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ドイツの日本文化発信地として55年 ケルン日本文化会館の
過去・現在・未来

ケルンの中心地から少し離れた場所に、ヒロシマ・ナガサキパークと呼ばれる広大な公園がある。その一角にたたずむケルン日本文化会館は、西ドイツ時代から半世紀以上、ドイツにおける日本文化の発信地として存在してきた。なぜケルンに拠点を置いているのか、どんな使命をもって活動してきたのか、ケルン日本文化会館を取材した。
(文:ドイツニュースダイジェスト編集部)

取材協力:国際交流基金 ケルン日本文化会館
参考:『日本文化会館開館50周年記念誌』(国際交流基金 ケルン日本文化会館)

ケルン日本文化会館ケルン日本文化会館前には桜の木が植えられている

なぜケルンに日本文化会館?

ケルン日本文化会館の物語は、1960年代初頭、日本政府がドイツに日本文化会館の設立を決定したことに始まる。それに目を付けたのが、当時ケルン市の行政担当市長を務めていたマックス・アデナウアー氏だ。初代連邦首相コンラート・アデナウアー氏の息子で、日本美術のコレクターでもあった同氏は、ケルンが当時の首都ボンに近く、経済都市および文化都市として重要だったことに着目する。また、ケルン独日協会(1961年)やケルン市と京都市の姉妹都市提携(1963年)が生まれた時期でもあった。そうした背景から、ケルン市は日本文化会館の候補地として手を挙げたのである。

ケルン市への誘致には多くの日本関係者が携わっているが、とりわけマックス氏は1962年の訪日時に池田勇人首相(当時)と会談するなど、日本政府に積極的に働きかけた。さらにハインリヒ・リュプケ大統領(当時)、父であるアデナウアー首相(当時)の熱烈な支援もあり、翌年の1963年、すでに建設が決まっていた東アジア美術館の隣に日本文化会館を設立することが決定する。こうして1969年、ケルンに日本文化の発信地が誕生したのだった。

伝統文化からポップカルチャーまで

ケルン日本文化会館は、広々とした展示スペースのほか、211人を収容できるホール、蔵書数2万5000冊に上る図書室を完備し、開館当初には茶室や灯籠が設けられていた。また同館は、外務省が所轄する国際交流基金のドイツ唯一の海外事務所。事業の三つの柱として、①文化芸術交流、②日本語教育、③日本研究と国際対話を掲げ、活動を重ねてきた。

文化芸術の分野では、日本の伝統文化からポップカルチャーまで、さまざまな企画展のほか、講演会やイベントを開催。1996年および2008年には大江健三郎氏、2002年には村上春樹氏など日本を代表する作家の講演会も行われた。開館50周年の節目には、ケルン・フィルハーモニーを会場に梅若研能会による能・狂言のツアー公演を企画。立派な舞台が組まれ、外部との連携事業としても成功を収めた。また開館当初から続く映画上映は、日本作品に触れられる貴重な機会。とりわけ日本学を学ぶドイツの学生たちにとって、昔も今も日本文化会館は思い出深い場所であり続けている。

ケルン・フィルハーモニーでの能・狂言公演(2019年)ケルン・フィルハーモニーでの能・狂言公演(2019年)

日本語教育支援も会館の大きな事業の一つだ。コース開講のほか、日本文化を楽しむ体験講座、日本語ネイティブと実際に話せる場「日本語しゃべりーれん」を定期開催する。また、日本語教師の支援も行い、日本語を学ぶための環境づくりにも力を入れる。

さらに、ドイツ最大の日本フェス「日本デー」では、毎年ステージでトリを務める日本のアーティストを招へいしている。ほかにも日本映画祭「ニッポンコネクション」に上映作品の貸出や提供を行うなど、近年は日本文化会館の枠を越えた活動も増えてきた。

日本デー2022に招いたチャラン・ポ・ランタン(手前)日本デー2022に招いたチャラン・ポ・ランタン(手前)

次世代へバトンをつなぐために

昨今、ドイツにおける日本への興味関心は、ポップカルチャーを中心にますます広がりを見せている。また、外交上においてもドイツと日本は同じ価値を共有するパートナーとしてよりつながりを深めてきた。その上で、ケルン日本文化会館はこれまで丁寧に築いてきた豊かな人脈やネットワークを、これから国際関係を担う次世代へとつないでいくことを大きなビジョンとして掲げる。そのために、若い世代を対象とした事業展開に加え、ドイツ語圏広域での活動に力を入れていくという。

そのビジョンを体現する事業の一つとして、直近では6月5日から「オンライン日本映画祭2024」(JFF Online 2024)を開催予定だ。このようなオンライン事業が増えれば、ドイツ語圏での日本文化への興味関心はより一層広まるだろう。もちろん日本人としても、自国文化への理解を深め、日独交流のきっかけに、ぜひケルン日本文化会館を訪れてみてほしい。

ケルン日本文化会館
Japanisches Kulturinstitut Köln
(The Japan Foundation)

Universitätsstr. 98, 50674 Köln
Tel: 0221-9405580
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https://co.jpf.go.jp/jp
Instagram: @jki_official

 
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