熊谷徹 (著)
高文研
ISBN: 78-4-87498-420-8 C0021
今年はベルリンの壁が崩壊してから20年目に当たります。ベルリンは、いま世界で最もダイナミックで変化に富んだ町の1つです。特に歴史に興味がある人にとって、ベルリンほど面白い町はありません。ドイツ帝国、第1次世界大戦、ナチスによる支配、第2次世界大戦、冷戦による分割、そしてベルリンの壁崩壊から東西ドイツ統一と、この町は世界史の中でも最もドラマチックな出来事を経験してきました。まさに、「現代史の十字路」と呼ぶにふさわしい町です。
本誌にコラム「独断時評」を掲載しているジャーナリスト熊谷徹さんが今月、ベルリンの現代史についての本を刊行しました。以前NHKの記者だった熊谷さんは、1989年11月に壁崩壊直後のベルリンを取材し「欧州の地殻変動」の模様を目撃しました。本書は、その後90年からドイツに住み、本を書き続けている熊谷さんの10冊目の作品です。
本書は、第2次世界大戦から統一に至るまでの、激動の現代史の現場という視点からベルリンを描こうとしたものです。
現在、欧州の若者の間ではベルリンへの関心が高まっており、訪問者の数は年々増える一方です。しかし、観光客としてこの町を訪れても、「どこに壁があったのか?」と首をかしげる人が多いようです。本書の目的の1つは、初めてベルリンを訪れる人や、現代史に興味を持つ人のために、ベルリンのどこへ行けば歴史の痕跡に触れることができるかを紹介することです。観光ガイドには載っていない場所が、多数取り上げられています。
過去の事件や人物に関する記念碑、慰霊碑、記念プレート、資料館などの背景を理解するためには、その歴史について知る必要があります。本書はそうした歴史の足跡を丹念にたどることによって、ベルリンが現代史の中でどのような役割を果たしてきたかを伝えています。掲載されている100点以上の写真は、すべて熊谷さん自身が撮影したものです。ベルリンや現代史に関心のある方にお薦めの1冊です。(編集部)