「コンサートには、よく行くよ。何せチケットが安いからね」── 日本の家族や友人に、そう自慢げに話すのが、ちょっと楽しかったりするドイツ生活。街角の告知ポスターなどを見ても、ここでは音楽が日常の一部であることを感じずにはいられない。皆さんは、そんな音楽の楽園を骨の髄まで味わい尽くせていますか? 「う〜ん、自信がない」というあなたのために、今年開催される音楽祭(のほんの一部)をご案内しましょう!
(編集部:林 康子)
有名どころだけじゃない
人気の高いメジャーなクラシック音楽祭は、チケット販売直後に売り切れ続出となってしまうことが多い。でも、クラシックをこよなく愛する国ドイツだからこそ、規模は小さくても質の高い音楽祭が多数存在するのだ。
バーデン=ヴュルテンベルク
シュヴァルツヴァルト音楽祭
Schwarzwald Musikfestival
6月2日(木)~13日(月)、9月23日(金)~10月3日(月)
www.schwarzwald-musikfestival.de
この音楽祭の支配人を務めるマーク・マスト氏は「インターバル」をコンセプトに掲げ、個性ある2つの音色が重なり合うとき、そこに全く新しい音が誕生するという「音の共鳴」に注目する。同コンセプトに基づき、音楽祭も2回に分けて開催される。目玉は、同音楽祭が独自に主催する「特別賞」で、今年その栄誉に輝いたフランスの新星チェリスト、トリスタン・コルヌ。
ラインラント=プファルツ
ハンバッハ音楽祭
HAMBACHER MusikFEST
6月22日(水)~26日(日)
www.hambacher-musikfest.de
プファルツ地方ハンバッハで1997年に産声を上げた音楽祭。生みの親は、質の高さとレパートリーの豊富さで群を抜く実力派と評されるマンデルリング四重奏団だ。ぶどう畑が広がる風光明媚な地に佇むハンバッハ城内で、国内外の著名演奏家によるコンサートを聴いた後は、地元のワイン、地ビールに舌鼓を打ちながら演奏家たちと音楽について語り合うことができる。
ニーダーザクセン
ヒッツアッカー音楽祭
Sommerliche Musiktage Hitzacker
7月30日(土)~8月7日(日)
www.musiktage-hitzacker.de
エルベ川流域の静かな街ヒッツアッカーで毎年開催されている、伝統ある音楽祭。66回目を迎える今年は「家族の絆」をテーマに、家族と音楽の関係に様々な視点から光を当てる。世界に名を馳せる音楽一家のスクライド家やコパチンスキー家のメンバーらが舞台に立つほか、「ヴィトゲンシュタイン・サロン」と称し、同家が刻んだ音楽的軌跡をたどる。
ヘッセン
ダルムシュタット城音楽祭
Darmstädter Residenzfestspiele
7月28日(木)~8月7日(日)
www.residenzfestspiele.de
バロック時代の絢爛豪華な宮廷祝賀の息吹が今なお感じられるダルムシュタット城で、当時の賑わいさながらの音楽祭を開こうと、2001年に市民が立ち上がった。以降、毎年開催されている音楽祭は今年でちょうど10周年。宮殿での艶やかな音楽祭を締めくくるのは、ドイツ・オペラ界を代表するテノール歌手ルネ・コロによるワーグナーの「タンホイザー」。
バイエルン
オーベルストドルフ夏季音楽祭
Oberstdorfer Musiksommer
7月28日(木)~8月18日(木)
www.oberstdorfer-musiksommer.de
ウィンタースポーツのメッカ、リゾート地として知られるアルゴイ地方の山々に、美しいクラシックの音色が響き渡る。この音楽祭のハイライトは、標高2000メートルのネーベルホルンで聴く山頂コンサート。アルプスの大自然の空気と一流音楽家が奏でる豊かな音色を全身で感じよう。今回は、オーボエやフルート、クラリネットなどの木管楽器に焦点を当てる。
ベルリン
ヤング・ユーロ・クラシック
Young Euro Classic
8月5日(金)~21日(日)
www.young-euro-classic.de
クラシックや現代音楽の未来を担う1500人以上の音楽家の卵たちが世界中からベルリンのコンツェルトハウスに結集し、その実力を披露するこちらは、「若い世代のバイロイト音楽祭」と呼ばれるほど人気の高い音楽祭。20以上のコンサートが17日間にわたって開催される。今年は、エネルギッシュな演奏で会場を熱気に包む南米の音楽家たちにご注目!
ブレーメン
ブレーメン音楽祭
Musikfest Bremen
8月27日(土)~9月17日(土)
www.musikfest-bremen.de
ブレーメン市内とその近郊29カ所で、宗教曲から交響曲、室内楽まで全40のコンサートが繰り広げられる。8月27日、オープニングの夜はイルミネーションで飾られたブレーメンの中央広場の舞台に、ソウル・フィルらビッグ・ゲストが登場。クラシックのほかにも、ジャズやワールド・ミュージック、パーカッションなど、贅沢なプログラムが組まれる。
バイエルン
ヴュルツブルク・バッハ音楽祭
Würzburger Bachtage
11月18日(金)~27日(日)
www.bachtage-wuerzburg.de
ヴュルツブルクといえばモーツァルト音楽祭が有名だが、当地では18世紀を代表する偉大な音楽家バッハの楽曲を次世代へと伝える事業に務める「バッハ協会」が、バッハ音楽祭も開催している。毎年バッハともう1人の音楽家を取り上げている同音楽祭。今年はバッハと同年に生まれ、彼と共にバロック音楽後期の一時代を築いたとヘンデルとの関係を紐解く。
フランツ・リスト生誕200周年
2011年クラシック音楽のハイライト
今年は、18世紀を代表する音楽家フランス・リスト(1811~86年)の生誕200周年。ハンガリーに生まれ、指揮者、作曲家、ピアニストとして類稀なる才能を発揮したのみならず、音楽教育、演奏会の主催にも尽力したリストが音楽界に遺した多大な功績を称え、彼が11年間生活したテューリンゲン州で、1年を通して様々な記念コンサートや展覧会が開かれる。
ヴァイマールの中の 1人のヨーロッパ人
Ein Europäer in Weimar
リストが欧州各地を旅して行った音楽活動の軌跡をたどる。
コンサートや講演も多数開催。
6月24日(金)~10月31日(月)
Schiller-Museum
Neugasse 2, 99423 Weimar Schlossmuseum Weimar
Burgplatz 4, 99423 Weimar
www.liszt-2011.de
www.klassik-stiftung.de/liszt
しっとり大人の時間を味わう
この国で、クラシックと並んで人気の高い音楽ジャンルといえばジャズ。その音が、大人のムードを盛り上げてくれるからだろうか。本場米国をはじめ、国内外からプロの演奏家を招いて開かれるジャズの祭典も充実している。
ラインラント=プファルツ州
パラティア・ジャズ
palatia jazz
開催中~8月13日(土)
www.palatiajazz.de
修道院の廃墟やルートヴィヒ1世の夏の別荘、バイエルン王朝時代に建てられた要塞など、プファルツ地方の歴史的建造群を巡りながら、約3カ月間にわたり繰り広げられる祭典。欧州各地のスター奏者たちが、即興を交えながらジャズの多様性を紹介する。現代パーカッショニストの最高峰トリロク・グルトゥによる、息を呑むほどに美しい演奏も逃せない!
ノルトライン=ヴェストファーレン
メールス・フェスティバル
moers festival
6月10日(金)~12日(日)
www.moers-festival.de
ルール地方の西の端、メールスの夏を飾るのは、40年の伝統を持つジャズ祭り。景気後退の影響でここ数年は開催を危ぶまれたが、規模を縮小してでも続けたいという市民の熱い願いにより今年も開催。今回は米国で活躍する若き黒人ミュージシャンを中心に、欧州やアフリカなど、各地のジャズ・シーンを紹介する。日本を代表する箏奏者、八木美知依も登場。
ノルトライン=ヴェストファーレン
デュッセルドルフ・ジャズラリー
Düsseldorfer Jazzrally
6月10日(金)~12日(日)
www.duesseldorfer-jazzrally.de
参加アーティスト数約500人、観客動員数約30万人で国内最大規模を誇る毎年恒例のジャズ・イベントが、今年も街中をしっとりとジャズの音色に包み込む。ジャズ以外にも、ファンクやソウル、ブルース、ロックといった幅広いジャンルの音楽が披露されるこの祭りの今回のイチオシは、ハスキーボイスと甘い歌詞で聴衆を酔わせる人気シンガー、クルーゾ。
シュレースヴィヒ=ホルシュタイン
ジャズ・バルティカ
Jazz Baltica
6月29日(水)~7月3日(日)
www.jazzbaltica.de
「ピアノ・ピアノ ── エスビョルンを偲ぶ」をモットーに、キール、フズム、ザルツァウの3都市で開かれるジャズ祭り。ザルツァウで旗揚げし、世界的名声を博したスウェーデンの偉才ジャズピアニスト、エスビョルン・スヴェンセン。3年前に事故で急死した彼へのオマージュとして、2003年に彼と共演した米国人ギターリスト、パット・メセニーが再び舞台に立つ。
バーデン=ヴュルテンベルク
ジャズオープン・シュトゥットガルト
Jazzopen Stuttgart
7月1日(金)~10日(日)
www.jazzopen.com
“open”というタイトルが示す通り、1994年の初開催以来、同フェスティバルはあらゆる観客が音楽に親しめることをモットーに続けれられてきた。そのためプログラムも、ジャズに主軸を置きながらも、国境や音楽のジャンルの垣根を超えた多種多様な内容となっている。最終日には、ビッグ・アーティストらによる子どもたちのためのジャズ教室も開催。
ザクセン
ドレスデン・ジャズデイズ
Jazztage Dresden
11月4日(金)~15日(火)
www.jazztage-dresden.de
2001年にドレスデン・ウンカースドルフ地区の教会で、ジャズ・トリオ、オクラッツ・ブラザーズがイニシアチブを執って開いた小さなジャズ祭りは、今や国内外のトップ・アーティストが集う国際的なイベントへと急成長を遂げた。今年のプログラムは現在調整中だが、すでに英国ディキシーランド・ジャズの代表格、クリス・バーバーの参加が決定している。
新鮮な空気に包まれて
開放感と一体感を同時に感じられるオープンエアのコンサートやオペラ、演劇。真夏へと向かうこれからの季節、ジャンルの垣根を越えた盛りだくさんのプログラムを提供するイベントで、新たな音楽の楽しみを見付けよう。
ヘッセン
ヴェッツラー・フェスティバル
Wetzlarer Festspiele
5月31日(火)~6月29日(水)
www.wetzlarer-festspiele.de
バロック様式の街並みが美しいヘッセン州ヴェッツラーで行われる演劇祭の、今年のテーマは「人物像」。役者の衣装や化粧、仮面は時代や社会背景のみならず、人間の内面を表現するという効果に着目し、演劇における“人間の顔”に迫る。賢人ナータンやピーターパン、モーツァルトら、音楽と共に語られる人物たちの「真実の顔」に出会える舞台がここにある。
バーデン=ヴュルテンベルク
テント・ミュージック・フェスティバル
Zelt Musik Festival
6月29日(水)~7月17日(日)
www.zmf.de
クラシックやジャズ、ロック、ポップなどの音楽はもちろん、スポーツやダンス、コメディー・ショーまで、あらゆるエンターテイメントがフライブルクに大集結。舞台は巨大なテントの中に設置されているから雨が降っても安心、日焼けの心配もない。メジャー・デビューへの登竜門とされるこの野外フェスで、今年はどんなニューカマーが発掘されるのか!?
ノルトライン=ヴェストファーレン
ドリームタイム・フェスティバル
Traumzeit Festival
7月1日(金)~3日(日)
www.traumzeit-festival.de
デュイスブルクの工業団地跡に造られた公園。その昔は高価な銑鉄が集められていた場所に、今は明日を夢見る音楽の“原石”たちがやって来る。今回はスコットランドのポストロックバンド、モグワイが出演するほか、テーマ国をミャンマーとし、バラエティー豊かな同国の音楽を紹介する。期間中、ぶっ通しで音楽に浸りたい人は、会場近くのキャンプ場を利用し、泊り込みで楽しもう。
バーデン=ヴュルテンベルク
ボイス:合唱&ソング・フェスティバル
Stimmen: Internationales Festival für
Gesang und Chormusik
7月7日(木)~31日(日)
www.stimmen.com
人間が出す「声」に耳を傾け、その力強さ、美しさを感じ取ろうという主旨のフェスティバルが、ドイツ最南端の街レーラッハで開かれる。深みのある声と歌詞で聞き手の魂を揺さぶる米国テキサス州出身のソウル・シンガー、エリカ・バドゥによるオープニング・コンサートを皮切りに、歌や朗読、演劇など様々な分野でアーティストたちが自慢の美声を聴かせる。
バイエルン
フェスティバル in レジデンツ・ミュンヘン
Festtage in der Residenz
8 月26日(金)~28日(日)
www.residenzfesttage.de
貴族が栄華を誇ったルネサンス期に、地位、名誉、そして絶世の美女アナ妃を勝ち取ったバイエルン公アルブレヒト5世の祝賀の模様が、ミュンヘンのレジデンツを舞台に綴られる。道化あり、ムーア人のアクロバティックダンスあり、ルネサンス音楽や宮廷舞踊ありと、ドイツ語が分からなくても十分に華やかな宮廷の雰囲気を楽しめる内容となっている。会場では、小物や雑貨を販売するルネサンス・マルクトも開催。