メッセ・ベルリン付近から枝分かれする、高速道路A115号線。ポツダム方面に向かって約9キロにわたって伸びる、ほぼ完全な直線道路です。実はこの道路、かつて世界最古の自動車専用道路として誕生し、1998年まではサーキットとしても使われていました。
「メルセデスハウス」の外観。往時を偲ばせるレトロなデザインが特徴です
建設は1913年から始まりましたが、第一次世界大戦による中断を挟み1921年にようやく完成。「Automobil-Verkehrs und Übungsstraße」の頭文字を取って「AVUS」(アヴス)と呼ばれています。当初はサーキットとして開通したものの、後に有料道路としても活用されることになります。
入場ゲート跡地に鎮座する、オートバイの彫刻
アヴスは長い2本のストレートの両端をヘアピンコーナー(180度のカーブ状の道路)で繋いだだけの、単純かつスピードが出るサーキットでした。1926年に第1回ドイツグランプリが行われた後、北側のコーナーには傾斜が付けられて、スピードを落とさなくても曲がれるように改修されます。平均速度が毎時200キロを優に超えるようになったアヴスは、このコーナーで事故死するドライバーが後を絶たず、1967年に撤去されるまで「死の壁」と呼ばれて恐れられていました。相次ぐレース中の事故やドライバーの他界、騒音に対する批判から、1999年のお別れイベントをもってアヴスはサーキットとしての使命を終え、高速道路の一部となります。
アヴスの周辺には、往時を偲ばせる建物や記念碑がいくつか残っています。メルセデス・ベンツのエンブレムが鎮座する「メルセデスハウス」は、1937年にレース観戦用として建設され、1977年にはサービスエリアの施設として改修されました。現在はホテルとして使用されており、当時の趣を残すたたずまいは、モータースポーツに熱狂していた時代の雰囲気を静かに伝えてくるようです。
「アヴス・トリビューネ」は改修工事の真っ最中
入場ゲート跡地に置かれたバイク2台の彫刻は、BMWとDKWに乗る2人のライダーを模したもので、1989年に設置されました。長さ200メートルの観客スタンドは2018年に屋根が取り除かれ、現在「アヴス・トリビューネ」として改築工事の真っ最中です。「アヴス・トリビューネ」は、カフェやオフィス、ショップ、博物館などを備えた複合施設として、アヴス100周年に当たる2021年に完成を目指して工事が進められていますが、現状は写真の通り。年内に無事オープンできるのか、気になるところですね。
ドイツの西側や南側からベルリンへ車で向かう際に、「玄関」として利用する機会が多いA115号線。メルセデス・ベンツのエンブレムが見えたら、そこは100年の歴史がある「世界最古の高速道路」です。通行の際にはぜひ、安全運転で思いを馳せてみてくださいね。