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屋内ゲレンデから世界最大のスキーリゾートまで ドイツ&欧州でスキーを楽しむ!

暗くて寒いドイツの冬。家の中でぬくぬくまったりするのもいいけれど、ウィンタースポーツが盛んな国にいるなら、この季節は雪の世界に足を運ばなきゃ損!本特集では、そんな冬のスポーツの本場であるドイツや欧州でスキーを楽しむ魅力やヒントを、在独スキーインストラクターの中川有武さんに伺った。経験のない人も上級者も、この冬は広大な欧州のゲレンデを滑りに行こう!
(文:ドイツニュースダイジェスト編集部)

スキー

お話を聞いた人 中川有武さん 中川有武さん Aritake Nakagawa オーストリア州検定スキー教師(Arlberg AlpinおよびAlpenpark Neuss スキースクール所属)、デザイナー(TAPA creatives代表)。1996年からケルン在住。毎年12月から4月まではアールベルクのスキースクールに勤務し、毎日ゲレンデを滑っている。

スキーインストラクター直伝 欧州の大自然を滑る魅力

オーストリアスキーに魅せられて

物心ついたころには、もうスキーをしていました。小学校中学年くらいから冬休みは姉と二人で子ども向けのスキースクールに行くようになって。中学生のころには、長野県の奥志賀高原にある杉山スキー&スノースポーツスクールに毎シーズン行くようになり、さらにスキーの技術を学びました。そこでたまたま教わったのがオーストリアスキーだったんです。

杉山進先生は日本人で初めてオーストリアでスキーを学んだ方で、元オリンピック選手。オーストリアのアールベルクのサンクト・クリストフにスキーアカデミーがあるのですが、そこからオーストリア人の先生にワンシーズン来てもらったり、日本の先生がアカデミーに送り込まれたりといった交流がありました。

スキーはもともと雪の山野を移動する手段。ノルウェー軍が国民の救出活動のためにスキー部隊を持っていたことが現在のスキーの起源といわれています。それから、山を下るいわゆる「アルペンスキー」が広まったのがオーストリアで、サンクト・クリストフで生まれました。オーストリアスキーの特徴を一概に言えるわけではないのですが、教え方や滑り方に明確なメソッドがあります。そんな経験があって、オーストリアのスキーはすごいな、一度は本場で滑ってみたいなという思いがありました。

アールベルクのゲレンデを豪快に下る中川さんアールベルクのゲレンデを豪快に下る中川さん

スキーインストラクターの資格取得

大学に上がるに当たってスキーを職業にすることも考えたのですが、当時興味のあったデザインの道に進むことに。デザインの勉強のためにドイツに来て、大学を卒業してからもそのままドイツでずっとデザインの仕事をしていました。転機は4年前のコロナ・パンデミックの時。自分の人生がいつ終わるか分からないから、やりたいことをやろうと思ったんですね。それまでずっと遊びでスキーはしていたのですが、やっぱりスキーの方に職を転換しようと思い立って。それからオーストリアでスキーインストラクターの資格を取るためにアウスビルドゥング(職業訓練)を始めて、今に至ります。

オーストリアのスキーインストラクター制度には、最初にAnwärter( 候補者)、Landesskilehrer( 州検定スキー教師)、staatliche Skilehrer( 国家検定スキー教師)、Skifüher(スキーガイド)の四つのレベルがあります。スキースクールで働くには最低でもAnwärterでなければならず、資格のレベルによって給与が変わります。私はLandesskilehrerを取得済みで、国家検定を受けるかはまだ検討中です。

ヴェルビエの壮大な景色ヴェルビエの壮大な景色

広大で変化に富んだコースが魅力

欧州のスキーの特徴といえば、スキー場の大きさ。もちろん大中小と程度の差はあるのですが、日本と全然違います。日本一大きい志賀高原スキー場の総滑走距離は80キロほどですが、例えば私が勤めているアールベルクは300キロ、広いところでは600キロあります。それだけ広いので、初心者から上級者向けまでコースがそろっているのが魅力の一つだと思います。それから、滑走エリア以外も自己責任で入ることができるのは日本との違いです。

私自身、自分のレベルをどんどん上げていくことによって、いろいろな斜面を滑れるようになることに喜びを感じます。一方で自然を相手にするので、サーフィンなんかも同じ感覚かもしれませんが、自分がどこまで対応できるのか挑戦したり、自分の不甲斐なさを感じたりすることも。雪やゲレンデの状況を見て、今の技術では滑れないからもっとうまくなろう、こんな滑り方を学んでみようと思える。自然と直接対峙するスポーツというところに、魅力を感じるのかもしれません。

それから欧州のスキー場にはスキー以外のアクティビティ、例えば室内テニスコートやスケートリンクがあったり、レストランやショッピング施設がそろっていたり、とにかく娯楽が豊富。なかにはただゴンドラに乗って、山小屋やレストランで日向ぼっこを楽しむ方もいます。小さな子どもからお年寄りまで楽しめることはスキーというスポーツの魅力だと思うので、家族や友人と一緒にぜひスキー場に足を運んでほしいですね。

チェルヴィニアのリフトからの眺めチェルヴィニアのリフトからの眺め

ビギナーから上級者まで楽しめる ドイツ&欧州おすすめスキー場7選

南ドイツやアルプス山脈のある国々を中心に、欧州はスキーのメッカ。スキー好きの中上級者はもちろん、まだスキーをしたことがない人、雄大な冬の大自然を味わいたい人のために、引き続き中川さんにおすすめのスキー場を教えていただいた。

ヨーロッパのおすすめスキー場

ドイツ 初心者の練習にもぴったり! Alpenpark Neuss
アルペンパーク・ノイス

総滑走距離:300メートル
最高標高:110メートル

アルペンパーク・ノイス

ドイツ初の屋内スキー場。傾斜10~18度の緩やかな斜面のほか、上級者やプロ向けの28度の急斜面がある。およそ100メートルの初心者専用のゲレンデが設置されており、初めてスキーやスノーボードをする人が練習のために訪れることも少なくない。屋外のスキー場を訪れる前に、体を慣らしに行くのもおすすめ。レストランや宿泊施設が併設されており、年中スキーはもちろん、さまざまなアクティビティを楽しむことができる。
www.alpenpark-neuss.de

ドイツ 週末でも気軽に行けるスキー場 Winterberg
ヴィンターベルク

総滑走距離:27.5キロ
最高標高:820メートル

ヴィンターベルク

ザウアーラントのヴィンターベルクは、デュッセルドルフやフランクフルトなどから週末に行くことができる距離に位置する。ドイツ国内のスキー場はほとんど南部にあるが、北部で唯一のスキー場となっている。七つの山に34のゲレンデがあり、ナイターでもスキーを楽しむことができる。比較的ビギナー向けの地形で、子ども連れにも人気。最新の降雪機が備わっており、シーズンは毎年12月中旬~3月中旬頃まで。
www.winterberg.de

ドイツ ドイツ最高峰の天然雪100%ゲレンデ Zugspitze
ツークシュピッツェ

総滑走距離:180キロ
最高標高:2962メートル

ツークシュピッツェ

ドイツで最も標高が高いツークシュピッツェにあるスキー場。金色の十字架が立つ山頂からはドイツ、オーストリア、イタリア、スイスの4カ国を望むことができる壮大なパノラマが広がる。天然雪100%の全長20キロのゲレンデが目玉。また、近郊のゲルミッシュ・クラシックスキー場(Garmisch-Classic)には全長40キロのゲレンデがあり、併せて訪れる人も多い。シーズンは12月初旬から5月上旬までと長め。
https://zugspitze.de

オーストリア アルペンスキー発祥の地 Arlberg
アールベルク

総滑走距離:300キロ
最高標高:2811メートル

アールベルク

オーストリア最大のスキー場であるアールベルクは、世界でも5本の指に入るスキーリゾート。1885年にノルウェーから研究目的で持ち込まれたスキー板で娯楽として山を下るようになったことから、アルペンスキーの発祥の地と呼ばれ、古くからスキー客でにぎわう。大きく分けて三つあるスキー場には最新のゴンドラとリフトが整備されており、あらゆるレベルに対応したコースがある。シーズンは12月上旬~4月中旬まで。
www.skiarlberg.at

スイス 広大な山々に囲まれたスキー場 Verbier
ヴェルビエ

総滑走距離:410キロ
最高標高:3330メートル

ヴェルビエ

イタリアとフランスの国境近くに位置するスイス最大のスキーリゾート地。約100基のリフトとゴンドラでつながれた四つの谷の最高地点であるモン・フォートからは、モン・ブランなどの4000メートル級の山々を眺めることができる。スタート地点とゴール地点だけが決められたフリーライドのメッカで、ワールドツアーの開催地としても知られる。山間には屋根に雪が積もった山小屋がいくつも連なり、趣ある風景が印象的だ。
https://verbier4vallees.ch

フランス 世界最大のスキーリゾート Les Trois Vallées
トロワヴァレー

総滑走距離:600キロ
最高標高:3250メートル

トロワヴァレー

その名の通り三つの山が連なり、全600キロに上るゲレンデがある世界最大のスキーリゾート。八つのエリアに分かれており、300以上のコースが整備されている。ゲレンデの50%は初心者向けで、キッズスクールが充実しているほか、ほとんどの宿泊施設には託児所があるため、小さな子どものいる家族でも思いっきり楽しめるのが魅力の一つ。多数の降雪機と標高の高さにより、11月中旬から5月初旬まで良好な条件で滑ることができる。
www.les3vallees.com

イタリア&スイス 欧州最高地点で国境越え Cervenia / Zermatt
チェルヴィニア/ツェルマット

総滑走距離:360キロ
最高標高:3899メートル

チェルヴィニア/ツェルマット

イタリア(チェルヴィニア)とスイス(ツェルマット)の二国にまたがるスキー場。モンテ・チェルヴィーノ(スイス側からはマッターホルン)は欧州で一番標高の高いスキー場として知られ、スキーをしながら国境を越えることができる。二国共通のリストパスを使って、イタリアとスイスそれぞれの雰囲気やグルメが楽しめるのがポイント。その標高の高さからチェルヴィニアでは、10月~5月初旬までリフトが運行されている。
www.cervinia.it

スキーに行く前に持ち物&事前チェックリスト

「この冬はスキーに行くぞ!」と気持ちが高まったところで、 スキーに必要なものや事前のヒントをご紹介。自然を相手にするため、万全の準備をしてスキーに出かけよう。

持ち物リスト

● 自分で用意するもの

これらはレンタルできないため、必ず用意していこう

  • グローブ
  • ゴーグル
  • 帽子
  • スキーウェア
● レンタルできるもの

現地で直接レンタルも可能。事前レンタルで割引があることも

  • スキー板
  • ストック
  • ブーツ
  • ヘルメット
● あると良いもの

標高が高い所では顔や首回りが凍傷になることもあるため、バフは必需品!

  • ウィンター(スキー)
  • クリーム ( 日焼け止め&防寒)
  • サングラス
  • バフ(ネックウォーマー)
  • バックパック
  • 水筒

そのほかのヒント

1週間の滞在がスタンダード

長期休暇を取ることが一般的な欧州では、スキー場へは土曜に来て土曜に帰る1週間の滞在が基本。それに合わせてスキースクールも日曜〜金曜にレッスンを開講していることが多い。それ以外はプライベートレッスンになるため、レッスン料が割高になる。

インストラクターはガイド的な存在

日本ではスキーインストラクターが細かく技術を教えてくれることが多いが、欧州のインストラクターはレベルに合わせていろいろな場所に連れて行ってくれるガイド的な存在。初心者の人は、事前に屋内スキー場などで基本の滑り方や止まり方を学んでおくとより楽しめる。

ホテルは夏休み明けの予約がベスト

宿泊施設の予約が始まるのは夏休み明け。常連客の予約が優先されるため、キャンセル待ちとなることも。特に年末年始、カーニバル時期は混むため、早めの計画がおすすめ。多くの宿泊施設では1年先の予約が可能で、一度宿泊すれば翌年の予約が取りやすくなる。

スキー場のホテル予約

ご当地グルメのほか自炊も人気!

チーズフォンデュやカイザーシュマーレン、タルティフレットなど、その土地ならではの冬のグルメが楽しめるのもスキー場の楽しみの一つ。大きいリゾート地には星付きのレストランもあるが、キッチン付きアパートで自炊をしたり、お惣菜を買って食べたりするのも人気だ。

冬のグルメ

夜まで楽しむ「アプレースキー」

Après-Ski(アプレースキー)とは、フランス語で「スキーの後」という意味。スキーを楽しんだ後に、山小屋で音楽をガンガン流してお酒を飲んではしゃぐのは、欧州のスキー文化の一つ。飲み過ぎには気をつけて、スキー休暇を楽しみつくそう!

雪不足でスキー場が閉鎖?

昨今、気候変動による雪不足でスキー場を閉鎖せざるを得ない状況が目立ってきている。毎年アールベルクでスキーシーズンを過ごす中川さんに、現場の状況を伺った。

氷河に関していうと、例えば2~3年行っていなかったところで「こんなに減っちゃったんだ」と思うことがありますね。一方で、雪が年々減っているという感覚は実はあまりなくて、今年は雪が少ない・多いという感じで波を感じます。同時に雪の降るシーズンが後ろ倒しになっていて、シーズンが始まっているのに雪がなかったり、イースターの時期なのに雪がどかどか降ったり。もしくはシーズンの初めにものすごく雪が降って、その後ずっと降らないことも。現地の人たちとも、雪不足というよりも「今年はどうなるかね?」と話しているような状況です。

やはり標高が低いところにあるスキー場はもろに影響を受けていて、シーズンを通してオープンできなかったり、インストラクターの仕事がなくなったりということが起きています。実際に私の友人で標高の低いところでインストラクターをしている方は、途中全く仕事がなく、失業手当を申請するなど結構大変な思いをしたようです。

人工降雪機はどこの施設も持っていますが、気温が低くないとすぐに溶けてしまうので、気温が低いときにバンバン雪を作っておくというような状況です。また雪が降ったとしても、雪崩の危険性があります。ドカッと降っても、暖かくて定着しないと雪崩が起こりやすくなります。これまでは雪崩が起こる場所はある程度予測できていたのですが、最近ではゲレンデに流れ込んでくることも。対策として、ゲレンデにわざわざ雪崩が溜まるような場所を作っているところもあります。スキー場の運営側も試行錯誤しながら、環境を整備したりコントロールしたりすることが必要になってきていると感じています。

 
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