ジャパンダイジェスト

中村勘三郎ベルリンに来たる!

歌舞伎俳優・中村勘三郎氏率いる平成中村座のベルリン公演が5月に行われるのに先立ち、2月28日(木)11時30分、公演会場となる「世界文化の家」(Haus der Kulturen der Welt)で勘三郎氏が会見した。ドイツでの歌舞伎公演は15年ぶりとのことで、べルリンに拠点を置く日本のメディアのみならず、地元の記者も多く参加し、会見は和やかなムードで始まった。

「今回、ベルリンにお招きいただいたことを、非常に嬉しく思っています。ドイツ、特にベルリンの演劇がいま非常に過激でおもしろいと我々演劇人の間ではよく話題になりますし、私の父(17代目中村勘三郎)が1965年にベルリンのフォルクスビューネで伝統的な歌舞伎を披露したこととも関係があります。18代目を継いだ息子の私が、このエキサイティングな町で、今度は新しい試みの歌舞伎をやらせていただくことは大きな喜びですね」

記者会見の様子
記者会見に臨む中村勘三郎氏(中央)

勘三郎氏といえば、演出家の野田秀樹と組んだり、歌手の椎名林檎の曲を取り入れたりするなど、歌舞伎という伝統芸能に新しい要素を積極的に取り入れることで知られる。日本の多くの若者に支持されるのもそれゆえだ。

「代々受け継がれてきた歌舞伎の伝統的な部分は、もちろん尊重します。ただ、江戸時代の人々にとって歌舞伎が大きな楽しみだったように、いまの歌舞伎だって、観ておもしろいものでなければと私は考えている のです」

記者会見の様子
ドイツ人記者も多数出席した

串田和美を演出に迎えた今回の演目「夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)」は、「命懸けで何かを守ろうとする人々の義理と人情、暴力をテーマにした大阪の下町が舞台」とのこと。ニューヨークではすでに2度上演され、辛口で知られるニューヨーク・タイムズ紙からも絶賛された。

会見後の質疑応答では、興味深い質問が相次いだ。「お父様が今回の舞台を観たらどういう反応をすると思いますか?」というドイツ人記者の質問に対しては、「古典についてはまだダメだと言うでしょうね。でもこういう新しい試みは、『(生きていたら)オレが最初にやりたかった』と悔しがると思います」と言って、記者たちの笑いを誘った。

会見の前日には「世界文化の家」の舞台を下見したという。

「舞台は東京のシアターコクーンに似ています。最初は花道を作ろうかと思っていたのですが、考えを改めました。実はちょっとおもしろいアイデアも浮かんでいて、それがどういうものになるかは、5月のベルリンの舞台をどうぞ楽しみにしていてください」

平成中村座のベルリン公演は5月14日から21日まで。伝統と革新の町ベルリンで、中村勘三郎氏が歌舞伎旋風を巻き起こしそうだ。

(TEXTE:MASATO NAKAMURA)


 
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