ジャパンダイジェスト
ドクターの診察室


欧州で「はしか」が流行 予防接種は2回済んでいますか?

ドイツを含む欧州で「麻しん(はしか)」が大流行していると聞きました。自分はイタリアへの出張も多く、妻が妊娠をしているので心配です。感染を防ぐには、どのような点に注意すれば良いのでしょうか

Point

  • 麻しんは伝染力の強いウイルス感染症
  • イタリア、ルーマニアやドイツで流行
  • いったん発症すると特異的な治療法はなし
  • 唯一の予防法は麻しんワクチンの2回接種
  • 麻しんワクチンは生ワクチン(妊婦は禁忌)
  • 大人の発病は重症化しやすい
  • 麻しんの二大死因は肺炎と脳炎合併症

欧州の麻しん(はしか)の流行

● ドイツの患者数は昨年同時期の約6倍

ドイツのロベルト・コッホ研究所(RKI)によると2017年上半期の麻しん(Masern)患者数は766名で、昨年同時期の130名を大幅に上回っています。イタリアでは1月以来の患者数が4087名(8月8日時点)、ルーマニアでは8455名(8月4日時点)と例年の数倍に上ります。

2017年の麻しん流行の患者年齢

2017年の麻しん流行の患者年齢

● ヨーロッパへの旅行者に対する注意喚起

外務省は海外安全ホームページに「海外における麻しん(はしか)の発症に備えた注意」(8月18日)を発表しました。米国の疾病予防管理センター(CDC)もドイツを含む欧州への旅行者に対し、旅行前に予防接種(Impfung)を講じるよう勧告しています。

● イタリアでの流行の原因はワクチン未接種か1回接種

イタリアでは患者の88%がワクチン未接種、7%が1回のみのワクチン接種でした(7月4日時点での報告)。ここ数年の接種率低下の背景としてイタリア保健省は「ワクチンと自閉症に関連性」があるとの誤報を信じた親が増え、子供への接種を控えたためとの見方を示しています。

ドイツの麻しんワクチン接種

日本とドイツの接種時期の違い

日本とドイツの接種時期の違い

● 2歳までに2回接種

2歳になるまでに2回の接種が、STIKO(RKIの予防接種委員会)より推奨されています。早い年齢で2回接種するのは、1回目のワクチン接種で予防効果(十分な抗体価)が得られる確立が全体の95%で、2回目接種によりほぼ全員が予防効果を得られるためです。

● 1970年以降生まれの人は追加接種を

1970年以降に生まれた18歳以上の人は、予防接種を受けていない、もしくは予防接種を受けたか不明、または1回しか接種を受けていない可能性があるので、すべての人が1回の追加ワクチンを接種することが推奨されています(STI KO)。

齢年代別にみたワクチン接種回数(ドイツ)
生年 接種 説明
1970年以前 なし 自然感染したと推定
1970〜1990年 1回 2回目を未接種、
不確かな人は追加接種を
1990年以降 2回

● 1969年以前生まれはワクチン接種不要

 麻しんウイルスに対する血液中の抗体(Antikörper)を調べた疫学調査により、1970年以前生れのほとんどの人が幼少時に自然感染し、終生免疫を得ていることが示されています。

日本での麻しんワクチン接種

● 1990年以前生まれは1回接種

日本では1978年から麻しんワクチンの1回接種が始まりましたが、1回では予防効果が不十分なため、1990年4月2日以降生れの子供より2回接種となりました。今年26、27歳までの若い世代は麻しんワクチンを2回接種、27〜40歳の世代は1回接種、41歳以上の世代はまったく受けていない可能性が高いと言えます。

年代別にみたワクチン接種回数(日本)
生年 年齢* 接種 説明
1977年以前 41歳以上 なし 自然感染したと推定
1978〜1990年 27〜40歳 1回 未接種の人もいる
妊娠前に2回目の接種を
1990年以降 27歳未満 2回
* 4月2日生れから適応のため年齢は目安です

● 2回の接種間隔が空いているのは何故?

日本や米国では1回目接種で得られた予防効果(抗体価)を維持する目的で数年後に2回目の接種を行っています。1回目の接種で抗体価上昇が不十分とされる約5%の児童は、十分な予防効果がないまま数年を過ごすことになります。

麻しんの症状

● 空気感染で拡がるウイルス感染症

患者のくしゃみ、咳、鼻汁から排出されるウイルスを含む感染性の粒子(つぶ)によって拡がります。麻しんウイルスは感染力が強く、免疫の無い人がウイルスに接するとほぼ100%発症します。

● 小児の症状

感染から発症までの潜伏期は10~12日間。鼻水、発熱、目やになどの風邪症状で発症(カタル期)、2~3日間続いた熱が一旦和らぎ、その後に再び39℃以上の高熱とともに赤い小丘疹が現れます(発疹期)。発症から7~9日後に解熱、一般状態も改善します(回復期)。発疹は茶色の色素沈着を残し、次第に消えていきます。

麻しんの臨床経過
潜伏期 * 10〜12日間
初発症状と発熱 かぜ症状で発症
一旦熱が下がった後に高熱
発疹の拡がり 耳の後、顔から体・四肢へと拡がる
回復期 解熱、発疹の色素沈着・自然消退
* 感染から発症までの日数 (BZgA/連邦健康教育センターの資料より)

● あなどれない大人の麻しん

大人は小児に比べ重症化する傾向があります。近年は麻しん予防接種が徹底されていなかったり、1回接種のみの年齢層を中心に大人の患者が増加しています。

● 麻しんの合併症

中耳炎、肺炎など細菌による二次感染、麻しんウイルスによる脳炎などがあります。麻しん自体の死亡率はまれですが、肺炎を合併すると死亡率は約60%、脳炎を合併すると死亡率は約15%に増えます。

● 早産や流産のリスクも

妊娠中に麻しんを発症すると、早産や流産をきたすことがあります。麻しんの既往が明らかでなく、1回しか接種を受けていない場合は、妊娠前にできるだけワクチン接種(ドイツではMMRワクチン)を受けてください。妊娠中は生ワクチンであるMMRワクチンの接種は受けられません。

● 修飾麻しん

麻しんワクチン接種から数年が経ち、抗体が低下した人が麻しんに罹患(りかん)した際には、通常とは異なる軽い経過をとることがあります。前駆症状、発疹は軽く、短い期間に回復します。

麻しんの予防と治療

● 接種歴不明の人はワクチン接種を

ドイツに暮らす1970年以降生れ、18歳以上の邦人の方も2回接種したか不確かな場合には、麻しんワクチンの追加接種を受けるようにしましょう。詳しくは掛かり付けの医師(Hausarzt/-ärztin)に相談してください。

● 麻しんウイルス抗体

血中の麻しんウイルス抗体価を測ることで、予防効果の有無を知ることができます。しかし、例えばTKなどの公的疾病保険組合(Krankenkasse)に入っている場合、抗体価測定より麻しんワクチン(MMRワクチン)の接種をすすめています。

● 治療は対象療法

基本的な治療は対症療法です。特に麻しんウイルスの特効薬はありません。

● 幼稚園・学校の再登園・再登校の目安

ドイツでは症状が回復して最初の発疹が出現してから少なくとも5日間以上経過していれば可。日本では解熱して3日を経過するまで自宅療養となります。

最終更新 Dienstag, 05 September 2017 09:59
 

ピロリ菌について:感染ルートや起こりうる病気など

最近ピロリ菌についてよく耳にしますが、なぜピロリ菌が多いと身体に悪いのでしょう?ピロリ菌によって起こりうる病気や、感染ルート、検査・治療の方法について教えてください。

Point

  • ピロリ菌は日本人の約半数が感染
  • 若年者より高齢者に高い感染率
  • アンモニアで胃酸を中和して生息
  • 胃・十二指腸潰瘍、胃がんの発生リスクと関係
  • 抗菌薬による除菌治療が有効
  • 離乳食の口移しも感染ルートの一つ

ピロリ菌て、何?

● 可愛らしい名前ですが、実は……。

正式な名前はヘリコバクター・ピロリ菌(Helicobacter pylori)です。「ヘリコ」はらせん状、「バクター」は細菌、そして「ピロリ」は胃の幽門(ゆうもん)部という意味。すなわち「胃の幽門部に生息するらせん状の細菌」ということになります。

● アンモニアをつくって生息

胃液はpH1〜2の強酸(塩酸)で、従来、細菌は住めないと考えられてきました。しかし、ピロリ菌はウレアーゼ(Urease)を出してアンモニア(Ammoniak)をつくり、強い酸性による殺菌を免れています(図1)。

図1. ピロリ菌

ピロリ菌

● どこから体に入るの?

ピロリ菌の多くは、胃酸も弱く免疫機能が不十分な幼児期に、離乳食(Babynahrung)などの口移しによって感染すると推測されています。その他、ピロリ菌に汚染した井戸水、ハエによる媒介も考えられています。ピロリ菌自体は酸素が存在する大気中では生存できず、乾燥にも弱い細菌です。

● 感染の頻度は?

日本人のピロリ菌の感染率は先進国の中では際立って高率で、ピロリ菌の除菌が始められる前は日本人の約半数が感染していました。男女での差はなく、年齢が高くなるほど感染率も高くなっています。衛生環境の不十分な国・地域ではピロリ菌の感染率がさらに高くなります。

● 自然治癒や再感染は?

ピロリ菌の持続感染が幼少時に成立すると、自然に治ることはまれです。しかし、大人の場合には一過性の感染であることが知られています。除菌して1年以上の検査で一旦陰性になったのが、数年後に陽性になった場合には再感染が疑われます。

ピロリ菌により起こる病気

ピロリ菌と関係があるとされる病気

  • ● 胃潰瘍
  • ● 胃がん
  • ● 十二指腸潰瘍
  • ● 胃にできるリンパ腫
  • ● 萎縮性胃炎
  • ● 一部の胃ポリープ など

● 胃潰瘍・十二指腸潰瘍

胃潰瘍(Magengeschwür)、十二指腸潰瘍(Zwölffingerdarm-Geschwür)は、胃や十二指腸の粘膜がえぐられて、強い痛みや出血をきたす病気です。時に強いストレスや薬剤が原因のこともありますが、ほとんどの場合がピロリ菌感染によるものです。

● 萎縮性胃炎(慢性胃炎)

胃液をつくる胃底腺(いていせん)が萎縮し(Atrophische Gastritis)、胃粘膜が腸の上皮粘膜のようになる「腸上皮化成(ちょうじょうひかせい)」、鳥肌のようなつぶつぶの盛り上がりを伴う「鳥肌胃炎」を起こしたり、時に点状の出血を伴います。

● 胃がん

ピロリ菌の感染者は感染していない人に比べ胃がん(Magenkrebs)の発生リスクが5倍、さらにピロリ菌と萎縮性胃炎の両者がある場合は、どうちらもない人に比べ約10倍といわれています。ピロリ除菌が胃がんの発生率を減らせるか、今年の7月より日本ヘリコバクター学会が中心となり、全国で20年間の追跡調査が開始されました。

● 急性胃炎、下痢、口臭

成人のピロリ菌の初感染では急性胃粘膜病変(ヘリコバクター感染胃炎)や下痢をきたすことがあります。ピロリ菌の作るアンモニアにより呼気からくる尿に似た独特の口臭がみられることも。小児ではピロリ菌の鉄消費による鉄欠乏性貧血との関わりも推測されています。

ピロリ菌の検査

ピロリ菌検査の種類

検査 方法・利点 留意点
尿素呼気試験 ・呼気中の二酸化炭素を測る
・結果が最も確か
限られた施設でのみ検査可能
ピロリ菌抗体 ・血液などの抗体を調べる
・簡単にできる
除菌直後は陽性、感染直後は陰性
胃カメラ ・迅速ウレアーゼ試験で確認
・胃の粘膜の様子を観察できる
ピロリ菌がいない場所では陰性

● 尿素呼気試験(Atemgastest)

検査薬(尿素)を飲んだ後の呼気に含まれる二酸化炭素濃度を測定します。生きて活動しているピロリ菌が、尿素を二酸化炭素とアンモニアに分解する酵素(ウレアーゼ)を生成していることを利用しています。

● 血液のピロリ菌抗体(H.pylori Antigen Test)

胃の中にピロリ菌がいる場合に作られるピロリ菌を排除する抗体(こうたい)の有無を調べます。最も簡便で、早く結果が出るスクリーニング方法です。ピロリ菌感染直後の抗体ができていない時期には偽陰性、ピロリ菌の除菌直後で抗体が体内に残っている場合は偽陽性を示すことがあります。便を用いる方法もあります。

● 胃カメラ(Gastroskopie)

胃粘膜を少し取ってピロリ菌の出すウレアーゼを調べたり(迅速ウレアーゼ試験、HU-Test)、病理学的にピロリ菌の有無を確認します。ピロリ菌は胃粘膜全体に生息しているとは限らず、ピロリ菌の生息してない部分を調べた時は陰性となることもあります。萎縮性胃炎の所見を確認するのに有用です。

ピロリ菌の除菌治療

ピロリ菌の1次除菌の薬剤

種 類
アモキシシリン ペニシリン系の抗菌薬
クラリスロマイシン マクロライド系抗菌薬
オメプラゾール 胃酸の分泌を抑える薬(PPI)

● 3薬剤による除菌法(1次除菌)

2種類の抗菌薬(アモキシシリンとクラリスロマイシン)と胃酸の分泌を抑えるオメプラゾール(プロトンポンプ阻害薬の1種)の1週間投与が、ピロリ菌除菌(Eradikationstherapie)の標準3剤併用療法(Triple-Therapie)です。

● 除菌成功率と耐性菌

以前は90%を越す除菌率であった「標準3剤併用療法」ですが、名古屋市立大学の研究によると耐性菌出現などのため近年はその除菌率が70%近くまで低下しています(2010年のJ Clin Biochem Nutr誌の論文)。一方、同じ抗菌薬でも胃酸分泌を抑える薬を、例えばP-CABと呼ばれる薬(日本のボノプラザン)に替えてみると除菌率が改善するという最近の報告もあり関心が持たれます。

● ペニシリンアレルギーの人は?

ペニシリンアレルギー(Penizilinallergie)の人は抗菌薬のアモキシシリンを使えないので、2次除菌(次項)に用いる別な抗菌薬(メトロニダゾール)が用いられます。

● 2次除菌、3次除菌って?

 「標準3剤併用療法」による1次除菌がうまくいかなかった場合に、抗菌薬を変更して行うピロリ菌治療を2次除菌と呼んでいます。同様にさらに3次除菌、4次除菌が行われることもあります。

● 子供のピロリ菌

ピロリ菌の多くは5歳頃までの幼少時に感染します。小児でのピロリ菌の除菌の有効率は約90%と高く(信州大学の検討)、日本の「小児期ヘリコバクター・ピロリ感染症の診断,治療,および管理指針(2005年)」では除菌対象年齢を5歳以上としているものの、安全性の観点からは中学生以降の除菌が望ましいとされています。

● 除菌後に胸焼け?

約20人に1人の人がピロリ菌を除菌して半年ぐらいして胸焼けを起こすことがあります。これは胃の胃酸分泌が改善することと、ピロリ菌が酸性していたアンモニアの影響がなくなるため、もともと胃食道逆流があった場合には胸焼けを伴う胃食道逆流症(逆流性食道炎)の症状が前面に出るためです。

● 治療はどこで受けられるのか? 

掛かり付けのハウスアルツト(Hausarzt/-ärtztin)、内科(innere Medizin)、消化器内科(Gastroenterologie)などの医療機関に相談してください。

● 感染予防のために

お子様への愛情表現でもある食物の口移しも家庭内感染の原因の一つと考えられています。ピロリ菌が陽性で胃食道逆流がみられる親から幼児への食物の口移しには注意が必要とされています。

最終更新 Mittwoch, 01 November 2017 15:41
 

学校感染症の出席停止日数は? -ドイツの基準-

ドイツでは子供が頭シラミにかかったら、出席停止になると聞きました。またノロウイルスに感染した場合、下痢が止まってもすぐに学校に行けないそうですが、日本との出席停止日数の基準や違いを教えてください。

Point

  • 予防接種はきちんと済んでいますか?
  • 病気ごとに出席停止の基準があります
  • 出席停止期間を過ぎても排菌が続く感染症もあります

集団生活の場への出席停止

● なぜ休む必要があるのか

子供が集団で生活している幼稚園(Kindergarten、Kita)や学校(Schule)では、伝染性の感染症があっという間にほかの児童、生徒に拡がる恐れがあります。そのため、感染予防の観点から主な感染症ごとに出席停止(Kitaverbot、Schulverbot)の基準が定められています。多くの児童が感染した場合には授業中止(Unterrichtsausfall )もありえます。

● ドイツの出席停止の基準

ロベルト・コッホ研究所(RKI)が勧める感染児童の再登園、再登校(Zulassung)の基準に従います。RKIの資料を基に各地域の保険所が作成している主な学校感染症の一覧表(Wiederzulannsungstabelle)もあります。

ドイツの主な学校感染症
病気潜伏期(日)出席停止の期間保健所届出
基準あり症状改善診断書
インフルエンザ 1〜2 ◯ *
手足口病 4〜30 なし
りんご病 7〜14 ◯ *
溶連菌感染 1〜3
(疑いも)
伝染性膿痂疹 2〜20
(疑いも)
流行性角結膜炎 5〜12 ◯ *
頭シラミ -
感染性胃腸炎 1〜10
* 2名以上の患児の時、△ 場合によって必要

● 日本の基準とは異なる場合も

日本の学校保健安全法に則った、感染症発症の後の復学・復園の基準と、ドイツの基準とは、必ずしも一致しません。不明な場合は、医療機関や通学している学校にたずねてみましょう。次にご紹介する感染症の中で、復学・復園する際に医師の許可書(診断書、schriftliches Attest)を必要とするものには※をつけています。

時々流行る学校感染

● 頭シラミ(Kopfläuse)

第1回目の治療の後(重要:8日後に2回目の治療を要します)に復学が可能。医師の診断書を必要とするか否かは幼稚園、学校によって異なり、親が十分な処置をしたことを確認するだけの所もあります(日本では出席可能)

● はやり目(流行性角結膜炎、Ansteckende Bindehautentzündung)※

発赤と分泌物がなくなったら復学可能。アデノウイルスによる流行性角結膜炎では、医師の診断書が必要。

発疹性の感染症

● 知恵熱(突発性発疹、3-Tage Fieber)

丸1日(24時間)発熱がなければ登園可能。日本では食事ができて元気が良ければ登園可能。

● はしか(麻疹、Masern)

症状が回復し、最初の発疹が出てから少なくとも5日以上経過したら復学可能。日本では解熱(体温の正常化)して3日を経過するまで自宅療養とします。

● 風疹(三日麻疹、Röteln)

症状が回復し、最初の発疹が出てから少なくとも1週間が経過したら可能。日本では発疹が消えたら可能。

● 水ぼうそう(水痘、Windpocken)

全ての水疱が治癒したら、復学・復園が可能(合併症のない場合は、発疹が出てから約7日間が経過した後)。

● りんご病(伝染性紅斑、Ringelröteln)

発疹(紅斑)が出現していても登園可能(日本でも紅斑出現時に元気が良ければ登園可能)。

● 飛び火(伝染性膿痂疹、Borkenflechte)※

抗菌薬を服用して24時間以上経過するか、皮疹が治った後に出席可能。再登校には医師による診断書が必要となります(日本は出席可能)。

● 手足口病(Hand-Fuß-Mund-Krankheit)

水疱がみられなくなったら登園・登校可能。

● 疥癬(かいせん、Krätze、Skabies)※

きちんと治療した後、医師の診断書をもらい、登園・登校可能。

胃腸(おなか)の感染症

● 流行性嘔吐下痢症(感染性胃腸炎、Magen-Darm-Erkrankungen)

ノロウイルス(Norovirus)、ロタウイルス(Rotavirus)、サルモネラ(Salmonellen)、カンピロバクター(campylobacter)などの感染性下痢症では、最後のおう吐(Erbrechen)もしくは下痢(Durchfall)をしてから少なくとも48時間が経過してから(日本とは異なるので要注意)。

● 口内炎(Mundfäule)

症状が回復したらOK。

● 腸管出血性大腸菌感染(病原性大腸菌感染、EHEC)※

症状が回復後、3回の排便で起因菌が陰性であれば復学・復園を許可される。要診断書。

● A型肝炎(Hepatitis A)

 医師の判断に従う(ほぼ同じ意味であるが、日本では肝機能が正常化してから)。

● 赤痢(Shigella)※

治療の上、3回の便検査で赤痢菌が陰性となったら、登園・登校可能。医師の診断書が必要で、場合によっては保健所の判断に従うことも。

発熱、全身の感染症

● 溶連菌感染症(猩紅熱、Streptokokken A-Mandelentzündung、Scarlach)

抗菌薬を開始して24時間後、もしくは症状が回復すれば登園・登校可能。

● おたふく風邪(流行性耳下腺炎、Mumps)

発症から少なくとも5日間経過し、症状が改善すれば登園・登校可能。

● 風邪(Erkältung)

38℃以上の発熱があった場合には、解熱して24時間が経過してから登園・登校が可能。

● インフルエンザ(Grippe)

症状が回復したら登園・登校が可能。解熱後何日という基準はなく、再登校の際の医師の診断書の必要もありません。日本では発症後5日、かつ解熱後2日(幼児は3日)が経過してから。

● 伝染性単核球症(キス病、Pfeiffersches Drüsenfieber)

症状が回復したら登園・登校が可能。

● 髄膜炎(Hib、Meningokokken)

原因となる細菌(起因菌)がヒブ菌でも髄膜炎菌でも、抗菌薬による治療を開始して、症状の回復がみられたら登園・登校が可能。

● 百日咳(Keuchusten、Pertussis)※

抗菌薬による治療開始から5日経過したら登園・登校が可能。

● ジフテリア(Keuchusten、Pertussis)

症状が改善し、他人への感染の可能性がなくなったら登校が可能。医師の判断と保健所の同意が必要。

● 結核(tuberkulose)

治療の後、3回以上菌検出が検出されなくなり、医師の診断書が出てから登園・登校が可能。

● その他の重篤感染症

コレラ、ウィルス性出血熱などの重篤な感染症では保険所(Gesundheitsamt)の許可が必要。

気をつけたい点

● 短すぎる療養期間は他人に迷惑をかけることに

1日も早く幼稚園や学校に復帰させたい親の気持ちも分かりますが、ほかの児童に感染させ多大な迷惑をかけることがあるので、決められた基準は守りましょう。

● 出席停止後の排菌にも留意

ノロウイルス感染症などでは下痢症状が治まっても1〜2週間という長い期間、便への排菌が持続します。出席停止期間が過ぎても手洗いなどを徹底しましょう。

● 予防ワクチン接種は済んでいますか?

学校感染症の中には予防接種により感染を防げるものもありますので、ドイツで必要な予防接種について不確かな場合は医師に相談すると良いでしょう。

最終更新 Dienstag, 11 Juli 2017 14:36
 

ドイツの疾病保険の特徴 1:法的疾病保険

この4月にドイツ駐在となりました。こちらの健康保険も日本と同じ仕組みだと思っていましたが、ドイツ在住の友人から色々な違いがあると聞きました。どのような点が違いますか? 加入の際に気を付けるべきことはありますか?

Point

  • ドイツ在住者には原則的に加入義務があります
  • 法的疾病保険(GKV)とプライベート疾病保険(PKV)の二種類があります
  • GKV加入者はかかりつけ医の登録を
  • GKVは、診療や処方薬の保険適応範囲に一定の枠が設けられています
  • GKVの場合、収入のない扶養家族の保険料は無料です
  • 収入に応じてGKVの保険料が決まります
  • どの疾病金庫でも保険サービスの内容はほぼ同じ

日本の「健康保険」と ドイツの「疾病保険」

● 日本もドイツも国民皆保険制度

誰もが安心して医療を受けられる日本の国民皆保険制度は、ドイツの疾病保険をモデルに大正15年(1926 年)に作られました。それ以来、日本もドイツも、変更や改善を加えながら現在に至っています。日本の「健康」保険とドイツの「疾病」保険という微妙な表現の違いに暗示されるように、基本的な理念は同じでも、運用面で大きく異なる点があります。

● 法的疾病保険とプライベート保険

日本との違いの一つは、疾病金庫が運営する法的疾病保険(gesetzliche Krankenversicherung、GKV) と民間の疾病保険会社によるプライベート疾病保険(private Krankenversicherung、PKV)の2本立てになっていることです。国の国民皆保険制度の柱の一つに民間保険が組み込まれているのが、ドイツの医療保険制度の最大の特徴です。

ドイツの公的保険(GKV)のしくみ

ドイツの公的保険(GKV)のしくみ

ドイツのプライベート疾病保険(PKV)のしくみ

ドイツの公的保険(GKV)のしくみ

● 保険診療項目 = 保険で全てカバー」ではない

二つ目は、ドイツの公的保険GKVでは、検査の範囲、治療薬の選択にかなりの枠が設けられていることです(後述)。より柔軟に対応してくれるプライベート保険も、保険診療報酬法(GOÄ)に則った診療項目全てを無条件にカバーし、医療費の全額負担を保証するものではありません。

日本とドイツの国民皆保険制度の特徴

日本 ドイツ
1 国民全員を公的医療保険で保障 ドイツ住民を公的と民間医療保険で保障
2 医療機関を自由に選べる 医療機関をほぼ自由に選べる
3 安い医療費で高度な医療 公的保険の適応範囲には枠あり
4 社会保険方式を基本としつつ、皆保険を維持するため公費を投入 疾病基金は独立採算制を維持
5 総医療費の増大を抑えにくい 水準を維持した上で、医療費を管理しやすい

※日本の特徴については 厚生労働省の「我が国の医療保険について」をもとに作成

● 公的保険GKVの基本情報

ドイツに暮らす人の約9割が加入している公的保険GKVは、疾病金庫(Krankenkasse)によって運営されています。そのため加入者はKassenpatient/-tinとも呼ばれます。GKVの保険適応となる検査項目、治療薬の種類は疾病金庫が認めた範囲内のみとなります。

日本とドイツの国民皆保険制度の特徴

日本の健康保険 ドイツの公的保険
運営母体 保険組合 疾病金庫
加入 皆保険 強制保険で加入義務あり
保険料 所得に応じる 所得に応じる
医療機関 全て 公的保険を扱う機関
検査 全て 一定の制限あり(ジェネリック医薬品を優先)
治療薬 全て 一定の制限あり
入院 大部屋・個室 大部屋
診療費 一部負担あり 無料
保険適応 ほぼ100% 一定の制限あり

※おおよその目安

● 保険料は所得額に応じて決まる

公的保険GKVの財源はすべて保険料のみでまかなわれていて、 その保険料は年齢や性別とは関係なく、所得額で決まります。給与所得者の場合には、収入の一定額の保険料を雇用者と被雇用者で折半します。収入が一定以上の金額に達すると、公的保険GKVへの加入義務が解除されてプライベート保険へ移行できますが、将来の経済状態なども考慮し、自分の意志で公的保険に留まる人もいます。

公的保険への家族の加入

● 家族の加入はどうなりますか?

扶養家族(収入のない配偶者、子供)は無料で公的保険GKVに加入できます。収入のある家族は、保険料を払って各々がGKVに加入します。

● かかりつけ医の制度

公的保険GKVの加入者は、かかりつけ医を「ハウスアルツト(Hausarzt/-tin)」として登録しておくと、通常の診療に加え、必要に応じて専門診療科への紹介、病院での入院の手配してくれます。

● 診察は公的保険GKVを扱う医療機関で

外来受診は、公的保険GKVの診療を行っている開業医で受けます。大きな都市では、プライベート保険の患者に対してのみ診療を行っている医療施設もあります。そこでの受診はGKV患者の自費負担となってしまいますので留意してください。

● 処方薬はジェネリックが主体

同じ成分のジェネリック薬(後発医薬品の意)がある場合、ジェネリック薬が優先されます。実際、GKV患者への処方件数の75%がジェネリック薬です。また、医師が「代替調剤不可」と処方箋に記載しない限り、薬局では薬効が同等で、より低価格な薬を代替調剤する仕組みになっています。

● 診療時の支払いは?

原則的に診察時の支払いはありません。処方箋代も四半期ごとに家庭医に支払われる患者1人当たりの診療費(最大約30ユーロほど)に含まれ、実質的な患者負担はありません。薬局で、薬代によって一定の額(5ユーロか10ユーロ)を支払いますが、それ以上の薬代の負担はありません。

● 公的保険GKVの健康診断

35歳以上のGKV加入者は2年に1度、成人病の健康診断(Vorsorgeuntersuchung)を受けることができます。ただし、内容は一般診察、身体計測、血圧測定、空腹時血糖、総コレステロール値 、尿検査一般です。日本で行われている成人病健診、市町村健診、企業健診の検査項目と比べると、かなり少ないといえます。そのため、GKVの健康診断項目に加え、例えば腹部超音波、甲状腺機能、眼圧測定、腫瘍マーカーなどの検査項目を組み合せて健康診断を受けることができます。これをIGel(individuelle Gesundheitsleistungen) と呼んでいます。詳しくは、最寄りの医療機関に相談してください。

● 乳がん検診は?

ドイツでは、50〜69歳の女性は、乳がん検診プログラムに則って2年に1度のマンモグラフィーによる検診を受けることができます。また、30歳以上の女性については、年1回の触診による乳がんチェックを受けられます。一方、日本人女性の乳がんは30歳代からみられ、罹患率の最大ピークも40歳台と欧米人に比べて若いため、ドイツの検診プログラムと日本人の乳がん罹患年齢との間に差があるのが現状です。

● 歯科での治療

歯科領域は日本と状況が大きく異なっています。日本では健康保険の対象となっている虫歯の治療も、公的保険GKVで処置できるのは最小限の範囲に留まり、自費負担になることが少なくありません。虫歯は「歯磨きが悪いために起こった自己責任の病気」と捉えられていることが背景にあるようです(2016年10月21日発行、コラム「ドイツ歯科事情」より)。

● ドイツ国外への旅行

自分の加入している公的保険GKVがドイツ国外でのEU圏内で有効か、さらに日本に一時帰国する際に病気になった時にも使えるか、一度確認しておくと良いでしょう。

最終更新 Dienstag, 09 Mai 2017 13:11
 

ドイツの疾病保険の特徴 2:プライベート保険

ドイツの健康保険に入る際、公的な保険のほかに、民間の保険への加入も可能と聞きました。自分や家族にとってどちらの保険が適切なのかを判断するため、プライベート保険について教えてください。

Point

  • 適応範囲が法的疾病保険(GKV)よりも幅広い
  • 一定基準以上の収入がある人にとってはGKVより保険料がお得
  • 条件を満たせばGKVからプライベート保険(PKV)への変更が可能
  • 加入時の年齢、病気の有無により、保険料が異なります
  • PKVの場合、扶養家族の保険料については別途、支払う必要があります
  • PKVであっても、契約条件によって保険内容に違いが出てきます
  • PKVからGKVへの変更は容易ではありません

プライベート保険で理解しておくべきこと

● 保険でカバーされる検査項目や治療内容が多い

一般にプライベート保険(Privat Krankenversicherung、PKV)は、法的疾病保険(Gesetzliche Krankenversicherung、GKV)でカバーされる検査項目、処方薬の種類、治療内容よりも幅広いサービスが受けられます。入院の際には一人部屋もしくは二人部屋、または個室が用意され、入院中の診察は教授や部長クラスの医師が直接担当。日本の鉄道に例えると、グリーン車の待遇に似ています。プライベート保険の加入者はPrivatpatient(-tin)と呼ばれます。

ドイツのプライベート保険(PKV)のしくみ

ドイツのプライベート保険(PKV)のしくみ

ドイツの民間保険(PKV)の例

Axa Deutscher Ring
Allianz Inter
Barmenia Mannheimer
Debeka Signal Iduna 他
(ABC順)

ドイツの公的保険(GKV)のしくみ

ドイツの公的保険(GKV)のしくみ

日本の健康保険のしくみ

日本の健康保険のしくみ

● どこでも診療が受けられる

いずれの開業医の外来でも診察・治療を受けることができます。専門医を受診する場合も、かかりつけ医(ハウスアルツト)からの紹介を必要としません。しかし、病状に合った病院を自分で選び、予約をするのが難しいと感じられる場合は、かかりつけの医療機関に相談しましょう。

● 保険加入時は、告知義務を怠らないように

日本での治療や経過観察の検査をドイツでもスムーズに継続するには、プライベート保険加入時にきちんと告知しておくことが大切です。治療を継続する必要がある慢性疾患を告知し忘れた場合、後でその疾患に関係する検査や治療代が保険でカバーされなかったり、時には保険料が値上がりしたりすることがあります。

● 保険加入者と保険会社の契約が基本

プライベート保険は、加入者とプライベート保険会社、二者の間の契約です。保険でカバーされる診療範囲は契約の内容で多少違ってきます。また、年齢、疾病の有無、慢性病発症のリスクの有無によって保険料金も異なってきます。何でも保険でカバーされるという訳ではないので、高額な検査、特殊な治療を受ける前に、契約しているプライベート保険の会社に、保険でカバーされるかどうか確認しておくことも有用です。

● 診療費支払いについて

外来受診をした場合は開業医から(もしくは診療費の請求を代行で行う機関から)、入院した後は病院から、請求書(Rechnung)が送られてきます。請求書で指定された銀行口座宛に振り込みを行ってください。長期間手続きをし忘れていたり、日本の健康保険と同じで保険組合が支払うものと勘違いして無視していると、督促状(Mahnung)が送られてきて面倒な事態になるので気をつけてください。

● 薬の支払いについて

日本であまり見かけないのが、「診療費の支払いをします」という書類への署名(Unterschrift)です。これは、プライベート保険会社から全額返金がなされない場合にも、受診者がGOÄ(保険診療報酬法)に則って算出される診療費を支払う旨を確認するものです。

● 余計な治療とは言えないまでも

公的保険GKVよりカバーされる検査や治療範囲が広いプライベート保険。日本人は医師からの勧めに対し反論を良しとしない傾向があるためか、言葉の問題による誤解のためか、特に説明もなく本来の訴えと関連のない検査や治療を始められてしまったという経験を聞くことがあります。理解できない内容に関しては即答せず、紙に書いてもらって自宅に戻って考えるのも一つの対応策です。

日本の健康保険とドイツのプライベート保険(PKV)

日本の健康保険 ドイツのプライベート保険
運営母体 保険組合 民間保険会社
加入 皆保険 選択に条件あり
保険料 所得に応じる 公的保険より高い
医療機関 全て 全て
検査 全て 高額検査は場合による
治療薬 全て 通常は制限なし
入院 大部屋・個室 一人もしくは二人の個室
診療費 一部負担あり 一旦、全額を支払う
請求書 なし 請求書あり
保険適応 ほぼ100% 契約対象内のもの

その他の留意点

● 疾病保険カード(保険証)の携帯を

キャッシュカード型の疾病保険カード(Gesundheitskarte、Krankenversicherungskarte)は医療施設を訪れる時だけではなく、いつ必要になるか予想できない外出先や旅行の際も携帯するよう心がけましょう。

● 転居の際はカード情報の更新も忘れずに

薬の処方箋には患者の住所の記載も必要です。ドイツ国内で引越しをした際は、受診先の医療機関で住所が変わったことを受付で伝えてください。公的保険では疾病金庫に、プライベート保険は保険会社に連絡して情報の更新をしてもらってください。

● 診察には事前の予約を

診察を受ける際には、必ず電話で予約を入れるようにしてください。日本の開業医や病院のように来た順番に診察されるわけではないので、予約なしだと長時間待つことになりかねません。また、予約した診察時間は守るようにしましょう。

● 加入している疾病保険で分からないことがあれば

公的保険GKVであれば疾病金庫かかかりつけのハウスアルツトに、プライベート保険であれば加入している保険会社にお問合せください。

疾病保険カードと関係する留意点

  • ● カードか番号をいつも持ち歩きましょう
  • ● ドイツ国外での適応があるか一度確認を
  • ● 住所変更は速やかに連絡を
  • ● 紛失したらすぐに届ける
  • ● 外来受診は必ず電話予約をしてから

プライベート保険への家族の加入について

● 家族の加入は無料ではありません

収入がない配偶者、子供の扶養家族の場合も保険料は別途必要です。そのため、配偶者の片方が公的保険に加入しているという場合もあります。

最終更新 Dienstag, 06 Juni 2017 09:34
 

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