日照時間が延び、
遠出するのに最適な季節がやって来ました。
「燦々と照り付ける太陽の光を浴びに、
ドイツから国外へ羽を伸ばしたい!」
という方にお勧めなのが、
南仏らしい穏やかさと港町の活気を併せ持つ
フランス第2の都市マルセイユ。
日光の力でエネルギーをチャージしたら、
この街が誇る文学、建築、
そして食の世界を堪能しよう!
(取材・文:フランスニュースダイジェスト Kei Okishima)
ドイツからの行き方
飛行機であれば、ベルリンからマルセイユ・プロヴァンス空港へ直行便で行くことができる。所要時間は約2時間。デュッセルドルフやフランクフルト、シュトゥットガルトなど、その他の主要空港からはアムステルダムやパリ、ジュネーブなどを経由することになる。
マルセイユ・プロヴァンス空港から市内のマルセイユ・サン・シャルル(Marseille-Saint-Charles)駅までは、シャトルバスで約30分。パリ旅行と併せてマルセイユも訪れたいという場合には、フランス国鉄(SNCF)が昨年、営業を開始した格安列車ウイゴー(OIGO) を利用するという手もある。パリとリヨン、ヴァランス、アヴィニョン、エクス・アン・プロヴァンス、マルセイユ、ニーム、モンペリ エを結んでおり、チケット料金は最安値のもので片道10ユーロから販売されている。パリからの所要時間は3時間強。パリの出発駅はRER線のマルヌ・シェシー(Marne-la-Vallée-Chessy)駅となるのでご注意を。
OUIGO公式ホームページ www.ouigo.com港町を見守ってきた800年の歴史
旅の始まりはノートルダム・ド・ラ・ガルドから
19世紀まで、貿易の中心地として栄えたマルセイユ。旧港の南の丘、147.85メートルの高台に、ノートルダム・ド・ラ・ガルド寺院(Notre-Dame de la Garde)はそびえる。現在の寺院は19世紀に建築家エスペランデュによって建てられたものだが、歴史をたどれば基となった寺院は、1214年に丘の上に建てられていた。今年、誕生から800年を迎える。寺院の上には黄金に輝く9.72メートル、重さ約1トンの聖母マリア像が町を見下ろすように立っている。この黄金に輝く聖母マリアは「ボンヌ・メール(良き母)」と呼ばれ、これまで漁を、町を、そして住民を見守ってきた。内部のモザイク装飾は圧巻。内部には天井からいくつもの船がつり下げられていたり、海にまつわる絵画などが飾られていたりと、漁や平癒に対する感謝の気持ちから納められた奉納品が飾られている。ここから見るマルセイユは絶景。市内から徒歩で来るには、かなりの坂道を登ることになるので、バスが便利。
Basilique Notre-Dame de la Garde
Rue Fort du Sanctuaire 13281 MarseilleTel: +33 (0)4 91 13 40 80
開館時間:4月~9月 7:00-19:15、10月~3月 7:00-18:15(9:00以降が望ましい)
アクセス:旧港(Vieux-Port)からバス 60番で、
ノートルダム・ド・ラ・ガルドのパーキングまで
www.rtm.fr
小説の舞台で一休み
モンテ・クリスト伯の舞台、イフ島へ
1529年、フランソワ1世が町を守るための要塞として建設したイフ島の城シャトー・ディフ。その後、逃亡不可能な建築スタイルと立地から、監獄として使用されるようになった。フランス革命のリーダーとなったミラボーもここに監禁され、「専制政治論」を完成させた場所として知られている。また、作家アレクサンドル・デュマは、フランスの新聞「ジュルナル・デ・デバ」に連載した「モンテ・クリスト伯(巌窟王)」の小説の舞台にシャトー・ディフを選んだ。主人公、エドモン・ダンテスは無実の罪でシャトー・ディフに投獄され、14年間をこのイフ島で過ごしたという設定だ。シャトー・ディフの窓からは、マルセイユの高台にそびえるノートルダム・ド・ラ・ガルドが見える。
Château d'If
Embarcadère Frioul If1, Quai de la Fraternité, 13001 Marseille
4月1日~5月15日 9:30-16:45、
5月16日~9月16日 9:30-18:10、
9月17日~3月31日 9:30-16:45(月休)
アクセス
マルセイユ市内からイフ島までは旧港からフェリーで約20分イフ島行きのフェリー
Frioul If ExpressTel: +33 (0)4 96 11 03 50
www.frioul-if-express.com
ル・コルビュジエの集合住宅
ユニテ・ダビタシオンを体感
20世紀最大の建築家と言われるル・コルビュジエが建てた巨大な集合住宅「ユニテ・ダビタシオン」。中でも一番初めに建てられたマルセイユのユニテ・ダビタシオンは、今日でも世界中の人を魅了している。
この集合住宅は第2次世界大戦後復興期の1947~52年、理想的な生活のスタイルを実現するために造られた。137メートル×56メートル×24メートル、18階建てという巨大な建物の中には23種類の異なる部屋のタイプがあり、1600人が生活することができる。この集合住宅は1つの玄関ホールから出入りするようになっており、建物全体が1つの小さな町のようなコンセプトで造られている。1階部分はピロティーになっていて、この巨大な建物を柱がしっかりと支えている姿は圧巻。ピロティーのおかげで自転車を置いたり、自由に通り抜けることができたりと、ゆったりとしたスペースが確保されている。多くの部屋がメゾネット形式になっているため、エレベーターは3階、6階のように数階ごとに停止するのも 特徴の1つ。中間階には共同のスペースや店舗があり、屋上にはプールや運動ができる場所などが設置されている。屋上ではマルセイユの空、海、山、そして太陽を満喫できる。
コルビュジエの建築内で宿泊
ユニテ・ダビタシオンの見学は、個人で見る分には無料で、売店などがあるエリアや屋上を見学することができる。しかし、この世界にゆっくりと浸りたい建築ファンやコルビュジエファンにお勧めなのが、同集合住宅内にあるホテルだ。部屋は16平方メートルまたは32 平方メートルがあり、1~ 4人まで宿泊可能。 世界中のファンが予約する人気ホテルなので、旅が決まったら早めに予約を取ろう。
ユニテ・ダビタシオン内にはミシュラン・ガイドにも紹介されているレストラン「Le Ventre de l'Architecte」がある。宿泊が難しい人は、こちらでゆっくりと食事を堪能してみては?
Unité d'Habitation
280, Boulevard Michelet 13008 Marseille個人での見学(共有部分のみ可能)
毎日9:00-18:00ガイド付き見学
火~土 14:30~、16:30~(各1h30、要予約)www.marseille-tourisme.com
(Visites-GuidéesからLe Corbusier en exclusivitéを選択)
ホテル
Hôtel Le CorbusierTel: +33 (0)4 91 16 78 00
www.gerardin-corbusier.com
レストラン
Le Ventre de l'ArchitecteTel: +33 (0)4 91 16 78 23
www.leventredelarchitecte.com
アクセス
マルセイユ駅から地下鉄2番線(Dromel方面)ロン・ポワン・ドゥ・プラド(Rond Point du Prado)駅下車。
その後21番、21S番、22番、22S番のいずれかのバスで
ル・コルビュジエ(Le Corbusier)駅下車。
肌が喜ぶ植物オイル
職人が作るマルセイユせっけん工場を見学
マルセイユのせっけんは、植物性のオイルと苛性ソーダを混ぜたもの。ルイ14世の時 代の1688年10月5日、財務総監を務めていたジャン=バティスト・コルベールにより、原料の油脂はオリーブ・オイルにすることなど、マルセイユのせっけん作りの製法が定められた。現在でも伝統的な方法で作られているマルセイユせっけんは、72%の植物オイルを含んでおり、かま炊きけん化法で植物オイルとソーダを煮詰め、その後、塩水で不純 物を取り除くなど、約80時間の行程を経て生み出されている。
マルセイユせっけんを代表する「植物油脂72%」と刻印された600gのせっけんは、お土産にぴったり。ほかにも、南仏で特に有名なスポーツ、ペタンクの形をしたせっけんや、パスティス(後述)の香りがするせっけんなどもお勧めだ。また、特別注文で、結婚式の引き出物用に名前が刻印されたせっけんを注文する人や、生まれた赤ちゃんと同じ重さのせっけんを記念に作ってほしいという依頼を受けることもあるのだそう。面白いアイデアがあれば、ぜひ事前に問い合わせをしてみよう。
左)圧延機に掛け、せっけん素地を均一にしている 右)最後に丸いせっけんの形にプレスする
せっけん作りを見学できるお店
Savonnerie Marseillaise de la Licorne34 Cours Julien 13006 Marseille
Tel: +33 (0)4 96 12 00 91
www.savon-de-marseille-licorne.com
せっけん作り見学
11時、15時、16時(日祝以外)、無料憲章で守られている伝統スープ
ブイヤベースに舌鼓
その昔、漁師たちが売れそうにない魚や売れ残った魚などをスープにして食べたことから始まったブイヤベース(La bouillabaisse)は、今やマルセイユの代表料理として知られている。伝統的なマルセイユの本格派ブイヤベースは1980年に制定 された「ブイヤベース憲章」で守られており、材料や調理法には決まりがある。魚は地中海の岩礁に生息するもので、ホウボウ、アンコウ、マトウダイ、カサゴ、足長ガニなどの中から4種類以上の魚を使わなければならず、エビ類や貝、タコ、イカなどは入れない。ベースとなるスープは決められた小魚でだしを取る。ほかに使用される材料は、塩、タマネギ、コショウ、パセリ、じゃがいも、ニンニク、オリーブ・ オイル、サフラン、フェンネル、オレンジの樹皮など。ルイユという特製のソースと、ニンニクの香りが付けられたクルトンと一緒に提供される。最初にスープのみを客に出し、その後に魚を別の皿に盛り、提供するというのが基本的なパターンだ。
市街では複数のレストランがブイヤベースを提供しているが、きちんと調理をしているレストランでは待ち時間も長いので、余裕を持って行こう。また、量もかなり多めなことをお忘れなく。
お薦めレストラン
小さな港の前にあり、マルセイユの雰囲気にゆっくりと浸りながら静かに過ごすことができるレストラン。
Chez Fonfon
140, Vallon des Auffes 13007 Marseille
Tel: +33 (0)4 91 52 14 38
www.chez-fonfon.com
気になる伝統料理・菓子
Pieds et paquets
ピエ・エ・パケ
羊の足と内臓をワインとトマトソースで煮込んだ伝統料理。
Navette
ナヴェット
舟の形をしたビスケット。2月の聖燭節には、クレープではなくナヴェットを食べる習慣も
ご当地ものにこだわって
マルセイユでアペリティフ
アペリティフの歴史をたどっていくと、古代ローマ時代から存在していたことが分かる。古代ローマ人は食欲を増進させるため、食事の前に少しアルコールを含む特別な効能を持った飲み物を飲む習慣があった。アペリティフという言葉の語源は、ラテン語の「aperire =開く」というもの。この伝統は世紀を越えて受け継がれ、19世紀には食前に飲むすべてのアルコール飲料のことを「アペリティフ」と呼ぶようになった。マルセイユでは、アペリティフはとても大切。カフェやバーで、また、友人を自宅に招いてゆったりとしたア ペリティフの時間を楽しんでいる。日が長くなるこれからのシーズン、テラスのあるカフェでゆっくりと楽しもう。
マルセイユ生まれのリキュール「パスティス」
マルセイユのアペリティフとして欠かせないのが、マルセイユ生まれのアルコール、パスティスだ。パスティスの前身ともいわれるのが、19世紀、フランスの芸術家たちを魅了したアルコール「アブサン」。強い陶酔感と興奮をもたらすアブサンは、ゴッホ、ゴーギャン、ピカソ、ロートレック、ランボー、ボードレールなど、フランスにいた多くの芸術家を魅了した魔のお酒と言われている。しかし20世紀に入りアブサンの製造が禁止され、その代わりにポール・リカールがアブサンの製法を改良して作ったのがパスティスだった。スターアニスやフェンネル、リコリスの香辛料が強いため、スーッとした後味が暑い気候のマルセイユに爽快感を与える。ちなみに「Pastis de Marseille(マルセイユのパスティス)」と表記するためには、アルコール度が45%以上で1リットル当たり、2g以上のアネトール(アニスの主成分)が含まれていなければならない。パスティスは水割りが一般的で、水を入れると白く濁るのが特徴。慣れてきたらカクテルにも挑戦しよう。有名どころでは、グレナデン・シロップ(sirop de grenadine)を加えたLa tomate、ミントのシロップ(sirop de menthe)を加えたLe perroquetなど。
マルセイユご当地ビール La Cagole
マルセイユにノスタルジックな思いを抱える幼なじみの友達2人が作ったビールメーカー。ビールの色はマルセイユの旧港(Vieux-Port)の水の色と同じだとか!初めはパニエ地区の小さなブラッセリーで作られたそうだが、今やマルセイユのご当地ビールとして浸透し、市街のブラッセリーやバー、スーパーで購入できる。
www.lacagole.com
マルセイユ発の炭酸飲料 Fada Cola
お酒はちょっと、という人には、マルセイユ発の炭酸飲料水Fada Colaを。レモネードなどの炭酸飲料を展開している。La Cagoleビールも、Fada Colaも、パッケージのイラストがかわいいので、ちょっとした手土産にも喜ばれるかも。
www.fadacola.fr