ビールやじゃがいも、ソーセージに引けを取らず、
甘いものも大好きなドイツ人。
老いも若きも、天気の良い日はカフェのテラスで
スイーツをほおばる姿をよく見掛ける。
ドイツのスイーツは大ぶりなものが多いけれど、
なぜかペロリと食べられてしまう。
今回は、定番のものから
もうすぐやって来るクリスマス菓子まで、
ドイツならではのスイーツを集めました。
これを見て食べたくなった方、食べ過ぎにはご注意を!
(編集部: 山口 理恵)
ケーキ編
ケーキ屋さんのショーケースに並ぶ様々なケーキを前に、どれも美味しそうで決められない! と頭を悩ませたことのある人は大勢いるだろう。それほど、ドイツのケーキのバリエーションは豊富なのだ。まずは、各地の伝統的なケーキをピックアップしてみよう。
カスタード好きにはたまらない
ドレスデン風アイアシェッケ
このドレスデンの伝統菓子の発祥は、もともとはザクセンとテューリンゲン地域。小麦粉を使った土台とレーズンを混ぜたクワルク(Quark)または生クリーム、カスタードの3層構造になっている。Scheckeとは14世紀頃の男性の服装のことで、チュニックをベルトで留めた姿が3層に分かれて見えた。それになぞらえて、ケーキにその名が付けられた。
地元民に愛される素朴な味
フランクフルタークランツ
その名が表す通り、フランクフルトの名物ケーキ。クランツとは「花輪」を意味する。リング状の型で焼いたスポンジとバタークリームを何層にも重ね、表面に砕いたヘーゼルナッツやアーモンドを隙間なくまぶし、てっぺんには砂糖漬けのチェリーを飾るのがお決まりだ。昔懐かしい素朴な味が、地元っ子に愛されている。
蒸留酒が決め手の大人の味
シュヴァルツヴェルダー・
キルシュトルテ
シュヴァルツヴァルトの名産キルシュヴァッサー(サクランボの蒸留酒)をココアスポンジにしみ込ませ、生クリームとブラックチェリーをサンド。ドイツ国内で同名のケーキを販売する場合は、材料にキルシュヴァッサーを使用していなければならない法律がある。使用していない場合は、その名称での販売は許可されないという厳格な決まりも。
バイエルン王国の王子を称える
プリンツレゲンテントルテ
ヘルントルテとも呼ばれ、バイエルン地方で親しまれているこのケーキが生まれたのは1886年。バイエルン王国の摂政王子ルイトポルトを称えて作られたのがきっかけだ。ビスキュイとバタークリームを重ね、ダークチョコレートで表面をコーティングしている。当初は、王子が支配する行政地域が7つあったことに因み7層で作られていたが、現在は6層のものもある。
バウムクーヘンよりお手軽?!
バウムクーヘントルテ
バウムクーヘンの小片をバタークリームの間に挟むという一風変わった珍しいケーキ。写真のように表面をマジパンで覆っているものや、チョコレートでコーティングしたものなどがある。バウムクーヘンそのものをいただけるカフェは少ないが(クリスマスの項参照)、こちらはケーキ店やパン屋で見掛ける、ドイツ人に人気のケーキ。
デザート編
ドイツ料理レストランや一般的なカフェで提供されるデザートの種類は多くない。日本のように、新作デザートが次々と登場することもあまりない。しかし、長年人々に愛されてきた品々だからこそ、味に関してはお墨付きと言えるだろう。
ドイツ料理レストランの王道デザート
アプフェルシュトルーデル
本家本元はオーストリアだが、ドイツ料理レストランでは欠かせないデザート。薄いパイ生地は15世紀に中東から伝わったとされる。その生地に溶かしバターを塗り、刻んだリンゴにシナモン、砂糖、レモン汁などを加えて煮込んだフィリングをくるくると巻いて焼く。カスタードソースやバニラアイス、生クリームなどを添えていただくのが定番。
さっぱり系のデザートがお好みなら
ローテ・グリュッツェ
北部でよく食べられるベリーのデザート。クランベリーやラズベリー、ブルーベリーと、様々な赤いベリーを粥(Grütze)状になるまで煮込んで冷やし、生クリームやクワルク、バニラアイスをかけていただく、さっぱり系の一品。ラスクとの相性も抜群だ。グラスにベリーとクリームを重ねて盛り付ければ、見た目もお洒落なデザートに変身!
東欧から伝わったクレープ
パラチンケン
薄く焼いたクレープ状のパンケーキで、東欧からオーストリアを経てドイツへと渡ってきた。パラチンケンの語源は、「平らなケーキ」を意味するPlacenta(ラテン語)。フィリングはバラエティーに富んでいるが、一般的なのはジャムや生クリームなど。粉砂糖やチョコレートソース、バニラソースなどを添えていただくのが通例だが、軽食として食べることも。
主食にもデザートにもなる優れもの
ザクセン風クワルクパンケーキ
クワルクにじゃがいもを練り合わせて焼いた小ぶりのパンケーキ。ザクセン州発祥のデザートだ。生地には、マッシュポテトとクワルク(3:1の割合)に卵、小麦粉、シナモン、レーズンを加える。外側はカリカリ、内側はモチっとした触感が癖になる。メインディッシュとしても食されるが、アイスや粉砂糖、フルーツを添えればデザートに。
たっぷりのバターとリンゴが絶妙にマッチ
リンゴのパンケーキ
新鮮なリンゴを使ったパンケーキ。生地をたっぷりのバターで焼き、途中でリンゴの薄切りを並べて裏返す。生地自体は甘くないので、食べる際に粉砂糖やシナモン、アイス、シロップなどをかけて、好みの味と甘さに調整するのがポイント。リンゴが1年中手に入るドイツでは、家庭で手軽に作れるデザートとして親しまれている。
クリスマス編
クリスマス・シーズンが来ると条件反射のように食べたくなる特別なスイーツ。素朴なものが多いが、それがまたノスタルジーを伴って、子どもの頃に体験した和やかなクリスマスの情景を呼び起こす。
「冬の味」を詰め込んだビスケット
バニラキプフェル
三日月型をした、なめらかな口溶けのビスケット。オーストリアのウィーンが発祥だが、現在はドイツ、ハンガリー、チェコ、ルーマニアでも、クリスマス・シーズンには欠かせない菓子となっている。アーモンドパウダーとバニラパウダーをたっぷり入れるのが一般的だが、地域によってはクルミやヘーゼルナッツ、ピーナッツを使用するところもある。手作りする家庭も多い。
クリスマス菓子の代表格
シュトレン
クリスマスと言えばシュトレン。生地にマジパンやレーズン、オレンジやレモンの皮が練り込まれたものなど、店や家庭によって様々。年中入手可能だが、アドヴェント(待降節)の期間中にクリスマスマーケットで購入し、クリスマスの日まで少しずつ食べるのが一般的。ドレスデンのシュトレンは殊のほか有名だ。
見た目は中華まん!
ダンプフヌーデル
中華まんを彷彿とさせる白くフワフワの蒸しパンは、クリスマスマーケットの定番スイーツ。屋台で目印となるのは、日本のコンビニでよく見掛けるガラス製の保温器。味は具の入っていない中華の花巻に似ていて、バニラソースやチェリーソース、またはケシの実をかけていただく。クリスマスマーケットでぜひお試しを。
特別な機会に食べる貴重なお菓子
バウムクーヘン
ドイツのスイーツと言えば「バウムクーヘン」。伝統菓子であることには変わりないが、専門技術や機械を持つ店でしか作られていないため、どこででも食べられるわけではない。ドイツ人にとっても口にする機会は少ない一品で、現在ではクリスマスや慶事といった特別なときに食べる菓子となっている。
家庭で作る伝統の味
プレッツヒェン&
シュペクラツィウス
プレッツヒェンは、クリスマスの時季に家庭で作られるクッキー。ツリーやハート、星形などの鋳型を使用して焼き、アイシングやチョコレートで思い思いに飾り付けをする。シュペクラツィウスは、ヴェストファーレンやラインラント地方で食べられるクリスマスの伝統的な薄焼きクッキー。しょうがやナツメグ、シナモンなどを生地に練り込んで焼く。
地域の個性が出る定番菓子
レープクーヘン
地域によって形態が異なるレープクーヘン。硬いビスケットのようなものから、アイシングがかかったパンのようなものまで、同じレープクーヘンの名称で親しまれている。ビスケットは昔、長期保存食としても重用されていた。材料にはハチミツと、カルダモンやクローブ、シナモンなどの香辛料、オレンジやレモンの皮などを使用する。