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ドイツ人と職場で仲良く ビジネスマナー&コミュニケーション

ドイツ人と働く日本人の中には、日独のビジネス文化の違いに戸惑った経験をお持ちの方も多いことでしょう。ドイツの会社で日本人が働くとき、あるいは日本の会社でドイツ人と働くとき、どのような問題が起こりやすいのでしょうか。スムーズなビジネスコミュニケーションには、異文化理解が不可欠。今回は日独の企業のビジネス事情に精通した人材エキスパートのお2人に、ドイツ人と仲良く、気持ち良く働くテクを教えていただきました。(編集部:林 康子)

ドイツの会社で働く

Q「日本の会社で数年の勤務経験があるという人が、ドイツの会社で初めて働くことになった場合、予めどのようなことを知っておくと良いでしょうか。日本の会社では通例であっても、ドイツではやっていけないことなどはありますか。
answer

田沼 久美子さん
Kienbaum Executive Consultants GmbH
田沼 久美子さん

世界20カ国にネットワークを持つドイツ最大手のヒューマンリソース・コンサルティング会社キーンバウム・コンサルタンツの日系企業グループに所属。日本人コンサルタントの下で在欧日系企業や日本進出の欧州企業を対象としたグローバルなリクルートメントおよびHRコンサルティング活動をサポート。

田沼さんから見たドイツ人の働き方
「ドイツ人にとって、 仕事は個人の生活の一部」

仕事に飲み込まれてしまうことがない。仕事は自分という核の周りを回っている様々な要素のうちの1つなのです。オンとオフの切り替え方が上手く、仕事中は集中し、自分が納得いくまで追及するプロ意識を持っていると思います。

プロフェッショナルに対応する

ドイツには新入社員であっても遠慮せず、自分がしたいことを積極的に提案する人が多いと思います。日本の会社の場合、入社したらまず上司や先輩がやっていることを真似て、きっちり覚えてから次のステップへ移る。しかし、そうこうしているうちに業務の中に取り込まれ、入社した頃に何を考えていたか、何を変えたいと思っていたのかを忘れてしまいがちです。

一方、ドイツではそのようなことはありません。極端な例ですが、入社2日目に「このオフィスの家具が気に入らないから替えてほしい」と言った人もいるほどです。ドイツで求められる人材は、その職種の業務を完璧にこなせる人。だからこそ、「私はこの会社でこれをやりたい、こう変えたい」と言いやすいのかもしれません。日本人は「会社が社員を育てる」という風習から遠慮しがちですが、ドイツでは指示を待つより、「自分が会社を改革してやろう」というくらいの積極的な姿勢でいた方が良いでしょう。

敬称と親称はしっかり使い分けを

ドイツ語では「Sie」と「Du」がそれぞれ敬称、親称として区別されますが、この2つの呼び方をどう使い分けるかは会社によって様々です。基本的に上司に対しては敬称を使いますが、上司が「ここではフランクに、友達同士のように呼び合おう」と言えば、それに従うでしょう。米系の企業では英語を使うことが多く、全員がファーストネームで呼び合うこともあるようですが、それでもドイツでは、上司には敬称を使うことが多い気がします。また、同僚同士、ポジションが同じくらいの人であれば親称が基本です。なお、Dr.(ドクター)やProf.(プロフェッサー)などの肩書きがある人に対しては、必ずそれを付けて呼びます。

スモールトーク同僚の輪に入るコツはスモールトーク

ドイツでは、日本で言う「飲み会」のようなものをランチタイムに行うことが多いですね。特にタイムカードを導入している会社の場合、勤務時間数さえ合っていれば、事前に上司の承諾を得て昼休憩を少し長めに取り、同僚と外食に出ることもあります。そのような機会に仲良くなれば、仕事以外でもイベントや映画に誘われることもあるでしょう。その他、一般的な集まりとして、大体どの会社もクリスマスパーティーを開催します。

そのような場で話す内容は、週末の予定や体験、趣味のこと、また食事のときであれば料理についてなど、スモールトークが多いですね。ただし、恋愛話やテレビの話などはあまり深く話しません。話すとしても、あくまで趣味の1つという感じ。特に恋愛に関する話をしないのは、そこで仕事とプライベートの線引きをしているのかもしれません。いずれにせよ、ドイツ人の同僚の輪の中に入りたいと思うなら、自分から積極的に話し掛けることが大事です。話すのはドイツ語より英語の方が得意という人が、ドイツ語での質問に対して英語で答え、上手くコミュニケーションを取っている姿を何度か見掛けたことがあります。それでも、反応するということは「聞いたことを理解しています」というアピールにもなるので、相手に受け入れられやすくなります。

休暇を取らないと呼び出される!?

休暇は、取らなければいけないものとされています。年間の有給休暇をすべて消化しなかった人は人事部から呼び出され、なぜ消化しなかったのか追及されることさえあります。ドイツは日本と比べて休暇が多い国なので、企業によっては年間休暇カレンダーを張り出し、各社員の休暇を年の初めにすべて決めてしまうところもあります。それを見れば、誰がいつ不在で、休暇代理が必要になるのかということが一目瞭然ですから。子どもがいる場合は、休暇を学校の休みと合わせたいでしょうし、クリスマスの時期は休暇の希望が重なりやすいので、その際は同僚とローテーションを組んだりして調整します。また、日本人であればお正月は家族と過ごすという伝統があるので帰国させてもらいたいと話せば、大抵の人は納得してくれると思います。

指示は理解できるまでしつこく聞く

上司に何かを指示され、内容がよく分からなかったのに分かった振りをするというのは、一番やってはいけないことです。それをすると、後で自分が一番困ることになりますから。どんなに上司が忙しそうなときでも、煙たがられて叱られることになっても、しつこく聞いて言われた内容をしっかり理解すること。同様に電話応対の際も、切った後に「なんだかよく分からない人から急ぎの電話があったな……」ということにならないよう、相手の名前と用件が聞き取れなかったら、分かるまで聞き返してしっかり理解することが大切です。ドイツでは、会話の中に「○○さん」と相手の名前を入れることは、好印象を与えますしね。

ドイツ人の部下を持つ / ドイツ企業の接待

Q日本の本社から駐在員としてドイツに派遣され、上司としてドイツ人の部下を抱えることになった場合、どのような点に気を付けるべきでしょうか。また、一定以上のポジションに就いていれば接待の機会もあると思いますが、その際、日独でマナーの違いはありますか。
answer

伊藤 朗子さん
Fischer HRM GmbH
伊藤 朗子さん

ドイツ国内をはじめとする世界全域での人材採用サポートを、各カントリー・デスクを通して提供しているドイツ系インターナショナル人材リクルート会社フィッシャーHRMに勤務。在ドイツ・在欧州の日系企業のための人材リクルート・サポートを主軸にする「日本デスク」を統括している。

伊藤さんから見たドイツ人の働き方
「ドイツ人は、仕事に対する考え方が合理的」

回りくどい社交辞令などなく、休暇を取る際も同僚や上司に遠慮はしない。「私がいない間、あなたの仕事が増えて大変でしょうけれど、あなたの休暇中は私の仕事が増えるわけで、お互い様」という付き合い方ができます。

「目的」へ向かう方法は個人の自由

日本では、よく「報(ホウ)・連(レン)・相(ソウ)」と言われるように、どのような業務でも報告、連絡、相談をしながら進めるのが基本ですよね。一方、ドイツ人の考え方は、課題と期限を与えられたら、あとはどのようなやり方で仕事を進めても良いというものなのです。「○月○日までにリポートを提出する」「売上を○○ユーロまで伸ばす」といった“Ziel=目的”が明確に定められたら、そこへ向かう過程は個人の自由。要は結果を出せば良いのです。実はここが、一番誤解を招きやすいポイントでもあります。  

日本人の上司にしてみれば、報告がないことを不満に思うことがあるかもしれません。逆に、ドイツ人の上司を持つ日本人の場合、課題と期限を指示されたら、当然それを遂行するための相談やミーティングの時間があるのだろうと考えますが、上司は何も言って来ず、いざ期限当日になってみたら何もできていなかったという事態になりかねません。  

また、残業に対する姿勢も違います。上司が残っている限り帰れないというような、日本人が持つ感覚はドイツ人にはなく、定時になれば帰ります。もちろん、やることが多いために残業をする人もいますが、それは次の日までに片付けておかなければ自分が困るからであって、会社や上司のためではありません。仕事は会社のためではなく、自分のためにするものという意識が根底にあるのです。日本人が仕事80%、プライベート20%の感覚でいるとすれば、ドイツ人の場合はそれぞれ50%というわけではなく、双方100%。ですから、仕事さえきちんとこなしていれば、定時で帰るのは当然のことなのです。一方、日本では残業をすることがモチベーションの表れと捉える風潮がありますよね。

これら仕事に対する価値観の違いを、仕事を始める段階でお互いに認識しておかなければ、コミュニケーションは成り立ちません。

ビジネス

褒めることで、信頼関係を築く

コミュニケーションを上手く取るためには、部下を褒めることも大切です。これは簡単そうでいて、日本人が特に苦手としていることなのですが、褒めてあげることでドイツ人は自分が期待され、認められているのだと分かり、それがさらなるモチベーションに繋がって、そこから会社に対するロイヤリティーも変わってきます。批判ばかりされると聞く耳を持たなくなりますが、普段から褒めていれば信頼関係が生まれ、不満や批判も聞き入れられやすくなります。ですから、叱るよりはどんどん褒めてあげると良いと思います。褒めることは、ただでできますしね。

権限を与え、横へのキャリアアップを支援

ドイツ語圏の人々の転職理由の上位3位はお金(報酬)ではなく、仕事の内容に関係しています。働き始めの頃は、限られた枠の中で新しい仕事を次々に覚えていきますが、3年くらい経つと、どうしても仕事がルーティン化してきます。そこで必要なのが、できるだけ権限を増やし、業務の幅を広げていくこと。「キャリアアップ」というと、日本では一般的に上へ向かうこと、昇進を指しますが、役割や課題、権限を増やしていくという横へのキャリアアップもあるのです。これは案外思い付かないことですが、それが与えられないとドイツ人は辞めてしまいます。良い働きをしてくれる社員には、会社に長くいてほしいですよね。会社にとって必要な人材をリテンションするという意味でも、入社3年目くらいに頃合を見計らって権限を増やすことをお勧めします。

接待でもビジネスの話をする

日本ほど頻繁ではありませんが、ドイツの会社も接待は行います。接待のあり方も異なるので、ここでは私が以前務めていたドイツの会社での失敗談をお話ししましょう。自社の商品を売り込むため、日本の会社とアポを取って出張し、会食をすることになりました。先方としては、ドイツからはるばる来てくれたということで、接待のつもりだったと思います。皆でお酒を飲んで楽しく歓談し、「そろそろお開きにしましょうか」という場面で私の上司がビジネスの話を始めたのです。きっと上司は、そのような場でも最後に仕事の話をするというやり方に慣れているから、そうしたのでしょう。しかし、その瞬間に和やかだった場の雰囲気がぶち壊されましたね。

日本では、初めての接待の場でビジネスの話はしないですよね。そこでは世間話などをしてお互いをよく知る機会にとどめ、その後、何度もやり取りをする中でようやく仕事の話を切り出せるようになります。商談がまとまるまでに10段階あるとしたら、初回の接待というのはその初めの1歩だということはお互いにとって暗黙の了解であり、その上で会っているわけですから、そこで野暮な話はしません。しかし、ドイツ人は合理的に考える人たちですから、目的がビジネス関係の締結なのであれば、その場で何らかの結果を出して帰りたいのでしょう。ドイツの会社では、接待の場でもビジネスの話をすると思いますよ。

電話ドイツ語で電話

秘書など、特に印象が大事な職種の場合、明るい声で、できるだけポジティブなことを言うのが◎。たとえネガティブなことでも、心を込めて言うことで気持ちを伝えましょう。

お役立ちフレーズ

Vielen Dank für Ihren Anruf / fürs Warten!
お電話ありがとうございます / お待たせしました。

Wie war denn nochmal Ihr Firmenname, Herr Schmidt?
シュミットさん、もう一度御社名をお伺いできますか?

Es tut mir sehr leid, wir müssen aber den Termin absagen.
大変申し訳ございませんが、アポイントメントをキャンセルしなければなりません。

Sie haben Recht, das können wir aber leider nur schwer ändern.
仰ることはごもっともですが、それは変更しかねます。

誰かに電話をつなぐことが目的の場合、日本の会社では余談は良しとされず、事務的な受け答えに徹する傾向がありますが、ドイツでは、何度かやり取りしている人であれば「Guten Tag, Frau Mayer. Wie geht es Ihnen? =マイヤーさん、お世話になっております(こんにちは)。お元気ですか?」などと言うことで、好感度がアップします。

 
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