税は州税で、それ以外は連邦税となる。

● アルコポップ税(Alkopopsteuer)
アルコール度数の高い酒(Alkohol)と、サイダーやコーラなどの炭酸飲料(pop)をミックスした飲料に課される。若者の飲酒を防ぐ目的で、2004年7月に導入された。昨年の税収は300万ユーロ。

● ビール税(Biersteuer)
ソフトドリンクとミックスされたビールも含まれるが、ノンアルコールビールは対象外。昨年の税収は8億ユーロ。

● 蒸留酒税(Branntweinsteuer)
ブランデー、ウオツカ、ウイスキー、ラムなどが対象。年間の税収は20億ユーロ超。

● コーヒー税(Kaffeesteuer)
1993年から導入された税で、カフェインフリーも対象。昨年の税収は約10億ユーロ。

● エネルギー税(Energiesteuer)
ガソリン、ガスなどのエネルギーに課される。昨年の税収は約390億ユーロで、個別消費税では最大の収入源。

● 発泡ワイン税(Schaumweinsteuer)
アルコール度数15%未満の発泡ワインが対象。昨年の税収は4億ユーロ。

● 電気税(Stromsteuer)
環境対策のため、1999年4月に導入。太陽エネルギー、風力、水力など再生可能エネルギーのみによる電力には課されない。昨年の収入は63億ユーロ。

● たばこ税(Tabaksteuer)
税率は紙巻きたばこで1本8.27セント、葉巻たばこは同1.4セント。エネルギー税に次ぐ大きな収入源で、昨年の収入は143億ユーロ。

● 中間生産物税(Zwischenerzeugnissteuer)
ワインと蒸留酒の「中間」、つまりシェリー、ポートワイン、マデイラ・ワインなどに課される税。同税による昨年の収入は3000万ユーロ。

用語解説

売上税
Umsatzsteuer=USt.

欧州経済共同体(EEC)内で税制を統一するため、 1968年1月に導入された。導入時の税率は10%(軽 減税率は5%)だったが、同年7月から11%(5.5%)、 78年1月から12%(6%)、79年7月から13%(6.5%)、 83年7月から14%(7%)、93年1月から15%(7%)、 98年4月から16%(7%)に引き上げられ、2007年1 月以来19%(7%)となっている。連邦と州の共同税。

<参考文献>
■ 連邦財務省(www.bundesfinanzministerium.de
■ Die Welt „Wähler lernen Erhöhung der Mehrwertsteuer ab“ (3. Juli)

内田 由起子(うちだ・ゆきこ) 東京外国語大学ドイツ語学科卒業。在学中、卒業後とドイツを行ったり来たりしながら語学勉強を続けた後、英語ニュースの翻訳に携わり、ジャーナリズムの世界に入る。04年1月からハンブルク在住。渡独後は主に、ドイツニュースの発信に努めている。
最終更新 Donnerstag, 14 Januar 2016 13:11
 

“税金大国”ドイツの不公平

経済協力開発機構(OECD)の調査で、ドイツは賃金に対する租税が最も高い国の1つであることがわかった。さらに、子どもの有無に関わらず、低・中所得者および共働き夫婦への負担が大きく、高所得者や片方のみが働く夫婦の税負担が比較的軽いという“不公平”が生じている。今回は、賃金の約半分が租税として徴収されるドイツの税制について見ていこう。

低所得者の税負担大

OECDの調査は30カ国を対象に、雇用コスト(総賃金および雇用主が負担する社会保険料の総額)のうち、租税(給与所得税および社会保険料)が占める割合を推計、比較したもの。これによると、ドイツの平均的な独身労働者(子どもなし)の税負担は賃金の52%で、ベルギー、ハンガリーに次いで3番目に重い(→枠外記事参照)。また低所得者(平均収入の67%)の場合は47.3%で、ベルギーに次ぎ2番目に大きかった。なお、ドイツの平均年収(フルタイム)は4万3942ユーロ(2008年)。

一方、高所得者(平均収入の167%)の税負担率は、ベルギー、ハンガリー、フランスに続く4位で52.6%。依然税負担が高い国の1つではあるが、平均的な賃金労働者の負担とあまり変わらない状態となっている。

社会保険制度のからくり

ドイツで高所得者の税負担が比較的軽いのは、収入がある一定額を超えると、超えた分に対する社会保険料(→用語説明)が免除されるため。つまり、賃金の53.7%が差し引かれる年収6万3000ユーロ(独身、子どもなし)を頂点に、収入が増えるほど税負担率が低くなる仕組みになっているのだ。例えば、年収7万5000ユーロの場合は52.6%、年収11万ユーロに至っては50%と、年収3万6500ユーロの場合と同水準にまで下がることになる。

社会保険制度はもともと、民間保険会社の保険料が高すぎて加入が難しいという労働者を保障する目的で導入されたもので、高所得者を考慮したものではない。しかしOECDによると、ドイツのように所得が増えれば増えるほど税負担が軽くなる制度をとっている国は、オーストリアとスペインを除いてほかに見られないという。

共働き夫婦の負担も大

また、共働きの夫婦と片方のみが働いている夫婦が負担する税の格差も、非常に大きいことがわかった。平均的な収入の夫婦(子ども2人)で、どちらか一方のみが働いている場合の税負担は所得の36.4%。これはOECDの国際比較で10位と比較的低い数字だった。しかし夫婦が共に働いた場合は45.2%にも上り、ベルギー以外にこれほど負担が大きい国はない。

具体例を挙げると、夫が4万4000ユーロ、妻が1万4500ユーロを稼いでいる場合(つまり夫婦合わせて5万8500ユーロ)は、合計41.4%が租税として引かれるが、夫のみが働いて同額の5万8500ユーロを得ている場合の負担率は、わずか38.9%になる。

これも社会保険制度の関係で、2カ所から収入がある場合は、どちらか一方の賃金に高い保険料が課されるため。フォン・デア・ライエン家庭相は、保育所の増設や手取り収入の67%を支給する両親手当の導入など、働く母親の支援にあたっているが、これでは共働きの魅力が大幅に軽減されてしまう状態となっている。

税制改正のススメ

OECDはこれらドイツの“不公平”な税制を指摘し、特に低・中所得者にとって大きな負担となっている社会保険料を引き下げるなど、税制を改革するよう提案している。福祉大国とされる北欧諸国では社会保険料をほぼすべて税金でまかなっており、所得に対する租税負担はドイツよりも低い。

ドイツも北欧諸国に倣おうとすると今後、増税が必要になってくるだろう。しかし現在はむしろ、金融・経済危機を乗り越える対策として、減税が最大のテーマになっている。9月には総選挙を控えており、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と自由民主党(FDP)は減税を公約として掲げ、国民の支持を得ようとしているのだ。しかし対する社会民主党(SPD)は、減税により少なくなる税収入を、どうやって工面すれば良いかが問題だとして、これに反対している。実際、各種の景気回復対策で過去最大の債務を抱えることになったドイツに、これ以上の余裕はない。とはいえSPDも、減税の必要性を認めざるを得ない状態なのだ。「景気後退の時期だからこそ、国民の負担を軽くさせたい。でも、どうやって──」。総選挙を前に、税制改革をめぐる議論が白熱している。


OECDが発表した2008年の租税年間で、賃金に対する租税に各国で大きな違いがあることが明らかになった。下の表は、平均的な収入を得る労働者が、雇用コストから引かれる租税の占める割合(%)を示したもの。

独身者(子どもなし) 既婚者(子ども2人)
ベルギー 56 ハンガリー 43.9
ハンガリー 54.1 ギリシャ 42.7
ドイツ 52 フランス 42.1
フランス 49.3 ベルギー 40.8
オーストリア 48.8 スウェーデン 38.9
イタリア 46.5 トルコ 38.5
オランダ 45 オーストリア 38.4
スウェーデン 44.6 オランダ 38.0
フィンランド 43.5 フィンランド 38.0
チェコ 43.4 ドイツ 36.4
ギリシャ 42.4 イタリア 36.0
デンマーク 41.2 ポーランド 33.7
トルコ 39.7 スペイン 31.8
ポーランド 39.7 ノルウェー 30.9
スロバキア 38.9 デンマーク 29.5
スペイン 37.8 OECD平均 27.3
ノルウェー 37.7 ポルトガル 27.2
ポルトガル 37.6 英国 26.9
OECD平均 37.4 スロバキア 25.4
ルクセンブルク 35.9 日本 24
英国 32.8 チェコ 20.6
カナダ 31.3 カナダ 20.2
米国 30.1 韓国 18.1
日本 29.5 米国 17.7
スイス 29.5 スイス 16.7
アイスランド 28.3 メキシコ 15.1
オーストラリア 26.9 オーストラリア 14.9
アイルランド 22.9 ルクセンブルク 12.8
ニュージーランド 21.2 アイスランド 10.4
韓国 20.3 アイルランド 5.5
メキシコ 15.1 ニュージーランド 3.5

夫婦一方のみに収入がある場合)
Quelle: OECD's annual Taxing Wages 2008

用語解説

社会保険
Sozialversicherung

病気や失業など、困難な状態に陥った場合に各個人の生活を保障するもので、すべての労働者に加入が義務づけられている。保険料は賃金に応じて徴収され、労使双方で負担する。失業保険(2.8%)、健康保険(15.5%)、介護保険(1.95%ほか)、年金保険(19.9%)、労災保険(雇用者が全額負担)の5種。社会保険料算定制限があり、一定額を超えた賃金分には課されない。

<参考文献>
■ OECD „Steuern- und Sozialabgaben konzentrieren sich in Deutschland bei Gering- und Durchschnittsverdienern” ほか
■ Die Welt „OECD: Deutschland bei Steuern und Abgaben traurige Spitze“ (13.5.2009) „CDU kündigt Steuersenkung für Wahlprogramm an“
■ 連邦財務省 (www.bundesfinanzministerium.de)

内田 由起子(うちだ・ゆきこ) 東京外国語大学ドイツ語学科卒業。在学中、卒業後とドイツを行ったり来たりしながら語学勉強を続けた後、英語ニュースの翻訳に携わり、ジャーナリズムの世界に入る。04年1月からハンブルク在住。渡独後は主に、ドイツニュースの発信に努めている。
最終更新 Mittwoch, 05 Juni 2019 11:11
 

欧州議会 市民の代表とその役割

欧州連合(EU)の加盟27カ国で 6月4~7日の間、欧州議会選挙(Europawahl)が行われる。各加盟国は選挙に向けた共同キャンペーンを繰り広げているが、EU市民の関心はいまいち。「選挙に行く」と答えたのはわずか28%と低く、それどころか選挙が今年行われることすら知らない人が大半を占めている状態だ。今回は、欧州議会とその選挙について少し掘り下げてみよう。

誰を選ぶのか

EU主要機関の1つである欧州議会(→用語解説)の議員736人を、EU市民が直接選挙で選ぶ。EUの中で唯一、直接選挙が行われる機関である欧州議会の議員は、EU市民の代表だ。欧州議会選挙は1979年以来5年ごとに行われており、今年で7回目。加盟国が27カ国にまで拡大した今回の有権者は約3億7500万人に上り、インドに次ぎ世界で2番目に規模が大きい民主主義による議会選挙となる。

各国の議席数は、現行のEU基本条約であるニース条約に従って配分され、ドイツには最多の99席が割り当てられる(→図表参照)。選挙では、加盟国の各政党がそれぞれ議員候補を選出し、有権者がその中から1政党に投ずる。議席は5%以上の得票率を得た政党に、それぞれに見合った議席が与えられ、選ばれた政党の議員は国別ではなく、保守の「欧州人民民主党(現在288人)」、社会主義の欧州社会党(同217人)のほか、欧州自由民主改革党、緑の党・欧州自由連合など、欧州の政党グループに別れて職務にあたる。なお2004年から議員は、自国議会議員との兼職はできなくなった。

選挙制度

EU統一の選挙制度はまだないため、選挙は各国の制度にのっとって行われる。ドイツでの選挙日は7日で、有権者は18歳以上。国外に住んでいるドイツ人は、不在者投票制度を利用して選挙に参加することができる。

国外に住んでいてもEU域内であれば、その国で投票することが可能だ。上述のとおり、選挙は開催国の制度下で行われ、投票の対象も母国の政党ではなく在住地の政党になる。すべての市民に同等の権利が与えられており、国家を超えた市民の代表を選ぶというこの選挙の性格がうかがえよう。


Quelle: Europäisches Parlament

欧州議会の役割

欧州議会の権限の1つに、立法権がある。現在では欧州理事会と同様、立法機関として共同決定権も有しており、現任期中には市民と自然を保護する目的で、化学物質規制法案や二酸化炭素(CO2)排出量削減法案などを採択した。また、航空券の価格表示を燃料費や空港税などを含めた総額で表示することやEU域内の国外から自国への携帯電話の“国際”通話料金に上限をつけることなど、EU全体における消費者保護にも取り組んだ。

グローバル化が進む今日、環境問題や消費者保護問題だけでなく、金融・経済危機の克服など、一国では太刀打ちできない問題が山積みとなっている。欧州議会の権限は、EUの拡大および条約改正とともに常に拡大されており、欧州議会がEUの将来にどれだけ重要な役割を担っているかは明らかであろう。

市民の無関心と欧州議会の今後

しかし投票率は回を追うごとに低下を続け、前回2004年の選挙では、EU全体で過去最低となる45.5%(ドイツ43%)にまで落ち込んだ。「ユーロバロメーター」の最新アンケート調査でも、市民の無関心を裏付ける結果が出ている(→枠外記事参照)。金融・経済危機が市民の大きな不安材料になっていることから、各加盟国、各政党は失業対策を最重要課題に掲げ、投票を呼びかけている。市民はこれにどう応えるのだろうか。

シェンゲン協定や統一通貨ユーロの導入などで、EU加盟国間には国境による制約や障害が大幅に少なくなった。域内では旅行も、大学進学も、就職も、引っ越しも、より簡単にできるようになっている。それと同時に、EU全体を有効的に統制する必要性にも迫られ ている。

現在EUの新基本条約として、各加盟国による批准が進められているのが「リスボン条約」。発行されれば、同条約下で欧州議会の権限がさらに拡大され、EU統一の選挙制度についても規定されることになっている。欧州議会選挙に対する市民の責任も、重くなっていくのである。



選挙を間近に控えながらも、欧州議会に対する国民の関心は非常に低い。欧州委員会が2月中旬~3月中旬に、全加盟国の市民2万7000人を対象に行ったアンケート調査「ユーロバロメーター」によれば、今年欧州議会が行われると回答した市民はわずか32%。より正確に「6月」と答えられたのは、16% にすぎなかった。(グラフ参照)

グラフ アンケート調査「ユーロバロメーター」の結果

欧州議会選挙はいつ?欧州議会選挙に興味は?



欧州議会選挙に行く?今後、欧州議会の役割は?



金融・経済危機に対する
各加盟国の対応は?
危機の中、より安心を得られる対策は?



欧州議会における国別議席数

加盟国名議席数加盟国名 議席数
アイルランド 12 (-1) ドイツ 99 (0)
イタリア 72 (-6) ハンガリー 22 (-2)
英国 72 (-6) フィンランド 13 (-1)
エストニア 6 (0) フランス 72 (-6)
オランダ 25 (-2) ブルガリア 17 (-1)
オーストリア 17 (-1) ベルギー 22 (-2)
キプロス 6 (0) ポルトガル 22 (-2)
ギリシャ 22 (-2) ポーランド 50 (-4)
スウェーデン 18 (-1) マルタ 50 (0)
スペイン 50 (-4) リトアニア 12 (-1)
スロバキア 13 (-1) ルクセンブルク 6 (0)
スロベニア 7 (0) ルーマニア 33 (-2)
チェコ 22 (-2) ラトビア 8 (-1)
デンマーク 13 (-1) 合計27カ国 736 ( -49)

議席数は2009~14年のもの。カッコ内は現(2004~09年)議席数からの増減を表す。

用語解説

欧州議会 Europäisches Parlament=EP

予算全体の承認権のほか、新欧州委員会の承認、不信任決議の採択など、行政機関である欧州委員会を監督する権限を持つ。また法案を審議して欧州理事会と共同決定する権利などの立法権も有している。現議長は23代目のハンス=ゲルト・ペテリング(ドイツ、欧州人民民主党)で、任期は2年半。所在地はストラスブール、事務局はルクセンブルク。会議はブリュッセルでも行われる。

<参考文献>
■ 欧州議会 (http://www.europarl.europa.eu/)
■ 欧州議会選挙公式サイト (http://www.europarl.de/)
■ 欧州委員会 (http://ec.europa.eu/)
■ DUDEN Politik und Gesellschaf

内田 由起子(うちだ・ゆきこ) 東京外国語大学ドイツ語学科卒業。在学中、卒業後とドイツを行ったり来たりしながら語学勉強を続けた後、英語ニュースの翻訳に携わり、ジャーナリズムの世界に入る。04年1月からハンブルク在住。渡独後は主に、ドイツニュースの発信に努めている。
最終更新 Mittwoch, 05 Juni 2019 11:26
 

環境奨励金制度が大盛況!新車販売に追い風

金融危機の影響で業績不振にあえぐ自動車メーカーを救うために導入された「環境奨励金制度」が、予想以上の成果を上げている。今年1月中旬のスタートからわずか2カ月強で、申請件数が予算枠の6割を超えるほどの盛況ぶりに、連邦政府は当初の予定を急きょ変更、制度の大幅拡大を決定した。7月からは、二酸化炭素排出量が課税基準に加味される新自動車税制度もスタートする。

金融危機の影響

自動車の販売台数は、世界各国で昨年10月頃から急激に落ち込んでいる。ドイツも例外ではなく、翌11月には乗用車新規登録台数が前年同月比17.7%減の23万3772台となり、米ゼネラル・モーターズ(GM)傘下のオペル、BMW、ダイムラー、ポルシェ、フォルクスワーゲン(VW)などの各自動車メーカーや、ボッシュ、コンチネンタルなどの自動車部品メーカーは相次いで減産や人員削減を発表した。

自動車産業はドイツ経済を支える主幹産業であるだけに、政府は迅速に対応に回り、雇用確保と景気刺激、さらに環境対策をも盛り込んだ「環境奨励金(Umweltprämie)」の支給を決めた。

奨励金の反響

環境奨励金制度は今年1月14日~12月31日の間に、温室効果ガス排出量の基準値が「ユーロ4(→用語解説)」以上の新車を購入、登録した人に補助金として1台当たり2500ユーロを支払うというもの。登録後9年以上が経過した古い車を廃棄した上での新車購入が条件となっており、「廃車ボーナス(Abwrackprämie)」とも呼ばれている。

当初、同制度に政府が用意した予算は15億ユーロ(60万台分)だった。しかし、申し込み件数は3月27日の時点ですでに37万9000件超。同30日からは、制度利用希望者がボーナスを確保できるよう新車登録前の予約申請が可能になり、それまで以上に申込者が殺到する事態となった。

「まもなく終了」という勢いに政府は4月8日、予算枠を15億ユーロから50億ユーロに引き上げることを決定した。60万台分から200万台分へ、3倍強の大幅な拡大だ。利用期間は当初の予定通り、今年中。予算枠を使い果たし次第終了となり、さらなる拡大はないとしている。

自動車業界が好転

同制度のおかげで新車の需要が増え、国内の自動車メーカーも時短労働などを取り止めて徐々に通常通りの生産体制に戻ってきた。3月の国内における乗用車の新規登録台数はなんと、前年同月比40%増の40万1000台。小型車を中心に、今度は生産が追いつかないという状態になっている。

しかし、国内の需要は急上昇しているものの、国外での売り上げは相変わらず低迷している。同月におけるドイツ・メーカーの国内注文台数が75%増だった一方、輸出台数は25%減。廃車ボーナス制度がいかに功を奏しているかは、この数字が物語っている。

さらなる需要拡大が鍵に

ドイツでは廃車ボーナス制度のほかにも、7月からはエンジンの大きさだけでなく、二酸化炭素排出量にも基づいて課税する新たな自動車税制度が導入されることになっている。また、同制度導入前の6月30日までに新車を購入した人には、最高2年間自動車税が免除されることにもなっており、これらの相乗効果でさらなる売り上げ増加が期待されている。

同時に専門家の間では、環境奨励金制度の効果は一時的なものとする意見も多い。景気後退は来年も続く見通しで、制度終了後のリバウンドが懸念されているのだ。自動車業界が今直面している危機を乗り越えられるかどうかは、需要拡大をどれだけ持続できるかにかかっている。さらに、自動車業界だけを特別扱いしたこれらの政策に対する非難も強まってきている。今後は、経済界すべてを見回した上での景気刺激対策が必要になってくるだろう。

上半期には原油価格が高騰、下半期には金融危機が襲った昨年は、1年を通して大型車より小・中型車が好まれた。ドイツを代表する“ 国民車”メーカーのフォルクスワーゲン(VW)と、高級車メーカーのBMW は、こうして明暗を分けた。

欧州最大手のVW(本社ヴォルフスブルク)は、豊富なモデルと中国市場での販売増などで、金融危機を吹き飛ばした。2008年の決算では、売上高、純利益、新車販売台数のいずれも過去最高を記録。今年3月の国内新車登録台数も、前年同月比36%増と好調だ。

フォルクスワーゲン(VW) 2008年12月期決算
売上高 1138億800万ユーロ 前期比 +4.5%
純利益 46億8800万ユーロ 前期比 +13.7%
販売台数 627万1724台 前期比 +1.3%
従業員数 36万9928人 前期比 +12.3%

Quelle: VW(www.volkswagenag.com

一方、BMW(本社ミュンヘン)は、米国市場を中心に販売台数が極端に落ち込み、2008年の純利益は前年比約90%減。9000人の人員削減に追い込まれた。今年3月の国内新車登録台数は1.1%減で、相変わらず低迷が続いている。BMWのほか、メルセデス・ベンツのダイムラーも「暗」となった。

BMW 2008年12月期決算
売上高 531億9700万ユーロ 前期比 -5.0%
純利益 3億3000万ユーロ 前期比 -89.5%
販売台数 143万5876台 前期比 -4.3%
従業員数 10万41人 前期比 -7%

Quelle: BMW(www.bmwgroup.com

ドイツにおける3月の新車登録、車種別トップ10
車種(メーカー) 登録台数
第1位 ゴルフ(フォルクスワーゲン) 2万3703台
第2位 ポロ(フォルクスワーゲン) 1万7577台
第3位 ファビア(シュコダ) 1万5453台
第4位 パンダ(フィアット) 1万2457台
第5位 コルサ(オペル) 1万2035台
第6位 フィエスタ(フォード) 1万255台
第7位 プント(フィアット) 9764台
第8位 パサート(フォルクスワーゲン) 8799台
第9位 アストラ(オペル) 8423台
第10位 Cクラス (メルセデス・ベンツ) 8270台

Quelle: 連邦自動車局(Kraftfahrt-Bundesamt=KBA)

不況時に売れるのは、高級車より燃費が良い小型車。廃車ボーナス制度の恩恵を最も受けているメーカーはVWで、3月の新車登録台数は合計7万2144台とダントツの1位だった。ドイツ政府に救済を求めているオペルも、3万3758台とVWに次ぐ販売台数を記録している。

用語解説

ユーロ 4(Euro 4)

「ユーロ」は一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、炭素水素(HC)、粒子物質(PM)の排出ガス量を規制する欧州統一の基準で、現在の新車基準は「4」。今年9月からは、「5」にシフトする予定。すでに「6」対応車も販売されている。政府は廃車ボーナス制度のほかに、新自動車税制度に合わせ、6月までに新車を購入した人には1年間、購入した新車が「ユーロ5・6」対応車の場合はさらに1年間、自動車税を免除すると決定した。

<参考文献>
■ 連邦経済技術省経済輸出管理局(BAFA)
*環境報奨金制度申請(予約)は、同ホームページから
■ 自動車産業連盟(VDA)
■ 連邦政府 „Teurer für Stinker: die neue Kfz-Steuer”
■ Die Welt 紙 „Bis Dezember kann abgewrackt werden“(09.04.2009) ほか

内田 由起子(うちだ・ゆきこ) 東京外国語大学ドイツ語学科卒業。在学中、卒業後とドイツを行ったり来たりしながら語学勉強を続けた後、英語ニュースの翻訳に携わり、ジャーナリズムの世界に入る。04年1月からハンブルク在住。渡独後は主に、ドイツニュースの発信に努めている。
最終更新 Mittwoch, 05 Juni 2019 11:27
 

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