使い勝手がよくて長持ちするけど、デザインはイマイチ……
なんて言われていた時代はとうの昔。
進化を続けるメイド・イン・ジャーマニーを見直そうと、
『独国製品愛好会』は先月に引き続き活動中です。
愛され続けるには理由がある!
第4回目となる今回は、女性を一際輝かせる名傍役を見付けてきました。
プレゼントの候補に、自分へのご褒美に、ちょっと贅沢してみませんか?
(Text by Megumi Takahashi)
時を刻む小宇宙。
SOTHISのハンドメイドウォッチ
星や月のモチーフが時計のフェイスの中に小宇宙を作る。このアンティークな雰囲気を醸し出す時計ブランドが誕生したのは1996年、ビーレフェルトでのこと。とある時計好きなドイツ人が、コレクションを集めるだけでは満足できず、自分の理想の時計を作ろうと一念発起。こだわり抜いて作った時計が、なんと時計ファンから予想以上の大好評を得た。以降、時計への情熱を形にし続けているのが創設者のヴォルフガング・シュタインクリューガー氏。フェイスは大きめだが、ロマンチックなデザインが女性の心をぐっと掴む。
デザインの良さが書き心地を決める。
LAMYの筆記用具
ハイデルベルクで1930年に家族経営の会社として スタート。今や、文房具業界を牽引するブランドに成長したLAMYだが、やはり製造はハイデルベルクで。変わらぬ情熱と革新する技術で文房具の可能性を模索し続けている。多くの愛好家を持つ定番のフォルムとクールなアルミボディーが特長の「AL-star」からは、珈琲カラーとダークパープルの2色が2010年の限定色として登場。究極のシンプルデザイン「noto」は無印良品などのデザインも手掛けた深澤直人氏のデザインだったってこと、皆様知っていました?
普遍の想いを形に。
普遍的なシンプルデザインの美学。
NOMOSの腕時計
グラスヒュッテと言えば、ドイツ時計好きにとっては聖地のような場所。この街が生み出した時計メーカーの1つがNOMOSだ。傑作と呼ばれる「Tangente」シリーズをはじめ、装飾を極力そぎ落とし、潔いとさえ感じさせるシンプルな美を追求した同ブランドのシリーズは、複雑な機械式時計にはない魅力を発揮している。微細に表情を変える各シリーズのデザインは、ほぼ普遍。いつでも、どこでも、どんなシチュエーションにも合う時計を目指し、時計の街の腕利き職人たちが今日も1つひとつ丹誠込めて磨き上げている。
時代の先を見据えたデザイン。
MYKITAのアイウェア
2003年に4人のデザイナーがベルリンで立ち上げたアイウェアのブランドMYKITA。この名前、幼稚園(Kindertagesstätte)の通称KITA が由来と言う。業界では幼稚園児に例えられるほど若いブランドだが、すでに数々のデザイン賞を獲得。最近では、話題映画「セックス・アンド・ザ・シティ2」で主役のサラ・ジェシカ・パーカーが着用したことで、ハリウッドで も人気急上昇中。素材の加工は最新技術を駆使しつつ、昔ながらの手作業での工程も大切にしている。クラシカルからモダンまで、粋なデザインが強み。
普遍の想いを形に。
Niessingのジュエリー
バウハウスの流れを汲む、機能的でシンプルなデザイン。130年以上の歴史を持つ老舗ジュエリーブランドNiessingは、宝石を留める「爪」の存在を不要なものとみなし、リングのアーム部分の張力だけで支えるデザインを考案。ジュエリー界に一大センセーションを巻き起こした。哲学的でさえあるデザインは、ジュエリーに意味を持たせ、身に着ける人の想いを表現する。同ブランドのモットーは「雄弁な美」。結婚指輪やエンゲージリングなど、大切な想いを語るにふさわしいジュエリーが、Niessingならきっと見付かる。
指の先まで優美に包み込む。
Roeckelの手袋
上流階級のファッションの一部として、手袋の存在が認識されていた中世の時代から、常により良い手袋を目指し、改善を続けてきたミュンヘンの老舗手袋メーカーRoeckel。伝統の技術と時代に合ったデザインが人気の革の手袋をメインに、ハイテク素材と人間工学に基づいた構造のスポーツ用グローブも手掛け、ドイツでのシェアNo.1を誇っている。女性の嗜みとして、また冬の冷たい外気から手を守るため、ぴったりフィットする手袋が欲しい。スカーフやバッグなども、エレガントなデザインが揃っている。
ラグジュアリーに身を包んで。
RENA LANGEの服
現代ドイツを代表するラグジュアリーブランドRENA LANGEの始まりは、ミュンヘンで1916年にオープンした高級ランジェリーショップ。そこから、イブニングドレスやアクセサリーなどを手掛け、プレタポルテコレクションを発表した1982年以降、ファッションに敏感な欧州セレブたちに愛され続けてきた。今シーズンのテーマは、ジミー・ヘンドリックス。エッジを効かせつつ、RENA LANGEならではのソフトエレガンスな美意識が保たれている。身に着けた女性に自信を抱かせるベーシックなラインが人気。
違いのわかる女性のために。
Gretchenのバッグ
小さな真珠という意味のGretchen。デザイナーのアンネ・クリスティアン・ホフマンが2006年に始めたこの革製品の専門ブランドは、一筋縄にはいかない女性の好みとこだわりを満たす逸品を生み出している。素材は最高級の革だけを使用し、高度な職人の技が随所に散りばめられている。デザインはミニマルでフェミニンでエレガント。パリス・ヒルトンら、目の肥えたセレブリティの間でも愛用されているとか。一見、奇抜なデザインだが、手に取ってみると、触り心地の良さとスタンダードな使用感がしっくりくる。
自然と共にある喜び。
Slowmoのエコ・デザイン
「気持ちの良い服」を作ろう。兄妹であるフェリシアさんとメルキオールさんが、Slowmo設立当時に誓った企業哲学のルーツは、その想いにある。オーガニック素材を愛し、自然を尊重する思想はドイツに深く根付いているものの、素材そのものがファッションとして持てはやされるべきではないと彼らは考え、100%オーガニックの素材を使うことは、彼らにとって一種の「義務」だと言ってはばからない。そんな彼らが作る衣服は、すっきりとしたシルエットや、ゆったりとしたギャザーの陰影が美しい。
手編みのぬくもり。
caro e.のニットウェア
メリノウール、カシミヤ、シルク……最高級の天然素材がストレス社会を生きる現代人をふんわりと包み込む。手編みで丁寧に仕上げられる衣服やアクセサリーは、素材の良さを最大限に活かした素朴なデザイン。2006年にベルリンで開業したニット専門ブランドcaro e.は、デザイナーのカロリンさんによる癒しパワーの賜物。大量生産、大量消費に疑問を投げかける彼女は、その流れと真逆に、時間を掛けてコツコツ編み上げ、適正価格で勝負する。このフェアトレードの精神は、時代のニーズの一端を確実に捉えている。
肌に一番近い勝負服。
Triumphのアンダーウェア
日本でも、アンダーウェアの筆頭ブランドとして知られるTriumph。始まりは1886年に設立された小さなコルセット製造所。19世紀後半から現代にいたるまでに女性が辿ってきた道に、ときに寄り添い、ときに先を行きながらTriumphはコルセットからブラジャーへ、エレガントからスタイリッシュへと変化を遂げながら世界中で受け入れられ、同業界で勝利(Triumph)し続けている。今、注目の素材マイクロモダールで作られたインナーは、スタイリッシュかつ保温効果バツグンだから、冬場に活躍すること間違いなし。
歩くたびに好きになる。
Gaborのブーツ
健康靴の本場では、我慢しておしゃれするなんてナンセンス。足に負担をかけない構造をキープしながらデザイン性を追求するコンフォートシューズで足を大切に。Gaborの哲学も、まさにその通り。歩く姿勢を意識した靴作りが、履いたときに一番美しい姿を実現する。ハイヒールを履きたいという女心に応え、高いヒールのデザインにも改良を重ねる。独自に開発した下敷きのクッションにより、ハイヒールでの歩行も雲の上を歩いているような感覚だとか。上質な革と職人の技が生み出す堅実な履き心地、お試しあれ。
淑女のお供が手に入る場所
正規取り扱い店 充実した品揃えとアフター サービスで 納得のお買い物を |
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アウトレットショップ VillageやRoermondなど お近くのアウトレットショップ |
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大手デパート お近くの、KARSTADTやKAUFHOFなど |
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オンラインショップ 各社のウェブサイト www.ebay.deなど |
編集部・高橋(編):ドイツを拠点に公私ともに輝いている女性に贈りたいメイド・イン・ジャーマニーの品々! ということで気合を入れて集めてみたら、ちょっと贅沢なラインナップとなってしまった今回。しかし、まだまだ魅力的なブランドが日々誕生しているはず…と、若手デザイナーを支え、新ブランドの運営を応援するPR 会社の経営者ゾンヤ・ケーネケさんに最新情報を教えていただきました。
ゾンヤ・ケーネケさん(ゾ):私たち女性は、仕事とプライベートでは別の顔を持っているし、気分に合わせてファッションを変えたりもしますよね。その中で、自分の価値を自然と高めてくれるのは、上質な素材やシックなデザイン。そういう意味で、シルクやカシミヤなどがふんだんに使われた「IVI」や「AWARE Cashmere」といったブランドの服は、働く女性にオススメです。素材にこだわり、機能的なデザインを重視す るドイツブランドは現代女性の強い味方となってくれるはず。
編:この特集のための捜査中に見付けた、服飾ブランド「arrondissement Aq1」、革製品の「Esther Perbandt」もモダンでステキなブランドだと思います。ベースとなる素材へのこだわりは、メイド・イン・ジャーマニーが得意とするところですよね。物づくりに対する職人気質な情熱も。
IVIのストール www.iviseas idecollection.com |
AWARE Cashmereのニット www.awarecashmere.com |
arrondissement Aq1の コレクションから www.arr-aq1.com |
ゾ:そうですね。革製品の加工技術は高い評価を受けているブランドが多いと思います。女性の日常のファッションに欠かせないバッグのブランドだと、(上記にもある)「Gretchen」「Trixi Fauck」、そして「Dogside of Life」は、デザイン性にも秀でていて、私自身のお気に入りでもあります。
編:機能的で、エコなことは、現在のドイツのトレンドのようですが?
ゾ:機能性はいつの時代も変わらず追求されていたと思います。それに加えて、消費者が「心地良いこと」が、より重視されつつあります。心地良さとは、着心地や見た目だけのことではなく、その製品を手に取ることで環境や人権が侵害されていないかということ。消費者は、その商品が生産され、手元に届くまでの背景にも興味を持ち始めたのです。どんな哲学を持った会社が作っているのかということにも無関心ではありません。もちろん、美しいデザインに対する欲求は高いままです。
編:ゾンヤさんは、ドイツ人としてメイド・イン・ジャーマニーに誇りを持っていますか?
ゾ:「誇り」というと、ちょっと違うかもしれません。私自身は作り手ではないので。でも、価値ある存在として、改めてメイド・イン・ジャーマニーが見直され、世界的なトレンドとなっていることは、とても嬉しいこと。そして、世界中に羽ばたいたドイツ製品やドイツブランドが、世界の人の目を意識して、より高い品質とデザイン性を追及し、躍進を続けているのは素晴らしいことです。
編:なるほど。まだまだ、歩みを止めないメイド・イン・ジャーマニーからやっぱり目が離せませんね!!
Esther Perbandtのバッグ www.estherperbandt.com |
Dogside of LifeのPCケース www.dogside-of-life.de |
6年前から、ファッション・ブランドを中心に手掛けるPR会社(www.elitesse-pr.de)を運営。若手デザイナーの成長を支える縁の下の力持ち的なこの仕事に情熱を傾けている。その傍ら、ファッションブログ(www.wearefashion.de)の執筆やオンライン・ショップ(www.fashiontrüffel.de)も運営するなど、ドイツファッション界で精力的に活動中。