特集


リヒャルト・ワーグナー 生誕200周年

19世紀オペラ界の巨匠リヒャルト・ワーグナー生誕200周年

今年、オペラをはじめ数々の名曲を生み出した、
19世紀を代表する音楽家リヒャルト・ワーグナー
(1813年5月22日-1883年2月13日)の
生誕200周年を祝って、故郷ライプツィヒと
彼自身のための祝祭場がある
バイロイトを中心に各地でイベントが行われている。
バイエルン国王ルートヴィヒ2世や
アドルフ・ヒトラーを心酔させた彼の作品は、音楽を超えた思想。
今なお色あせることなく議論の的になるワーグナーの魅力に、
この機会に触れてみよう。

リヒャルト・ワーグナー 生誕200周年

イベント情報

オペラ恋愛禁制、またはパレルモの修道女
Das Liebesverbot oder Die Novize von Palermo

ワーグナーがまだ指揮者としての修業に身を置いていた21歳のときに作曲したオペラは、シェークスピアの戯曲『尺には尺を』を基にした喜劇。演奏は、ゲヴァントハウス。

2013年9月29日(日)~2014年5月28日(水)
Oper Leipzig
Augustusplatz 12, 04109 Leipzig
www.oper-leipzig.de

オペララインの黄金
Das Rheingold

ワーグナーの代表作は舞台祝祭劇『ニー ベルングの指環』。音楽史上最大規模といわれる4部作のうち、初日に公演される「序夜」に当たるのが、この『ラインの黄金』。

2013年11月30日(土)19:30~
Staatstheater Nürnberg - Opernhaus
Richard-Wagner-Platz 2-10, 90443 Nürnberg
www.staatstheater-nuernberg.de

映画+コンサートワーグナーのサイレント映画を生演奏で楽しむ
Live-Musik zu dem Stummfilm Richard Wagner

1913年に、ワーグナーの生誕100周年を記念して作られたワーグナーの作曲家人生を描いたサイレント映画。今年、100年前の記憶を再びよみがえらせる。

2013年10月6日(日)19:30~
Stadthalle Bayreuth, Großes Haus
Ludwigstraße 31, 95444 Bayreuth
www.wagnerstadt.de

展覧会ターンホイザーの歌合戦の由来
Wie der Tannhäuser zum Sängerkrieg kam

オペラ『タンホイザーとヴァルトブルク の歌合戦』の舞台となった、アイゼナハ郊外にあるヴァルトブルク城(世界遺産) で、このオペラ誕生にまつわる特別展を開催中。

2014年3月31日(月)まで
Wartburg-Stiftung Eisenach
Auf der Wartburg 1, 99817 Eisenach
www.wartburg.de

2013年バイロイト音楽祭レポート 中村真人

筆者は2003年からバイロイト音楽祭のチケットを毎年申し込み続けてきた。「外れても、とにかく送り続けることよ。それが大事」と知人のワグネリアンの方に諭され続けて早10年、今年ついに「当選」の通知が届いた。奇しくもワーグナーの生誕200周年というメモリアルイヤー。その中で一番の注目を集めた「ニーベルングの指環」新演出を体験することができた。

Bayreuth
生誕200年で沸いたバイロイト祝祭劇場

「ニーベルングの指環」は4夜に分けて上演される、音楽史上稀に見る大作だ。記念すべき年の新演出を任されたのは、ベルリンのフォルクスビューネで長年芸術監督を務めるフランク・カストルフ。旧東独出身のカストルフは、指環をめぐる物語を米国やロシアといった超大国による「石油」をめぐる争いに置き換えた。「ラインの黄金」は米国の「ルート66」のガソリンスタンドとモーテル、「ワルキューレ」ではアゼルバイジャンの油田が舞台という具合に。「ジークフリート」の後半では、ベルリンのアレクサンダー広場が登場する。殺伐とした情景の中で、ジークフリートがカーニバルのパレードから飛び出したかのような派手な衣装をまとった森の小鳥と出会うシーンは、とても印象的だった。

ところがその後、「事件」が起こる。ようやく出会ったジークフリートとヒロインのブリュンヒルデが愛の歓喜を歌い上げるのだが、どうもお互いにあまり関心を持っていない様子。しかも、そこになぜか2 匹のワニが現れて、森の小鳥を食べてしまう。何時間も堅い椅子に座って聴き続けてきたワグネリアンにとって、普通ならば一番のカタルシスを味わうシーンだけに、最後の音が鳴り止むと、かつて体験したことのないほどのブーイングが劇場内に飛び交った。

オペラの休憩中、ワーグナー研究家の北川千香子さんにお会いした。北川さんは、2005 年から会場係の仕事をしながらこの音楽祭と関わり続けている。お話 の中で印象に残ったのは、バイロイトに来てすぐの頃に出会ったというクリストフ・シュリンゲンジーフ演出の「パルジファル」のこと。「とても『変な』演出の舞台で、評判も悪かったんです。でも、即興性が豊かで、観る度に違うことが起こる。一体、演出家は何を意図して、あの舞台を作ろうとしたのか考えていったんです」。

北川さんはそれを機に「パルジファル」をテーマとする博士論文を書き上げた。「実験工房」の色が濃いバイロイトにおいて、ブーイングが起こるのはさほど珍しいことではないが、彼女の場合、その強烈な印象が立ち止まって考えるきっかけになったのだ。

最終日「神々の黄昏」の最後では、ニューヨークの証券取引所が目の前に現れた。結局、石油との関連性は不明確なままだったが、カストルフが込めようとしたであろう社会主義国家の理想と挫折、忘却。そして大国間の利権争い。それは、冷戦後の今も根本においてそう変わっていないのではないかと思わせる妙 なリアリティーを残し、幕は閉じられた。

ところで今回、知人のワグネリアンのお孫さん、アダム君がバイロイト音楽祭に「デビュー」を果たした。5歳のアダム君は幕間に、好奇心たっぷりに周囲に 質問を投げ掛け、約6時間の「ジークフリート」を最後まで見通した。舞台だけでなく、聴衆側にも新しい風あり。ワグネリアンはこうして次の世代へと受け継がれてゆく。

ワーグナーの生誕250年の頃には、アダム君は55歳。私は果たして生きているのか微妙な年代だ。その頃、世界はどうなっていて、指環は何に置き換えられているだろう。緑豊かなこぢんまりとしたバイロイトの町で、世の行く末に思いを馳せる。世界の生成と崩壊を描いたワーグナーの芸術には、そんな壮大な思いに至らせる何かがある。

最終更新 Freitag, 12 Juli 2019 13:04
 

ドイツ街めぐり9 エコ&社会派をキーワードにめぐるミュンヘン

ドイツの街めぐり エコ&社会はをキーワードにめぐるミュンヘン

「よく働き、豪快にビールを飲み、
サッカー狂で、オープンカーに乗るのが好き」
──ミュンヘンっ子の特徴を地元の人に尋ねると、こんな答えが返ってきた。
今、バイエルン王国時代の興隆に
負けず劣らずの好景気に沸くミュンヘンでは、
土地の伝統を重んじる姿勢と、
常に新しいものを求める好奇心が上手く調和している。
そんな街だからこそ、「エコ」や「社会性」といった概念への関心も高く、
日常生活の様々な分野に行き渡っているようだ。
世界最大のビール祭り「オクトーバーフェスト」を訪れたならば、
併せて「エコ&社会派」観光はいかが?
(編集部:林 康子)

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食品 Lebensmittel

1.  農場直送販売のチェーン店
Herrmannsdorfer Landwerkstätten

Herrmannsdorfer Landwerkstätten農場直送の新鮮な農産物を販売するホフラーデン(農家直 営店)は、ドイツ各地に存在する。その規模を大きくし、チェーン展開をしているのが「Herrmannsdorfer」。ミュンヘン市内と周辺地域にある12軒の店舗には、肉類から乳製品、パン、ビール、コーヒーまで、伝統的な農法に則って作られたビオ食材が並ぶ。食材はすべて、同市の南東約30km の町グロンにある広大な独自の農場とバイエルン州内80の提携農場から直送されたもの。パンやソーセージ、 惣菜、レトルト食品については原材料名をすべて表示したカタログがあり、買う方も安心だ。ヴィクトゥアリエンマルクト店には、腕利きのシェフが同店お勧めの食材を使って作るランチを堪能できるビストロが併設されている。

9:00-18:30 土8:00-16:00 ※日祝休み
Frauenstr. 6, 80469 München
最寄駅: S / U3、6 Marienplatz
Tel: 089-263525
www.herrmannsdorfer.de

Tushita Teehaus2.  お茶の効能を大切にする
ティーショップ Tushita Teehaus

木の温もりが感じられる明るい店内の壁面ラックに、日本や中国、インドなど、アジアのお茶や急須、湯のみなどがセンスよく置かれている。東洋医学に精通したザンデーさんが、理論を実践に移したいと考え、オープンしたティーショップ兼サロンは今年で5年目。自然栽培を行っている各地の小規模農家から直接取り寄せているお茶は、約150種類に上る。「お茶は、味はもとより、その効能がより大事」と語るザンデーさんが、天候や体調、ゲストの気分に合わせて飲む べきお茶をアドバイスしている。サロンではお茶と共に、その日の天 候に合わせて1品だけ作られるヴィーガン料理のほか、純植物性の砂 糖を使ったグルテンフリーのケーキやデザートが味わえる。

9:00-20:00 土10:00-20:00 ※日祝休み
Klenzestr. 53, 80469 München
最寄駅:U1、2、7 Fraunhoferstraße
Tel: 089-18975594
http://tushita.eu


3. オンラインショップから始まったヴィーガン専門店
  radix – Einkaufsmarkt

radix – Einkaufsmarktドイツ国内初のヴィーガン専門オンラインショップとして「radix」 が誕生したのは1997年のこと。年々高まっていた「お店があったら……」との声に応える形で2008年、食料品から書籍、コスメ、洗剤、服、靴まで、約5000点のヴィーガン関連商品を扱うお店がオープンした。環境科学者である店長アンドレさんの理想は、営利主義一辺倒から脱却し、健康と環境保護を両軸に据えた持続 可能な消費生活。それを実現すべく、販売品にアレルギー性物質の有無を示すマークを付けるなどの工夫を施している。毎週土曜には、毎回1つの食品を取り上げて試食&説明会を開催。

9:30-20:00 土9:30-16:00 ※日祝休み
Thalkirchner Str. 88, 80337 München
最寄駅:U3、6 Goetheplatz
Tel: 089-12477811
www.radixversand.de

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カフェ&レストラン Cafés & Restaurants

PAVESI PICNIC4. 健康と地球環境のことを考えた食事を
 PAVESI PICNIC.

ミュンヘン有数の人気ストリート、テュルケン通 りにあるビオ・レストラン。オーナーのヘルレさんが、「良い1日は美味しい食事から」というポリシーに則り、アユールヴェーダ料理を中心に「メイン=肉、付け合せ=野菜」のパターンを逆転させた無添加料理を考案、提供している。「世界に通用する料理に近付けたい」と語るヘルレさん。そこに込められているのは、ただ単に一流の味を目指すのではなく、健康や自然環境など、地球全 体にとって最適な食事をできるだけ多くの人々に届けたいという想い。だからこそ、手の込んだ料理もリーズナブルな価格に設定し、テイクアウト用のパッケージも燃やすとエネルギーに変わる素材を使うなど、徹底してエコにこだわっている。

10:00-20:00 土10:00-18:00 ※日祝休み
Türkenstr. 61, 80799 München
最寄駅:U3、6 Universität
Tel: 089-23545045
www.pavesipicnic.de


5. 若者を支援する職業訓練レストラン
 Roecklplatz – Das Ausbildungsrestauran

Das Ausbildungsrestauran

家庭や生活環境に問題を抱えるなど、社会的に不利な立場に置かれている若者たちにとって、職業生活 に入るきっかけを掴むのはとても難しいこと。このレストランは、そんな若者たちに職業訓練の機会を提供することで、彼らの持つ個性や潜在能力を引き出すべく活動するミュンヘンの青年支援団体「hdkj e.V.」と、その主旨に賛同した現オーナーのフォルスターさんが2008年に立ち上げた社会プロジェクトだ。社会教育学者とトレーナーによる指導の下、常時10人の職業訓練生が調理や給仕の仕事に携わっている。高級感溢れる店内、心配りの行き届い たサービス、洗練された創作モダン料理の三重奏がお腹も心も満たしてくれる場所。晴れた日は開放感溢れるテラス席が人気。

17:30-01:00  ※日祝休み
Isartalstr. 26, 80469 München
最寄駅:U3、6 Goetheplatz
Tel: 089-45217129
www.roecklplatz.de

Biergarten am Muffatwerk6. ビオ・ビールが飲めるビアガーデン
 Biergarten am Muffatwerk

イザール川沿いの一大きなイベント施設 「Muffatwerk」に併設されている、ミュンヘン市内で唯一、エコ認証を受けているビアガーデン。定番のホフブロイハイスやバイ エルン州ノイマルクトのラムズブロイ醸造所 (Lammsbräu)のビオ・ビールをはじめ、コーヒーなどその他のドリンク、そしてサラダやソーセージ、シュニッツェルまで、ビールのお供に欠かせないメニューもオーガニック食材で揃えている。中でもお勧めなのが、1日に何度も入荷してはすぐに売り切れる焼き立ての巨大ブレッツェル。外は香ばしく、中はほわっとやわらかく、思わず頬が緩む絶品だ。天気の良い日は毎日夜遅くまで営業しているので、夏場はイザール川でひと泳ぎしてから喉を潤しに立ち寄る人が多いとか。

12:00~ ※悪天候の日は休み
Zellstr. 4, 81667 München
最寄駅:S Isartor / Rosenheimerplatz
Tel: 089-45875073
www.muffatwerk.de/de/pages/biergarten

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ショップ Shops

7. 布おむつクリーニングを提供するベビー用品店
 Natur & Kind – Windelservice München

Natur & Kind

紙おむつの環境への負荷が懸念される中、エコな布おむつが再注目されている。そこに目を付けたのが、このベビー用品店。お店へ出向かなくても、同店のスタッフが自宅まで1週間に一度、使用した布おむつと洗濯された おむつを交換しに来てくれる「布おむつクリーニング・サービス」を行っているのだ。この試みはミュンヘン初。布おむつには購入時に番号が振られるので、ほかの赤ちゃんのものと混同される心配もない。その他、店内にはオーガニックコットン製のベビー服や赤ちゃんの体に有害な物質を一切使っていないベビーカー、おもちゃなど、ここにしかない商品がたくさん。

10:00-19:00 土10:00-16:00 ※日祝休み Plinganserstr. 6, 81369 München
(Am Stemmerhof)
最寄駅:S3、6 Implertraße
Tel: 089-12022897
www.windelservice-muenchen.de

Veganista8. ヴィーガン・ファッション
Veganista

ヴィーガニズムを実践できるのは、食事だけじゃない!身に着けるものにも自然・動物保護の観念を取り入れたいと考えたヴィーガン、レーヘル・ゴルトナーさんが昨年オープンしたばかりのコンセプトストアには、流行を抑えつつも、いつの時代も色褪せない、ファッション性の高い服や靴、アクセサリーが揃う。そのほとんどが、厳格なオーガニック・テキスタイル基準であるGOTS の認証を受けたものや、フェアトレードを採用しているのだそう。中には、消防用ホースをリサイクルしたバッグやベルトなど、ユニークなアイテムも。ショッピングの合間や後には、お店の窓際のソファに座って豆乳カプチーノやゴルトナーさんお手製のスイーツをいただくことができる。

11:00-19:00 土11:00-16:00 ※日祝休み
Barer Str. 36, 80333 München
最寄駅:U 3、4、5、6 Odeonsplatz
Tel: 089-95444895
http://veganista-muc.de


Vier Werkstätten9. 地元デザイナーによるアイテムが満載
Vier Werkstätten

子どもを持つ4人の女性が家事や子育てをしながらでも経営できるよう共同で始めたという、その名も「4つの工房」。広々とした店内に、和紙からフェルト小物、 文具、キッチン用品、照明インテリア、テーブル、食器、衣服、靴まで、実に様々 なアイテムが並ぶ。大の日本好きである現在のオーナー、トラクスラーさんいわく、「美しい和紙を売り始めたら、はさみが必要だと思って、上質なはさみを置いたの。そして、そのはさみを作る会社が包丁も扱っていると知って……」という具合に品数が増えていったのだとか。商品の多くは彼女自身のほか、ミュンヘ ンと近郊のデザイナーが手掛けたもの。どれも、大量生産品にはない、デザイナー の心意気が伝わる作品ばかりだ。

11:00-19:00 土11:00-16:00 ※日祝休み
Fraunhoferstr. 20, 80469 München
最寄駅:U1、2、7 Fraunhoferstraße
Tel: 089-20244140


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ガウティンガーホーフ美門食料品店炉端居酒屋

最終更新 Freitag, 20 September 2013 16:29
 

ドイツワインの魅力を再発見!

ドイツワインの魅力を再発見!

ぶどうを育て、最高の一滴を得る。ドイツのワイン生産者たちは、ぶどう栽培には厳しい気候の中で豊かなワイン文化を育んできた。ワイン用ぶどうの総栽培面積は、約10万ヘクタール。この中に13の生産地域を抱え、それぞれに個性的なワインを生み出している。生産量に限りがあるため、国外にはなかなか出回らない最上級のワインは、ドイツでこそ知りえる極上の味。進化を続けるこの国のワインの本当の魅力にひとたび出会えば、あなたもドイツワインの虜に……。
(編集部:高橋 萌)

ドイツワインの産地マップ

13地域のワイン生産量

  • 01アール Ahr

    アール生産量:5万2051hl

    赤ワインの楽園

    約560ヘクタール、国内最小のワイン生産地域アールは、ドイツの赤ワイン生産の最前線。
    主なぶどうの品種
    ● シュペートブルグンダー
    ● フリューブルグンダー
    ● ポルトギーザー
    www.ahrwein.de
  • 02モーゼル Mosel

    モーゼル生産量:132万7959hl

    ドイツ最古のワイン生産地域

    モーゼル川、ザール川とルーヴァー川流域に広がるこの地域は、高級ワインの産地としても知られる。
    主なぶどうの品種
    ● リースリング
    ● ミュラー・トゥルガウ
    ● エルブリング
    www.ahrwein.de
  • 03ミュテルライン Mittelrhein

    ミュテルライン生産量:3万5997hl

    ロマンティックな景観と
    ワインを楽しむ

    世界遺産に登録されているライン川中流域では、白ワイン、特にリースリングの生産が盛ん。
    主なぶどうの品種
    ● リースリング 
    ● ケルナー ● ミュラー・トゥルガウ
    www.mittelrhein-wein.com
  • 04ラインガウ Rheingau

    ラインガウ生産量:22万8381hl

    リースリングの里

    リースリングの原産地とも言われる ラインガウは、高級ワインの産地と して世界にその名を轟かしている。
    主なぶどうの品種
    ● リースリング
    ● シュペートブルグンダー
    www.kulturland-rheingau.de
  • 05ナーエ Nahe

    ナーエ生産量:27万hl

    ドイツ南西部の宝石

    ナーエ川とその支流に広がるこの 地域は、変化に富んだ土壌が多彩 な味わいのワインを生み出す。
    主なぶどうの品種
    ● リースリング
    ● ミュラー・トゥルガウ
    ● ケルナー
    www.weinland-nahe.de
  • 04ラインヘッセン Rheinhessen

    ラインヘッセン生産量:265万8417hl

    ドイツ最大のワイン生産地域

    リースリングの原産地とも言われる ラインガウは、高級ワインの産地と して世界にその名を轟かしている。
    主なぶどうの品種
    ● リースリング
    ● シルヴァーナー
    ● シュペートブルグンダー
    www.rheinhessenwein.de
  • 07プファルツ Pfalz

    プファルツ生産量:174万1720hl

    ドイツワイン街道が通る地域

    ワインの生産と共に豊かな食文化も発展した地域。ワイン街道沿いでは、ワイン祭りも多数開催。
    主なぶどうの品種
    ● リースリング
    ● ミュラー・トゥルガウ
    ● ケルナー
    www.pfalz.de
  • 04ヘッシッシェ・ベルクシュトラーセ Hessische Bergstrasse

    ヘッシッシェ・ベルクシュトラーセ生産量:265万8417hl

    一番早く春が訪れる
    ドイツワインの産地

    オーデンの森に隣接するこの地域は「ワインと花の街」ベンスハイムを中心に、温暖な気候。
    主なぶどうの品種
    ● リースリング
    ● ミュラー・トゥルガウ
    ● シュペートブルグンダー
    www.bergstraesser-wein.de
  • 09バーデン Baden

    バーデン生産量:136万9403hl

    全長400キロ、ワイン三昧

    ドイツ最南端、「ブルグンダー種の名産地」として知られ、赤ワイン用ぶどうの栽培面積は国内最大。
    主なぶどうの品種
    ● シュペートブルグンダー
    ● ミュラー・トゥルガウ
    ● リースリング
    www.badischerwein.de
  • 10ヴュルテンベルク
    Württemberg

    ヴュルテンベルク生産量:99万7076hl

    赤ワインの故郷

    ネッカー川とその支流、ボーデン湖沿いに広がるドイツ最大の赤ワインの産地。
    主なぶどうの品種
    ● トロリンガー
    ● ザムトロート
    ● フリューブルグンダー
    www.wwg.de
  • 11フランケン Franken

    フランケン生産量:35万8688hl

    ボックスボイテルが特徴的

    ボックスボイテルと呼ばれる特徴的なボトルに入った上質な白ワインが世界のワイン通を唸らせる。
    ボックスボイテル※撮影協力:デュッセルドルフの
    「D'VINE Restaurant & Weinbar」

    主なぶどうの品種
    ● シルヴァーナー
    ● リースリング
    ● バフース
    www.frankenwein-aktuell.de
  • 12ザーレ・ウンストルート
    Saale-Unstrut

    ザーレ・ウンストルート生産量:5万5300hl

    1000年の歴史を誇る
    ワイン文化

    ザーレ川とウンストルート川流域では、およそ1000年前からぶどう園が存在したと文献にある。
    主なぶどうの品種
    ● ミュラー・トゥルガウ
    ● シルヴァーナー
    ● リースリング
    www.natuerlich-saale-unstrut.de
  • 13ザクセン Sachsen

    ザクセン生産量:2万3425hl

    ドイツ最北のワイン産地

    エルベ川沿いの斜面にワイン畑が広がる。陶磁器で知られるマイセンが、当地のワイン発祥の地。
    主なぶどうの品種
    ● ミュラー・トゥルガウ 
    ● リースリング
    ● ヴァイス&グラウブルグンダー
    www.badischerwein.de


ドイツワインを楽しむためのキーワード

エチケット(ラベル)は、ワインの履歴書のようなもの。エチケットを読み解けば、産地や生産者、ぶどうの品種や味の傾向、品質等級など、ワインボトルに詰まったこだわりが一目瞭然!

代表的なドイツワインの種類

Weisswein
白ワイン
ロートリンク Rotling
ロートリンク
赤ぶどうと白ワインを圧搾して造る
赤ワイン Rotwein
赤ワイン
白ワイン Perlwein
パールワイン
ワインに炭酸ガスを注入したワイン
白ワイン Roséwein / Weissherbst
ロゼワイン
白ワイン Sekt
ゼクト
スパークリングワイン
秋限定! Federweißer
フェダーヴァイサー
ワインになる前の発酵途中の飲み物

品質等級

品質等級

味の傾向

Trocken 辛口
Halbtrocken / Feinherb 中辛口
Lieblich / Halbsüß やや甘口
Süß 甘口

その他、特別な表記

Classic 辛口ワイン(Prädikatswein)
Selection 最高級辛口ワイン(同上)
Großes Gewächs / Erstes Gewächs /Erste Lage 
一級畑から造られるワイン

極上のワインと出会う

特別な日にはちょっと奮発して、最高級のワインを味わってみませんか?
老舗ワイナリーのみならず、若手醸造家の台頭著しいドイツで高い評価を受けた、
今まさに旬のワインの探し方。

品評会で賞を受賞したワインを検索!

州単位での品評会で評価され、ドイツ全国品評会で金・銀・銅を受賞したワインを検索。
ワインの種類、産地、ヴィンテージなど、細かく検索条件を設定できる。
www.wein.de/2013weine.0.html

ゴー・ミヨのドイツワインガイド2013をチェック!

グルメ雑誌として知られるゴー・ミヨが毎年出版しているガイド「Gault&Millau WeinGuide Deutschland」。最高評価の「5房」を獲得すると、世界トップレベルのワイナリーと認められる。ドイツでは、モーゼルのエゴン・ミュラー醸造所、ラインガウのロバート・ヴァイル醸造所など、およそ10の醸造所が「5房」の評価を得ている。2013年の醸造者賞は、Weingut Dr.Hegerのヨアヒム・ヘーガー氏が受賞。
http://gaultmillau.de/weinguide

ワイナリーと出会う

ドイツ各地で開催されるワイン祭りや、ワイナリー が主催するオープンデーに参加すると、造り手と一緒にワインを選べ、希少なワインと出会える確率も高い。宿泊施設を提供している醸造所でのワイナリーステイも特別な体験に……。
※下記サイト内で、キーワード「ワイン祭り」を検索
www.germany.travel/jp

シュトラオホ一家の伝統と革新、生み出す極上の味
Weingut & Sektkellerei Dalbergerhof Strauch

ラインヘッセンの南に位置するヴォンネガウに、1545年から続く醸造所「ダールベルガーホーフ・シュトラオホ」がある。ここは、日照時間が年に1600時間と温暖な気候に恵まれ、国内でも特に多種多様なワインが造られることで知られている地域。その景観の美しさは、英雄叙事詩『ニーベルンゲンの歌』でも雄弁に語られている。

1. すべての畑がオーガニック農法。丁寧にぶどうを育てる
2. シュトラオホ一家は、ワイン醸造と経営のエキスパート集団
3. 静かに出荷のときを待つワイン
4. バリック(木樽)の中で、ワインを熟成

伝統と革新は家族の絆で守られる

「ミルクとハチミツが流れる地」という異名を持つほど豊かな大地に、17ヘクタールのぶどう畑を所有するシュトラオホ一家は、 力強いボディーの本格的な赤ワインを生み出すカベルネ・ソー ヴィニヨン、メルロー、レゲント、アコロンなどの品種のみならず、すっきり辛口の白ワインに最適なリースリング、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、グラウ・ブルグンダーなどの品種を、オーガニック農法で栽培。ワインとゼクト、高級ブランデーを生産し、 品評会受賞の名ワインを多数生み出している。  

現在の当主であるハインフリート&ドリス夫妻は、「私たちは、確固たる信念を持って家族経営を続けています。祖父も孫も、世代を超えて1つのチームとして結束し、お互いに足りないものを補い合い、学び合うことの大切さを知っています」と、3世代、9人の家族が醸造所で重要な役割を担っていることを誇りに思っている。

ストーリーのあるワイン

老舗の伝統と職人の技を守りつつ、最新の技術や手法も積極的に取り入れ、ワイナリーの個の魅力を持つワインを造る。中でも、プレミアムブランド「Kurfürst von Dalberg」は、バリック(ワイン用木樽)でワインを熟成させ、特別な味を引き出している。熟成させる場所は、外部の影響を遮断するために作られた50㎡のピラミッドの中というこだわりよう。  

「各ヴィンテージに歴史と個性があり、『ストーリー』があります。そして我々の哲学、家族の絆が、そのストーリーにさらなる深みを与え、ワインを特別なものにしていると信じています」。 ボトルには、シュトラオホ家の情熱が詰まっている。

おすすめのワイン

2011 Plateau Gewürztraminer süß Kurfürst von Dalberg
(Mundus Vini BioFACH 金賞受賞 2013年2月)

2011 Plateau Gewürztraminer süß Kurfürst von Dalberg ゲヴュルツトラミネール(白ぶどう品種)の甘さを楽しむ、特別なワイン体験。明るいゴールドに輝く白ワインから立ち上る、甘い果実味と ローズの香りを存分にお楽しみください。1本10ユーロ。
※8-10℃でお飲みください。

Kurfürst von Dalberg
Weingut & Sektkellerei Dalbergerhof Strauch

Dalbergstr. 14-18, 67574 Osthofen
Tel: 06242- 91 300 0
Fax: 06242- 91 300 20
www.dalbergerhof.de

ワイナリー直営店
Kurfürst von Dalberg
Weinhaus Weinfinde
Bismarckstr. 90, 20253 Hamburg
Tel: 040-54801199 
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※電話、メールは日本語対応

ドイツワインの魅力とは?日本窓口: クラインハーペル美穂さん
実は、こうしてドイツワインのお仕事を手伝わせていただく前までは、スペインワインのファンだったんです。しかし、ドイツワインの繊細さや、ドイツ人の職人気質から来るこだわりに触れ、1つひとつのワインに思い入れがあり、歴史があることを、ダーベルガーホフのワイナリーの主人や家族を通して知りました。ワインの奥深さ、面白さを日々実感しています。愛情を込めて造り上げている様子が、飲んでいても伝わってくるのがドイツワインの魅力だと思います。

ドイツでワイン造りに挑む日本人ワイナリスト
HIDE'S WINE"639" の浅野秀樹さん

ドイツでワイン造りに挑む日本人ワイナリスト

1. 完熟したリースリングは、すべて手作業で収穫する
2. 639を生み出す1ヘクタールの畑
3. HIDE'S WINE"639" の浅野秀樹さん

リースリング── それはドイツワイン界が世界に誇る白ぶどう品種。世界的に見れば決して広くはないドイツのワイン用ぶどうの栽培面積の中で、世界のリースリングの約60%が栽培されていると言う。ひと口に「リースリング」と言っても、その味わいは多彩で、栽培地域の特色、造り手の個性がダイナミックに味わいに影響を及ぼす。そんな繊細で奥深いリースリングの魅力に、どっぷりはまったのが浅野秀樹さん。  

ニアシュタイン村
ニアシュタイン村

浅野さんがオリジナルワインを造っているのは、ラインヘッセンのニアシュタインという村。知る人ぞ知る、リースリング の名産地だ。世界最高級のリースリングを生み出す当地の1級畑「ヒッピング」に、1ヘクタールのぶどう畑を借りている。

神の域を超えないワイン造り

2001年に渡独した浅野さんは、ドイツの栽培・醸造学校を卒業後、2005年にHIDE'S WINE"639" を立ち上げた。自然 と調和するライフスタイルのあり方を求めて、シーカヤックでの遠征など、アウトドアに情熱を傾けていた浅野さんが、ワイン造りと出会ったのは必然のことだったのか、浅野さんに最高のリースリングの造り方を伝授し、惜しげもなく畑の一等地を貸してくれたバルター・シュトゥルブ氏(Weingut STRUB)との縁が運命だったのか、ライン川沿いのこの地で、天職を見付けた。  

ステンレスタンクで熟成中
ステンレスタンクで熟成中

浅野さんが目指すワイン造りとは、「神の域を超えない」もの。 「639を飲むと、ニアシュタインの気候が分かる、そんなワインになると良い」と、自然の力を信じたワイン造りを実践。だか ら、毎年味が変化することもいとわない。「造り手ができること は、ぶどうのポテンシャルを引き出すことだけ」と、ぶどうが育った背景、 気候がそのまま味わいとして表現されるようなワインを生み出す。  

「639は、もちろん僕1人で造ってるわけではなく、スタッフや畑を手伝いに来てくれるたくさんの人の手が掛かっています。大多数の人は、好きで畑仕事を手伝ってくれている。彼らの気持ち、モチベーションの高さが、ワインにも影響を与えていると思います」。究極の1杯ではなく、その年の精一杯を求める誠実な手仕事が、ワインの味を決定付ける。

ドイツワインの現在地

ステンレスタンクで熟成中
タンクがある地下へ続く扉

10年以上ドイツのワイン界に身を置いている浅野さん自身、ここ数年のドイツワインを取り巻く変化を感じている。まず、「気候が良くなって、糖度の高いぶどうが収穫できるようになってきました。だから、辛口でも美味しいワインが造れる」と、環境の変化が1つ。そして、「現代の豊かなライフスタイルの中で育った若い醸造家たちが、ワインにも豊かさを求めるようになってきた」。彼らが、質の高い個性的なワインをドイツで次々に生み出し、小さな革命を起こしている。

おすすめのワイン

2011 Hide’s Wine 639SF
正式名 Niersteiner Hipping Riesling Spätlese feinherb

2011 Hide’s Wine 639SF2011年産の639(写真右)。世界の市場を動かすワイン評論家ロバート・バーカー氏からも高評価を得た。深いコクと豊かな果実味、ニアシュタインの気候が生み出す豊かなリースリングの味わいが広がる。

HIDE`S WINE639
HIDEKI ASANO c/o Weingut STRUB

Rheinstr. 42, 55283 Nierstein
Tel: 06133-573086
www.hide-wine.com 
facebook.com/wine639

最終更新 Freitag, 12 Juli 2019 14:50
 

ドイツ連邦議会選挙に大注目!

ドイツ政治の今後を方向付けるドイツ連邦議会選挙に大注目!

連邦議会選挙来る9月22日、ドイツの下院に当たる連邦議会で
4年に一度の選挙が行われる。
現在、この国は選挙戦の真っただ中。
街中いたるところに選挙ポスターが貼られ、
メディアも各党筆頭候補者の一挙手一投足を
連日報道している。
外国人である私たちに選挙権はないが、
日々の生活に関わってくる政策も盛りだくさん。
せっかくの機会なので、この盛り上がりに便乗し、
日本では体感できないこの国の総選挙を楽しみたい。
そこで本特集では、今回の連邦議会選挙を追うに当たって
抑えておくべきポイントを紹介する。
(構成・文:藤田 さおり)

各政党の特色をおさらい

ドイツ語の新聞で、「Schwarz-Gelb(黒と黄色)」や「Rot-Grün(赤と緑)」などと書かれた見出しに驚かれたことはないだろうか? ドイツでは、これらの色は政党を表しており、ドイツ人がその色を聞けば、政党とその主義主張をまざまざと思い描くのだ。まずは、今回の選挙に出馬する主要政党の色を把握し、その特色をおさらいしよう。


CDU / CSD

キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)

設立年
1945年
現在の党首

CDU: アンゲラ・メルケル Angela Merkel
CSU: ホルスト・ゼーホーファー Horst Seehofer 
主要テーマ

キリスト教の考え方を基本とした政党。市場の調整メカニズムと自由な競争を尊重しつつ、不公平が生じた際には政府が介入する「社会的市場経済」を推し進める。財政出動には消極的で、債務を極力減らすことを目標とし、政府主導型ではなく、企業による完全雇用の実現を目指している。CSUはバイエルン州を代表し、CDUがその他の州を代表しているため、バイエルン州では活動せず、一方のCSUはバイエルン州以外では活動していない。CSUはCDUより保守的と言われている。CSUはCDUの姉妹政党であり、連邦議会においては1つの党として政治活動を行っている。

SPD

社会民主党(SPD)

設立年
1863年
現在の党首
ジグマール・ガブリエル Sigmar Gabriel
主要テーマ

ドイツ最古の政党で、ライプツィヒで設立された。現在はCDU・CSUと並ぶ2大政党の1つ。すべての若年労働者に職業訓練の機会または職場を提供すること、学校や託児施設に十分な資金を提供することを約束している。また、ドイツの教育制度ではセカンダリースクール(日本の中学校から高校に当たる)は大学進学を目指すギムナジウム、職業訓練と教養科目の実科学校と職業訓練を中心とする基幹学校に分かれるが、SPDはこれらを統合した総合学校の導入を目標とするほか、家庭と仕事の両立を重視し、仕事によって家庭生活が犠牲になることを防ぐ政策を目指す。

FDP

自由民主党(FDP)

設立年
1948年
現在の党首
フィリップ・レスラー Philipp Rösler
主要テーマ

「自由主義」「寛容主義」を掲げる政党である。同党の見解では、自由主義とは個人の思想の自由および互いの思想を偏見なく尊重し合うことを意味する。また、寛容主義とは、他人に迷惑をかけない限り、個人が望むように生きることである。政府が人々の生活に干渉し過ぎるのは良くないとの考えから、政府が最低限度の政策をとることで、人々により多くの自由を与えることを目指している。最も重視する政策は、人々に職場と職業教育を提供することである。現在は、連立パートナーという立場で与党として国政に参加し、連邦議会のキャスティング・ボードを握る存在。

Bündnis 90 / Die Grünen

同盟90 / 緑の党(Bündnis 90 / Die Grünen) 

設立年
1980年
現在の党首
クラウディア・ロート Claudia Roth
ジェム・エツデミール Cem Özdemir
主要テーマ

政党名が表す通り、自然と環境保護が緑の党の主張である。出身地、肌の色、宗教の違いを問わず、異なった文化的背景を持つ人々が自由に生活、共存できる社会を目指す。ほかの左派の政党との違いは、脱物質主義を掲げていること。比較的若い政党で、1980年代、チェルノブイリ原発事故や大気汚染、酸性雨問題を機に飛躍的に支持者を集めた。東西ドイツ統一後、1993年より旧東独州の政党「Bündnis 90」が加わり、「Bündnis 90/Die Grünen」と呼ばれるように。1998年にはSPDと連立を組み、政権を握るが、2005年に連立相手のSPDの敗退により与党の座を退く。

Die Linke

左派党(Die Linke)

設立年
2007年
現在の党首
カティヤ・キッピング Katja Kipping
ベルント・リークシンガー Bernd Riexinger
主要テーマ

2005年、当時与党だったSPDによる新自由主義的な政策に党内左派が反対し、離党して「労働と社会的公正のための選挙オルタナティブ(WASG)」を結成。07年に左派党を設立した。旧東ドイツの社会主義統一党(SED)の後継政党でもある。社会主義を主張している点で他党と一線を画す。同党が唱える社会主義とは、人々が自由な生活を送り、貧困に陥る人がいない社会を目指す考え方で、平等な職業教育、就職、医療の機会が与えられること、つまり、社会における機会均等を目指している。東西ドイツ統一から20年以上を経た今もなお、旧東ドイツ地域での支持者が多い。

Piratenpartei

海賊党(Piratenpartei)

設立年
2006年
現在の党首
ベルント・シュレーマー Bernd Schlömer
主要テーマ

すべての市民に平等にデジタルインフラを提供すると同時に、デジタル技術によるリスクとチャンスについて教育を施すことを目指す。また、現在の著作権を時代遅れと考え、著作物の無料コピーや無料使用を推進する。プライバシー保護やベーシック・インカムの導入なども公約の一環。若年層の支持者が多い。

AfD

ドイツのための選択肢(AfD)

設立年
2013年
現在の党首
ベルント・ルッケ Bernd Lucke
主要テーマ

最重要テーマはユーロ問題。現在のユーロ危機問題を解決するため、ドイツはユーロ圏から脱退し、ドイツマルクを再導入すべきと主張する。つまり、ユーロ圏の撤廃を意図しているわけではない。一方、欧州の一員としてドイツが共通市場の維持に努めることには賛成だが、欧州委員会への権限委譲には反対。


現在の連邦議会の構成と連立

戦後の西ドイツでは、1970年代までは穏健保守のCDU・CSUか穏健革新のSPDのいずれかがFDPと連立し、政権を握る政治運営が続いていた。1980年代に入り、緑の党が台頭してくると、CDU・CSU+FDP の中道保守連立(黒黄連立)とSPD+緑の党の赤緑連立のいずれか過半数を制した陣営が政権を握った。どちらの陣営も過半数に満たない場合には、例外的にSPD+CDU・CSU という大連立も成立している。一番近い例では、2005~09年。ドイツ発の女性首相が誕生したのはこの大連立政権下だったのだ。  

前回の2009年選挙では、CDU・CSU の得票率が前々回比1.4%減の33.8%、SPDが11%減の23%、FDP が5%増の15.6%、緑の党が2.6%増の10.7%、左派党が3.2%増の11.9%であった。SPDの大幅な得票率低下によって大連立は解消され、09年より黒黄連立が与党となっている。はたして今回の選挙では、どの党が票を伸ばすのか、そしてどのような連立政権が誕生するのか?

前回の2009年連邦議会選挙後の議席配分
うち超過議席:22議席 
第1投票(候補者への票)による当選者数が、第2投票(政党への票)によって決まる比例代表制による割り当て議席を上回った場合、「超過議席」として第1投票による当選者の議席は確保される。
無党派:1議席

出典:www.bundestag.de/bundestag


各政党の筆頭候補と選挙公約

各政党の基本的なテーマや主張はP11で記述した通りだが、実際の政策方針に関わるマニフェスト(選挙公約)では、もう少し現実に即した主張へと変更されている場合が多い。特に政権を握る可能性の高い主要政党では、その傾向が顕著で、具体的な数値を挙げている場合もある。ここで、主な争点を税・財政、エネルギー、家族の3つの政策に絞り、各党の選挙公約を見てみよう。

CDU・CSU

Gemeinsam erfolgreich für Deutschland.
公約タイトル:ドイツために共に成果を

筆頭候補者

アンゲラ・メルケル アンゲラ・メルケル
Angela Merkel

1954年7月17日生まれ、59歳。ドイツ連邦共和国現首相。2000年よりCDU党首、2005年より連邦首相を務める。女性として初のCDU党首であり、首相である。東ベルリンの科学アカデミーで博士号を取得。ベルリンの壁崩壊後、政界へ進出。

税政財政

次期政権期に財政均衡を達成し、債務を国内総生産(GDP)の60%に抑えることを目指す。増減税は行わない。被雇用者の所得の増加が、インフレ率の上昇を補うに足りても、所得税率がインフレ上昇率に合わせて変更されないために生じる「冷たい累進課税」については、その撤廃を検討する。脱税の克服を目指し、国際的な情報交換の改善を促進する。

エネルギー政策

再生可能エネルギーへの転換方針については賛成で、そのための安定した枠組みが必要と考える。同時に、エネルギー価格は競争力を保つものでなければならない。省エネ対策として、2020年までに家庭のエネルギー消費を20%、電力消費量を10%削減する。そのため、省エネ家電や暖房、断熱材などに税制上の優遇措置を講じる。

家族政策

28カ月まで受給可能な「部分両親手当」を導入し、親の育児休暇の取得時期に幅を持たせる。連邦が州に対し、託児所増設のための追加費用として5億8050万ユーロ、運営費として年間7500万ユーロの助成金を支給する。育児中の親がパートタイムからフルタイムの職へ復帰しやすくするため、「祖父母の育児休暇(Großelternzeit)」の導入を検討する。


SPD

Das WIR entscheidet.
公約タイトル:我々が決断すること

筆頭候補者

ペール・シュタインブリュック ペール・シュタインブリュック
Peer Steinbrück

1947年1月10日生まれ、66歳。2005~09年に連邦財務相を務める。それ以前はノルトライン=ヴェストファーレン州の首相であった。政治活動以外の副収入問題が報じられ、それに対する発言で党内部からも批判を受けるなど、話題に尽きない人物。

税政財政

金融市場での無責任な投機が欧州における債務増加を招いたとして、金融取引税など、金融市場に対する厳格な規定を設ける。増税を行い、教育やインフラ への投資を強化する。年10万ユーロ(夫婦の場合は年20万ユーロ以上)の収入に対する所得税率を42%から49%へ引き上げる。資産収入に対する税率を現行の25%から32%にする。

エネルギー政策

エネルギー省を設立する。再生可能エネルギーの価格を抑えるため、電力税引き下げなどによって個人や企業への負担を減らす。このような政策とエネルギー効率を高める技術開発が、今後のエネルギー政策転換の成否の鍵を握ると考える。再生可能エネルギー法(EEG)の改正を行い、オフショア風力発電などへの設備投資を行う。

家族政策

低・中所得世帯の支援策として、月収が3000ユーロまでの子どものいる家庭に対し、現行の月184ユーロの児童手当に加え、月140~324ユーロの追加手当を給付する。夫婦単位課税制度を改正し、夫婦各々に同じ税率で課税する。また、夫婦が仕事のキャリアを犠牲にすることなく、互いに期間限定で就労時間を短縮できる方法を検討する。


同盟90 / 緑の党

Zeit für den grünen Wandel
公約タイトル:緑の転換期

筆頭候補者

同盟90 / 緑の党ユルゲン・トリッティン(右)
Jürgen Trittin
カトリン・ゲーリング=エッカート(左)
Katrin Göring-Eckardt

党内の派閥のバランスを取るため、2人を選出している。トリッティンは1954年7月25日生まれ、59歳。1998~2005年にシュレーダー(SPD)政権下で環境・自然保護・原子力安全相を務めた。大学在学中には、共産主義の連盟に所属していたという左派。ゲーリング=エッカートは、1966年5月3日生まれ、47歳。同じくシュレーダー政権時代に党院内総務を務め、労働市場(ハルツ)改革の実現に向け、党内の調整役を務めた現実主義派。

税政財政

高額所得者に対する増税による社会的公正の実現を掲げる。基礎控除額を現在の8130ユーロから8700ユーロへ引き上げる。所得税の最高税率は、6万ユーロの年収で45%、8万ユーロの年収で49%とする。一方、年6万ユーロ以下の所得層に対しては、負担を軽減する。

エネルギー政策

温室効果ガスの排出量を1990年比で2020年までに40%、50年までに95%削減することを盛り込んだ気候保護法の採択を目指す。2030年までに、すべての電力供給を再生可能エネルギーで賄う。家庭や中堅企業の負担を減らすため、大企業に対する寛大な賦課金の減免措置を見直す。

家族政策

現政府が導入した在宅育児手当を廃止し、親が子どもを託児所に預ける権利や全日制託児施設の拡充を図る。子どものための助成金や税控除措置を包括する「子ども基礎保障」を導入することにより、親の収入額にかかわらず、すべての子どもが国から同等の経済的支援を受けられるような環境を整備する。


左派党

100% SOZIAL
公約タイトル:100% の社会主義

筆頭候補者

100% SOZIALグレゴール・ギジ(左)
Gregor Gysi
ザーラ・ヴァーゲンクネヒト(右)
Sarah Wagenknecht

ギジは1948年1月16日生まれ、65歳。1968年に東ドイツのドイツ社会主義統一党(SED)に入党。東西統一後は同党の流れを汲む民主社会党(PDS)へ。2009年より左派党連邦議会議員団長。ヴァーゲンクネヒトは1969年7月16日生まれ、44歳。PDS党員を経て2007年に左派党入党。現在、左派党副党首兼連邦議会議員副団長。その他、ディートマール・バルチュ(Dietmar Bartsch)やニコール・ゴールケ(Nicole Gohlke)を含む計8人の布陣で挑む。

税政財政

国による富の再分配を促進する。富裕層の金融資産や不動産に対し、5%の財産税を課す。ただし、100万ユーロまでの資産は非課税とする。所得税改革として基礎控除額を9300ユーロに引き上げ、年収6万5000ユーロ以上の場合の所得税率を53%とする。

エネルギー政策

電力供給における再生可能エネルギーの割合を2020年までに50%に引き上げる。温室効果ガスの排出量を1990年比で2020年までに半分に、50年には90%以上削減する。原子力発電所は即時廃止し、石炭・火力発電所も2040年までに完全撤廃する。

家族政策

子どもを貧困から守るため、月536ユーロの「子ども基礎保障」の導入を検討する。第2子までの児童手当を月200ユーロとし、それ以降の子どもに対しても段階的にその額を定める。両親に12カ月(片親の場合は24カ月)の両親手当の請求権を与え、子どもが生後2カ月から満7歳までの間の分割受給も可能とする。


FDP

Damit Deutschland stark bleibt.
公約タイトル:ドイツが強さを維持するために

筆頭候補者

ライナー・ブリューデルレライナー・ブリューデルレ
Rainer Brüderle

1945年6月22日生まれ、68歳。2009~11年に連邦経済・技術相を務める。また、ラインラン ト=プファルツ州FDPの代表を務めたこともある。昨年、シュテルン誌の女性記者に対して性的発言を行っていたことが明らかになった。

税政財政

「課税の制御」を目指す。収入の半分以上が所得税として徴収されないよう基本法を改正する。企業に対しても個人に対しても原則的に増税は行わない。政府の歳入は基本的に資産税、贈与税、相続税のような物質課税に基づくべきではないと考える。旧東ドイツ地域の復興支援のための連帯税を2014年から段階的に減らし、2019年の期限をもって完全撤廃する。

エネルギー政策

エネルギー政策の転換を成功に導く1つの要素である再生可能エネルギーを含むエネルギー市場の再構築のため、EEGの改正を目指す。電力消費量の多い大企業に対する再生可能エネルギー促進のための賦課金の減免措置は、企業が国際競争力を維持するのに必要なものであり、これによって雇用や経済成長が維持される。

家族政策

今年8月より導入された在宅育児手当を改めて見直し、子どもが3歳になるまでの育児に関する質の高い支援案の拡充を検討する。仕事と家庭の両立を容易にするため、フレックスタイム制や在宅勤務を押し進め、フルタイムとパートタイムを企業内で変更しやすくする。両親手当は、特に父親が取得しやすくなるよう、より柔軟化させる。


海賊党

Wir stellen das mal infrage
公約タイトル:我々が問題視すること

筆頭候補者

海賊党州ごとに異なる
連邦レベルでの代表候補は存在せず、 全16州がそれぞれ筆頭候補を挙げている。これは、派閥や「上からの決定」に反対する党方針によるもの。顔ぶれは、IT専門家からエンジニア、学生、心理学者、保育ママまで様々。

税政財政

「課税の制御」を目指す。収入の半分以上が所得税として徴収されないよう基本法を改正する。企業に対しても個人に対しても原則的に増税は行わない。政府の歳入は基本的に資産税、贈与税、相続税のような物質課税に基づくべきではないと考える。旧東ドイツ地域の復興支援のための連帯税を2014年から段階的に減らし、2019年の期限をもって完全撤廃する。

エネルギー政策

エネルギー政策の転換を成功に導く1つの要素である再生可能エネルギーを含むエネルギー市場の再構築のため、EEGの改正を目指す。電力消費量の多い大企業に対する再生可能エネルギー促進のための賦課金の減免措置は、企業が国際競争力を維持するのに必要なものであり、これによって雇用や経済成長が維持される。

家族政策

今年8月より導入された在宅育児手当を改めて見直し、子どもが3歳になるまでの育児に関する質の高い支援案の拡充を検討する。仕事と家庭の両立を容易にするため、フレックスタイム制や在宅勤務を押し進め、フルタイムとパートタイムを企業内で変更しやすくする。両親手当は、特に父親が取得しやすくなるよう、より柔軟化させる。


AfD


筆頭候補者

ベルント・ルッケベルント・ルッケ
Bernd Lucke

1962年8月19日生まれ、50歳。ハンブルク大 学教授で、AfDの共同設立者の1人。ベルリンの壁崩壊後、経済専門家として政府の評議会に参加。後に世界銀行のアドバイザー、ブリティッシュコロ ンビア大学の客員教授を務めた。

税政財政

ドイツは現在、許容範囲を超える債務を負っている。この状況を打破し、財政均衡を維持するため、財政赤字を一定率以下に抑える「債務ブレーキ」を機能させ、債務を削減する。ユーロ救済策のリスクを財政計画に組み込むべきである。税政に関しては、複雑過ぎる現行の租税法の劇的な簡素化を求める。市民は課税の理由と程度を理解する必要がある。

エネルギー政策

支払い可能な電力価格を実現するため、持続可能なエネルギー・コンセプトを 求める。現在の連邦政府による、根拠を欠いた電気料金の値上げは受け入れられない。電気代に賦課金を上乗せする制度を廃止し、再生可能エネルギーの助成には、一般的な税収を充てる。また、どの発電方法が多くの補助金を得ているかを公表する。

家族政策

ユーロ危機が債務超過と金利低下を招き、あらゆる老後の備えが危険にさらされている。現在、ドイツには子どもが少な過ぎるため、年金・健康保険の制度 が根底から揺らいでいる。この国は、子どもと家族に対して優しい国でなければならない。それゆえ、社会の基盤を成す家族に対する支援は、我々の共通の将来への投資であると考える。

参考文献
・各政党のマニフェスト www.bundestagswahl-bw.de
・„ Zur Orientierung Basiswissen Deutschland“ (Hueber 2006)
・小野一 著『現代ドイツ政党政治の変容』 (吉田書店、10.01.2012)

藤田さおり
法政大学経営学部経営学科卒業。ニュルンベルク在住。スイスの日本人向け会報誌にて、PCコラムを執筆中。日本とドイツの文化の橋渡し役を夢見て邁進中。
最終更新 Freitag, 12 Juli 2019 15:47
 

ロマンティック街道を巡る旅

ロマンティック街道を巡る旅 ヴェルツブルク - フュッセン

ロマンティック街道地図ヴュルツブルクからフュッセンまで
全長約410km、28の個性的な街々を繋ぐロ
マンティック街道は、ドイツ一有名な観光地。
この人気街道と日本がパートナーシップを
結んでから、今年でちょうど25年。
日独ロマンティック街道姉妹街道
締結25周年を記念して、
ドイツ・ロマンティック街道の魅力を再発見しよう。
まるで絵画のような街並みを守り続ける街の人々の
情熱と歴史ロマンの息づく場所。
ここを訪れればきっと、ドイツがますます好きになる。
(編集部:高橋 萌)

*写真はクリックで拡大します

ヴュルツブルク
ロマンティック街道の起点

マイン河畔の美しい古都では、キリスト教の司教が輝かんばかりの威光を放っていた時代を振り返ることができる。世界遺産に指定されている大司教が住んでいた宮殿レジテンツ、そして大聖堂やマリエンベルク要塞など見どころたっぷり。ぶどう畑が広がるこの街は、質の高いフランケンワインの産地でもある。

ヴュルツブルクヴュルツブルク

アウグスブルク
ロマンティック街道最大の都市

アウグスブルクローマ皇帝アウグストゥスに由来する街の名 前からもわかる通り、ここはローマ人によって建設されたローマ帝国都市。2000年の歴史の重みと、現代も発展を続ける街のパワーが感じられる。北方ルネッサンス様式の傑作と言われる市庁舎、モーツァルトも一時期を過ごしたという父レオポルトの生家もある。

ネルトリンゲン
隕石が落下した跡にできた街

ネルトリンゲン見事な円形を描く城壁に囲まれた街ネルトリンゲンは、今も中世の街並みをほぼ完全な形で遺している。全長4kmにもわたる城壁は、屋根が付いているちょっと珍しいスタイル。約1500万年 前に隕石が落下してできたと言われる盆地が街の基盤になっている神秘的な場所でもある。ゲオルク教会が街のシンボル。

ヴィースの巡礼教会

ヴィースの巡礼教会
「牧場の奇跡」と呼ばれる教会

世界遺産に登録されている教会は牧場の中に建ち、外観は質素だが、内部は壮麗なロココ様式で装飾された異空間。キリストの像が涙を流したという奇跡が起きたことから、巡礼地として人気が高まり、ドイツ・ロココ様式の完成者として名高いドミニクス・ツィ ンマーマンが、およそ10年の歳月を掛けて完成させた。

フュッセン
ロマンティック街道の終着点

フュッセンドイツで一番人気の観光名所ノイシュヴァンシュタイン城へのアクセスが良く、1年中観光客で賑わうアルプス山麓の森と湖に囲まれた美しい街。もし時間があれば、城見学だけでなく、城の主ルートヴィヒ2世が「南ドイツの宝」と称えた 自然にも目を向けてみよう。リュートやバイオリンの製造地としても有名。

ヨーロッパバスロマンティック街道の旅にはバスがお勧め!
ヨーロッパバス

ヨーロッパバス個人旅行者にとって、実はロマンティック街道は難易度の高い場所。小さな街が点在し、鉄道が通っていない場所もあるのだ。そんな観光客の強い味方がヨーロッパバス。毎年夏季シーズン(4~10月)には毎日運行され、フランクフルト―フュッセンを結ぶ南北、北南便が1日1便。ロマンティック街道28都市とヴィース教会に停車する。

運行期間:10月20日(日)まで毎日運行
フランクフルトを朝8時に出発して南下する便と、
フュッセンを朝8時に出発して北上する便がある
*料金の詳細・予約は下記ウェブサイトより。
www.romanticroadcoach.de
www.romantic-road.com/index.php?id=homepage&L=1(日本語)

写真 © Romantische Straße Touristik-Arbeitsgemeinschaft GbR

ローテンブルク・オプ・デア・タウバー 市壁の門をくぐると広がるおとぎの国

ローテンブルク・オプ・デア・タウバーローテンブルク・オプ・デア・タウバー ローテンブルク・オプ・デア・タウバー
ローテンブルク・オプ・デア・タウバー ローテンブルク・オプ・デア・タウバー ローテンブルク・オプ・デア・タウバー

市民が守る「中世の宝石箱」

中世の時代に時計の針を止めてしまったかのようなローテンブルクの旧市街は、「中世の宝石箱」とも称される景観で訪れる者を魅了する、まさにロマンティック街道の看板娘。鮮やかなパステルカラーに彩られた三角屋根の建物、凝ったデザインの吊り看板は見上げるだけでワクワクしてくる。

ローテンブルクが中世の街並みをほぼ完璧な形で現代に遺しているのは、激動の時代を経て、一度は忘れ去られた街だから。ドイツで北方ルネサンスが花開いた15世紀に帝国自由都市として栄華を極め、フランケン地方第2の規模にまで上り詰めた栄光の歴史は、その後の欧州全土を戦火に包んだ「最後の宗教戦争」と呼ばれる30年戦争(1618〜48年)とペストの大流行により、衰退の歴史に取って代わられる。盛者必衰の理をそのまま表すような残酷な時代の波に飲まれ、19世紀に鉄道が開通して街の文化的価値が再発見されるまで、街は発展の歩みを止めたまま、ひっそりとその姿を留めていた。

観光都市として国内外から注目を集めるようになったローテンブルクを次に襲ったのは第2次世界大戦。空爆を受けて旧市街の40%以上が破壊された。さらに軍を進めようとする米軍に対し、ヒトラーの「最後まで戦え」という指令を無視する形で1945年4月17日、ローテンブルクは降伏。ドイツが敗戦する3週間も前のことだった。戦後、市民はすぐに立ち上がり、米国をはじめ全世界からの寄付を受けて街を再建。ローテンブルクは世界に誇る美しい街並みを取り戻した。

街を守る市民の努力は、丁寧に塗られた鮮やかな壁の色、何度も修復された屋根の様子など、1つひとつの建物を見れば分るように、現在まで続いている。ローテンブルクの観光都市としての輝きは、街を愛する人々のたゆまぬ努力と情熱とに支えられているのだ。

ローテンブルク・オプ・デア・タウバー ローテンブルク・オプ・デア・タウバー ローテンブルク・オプ・デア・タウバー ローテンブルク・オプ・デア・タウバー

観光のポイント

ヨーロッパバスを利用する人は停留所が市壁の中(Schrannenplatz)にあるので、一歩外に出ればそこはもうおとぎの国。ローテンブルク駅からは、徒歩10分ほどで旧市街への入り口であるレーダー門(Rödertor)にたどり着く。まずは、ツーリストインフォメーションがあるマルクト広場(Marktplatz)へ行ってみよう。ここに面した市庁舎(Rathaus)の正面玄関から続く階段を登っていくと、市庁舎鐘塔の展望台(入場料2ユーロ)に行くことができる。狭い階段を登り、最後は垂直なはしごのような階段を越えると、高さ60mからの絶景が広がる。見下ろす景色はまるでおもちゃの国!

ローテンブルク市庁舎のすぐ側にあるクリスマス博物館(Deutsches Weihnachtsmuseum)は、1年中クリスマス雑貨が並ぶケーテ・ヴォールファールト内に併設。その規模の大きさに驚かされる。マルクト広場から真っ直ぐ南下するとたどり着くのが、小さな三角形の広場があるプレーンライン(Plönlein)。ここからの景色は、絵画のような美しさ。外せない撮影スポットだ。旧市街をぐるっと囲む市壁に登り、通路から街を観察したり、西側にある城塞公園(Burggarten)を訪れ、市壁の外からローテンブルクを望むと、また新しい魅力を発見できるはず。

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Meistertrunk

ローテンブルクでは、3.25リットルのワインを飲み干し、街を救ったという英雄のみごとな飲みっぷりを「マイスタートルンク」と讃える。危機にさらされたときに伝説が生まれるのは歴史の常で、1631年10月30日、三十年戦争の真っ只中にあって、プロテスタント側のローテンブルクはカトリック側である皇帝軍のティリー将軍と彼の率いる大軍に包囲され、ついには陥落。街は破壊される寸前という局面で、市民は将軍をフランケンワインでもてなしていた。そのワインを見て、「もしこの大杯のワインを一気に飲み干す者がいたならば、すべてを許そう」と将軍が提案し、命を懸ける覚悟でこの難題に挑戦したのがヌッシュ元市長。10分以上を掛けて大杯を飲み干し、街は救われたというメルヘンのようなお話。9月には当時の様子を再現するお祭りも開かれる。

アップルジュース

※マルクト広場にはマイスタートルンクをモチーフにした仕掛け時計があるが、現在は修復中 (2013年7月現在)。

ディンケルスビュール 川と草地に囲まれたロマンティックな街並み

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街全体が「中世の生きた博物館」

幸運にも戦火に巻き込まれることなく中世の街並みをそのまま今に留めているディンケルスビュールは、「生きた博物館」そのもの。取材で出向いた日は、ちょうど「Kinderzeche」のお祭りが行われており、バスの停留所前の広場にはスウェーデン国旗がはためく野営地が再現されていた。  

この祭りの期間中に限り、旧市街への入場料4ユーロが徴収される。中世の衣装を身にまとった市民に「野営地の中に入ったら、銃で撃たれるか、水をぶっかけられるからね!」と脅されながら、「ようこそ! ディンケルスビュールへ!!」と笑顔で迎えられた。ディンケルスビュール市民が一体となって、中世を再現するこのお祭りの日々は、まさしく生きた中世の博物館を体験できる。子どもたちだって、「毎年、夏休み前のテストが近いこの時期は暇じゃない」けれど、参加を義務付けられている。とは言え、街の歴史を再現する劇やパレードで演じる子どもたちの表情はちょっぴり恥ずかしそうで、でもやっぱり誇らしげ。  

川と市壁によって堅固に守られた旧市街へは、細い橋を渡り、または城門をくぐって入る。石畳の小道が続き、眼前に木組みの建物が広がる。予想を上回る美しさに、思わず足が止まる。ディンケルスビュールの街としての成り立ちは、ローテンブルクよりも早い12世紀にさかのぼるため、中世の街に特徴的な大きな中心広場はまだ都市計画に含まれていない。縦横に伸びる通りに市場が立ち、通商の拠点を担っていたそうだ。  

ディンケルスビュールも、中世の面影を遺すほかの街が辿った運命に違わず、14~15世紀にその繁栄の最盛期を迎えるが、30年戦争で破産状態に陥った。現在、私たちが目にしている街の姿は、14世紀に完成したもの。再び脚光を浴びるまで、400年ほど沈黙を貫いてきたこの街には、確かに静かな中世の暮らしが息づいている。

観光のポイント

馬車鉄道でのアクセスはなく、バス、または車でディンケルスビュールを目指すことになる。シーズン中であれば、ヨーロッパバスを利用。公共交通機関であれば、アンスバッハ(Ansbach)の鉄道駅からバス(所要時間1時間)が出ている。ローテンブルクからは、平日であれば直行バスも運行(所要時間1時間)しているが、土日祝日の移動なら、まずは電車に乗ってシュタイナッハ(Steinach)へ、さらに電車を乗り換えてアンスバッハへ向かい、そこからバスを利用する。旧市街に一番近いバス停「ZOB Schwedenwiese, Dinkelsbühl」で降りれば、旧市街の市壁はもう目の前。

ツーリストインフォメーションは歴史の家(Haus der Geschichte)の中。ヴェルニッツ塔(Wörnitz Tor)は外部からの敵を迎えた歴史の舞台でもある。荘厳なゲオルク教会(Münster St. Georg)はカトリックの教会として重要な文化的価値を持ち、ワイン市場(Weinmarkt)と名付けられた通りに面して、ドイツ一美しい木組みの家との呼び声高いドイチェス・ハウス(Deutsches Haus)がある。市壁に沿って4つの門と14の塔を見て回っても1時間も掛からない小さな街。せっかくだから、のんびりと中世の雰囲気を堪能しよう。

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Kinderzeche

子ども30年戦争中の1632年、ついにスウェーデン軍がディンケルスビュールに侵攻してきた。屈強なスウェーデン軍を前にもはやなす術はなく、街を明け渡す(Stadtübergabe)しかなかった大人たちの前に現れたのが、塔の見張りの娘ローレ。街の子どもたち全員を引き連れて、スウェーデン軍の隊長に「街を破壊しないで!」と懇願した。その結果、現在まで街が残っていることからもわかるように、隊長は子どもたちの願いを聞き入れたのだ。破壊から街を救った子どもたちの活躍を讃え、この小さな勝利を記念して毎年7月には10日間にわたって盛大な祭り「Kinderzeche」が開催される。仮装した市民が、パレードや郷土舞踊、当時を再現した演劇などを披露。そして、子どもたちへの感謝のしるしにお菓子(Kinderzeche Gucke)が配られる。


最終更新 Donnerstag, 26 Januar 2023 16:46
 

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