バウムクーヘンのみならず、ドイツ菓子として日本でもすっかり認知度が上がったクリスマス限定のお菓子「シュトレン」。発祥の地はドレスデンと言われているが、これには諸説があり、1329年のナウムブルグ司教へのクリスマスの贈り物が最古の記録とされている。しかし、キリスト教の断食期間である4旬節にはバターと牛乳の摂取が禁じられていたため、水・オーツ麦・てんさいの根の油を使用した当時の シュトレンは、かなり素っ気ない味だったようだ。
4トンものシュトレンを乗せた馬車
これに不満を持ったザクセン選帝侯エルンストと弟アルブレヒトは、1430年にローマ教皇へバター・牛乳摂取禁止令の撤廃を懇願し、91年にようやく「バター食用許可証(Butterbrief)」が公布された。この公布はザクセン選帝侯の宮廷でのみ有効だったにもかかわらず、バターと牛乳を使用したシュトレンは公国全体に広まったのである。宮廷パン職人だったハインリッヒ・ドラスドは乾燥フルーツなどを加えて工夫し、今日に伝わるシュトレンを完成させた。その後ザクセン公国では、毎年クリスマスに宮廷に献上するのが習慣となったが、1730年、アウグスト強王は2万4000人を招いたパーティーの最後に出す1.8トンものシュトレンを注文。この巨大シュトレンは8日間かけて焼かれ、1.6メートルのナイフで客の前でさばかれたと言われている。
黄金に輝く引換券
強王らしいこのド派手な出来事を記念して、ドレスデンではクリスマス時期の第2アドヴェント前の土曜日(今年は12月8日)に、シュトレン祭(Stollenfest)が開催される。小山のようなシュトレン(最高記録は2000年の4.2トン)が馬車に乗せられて練り歩き、クリスマスマーケットの会場で1.2メートルのナイフで切り分けられるのである(事前に引換券を購入すれば、巨大シュトーレンのお裾分けがもらえるのでお試しを)。
Werner社のシュトレン
現在では「ドレスデン風シュトレン(Dresdner Stollen)」は商標登録されており、ビール純粋令と同様に材料の分量が指定されている。基本的なレシピは存在するが、ドレスデンにある約150軒のパン屋は門外不出のレシピを代々伝授しており、味を競っている。ドレスデン一美味と言われるものが、1893年創業の「Werner」だ。
手に取るとずっしり重いシュトレン。手間のかかる作業をていねいにこなす職人の思いが伝わるようで、ひと切れずつ大切に食べたい。ただし、砂糖やバターたっぷりのシュトレンは超高カロリーなので、食べすぎにご注意。
(ライター・福田陽子)
シュトレンとは、もともと坑道や地下道の意味。トンネルの形に似ているからこの名がついたと言われている。真っ白でやわらかな粉砂糖に覆われた外観は、幼子イエスを包むおくるみに見立てられることも多いよう。
ドライフルーツとマジパンがたっぷり入ったドレスデン風シュトレン。ずっしりと重いので、薄く切ってティータイムにどうぞ。寒い日にグリューワインとともに食すれば、体の芯から温まってくる。
(舞楽あき子)
材料 | |
強力粉(Mehl Type 550) | 300g |
レーズン(Rosinen) | 250g |
オレンジピール(Orangeat) | 100g |
レモンピール(Zitronat) | 50g |
挽きアーモンド(Mandeln;gehackt) | 75g |
ラム酒 | 70ml |
生イースト(Hefe) | 30g |
牛乳 | 125ml |
砂糖 | 30g |
卵黄 | 1個 |
塩 | 小さじ1/2 |
レープクーヘン香料(Lebkuchengewürz) | 小さじ1 |
マジパン(Marzipanrohmasse) | 100g |
バター | 150g |
粉砂糖 | 80g |
バニラ砂糖(Vanillezucker) | 1袋 |
作り方 | |
1. | 前日にレーズン、オレンジ&レモンピール、アーモンドをラム酒につけてやわらかくする。 |
2. | 中種づくり。ボールに強力粉150グラム、牛乳、砂糖、イーストを入れてよくこねる。まとまったらラップでふたをし、暖かい所に置いて2倍くらいの大きさになるまで発酵させる(目安1時間弱)。 |
3. | 2に残りの強力粉、卵黄、塩、レープクーヘン香料を入れよくこねる。 |
4. | マジパンとバター100グラムを少量ずつ加え、よく混ぜてこねる。 |
5. | フルーツを入れてさらに混ぜ、まとめた後ラップでふたをし、さらに20分間2次発酵させる。 |
6. | 粉(別量)をまぶした台の上に20×30センチくらいに引き伸ばし、長い方を三つ折にする。 |
7. | 空気が入らないようにぐるぐる巻きに |
8. | 冷暗所に保管し、1週間以上寝かしてできあがり。 |