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ドイツにだってビーチはある!この夏はドイツの海へ出かけよう

ドイツの水辺と聞いて、まず思い浮かぶのは河川や湖。真夏といえどもギラギラと太陽が照り付けることが少ないこの国にいると、南方の海への憧れが強くなりがちだが、ドイツにも魅力的なビーチが存在する。北海もバルト海も、北部ではあるものの、実は夏季には晴れの日が多い温暖なリゾート地。コロナ規制も解除され、いよいよ旅行シーズン本番に向けて、そんなドイツの海の魅力をたっぷり紹介する。(文:ドイツニュースダイジェスト編集部)

参考:本誌979号「この夏、北海・バルト海へ」、www.nordseetourismus.dewww.ostsee-schleswig-holstein.de

この夏はドイツの海へ出かけよう

Nordsee北海

北海

ノルウェー、デンマーク、ドイツ、オランダ、ベルギー、フランス、英国の島々に囲まれた海。ドイツ国内の北海沿岸地域は、ニーダーザクセン州とシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州にまたがり、海岸の長さは約1300キロメートルに及ぶ。北海を象徴する光景は、フリースラント地方の干潟。1990年代までは、ドイツから北海へ出て、北欧諸国との国境地帯の非関税ゾーンで食品やタバコ、蒸留酒、香水などを買う「Butterfahrt」(バター航海)というツーリズムが行われていた。

北海のおすすめビーチ

Syltズュルト島

ズュルト島

スイスの人気作家クリスティアン・クラハトのデビュー作 『Faserland』(1995)の舞台となった北フリースラント地方最大にしてドイツ最北端の島。錨(いかり)型の特徴的な形で、東側には干潟があり、西側の砂浜は38キロメートルにも及ぶ。延々と続く海岸に点在する無数のシュトラントコルプはこの島の風物詩。
www.sylt-tourismus.de

Borkumボルクム島

ボルクム島

湾流が温風を運び込んでくるため、1年を通して晴れの日が多く、温暖な気候が特徴の島。26キロメートルに及ぶボルクムの海岸はのんびりと散歩するのにぴったり。ミネラルたっぷりの潮風で新陳代謝を促し、リフレッシュできる。海水のパワーを利用したタラソテラピーを体験できる施設も充実。
www.borkum.de

Cuxhavenクックスハーフェン

クックスハーフェン

エルベ川河口にある街で、北部で話される低地ドイツ語では「Cuxhoben」(クックスホーベン)と呼ばれる。海水浴はもちろん、裸足で干潟を歩いたり、海岸で馬車に乗ったり、温水プールで泳いだりと、年間を通して楽しめるスポット。漁業が盛んな街なので、ハンブルクの台所にもなっている。
http://tourismus.cuxhaven.de

そのほかの見どころ

Leuchtturm Arngastアルンガスト灯台

アルンガスト灯台

赤と白に塗られた灯台は、海辺の光景に欠かせないものの一つ。ヤーデブーゼン(Jadebusen)の入り江の中洲に立つアルンガスト灯台は、1910年にヴィルヘルムスハーフェン一帯を照らすために建造された。北海で最も伝統のある灯台として、文化財建造物にも指定されている。

Wattenmeerワッデン海

ワッデン海

オランダ、デンマーク、ドイツの三カ国にまたがる水域と湿原。北欧でも希少な動物・鳥類・植物相の豊かな生息地として、2009年に世界自然遺産に登録された。ドイツ国内ではニーダーザクセン、ハンブルク、シュレスヴィヒ=ホルシュタインの3州が、当該地域を国立公園に指定して管理している。
www.nationalpark-wattenmeer.de

Deutsches Auswandererhaus Bremerhavenブレーマーハーフェンの国外移住者博物館

ブレーマーハーフェンの国外移住者博物館

海上交易といえば、物流に焦点が当てられがちだが、海辺は人が出入りする場所でもある。ブレーマーハーフェンは、大航海時代から1890年までに約1200万人が米国へ旅立った起点。この国外移住者博物館では、各移住者の家族構成から渡米の理由、名前の由来まで、その歴史をたどることができる。
www.dah-bremerhaven.de

Ostseeバルト海

リューゲン島

スカンジナビア諸島に囲まれた海洋で、ドイツのバルト海沿岸地域はメクレンブルク=フォアポンメルン州とシュレスヴィヒ=ホルシュタイン州にまたがり、海岸の長さは2247キロメートル。西海岸には、バルト海が現在の地形になったとされる、氷河期における氷河の衝突の跡が氷堆積などの形で残っている。この地域で、造船業と並んで最も盛んな産業は観光業。特に7〜8月は1年で最も多くの旅行者でにぎわう。シリヤラインやステナラインなどのバルト海クルーズも好評を得ている。

バルト海のおすすめビーチ

Rügenリューゲン島

リューゲン島

935キロ平方メートルに上るドイツ最大の島。ドイツ本土の街シュトラールズントと橋で結ばれており、フェリーで渡ることも可能。富裕層が集まる高級リゾート地としても有名で、島を囲む約60キロメートルの海岸には、ヌーディストビーチ(FKK)や、犬を連れて入れる場所、ビーチスポーツができる場所などが点在している。
www.ruegen.de

Fehmarnフェーマルン島

フェーマルン島

20世紀を代表する表現主義画家のエルンスト=ルートヴィヒ・キルヒナーが毎年夏に訪れ、「地上の楽園」と褒め称えたといわれる島。国内で最も日照時間が長い場所の一つで、太陽の光が肥沃(ひよく)なバルト海に輝く様子から、1580年にはデンマーク王フリードリヒ2世から青地に金の王冠をあしらった封建旗を与えられた。
www.fehmarn.de

Kellenhusenケレンフーゼン

ケレンフーゼン

リューベック湾にあるケレンフーゼンは、海辺には人工の海水浴施設が完備されており、気軽にビーチを楽しみたいという人や、家族連れにもぴったり。海に背を向ければ、そこには586ヘクタールの広大な森が広がる。ビーチでひと泳ぎした後に、のんびりと自然散策を満喫するのもおすすめ。
www.kellenhusen.de

そのほかの見どころ

Leuchtturm Bastorfバストルフ灯台

バストルフ灯台

レーリック(Rerik)とキュールングスボルン(Kühlungsborn)という街の中間に位置する、バルト海沿岸にある七つの灯台の中で最も高い場所に立つ灯台。高さ20.8メートルのレンガ造りの灯台の展望台からは、天気の良い日にはフェーマルン島や、はるかデンマークの島々までが見渡せる。

OZEANEUM Stralsundシュトラールズントのオツェアネウム

シュトラールズントのオツェアネウム

海洋博物館と水族館が一緒になったオツェアネウムは、2010年に欧州最優秀美術館賞を受賞したシュトラールズントの人気スポット。北海とバルト海、北大西洋をテーマにした常設展のほか、さまざまな魚や甲殻類、ペンギンなど海の仲間たちに会える。展示ホールに吊るされた等身大のシロナガスクジラの模型は圧巻だ。
www.ozeaneum.de

HANSA-PARK Sierksdorfハンザ・パーク・ジールクスドルフ

ハンザ・パーク・ジールクスドルフ

広大な海を眼前に、潮風を感じながら絶叫マシーンに乗って大はしゃぎ!リューベックの入り江に広がる約46ヘクタールのテーマパークには、大人も子どもも楽しめる計70のアトラクションのほか、季節ごとに花木が植え替えられる庭園も。パレードやサーカスなどのプログラムも充実している。
www.hansapark.de

ドイツのビーチをもっと楽しむ海辺での過ごし方

休暇の目的地を海にするからには、海辺ならではの滞在を満喫したいもの。どこに泊まるか、何をして遊ぶか、何を食べるか……。ドイツのビーチをもっと楽しむためのヒントを伝授する。

ビーチで見かけるあの椅子

泊まる

Strandkorb(シュトラントコルプ、「浜辺の籠」の意)は、ドイツのビーチで必ず見かける独特な椅子。砂浜にいくつも並べられ、各々がくつろいでいる様子は夏の風物詩でもある。1882年にロストックの籠細工職人がリュウマチを患っていた女性のために作ったのがはじまり。柳の枝で編まれたシュトラントコルプは、彼女を浜辺の強い風と日差しから守ったという。その後瞬く間に人気となり、ドイツの海辺に欠かせない存在となった。ビーチによってはオンライン予約もできるので、ぜひ海へ出かけるときは利用してみよう!

泊まる

泊まる

旅の宿泊施設といえばホテルが定番だけれど、ハイシーズンは早めの予約が必須。長期間滞在する場合はペンションやバンガロー(Bungalow)、貸し別荘(Ferienwohnung / Ferienhäuser)などを利用するという手もある。予約のストレスを避けたいという人は、キャンピングカーを借りて行くのもおすすめ。北海・バルト海の海辺にも、車を止めて車内で寝泊まりできるキャンプ場(Campingplatz)が数多く存在するので、事前に目的地付近の適した場所を調べておこう。

泊まる

貸し別荘の検索サイト
www.traum-ferienwohnungen.de
www.strandurlaub-nordsee.com(北海)
www.ostsee-strandurlaub.net(バルト海)

キャンプ場の検索サイト
www.camping.info

食べる

食べる

ニシンのマリネのサンドイッチ

北海・バルト海地域で味わいたいのは、もちろん豊富な海の幸! 生ガキやカレイのフライ、ニシンのマリネのサンドイッチなどに加え、タラの幼魚やコイなども。伝統的な料理を試すなら、「 Schnüsch」はいかがだろうか。これはドイツ北部で夏に食べられる定番料理で、ジャガイモ、豆、グリンピース、ニンジン、クリームソースを基本に、タマネギやベーコン、ハム、若ニシンなど、地方によって異なる食材が入った煮込みスープだ。この地域に定住したゲルマン人によって食されていたことに起源を持つという。肉料理なら、特にリューゲン島の人々に親しまれている「Königsberger Klopse」(仔牛と豚のひき肉を使った肉団子のホワイトソースがけ)がおすすめ。ほかにも生クリームをたっぷり載せたラム酒入りのココア「Tote Tante」や、小さな丸い焼き菓子の「Futjes」、梅ムースと生クリームをパイ生地で包んだ「Friesentorte」など、デザートも思う存分楽しんで。

遊ぶ

遊ぶ

宿泊場所が決まったら、滞在中の遊びの計画もお忘れなく。ジェットスキーにウィンドサーフィン、スキューバダイビング、スノーケリング、ボート、ヨット…… 海でのバカンスの醍醐味の一つは、思う存分ウォータースポーツを楽しめること。ヨットはさまざまな種類のものがチャーター可能。ドイツの海でヨットに乗る体験は、生涯の思い出に残るはず。ほかにも干潟を散策したり、馬車に乗ったりと、海辺ならではのアクティビティーを満喫しよう。さらに旧市街地で美しい建築物を眺めたり、博物館で歴史を学んだりと、その島特有の歴史や文化に触れるのもおすすめ。

北海・バルト海の夏のイベント

北海

Wattolümpiade in Brunsbüttel泥オリンピック

泥オリンピック

干潟で泥んこ遊びをする風習がある北海のブルンスビュッテルで、「汚いスポーツは健全なこと」をモットーに2004年から毎年開かれている泥オリンピック。オリンピックという名が付くだけあって、本格的なスポーツ大会として定着しており、泥まみれになりながらハンドボールやサッカー、バレー、そりレース(干潟で使う木のそりを押して走る)など、真剣勝負が繰り広げられる。参加者はもちろん、観客も一体となって大いに盛り上がる大会だ。

2024年8月17日(土)
www.wattoluempia.de

北海

Husumer Hafentageフーズム港祭

フーズム港祭

今年で40周年を迎えるフーズム港祭。5日間の祭りの会期中、絵のように美しいフーズムの港を背景に、ポップスからロック、マーチングバンドや北ドイツの民族音楽まで、さまざまなスタイルのバンドの生演奏が披露される。街中が陽気な音楽で満たされるとともに、ストリートフードの屋台や観覧車、街中のツアー、港での綱引きなどのアクティビティーも満載。地元の人々も観光客も思いっきり楽しめる内容となっている。

2023年8月9日(水)~13日(日)
www.husum-tourismus.de

バルト海

Kieler Wocheキーラー・ヴォッヘ

キーラー・ヴォッヘ

シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州の州都キールで毎年1週間にわたって開かれる北欧地域最大の夏祭り。その起源は1882年に当地で開催されたセーリングレガッタといわれ、今なおセーリングはこの祭りの最大のハイライトだ。世界各国から約4000人のヨット操縦者が集まり、その腕を競う姿は壮観。花火や音楽ライブなどのプログラムが、お祭りムードをさらに盛り上げる。

2023年6月17日(土)~25日(日)
www.kieler-woche.de

バルト海

Hanse Sail Rostockハンゼ・セイル・ロストック

ハンゼ・セイル・ロストック

ハンザ時代の興隆の名残りを今に伝えるロストックで行われる世界最大級の帆船祭り。最新の大型帆船から現在では使われていない旧型帆船まで、約200隻の帆船が一同にバルト海上を帆走する。ハイライトは、ドイツで最も美しいセーリングエリアであるヴァーネミュンデで行われる伝統的な帆船「スクーナー」のレガッタ。観客が実際に乗って操縦できる体験プログラムも。約4キロの遊歩道では、バルト海地域の伝統工芸品や郷土料理を売る屋台のほか、移動遊園地も出現する。

2022年8月10日(木)~13日(日)
www.hansesail.com

バルト海の住人にインタビューフェーマルン島での生活はどうですか?

ここまでドイツの島の魅力をたっぷり紹介してきたが、実際のところ、島での暮らしはどのようなものだろうか?ライプツィヒからバルト海のフェーマルン島(p9)に移住して約1年のフィル・ベッカーさんに、島暮らしの魅力や都市生活との違いを聞いた。

お話を聞いた方

フィル・ベッカーさん

フィル・ベッカーさん
Phil Becker

島暮らし歴1年。仕事・プライベート共に、大好きなカイトサーフィンを満喫中。

Q1. 移住したきっかけは?

フェーマルン島に住み始めたのは転職がきっかけです。現在働いているのは、カイトサーフィン用品を扱う会社。インターナショナルに展開しているブランドですが、その拠点がフェーマルン島にあり、カイトサーフィン用品に関わるサービスや修理の提供、技術的な問題についてのお客様へのアドバイスなどを行っています。もともとカイトサーフィンが趣味で、さらにこのブランドの大ファンだったこともあり、この会社のウェブサイトで求人を見つけました。この仕事がなければ、フェーマルン島に引っ越すことはなかったと思います。

Q2. 都市と島での生活には、どんな違いがありますか?

まず、ライプツィヒに住んでいた時よりも自由な時間が増えました。自然の中にいつでも身を置くことができるし、森や湖へ行くために電車や車に乗る必要がありません。大好きなカイトサーフィンも、都市に暮らしていた時よりもずっと簡単に、そして頻繁に練習することができるようになりました。またフェーマルンのような小さな島では、皆が顔見知りです。もしご近所さんに赤ちゃんが産まれたら、3日後には島中に知れ渡っていますよ。

Q3. 島での生活で、大変なことはありますか?

唯一苦労しているのは、冬の時間です。多くの人でにぎわう夏に比べて、シーズンオフ中はほとんどの施設が閉まるため訪れる人も少なく、厳しい冬がやってきます。あとは、ほかの都市に住むパートナーや友人と会いたいとき、それなりに移動に時間がかかってしまうことも難点の一つです。

Q4. 都市と島では、どちらが生活費がかかりますか?

街中に住むよりも日常生活で必要になるお金は多いと感じます。例えば、都市に住んでいたときは車を持つ必要がありませんでしたが、田舎では車がないと大変です。フェーマルン島では、ガソリン価格は平均して1リットル当たり10〜15セントくらい高く、車の管理や維持にもお金がかかります。またレストランやスナックバーの価格帯も、街中よりも高いと思います。

Q5. 買い物に困ることはありませんか?

スーパーマーケットや市場、ドラッグストアなどがありますし、日常生活に必要なものは何でも買えます。一方で、洋服などのショッピングの機会はやや限られており、チェーン店や大きなショッピングセンターなど、全てがそろっているわけではありません。そんなときは車で買い物に行くか、特別なものが必要な場合はインターネットで注文することにしています。

Q6. 週末は何をして過ごしていますか?

週末はパートナーや友人と過ごすか、風がある日は水上でカイトサーフィンをします。フェーマルン島には、自分の趣味を思いっきり楽しめるビーチがたくさんあってうれしいです。また月に1〜2回程度は、島を離れて街へと出かけます。久しぶりに街を訪れると、インビス(軽食店)やクナイペ(居酒屋)が充実している都市を懐かしく思いますね。

Q7. 移住して約1年、フェーマルン島の魅力は?

フェーマルン島での生活は、とても牧歌的で静かです。夏になると、島にはたくさんの花が咲き、畑は菜の花の緑や黄色で染まります。暖かくなってくると、夏の期間中には多くの観光客が訪れますし、おいしいフィッシュサンドも忘れてはいけません。なんといっても新鮮な空気と太陽光のおかげで、いつでもポジティブな気持ちになることができます。太陽の光を浴びて、気分が良くならない人はいないのではないでしょうか?

 
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