「夏バテ」の語源は?
走り疲れた馬の足がもつれてバタバタすることを「バテる」といいますが、暑くて長い夏に疲れて食欲がなくなり、身体がだるく、何もする気がおこらない状態を「夏バテ」 と言います。「夏に疲れ果てる(夏果て)」が夏バテとなったという説もあります。いずれにしても本来の医学用語ではありません。
夏バテと熱中症は違うものですか?
夏バテは、最近日本で話題となることの多い「熱中症」とは違います。高温環境下で重労働や運動をしたため熱放散が不十分となった結果、熱が体内にうっ積した状態(病気) を熱中症といいます。参考のため、 夏バテと熱中症の症状を下の表にまとめました。
夏バテの症状 | 熱中症(日射病)の症状 |
1.全身の疲れがとれない 2.食欲がない 3.冷たいものばかり飲む 4.意欲の低下 5.睡眠不足 6.下痢や便秘 |
1.急激な体温上昇 2.全身的な発汗停止 3.めまい、吐き気、嘔吐 4.強い頭痛 5.混迷、昏睡 6.痙攣(けいれん)など |
※全ての症状が見られるわけではありません。
夏でも涼しいドイツですが、夏バテはするんでしょうか?
「日独口語辞典」(伊藤小枝子著)の中では、「日本のような暑さのないドイツには当然『夏バテ』そのものずばりの単語はない」とあります。敢えて言うならば、「Sommerhitze」にやられたということになるようです。数年前、欧州を襲った猛暑を例外とすると、これでもか、これでもか、と暑さの続く日本の夏と違い、寒暖を繰り返し、8月でも長袖シャツや コートを必要とすることもあるドイツでは、夏バテは問題にならないのかもしれません。
手軽にできる予防法を教えてください。
ドイツでも、特に最上階や屋根裏部屋に住んでいる方は、暑い日が続くとつらいですね。自宅にいて暑くてたまらないときは、生ぬるの水シャワーを浴びて(またはバスタブでの行水で)体を冷やすか、夕方涼しくなってから外を散歩して、新鮮な空気に接するなどの工夫が必要です。
夏バテに効く食材はありますか。
専門書には豆腐、しし唐辛子、山芋、もやし、枝豆のほか、食欲を刺激するショウガ、ワサビ、コショウなどの香辛料、シソ、ミョウガ、ネギなどの香味野菜などが紹介されていますが、最も大切なことは、1日3食を食べること、そして冷やし麺など炭水化物のみだけではなくタンパク質、ビタミン、ミネラルなどをバランス良く取ることです。食欲 がなくて肉類を食べられない時には、 良質のタンパク質として豆腐がお薦めです。
夏といえば、やっぱり「うなぎ」が思い浮かびます。
1000年(?)続く夏バテ解消食に「うなぎ」があります。栄養価が高い食べ物であると同時に、ビタミンA、B1、B2、D、Eのほか、カルシウム、鉄分、亜鉛などミネラル類の含有量も多く、動脈硬化を予防するEPAという物質も含まれています。蒸したり蒲焼きにしたり、また独特のタレの味力も手伝って、食欲を多いに誘います。しかし欧州生活者は、残念ながらそう簡単に日本風のうなぎを食べることはできませんね。ドイツにもうなぎ料理はありますが、必ずしも食欲をそそる味付けとは言えないようです。
暑い日は、ついつい冷たいものを飲みすぎてしまいます。
「ペットボトル症候群」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。10年近く前から夏季、小・中・高校生の世代に謎の糖尿病が散見されるようになりました。急な発症様式と高血糖による症状は、1型糖尿病(若年糖尿病)とほぼ同じですが、インスリン治療で血糖値が正常化されると、その後は治療を必要としないという不思議なものでした。その原因は、毎日飲み続けた何本ものペットボトルの清涼飲料水でした。小さなお子さんが、ペットボトルの飲料水ばかり飲んでいるようでしたら注意してください。
ビールの飲みすぎもよくないですよね。
日本では、仕事帰りの生ビールは夏の楽しみのひとつです。しかしここで注意すべきは、アルコールは栄養素の観点からも食事の代替にはならないということです。ビアガーデンで出されているつまみには、ビールをおいしくするように塩分や油類が多く含まれているものが少なくありません。中性脂肪値(トリグリセリド)の高い人、尿酸値の高い人は注意が必要です。飲み過ぎて翌日ぐったりしてしまっては、夏バテを助長することになりかねません。
高血圧と夏バテは関係がありますか。
夏は、抹消血管が開いて血圧が下がり気味になります(冬は逆です)。高血圧の人は、その圧に対応するため血管壁が厚く内腔が狭く、血流調整能も正常の人より低下していることが少なくありません。そのため血圧が下がったところに脱水が加わると(血液が濃縮され粘稠度が増してるため)、脳梗塞の危険も高まります。特にお年寄りの方は注意が必要です。
夏バテの「特効薬」があったら教えてください。
漢方では、夏バテを「中暑」または「注夏病」と呼んでいます。清暑益気湯(セイショエッキトウ)、補中益気湯(ホチュウエッキトウ)、十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)などの補剤が有効とされています。しかし、残念ながら夏バテの特効薬はありません。最も効果的なのは、人工的ではない新鮮な自然の空気に触れることではないでしょうか。その意味ではこの夏、欧州でお過ごしになっている皆さんは、既に自然の良薬を手にされていることになるのかもしれません。
夏バテの予防 | |
1.適切な食事 | - 規則正しく - バランスの取れた内容で - 炭酸清涼飲料水は控えめに |
2.十分な休養 | - 遅くまで起きていないで睡眠を十分にとる - 休暇がとれれば積極的に休む |
3.適度の運動 | - 仕事の後はアルコールより運動を - きつい運動は避ける |
4.エアコンの使用は適度に | - 外気温との差は5〜6度以内に |