金熊賞は誰の手に? 注目作が目白押し!
カンヌ、ヴェネツィアと並び、世界3大国際映画祭の1つに数えられるベルリン国際映画祭(通称ベルリナーレ)が、いよいよ2月6日に開幕!今年で64回目を迎える同映画祭は、世界中から400本以上の作品が集まり、およそ50万人の来場者数を記録する一大フェスティバルだ。今号では、目玉となるコンペティション部門のほか、パノラマ、フォーラム、パースペクティブ・ドイツ映画の各部門から、注目作品をご紹介。気になる作品をチェックして、ベルリンへ急げ!
全プログラムの詳細は
下記の公式ウェブサイトをご参照ください。
www.berlinale.de
コンペティション部門
Boyhood
米国監督:Richard Linklater
出演:Ethan Hawke, Patricia Arquette, Ellar Coltrane ほか
『ビフォア・ミッドナイト』(2013年)での高評価が記憶に新しいリチャード・リンクレイターが、同作で共同脚本を手掛けた俳優イーサン・ホークとアイデアを温めてきた作品。離婚した夫婦の子育ての様子を、子どもが17、18歳になるまでの12年間を通して追う。作品中の子どもの成長とその子役の実際の年齢をリンクさせるため、2002年夏から13年秋まで12年にわたって撮影を行ったという大作。
2月13日(木)18:00 Berlinale Palast
2月14日(金)10:00 Haus der Berliner Festspiele ほか計5 回
小さいおうち
日本監督:山田洋次
出演:松たか子、黒木華、片岡幸太郎ほか
2010年に直木賞を受賞した中島京子の同名のベストセラー小説を映画化。昭和初期、東京郊外の赤い三角屋根の「小さいおうち」に奉公していた女中の布宮タキは、そこである「秘められた恋愛」を見る。そしてその封印された秘密が、60年の歳月を経て解き明かされ、物語は現代へと繋がっていく。山田洋次監督作品のベルリン国際映画祭コンペ部門への出品は、2008年の『母べえ』以来6年ぶり5回目。
2月14日(金)22:00 Berlinale Palast
2月15日(土)9:00 Friedrichstadt-Palast ほか計4回
The Grand Budapest Hotel *オープニング作品
ドイツ、英国監督:Wes Anderson
出演:Ralf Fieness, Tony Revolori, Adrian Brodyほか
第1次世界大戦後の激動期、ヨーロッパの有名なホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」の伝説のコンシェルジュ、グスタヴ・Hは、一夜を共にしたマダムDからルネッサンス時代の絵画を譲り受けるが、そのマダムDが殺され、グスタヴは莫大な遺産をめぐる争いに巻き込まれていく。彼は親友のベルボーイ、ゼロと共にホテルの威信を掛けて謎解きに挑戦する。アンダーソン監督が独自の感性で描く人間模様にご注目。
2月7日(金) 12:00 Friedrichstadt-Palast
2月8日(土) 21:30 Eva Lichtspiele ほか 計6回
Kraftidioten (In Order of Disappearance)
スウェーデン、ノルウェー、デンマーク監督:Hans Petter Moland
出演:Stellan Skarsgård, Bruno Ganz, Pål Sverre Hagenほか
ノルウェー中部の町ベイトストーレンに暮らすニールズは、除雪車の運転手。妻とオスロで大学生になったばかりの息子を持ち、45歳にして早くも引退後の生活や孫の誕生を楽しみにしている幸福な父親だった。しかし息子を急性薬物中毒で亡くし、打ちひしがれて彼を死に追いやった人物に復讐すべく奔走するうちに、マフィアの麻薬抗争に巻き込まれていく。実直な父親像を軸に、真の正義とは何かを問う作品。
2月10日(月)18:45 Berlinale Palast
La tercera orilla (The Third Side of the River)
アルゼンチン、ドイツ、オランダ監督:Celina Murga
出演:Alian Devetac, Daniel Veronese, Gaby Ferreroほか
アルゼンチンのエントレ・リオス州の村に住む16歳の少年ニコラスの父は、地元の名医。しかし彼にはもう1つの家庭があり、二重生活を送っていた。ニコラスは父の唯一の嫡出子だが、父に会ってはならず、公の場で「パパ」と呼ぶことを禁じられている。ニコラスはそれを当然のこととして受け入れていたが、ある決断を迫られることになり……。奇妙な家族関係が、現代家族の問題点を浮き彫りにする。
2月12日(水)16:00 Berlinale Palast
2月13日(木)13:00 Zoo Palast ほか計5回
Macondo
オーストリア監督:Sudabeh Mortezai
出演:Ramasan Minkailov, Aslan Elbiev, Kheda Gazievaほか
チェチェンの紛争地帯から逃れて家族と共にオーストリアへ渡った少年。庇護申請が認められたものの、難民としての生活は決して楽なものではなかった。ドキュメンタリー作品を専門としてきたイラン系オーストリア人のSudabeh Mortezai監督による初の長編映画。アマチュア俳優を起用し、移民が受入国で様々な問題に直面しながらも、アイデンティティーを確立していく様子をリアリティー豊かに描く。
2月14日(金)16:00 Berlinale Palast
2月15日(土)9:30 Zoo Palast ほか計5回
Praia do futuro
ドイツ、ブラジル監督:Karim Aïnouz
出演:Wagner Moura, Clemens Schick, Jesuita Barbosaほか
美しい海岸が広がるブラジル北東部のリゾート地プライア・ド・フトゥーロでライフガードとして働くドナート。ドイツ人観光客2人を救えなかったことを悔い、自分が死なせてしまったと自責の念に駆られて転落人生を歩み始める彼を、弟のアイルトンは必死に助けようとする。著名な国際映画祭で、数多くの出品・受賞経験を持つカリム・アイノズ監督が兄弟の愛を荒海のような壮大なスケールで描く冒険物語。
2月11日(火)19:00 Berlinale Palast
2月12日(水)9:00 Haus der Berliner Festspipele ほか計5回
Zwischen Welten (Inbetween Worlds)
ドイツ監督:Feo Aladag
出演:Roland Zehrfeld, Mohamad Mohsen, Saida Barmakiほか
イェスパーは、連邦兵だった兄がアフガニスタンで命を落としたにもかかわらず、自身も連邦軍に入隊し、イスラム武装勢力タリバンから小さな村を守る任務に当たっていた。彼が村の住民からの信頼獲得に苦労する一方で、信頼を置くアフガニスタン人通訳者のタリクも文化の違いに悩まされていた。苦境下で、人間の善を信じる人々が取る行動とは。連邦軍のアフガニスタン駐留の実態に迫る戦争映画。
2月11日(火)16:00 Berlinale Palast
2月12日(水)9:30 Friedrich-Stadtpalast ほか計5回
パノラマ部門
家路
日本監督:久保田直
出演:松山ケンイチ、田中裕子、内野聖陽ほか
東日本大震災で、家も、先祖代々続く家業の農業も失った総一は、継母とデリヘル嬢として働く妻と共に狭い仮設住宅で悶々とした生活を送っていた。そんな折、20年前に生き別れた継母の実子・次郎が警戒地域で1人、田んぼを耕しているという知らせが入る。この出来事を機に、ばらばらだった家族の想いに変化が生じる。オール福島ロケによる、美しい日本の風景が心を打つ、家族再生の物語。
2月11日(火)20:00 Cinemaxx
2月12日(水)22:45 Cinestar ほか計5回
Love is Strange
米国監督:Ira Sachs
出演:John Lithgow, Alfred Molina, Darren Burrowsほか
39年間同棲したベンとジョージがついに結婚を決意。ところが、ハネムーンから戻った矢先に、ジョージが長年勤めていたカトリック学校を解雇されてしまう。貯金もない2人は家賃さえ支払えなくなり、ジョージは隣に住むゲイの警察官、ベンはテレビマンの甥一家の家に居候を余儀なくされるが……。役所での手続きや、慣れない新生活に翻弄される2人のおちゃめな初老が繰り広げるラブ(?)コメディー。
2月7日(金)21:00 Zoo Palast
2月8日(土)22:45 Cinemaxx ほか計4回
Hoje eu quero voltar sozinho (The Way He Looks)
ブラジル監督:Daniel Ribeiro
出演:Ghilherme Lobo, Fabio Audi, Tess Amorimほか
過保護な母親に嫌気が差していた盲目の少年レオナルド。自立できないもどかしさを募らせる彼に、親友ジョバーナが交換留学プログラムへの参加を持ち掛ける。そんな中、彼らのクラスにやって来た転校生の少女ガブリエル。レオナルドは彼女の存在によって心の変化を感じ始め、ジョバーナの計画を実行に移そうと考える。少年少女の心の機微を繊細に描いた青春映画が、甘酸っぱい恋心を呼び覚ます。
2月10日(月)20:00 Cinemaxx
2月11日(火)22:45 Cinestar ほか計6回
Concerning Violence
スウェーデン、米国、デンマーク監督:Göran Hugo Olsson
1960~70年代に起きたアフリカ奴隷解放運動の苦闘を追ったドキュメンタリー映画。支配者への抵抗や現況を織り交ぜ、アフリカの脱植民地化やより良い世界を訴える。アルジェリア独立運動で指導的役割を果たした精神科医で思想家のフランツ・ファノン(1925~61年)のテキスト“The Wretched of the Earth”を引用し、ナレーションを務める歌手ローリン・ヒルの声が臨場感を伴って心に深く突き刺さる。
2月9日(日)17:00 Cinestar
2月10日(月)14:30 Cinestar ほか計4回
フォーラム部門
Seolguk-yeolcha (Snowpiercer)
韓国監督:Joon-ho Bong
出演:Chris Evans, Song Kang-Ho, Tilda Swintonほか
温暖化が進み、地球はもはや住める場所ではなくなってしまう。わずかな生存者たちは地球の周りを永遠に走り続ける列車に乗って生き延びているが、列車内には階級制度が蔓延り、やがて貧困者たちの不満や怒りが爆発する。原作は、ボン・ジュノ監督が本屋で見付け、全3巻を貪るように読んだというフランスのコミック作品。彼がそれから8年もの年月を経て実現させた、肝煎りのSFアクション・スリラー。
2月7日(金)18:30 Cinestar
2月9日(土)22:15 Cubix
Kumiko, the Treasure Hunter
米国監督: David Zellner
出演:菊池凜子、勝部演之、Shirley Venardほか
東京での退屈な日々に辟易していたOLの久美子は、ある日フィクション映画を観て、そのエンディングで隠された身代金が必ず存在すると思い込む。彼女は取り憑かれたように、宝の在りかを探しに冬のミネソタへ向かう。謎に包まれた彼女の宝探しは、一体どこへ導かれるのか。劇中のフィクション映画とは、コーエン兄弟監督作『ファーゴ』(1996年)。鑑賞する際は、同作を事前にチェックしよう!
2月8日(土)22:00 Cinestar
2月9日(日)20:00 Cubix ほか計4回
パースペクティブ・ドイツ映画部門
Hüter meines Bruders (My Brother’s Keeper)
ドイツ監督:Maximilian Leo
出演:Sebastian Zimmler, Nadja Bobyleva, Robert Finsterほか
内科医として成功している兄グレゴアと、似て非なる弟ピーチーが、恒例のセーリングの旅に出掛ける。しかしその旅路で突如、弟が跡形もなく姿を消してしまう。弟を探して奔走する兄は仕事も家庭もないがしろにし始め、やがて弟の人格を帯びるようになっていく。観る者に「死や別れを通して、人は失った人間の大切さを痛感する。我々は自分が思っているほど強くない」というメッセージを投げ掛ける作品。
2月7日(金)19:30 Cinemaxx
2月8日(土)13:00 Colosseum ほか計3回
AMMA & APPA
ドイツ監督:Franziska Schönenberger, Jayakrishnan Subramanian
ドイツに住むインド人のジャイは、ドイツ人女性フランチェスカとの結婚の許しを双方の両親に乞うため、4人でインドへ向かう。愛のない結婚生活を30年も送る彼女の両親にとって、インド旅行など人生初! 一方、片田舎で見合い結婚をしたジャイの両親は、外国人を見たことがない。子どもたちの結婚話から問われる愛、そして信仰とは? 互いの両親を反面教師に、自らの愛の形を模索する2人のドキュメンタリー。
2月8日(土)19:30 Cinemaxx
2月9日(日)13:00 Colosseum ほか1回
ベルリン国際映画祭 主な上映会場
ベルリン映画祭の会場は全24カ所。普段は劇場やイベント、展示会場として使われている場所も、この2週間は映画祭のために衣替えし、街中が映画一色に染まる。期間中にベルリンを訪れたならば、普段の様相とはひと味違った華やかなフェスティバルの雰囲気を楽しめるだろう。
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盛り上がりを直に感じられるメイン会場
Berlinale Palast
普段はミュージカル専用劇場として使われているポツダム広場のベルリナーレ・パラストが、毎年、ベルリン映画祭が開かれる2週間だけは、このイベント専用の特設会場に様変わりする。ここでは開幕式のほか、コンペティション部門全作品の初回上映が行われるため、映画スターのレッドカーペットへの登場を待つファンやジャーナリストたちで溢れ、映画祭の最もホットな一幕を感じられる場所。
Marlene-Dietrich-Platz 1, 10785 Berlin -
ショー劇場が巨大シネマに様変わり
Friedrichstadt - Palast
欧州最大のモダンなショー劇場として、ベルリン中心部でひと際存在感を放つフリードリヒシュタット・パラストは、2009年からベルリン映画祭の会場として使用されている。100年以上もの歴史を誇るこの劇場の自慢は、収容人数1750の広大なホール。普段、華やかなエンターテインメント・ショーが開催されている劇場は最新の上映機材も完備しており、2週間の開催期間中は巨大シネマと化す。
Friedrichstr. 107, 10117 Berlin -
開放感溢れる近代的な芸術劇場
Haus der Berliner Festspiele
1963年にエルヴィン・ピスカトール総監督の下、「フライエ・フォルクスビューネ劇場」として産声を上げ、2001年にモダンな建物に生まれ変わった劇場は、緑に囲まれた、開放感溢れるガラス張りの構造が特徴。年間を通して世界中の芸術家がコンサートや演劇、朗読を行う屋内のホールは、どの客席からも舞台全体を見渡せる造りとなっており、まさに戦後モダニズム建築の理想を実現している。
Schaperstr. 24, 10719 Berlin -
リニューアルしたベルリナーレのホーム
Zoo Palast
3年におよぶ修復工事を経て、2013年11月にリニューアル・オープンした、7つのスクリーンを持つツォー駅前のシネマコンプレックス。記念建造物にも指定されている重厚な建物が、映画館として歩んできた長い歴史を感じさせる。1999年までベルリン映画祭の会場の中でも中枢部分を担い、数々のドラマを生んできたこの映画館が、今年再び、同映画祭の主要会場として復活を果たす!
Hardenbergstr. 29a, 10623 Berlin
コンペティション部門の審査員長はこの人!
今年、コンペティション部門の審査員長に選ばれたのは、米国の脚本家で映画プロデューサーのジェームズ・シェイマス。インディペンデント映画普及の立役者であり、米アカデミー賞監督賞・脚色賞・オリジナル音楽賞の3つのオスカーを獲得した『ブロークバック・マウンテン』(2005年)や『アイス・ストーム』(1997年)、『グリーン・ディスティニー』(2000年)など、主にアン・リー監督作品のプロデュースを手掛けていることで知られる。その他、イランの画家で映画監督のミトラ・ファラハニや『愛さえあれば』(2012年)で一躍その名を世界に轟かせたトリーヌ・ディルホム、ウォン・カーウァイ監督作品には欠かせない香港スター、トニー・レオンなど計7人が審査員を務める。
チケット販売所
Potsdamer Platz Arkaden | Alte Potsdamer Str. 7, 10785 Berlin |
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International | Karl-Marx-Allee 33 / Ecke Schillingstr. 10178 Berlin |
Haus der Berliner Festspiele | Schaperstr. 24, 10719 Berlin |
www.berlinale.de
ウェブサイト上部のメニューバー「PROGRAMM」より。