ジャパンダイジェスト

老後への備え
「高齢時の住まいの形」②

渡辺・レグナー 嘉子

前回に引き続き、高齢者用住宅のお話です。今回は、973975号(2014年3月7日・4月4日発行)で取り上げた「高齢者用集合住宅」以外の住まいの形についてご紹介します。高齢者用住宅といっても形態は様々で、州法によって入居条件も異なるため、入る際には規約の精読が大切です。

● 高齢者用アパート(Altenwohnung / Seniorenwohung)

バリアフリー(Barrierefreie Wohnung、車いすでの移動が可能)の住居で、高齢者が自立して暮らせる設備が整ったアパートです。州の規定に則った高齢者用アパートは、通常60歳以上の人の入居を想定しており、医療機関の近隣で、介護サービスやヘルパー派遣の依頼がしやすく、かつ緊急連絡システムなどが備わっています。しかし、介護サービスなどは契約に含まれていません。

● 基礎サービス付き住居(Betreutes Wohnen / Betreute Wohnanlage)

基礎サービス付き住居は、上記のアパートに「社会的自立を尊重し、かつ付帯サービスもある」バリアフリー住居です。この基礎サービスは入居時から義務付けられており、緊急時の対応や見守り、役所手続きの援助、住宅管理、定期的な相談、専門家のアドバイスが含まれます。掃除や買い物の手伝い、看護などは追加サービスとなり、別途料金が掛かります。緊急連絡システムの有無やサービスの金額は自治体や住居によって異なります。このようなサービス付き住居には大きな居間などの共有スペースがあり、ほかの入居者と交流できることが特徴です。入居の条件に「家事や日常生活が自力で遂行できる人」という条項がある場合がほとんどです。

老後

● サービス付きマンション
(Wohnstift)

基礎サービス付きの住居よりも、契約で定められているサービスの種類が多く、清掃なども含まれているほか、レストランを擁するところもあります。介護付きのマンションもありますが、たいていは介護度が進むと同経営の介護棟住居、もしくは別の施設に移ることを前提としています。

● 多世代型融合集合住宅

高齢者だけでなく、あらゆる年代の人や家族が住める集合住宅です。建物内には各住居のほか、皆が集まれる共有スペースがあります。バリアフリーで、プロジェクトによってサイズも入居者の構成も様々ですが、参加者を募り、州や市の援助を受けて希望の住宅を作っていく方法が一般的です。病気や要介護についても共同で考えていこうというのが、この住宅の特徴です。

● 在宅ケア型共同住宅(Wohn-Pflege-Gemeinschaften)

州や政府の方針を受けて、要介護者を共同で住まわす住宅です。ハンブルクには、居住者が自分たちで責任を持つ在宅ケア型のフラットシェア(Pflege-WG)と、法人が責任を持つWE(Wohneinrichtungen)の2種類があります。WGは、重度の要介護状態や認知症などのために日常生活を1人で遂行できない人を対象とし、3~10人が共同で生活します。一方WEは、最大12人までが共同生活をする住宅で、業者が住宅の世話から介護、家事に至るまで、要介護者の生活全般に責任を持ちます。この2つの共同生活の特徴は、大きな介護ホームに比べて雰囲気が家庭的で、24時間体制の介護が可能だということです。これらはまだまだ新しい住居形態ですが、認知症患者を中心に広まっていくと思われます。

早期に将来の住まい像を描き、そこに長く住み続けられるよう準備されることをお勧めします。

キャラバン・メイト(認知症サポーター養成講座の講師)

「キャラバン・メイト(認知症サポーター養成講座の講師)」の資格がドイツでも取得できます。日本の事務局から専門家が派遣され、10月11、12日の2日間にわたり、デュッセルドルフで研修会が開かれます。どなたでも受講できますので、ぜひご参加ください。詳細は下記のリンク「DeJaK-友の会」よりご覧ください。

DeJaK-友の会:www.dejak-tomonokai.de
渡辺・レグナー 嘉子
在独邦人の高齢時の問題に積極的に関わっていくことを目指す「DeJaK-友の会」代表。著書に『Japanisch, Bitte! Neu』『Bildwörterbuch zur Einführung in die japanische Kultur』などがある。
 
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