2017年7月1日(土)~23日(日)にかけて開催される第104回ツール・ド・フランスはデュッセルドルフからスタートする。「グランデパール」と呼ばれる開幕地では、3521kmの距離を駆け抜ける輝かしい選手達を間近で見られる。この絶好の機会にツール・ド・フランスの面白さを探ってみよう。
ツール・ド・フランス入門編
ツール・ド・フランスとは?
1903年から毎年7月に開催されている自転車プロロードレース。その名の通りフランスを中心にレースが開催されるが、毎年フランス以外の欧州各地を走るステージも用意されている。今年はデュッセルドルフがスタート地に選ばれており、ドイツ、ベルギー、ルクセンブルグを通って、フランスへと続く。各地をめぐり、ゴールはパリのシャンゼリゼ大通り。
今年のコースの特徴は?
全21ステージ。ドイツ国内でのグランデパールは、ケルン(1965年)、フランクフルト(1980年)、西ベルリン(1987年)に続き、30年ぶりとなる4回目。フランス北部、中部、西部は通らず、1992年以来25年ぶりにフランスの5つの山脈(ヴォージュ山脈、ジュラ山脈、ピレネー山脈、中央山塊、アルプス山脈)を通る。
三大ツール(グランツール)とは?
欧州では、イタリア(ジロ・デ・イタリア、1909年~)、スペイン(ブエルタ・ア・エスパーニャ、1935年~)、ツール・ド・フランスと合わせて「三大ツール」と呼ばれる。イタリア、スペインは比較的山岳ステージが多いが、ツール・ド・フランスは平地ステージと山岳ステージが用意されているので、ステージによって注目する選手が異なってくることも特徴だ。
ツール・ド・フランスは誰が参加できるの?
国際自転車競技連合(UCI)のワールドチーム(18チーム)に加えて、UCIに1年ごとに認定されるプロフェッショナルコンチネンタルチームから4チームが参加する。ドイツのチームは「チーム・サンウェブ」と「ボーラ・ハンスグローエ」。ただし、世界中の選手が集まってチームがつくられているので、ドイツのチームに強いドイツ人の選手が所属しているとは限らない。
個人競技か、団体競技か?
選手達が一斉にスタートして誰が最速でゴールにたどり着くかを競うという意味では個人競技。長距離であることからマラソンにも例えられるが、実際にはチーム内で一番の実力者を優勝させるために、チームで戦う団体競技の様相を呈す。チームメイトを優勝させるため、いかにしてサポートするか、自転車ロードレースにおけるチームワークも見どころ。
ツール・ド・フランスの賞は?
総合優勝のほか、各ステージで優勝者を決める。賞を得た選手は、翌日に勲章となるTシャツを着てレースに臨む。右記以外に、各チームの上位3人のタイムを合計したチーム総合時間賞、審査員が選手に点を付けて、その合計ポイントで決まる敢闘賞がある。最終日には3週間のレースの合計所要時間、点数を計算し、その年の各部門賞受賞者を決定する。
黄:総合1位の「マイヨ・ジョーヌ」
第1ステージからの合計所要時間を計算し、最も速い選手が「マイヨ・ジョーヌ」と呼ばれる黄色のTシャツを着る特権を獲得する。観客が1位の選手を一瞬で見分けられるように、1919年に誕生。主催社であった新聞「ロト」のシンボルカラー。
緑:ポイント賞「マイヨ・ヴェーヌ」
ツール・ド・フランス50周年を祝った1953年に始まった賞。各ステージで設定されているスプリント地点を通過した順に得点を与えられる。スプリントポイントを多く得た人がこの緑のTシャツ「マイヨ・ヴェール」を着る栄誉を得られる。
白地に赤い水玉:山岳賞「マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュ」
山や丘、坂など、登り切った場所にポイントを設定し、通過した順位で点数を稼ぐ、いわゆる山岳賞。坂の傾斜度によって難関度を定め、難しい坂ほど点数が高く設定されている。
白:新人賞「マイヨ・ブラン」
25歳以下の選手の中で、総合タイムが最も良い人が新人賞を獲得する。この「マイヨ・ブラン」を取った人が次世代の王者になることが多いので、白いTシャツの選手も要チェック。
ツール・ド・フランス2017の見どころ
長いロードレースを初日から最終日まで楽しむコツは、見どころと山場を押さえること!スタートのデュッセルドルフから、フランスの山脈を越え、最後のパリ・シャンゼリゼ大通りまで、壮大なドラマと幾多の物語が紡ぎ出されるであろう今年のツール・ド・フランスのレース展開を追ってみよう。
Point 11つ目のタイムトライアル
STAGE 1 はデュッセルドルフ市内13kmを、個人タイムトライアルで駆け抜ける。最初の3日間はドイツ、ベルギー、ルクセンブルクを走り、STAGE 4 以降はフランスへ。Point 2山岳ステージへ
本格的な山岳はSTAGE 5(ヴォージュ山脈)で、平均勾配8.5%、最大勾配20%の難関、ラ・ブロンシュ・デ・ベル・フィーユの頂上でフィニッシュする。Point 3過酷な山岳ステージが続く
休息日の前に行われるSTAGE 8 (ドル→スタティオン・レ・ルス)、 STAGE 9(ナンチュア→シャン ベリー)は過酷な山岳ステージで、 山岳ポイントが合計6カ所ある。Point 4一回休み
南部へ移動して一日休息。Point 5また山を登る
ピレネー山脈を上り、STAGE 12 では、山岳ポイントが5カ所あり、ペラギュードの頂上でフィニッシュ!Point 6
STAGE 13 は100kmとこれまでにない短距離で、 山岳ポイントが3カ所。ダイナミックなレースになりそう。Point 7
その後は中央山塊に向かい、火山地帯ル・ピュイ・アン・ ヴレーへ。Point 8
最終週、アルプス山脈での勝負の前に一日休息。Point 9難関カリビエ峠へ
STAGE 17 、定番の難関とされているガリビエ峠が6年ぶりにコースに組み込まれた。イゾアール峠の頂上でフィニッシュするSTAGE 18 は、総合優勝にかかってくる見逃せないステージ。ここで山岳ステージは終了。Point 102つ目のタイムトライアル
STAGE 20 は23kmの個人タイムトライアル。マルセイユは勝負どころで、このレースで総合順位が決まってくる。Point 11栄冠は誰の手に?!
STAGE 21 はパリのシャンゼリゼ大通りでゴール。世界中がデュッセルドルフに注目
7月1日(土) STAGE 1
初日はデュッセルドルフ市内の13kmがコース。個人タイムトライアルが競われる。メッセ・デュッセルドルフの前からスタートし、次の順番で市内を通る。
スタート- Stockumer Kirchstraße シュトックマー・キルヒ通り
- Rotterdamer Straße ロッテルダマー通り
- Cecilienallee ツェツィリエンアレー
- Joseph-Beuys-Ufer ヨーゼフ=ボイス=ウーファー
- Oederallee エーデルアレー
- Oberkasseler Brücke オーバーカッセラー橋
- Kaiser-Wilhelm-Ring カイザー=ヴィルヘルム=リング
- Rheinkniebrücke ラインクニー橋
- Kavalleriestraße カヴァレリー通り
- Haroldstraße ハロルト通り
- Graf-Adolf-Straße グラーフ=アドルフ通り
- Königsallee ケーニッヒスアレー
- Theodor-Körner-Straße テオドール=ケルナー通り
- Heinrich-Heine-Allee ハインリヒ=ハイネ=アレー
- Hofgartenrampe ホーフガルテンランペ
- Fritz-Roeber-Straße フリッツ=ロエーバー通り
- Joseph-Beuys-Ufer ヨーゼフ=ボイス=ウーファー
- Cecilienallee ツェツィリエンアレー
- Rotterdamer Straße ロッテルダマー通り
これぞグランデパールの特権「パレードラン」
7月2日(日) STAGE 2
第2ステージはドイツからベルギーへ移動する。まずブルク広場に集合。この日はレースのオフィシャルスタート地点まで9kmに渡ってパレードランが行われる。主にデュッセルドルフ港付近カイザー通り(Kaiserstraße)クレーヴァー通り(Klever straße)ハインリヒ通り(Heinrichstraße)グラーフェンベルク(Grafenberg)へ。グラーフェンベルクは最初の山岳賞ポイントだ。エアクラートへ向かい、ネアンデル谷を通過。ここはネアンデルタール人の化石が発見された歴史的な谷である。コースは北に進み、メットマン(Mettmann)へ。そしてラーティンゲン(Ratingen)を経て、再びデュッセルドルフのザンクト=フランツィスクス通り(Sankt-Franziskus-Straße)へ戻ってくる。テオドール=ホイス橋(Theodor-Heuss-Brücke)を渡り、ベルギーに向かう。
レースがもっと面白くなる !
世界で活躍するドイツ人選手に注目 !!
アンドレ・グライペル(34歳)
André Greipel
所属:Lotto-Soudal
1982年ロストック生まれ。ロット・ソウダル所属。世界的なスプリンターで、ツール・ド・フランスでは2015、16年と続けて最終日となる21区で区間優勝を果たした。チーム「ロット・ソウダル」では絶大な信頼を受け、筋肉隆々とした体格からファンの間では「ゴリラ」の愛称で呼ばれている。三大ツールでのこれまでの成績は、ツール・ド・フランス区間優勝が通算11回、ジロ・デ・イタリアで区間優勝が通算7回、ブエルタ・ア・エスパーニャでは区間優勝が通算4回、ポイント賞1回。
トニー・マルティン(31歳)
Tony Martin
所属:KATUSHA ALPECIN
1985年コトブス生まれ。カチューシャ・アルペシン所属。個人タイムトライアルのスペシャリストとして知られている。今年はデュッセルドルフの第1ステージの個人タイムトライアルで黄色Tシャツを狙う。これまでの成績は、ツール・ド・フランスでは区間優勝通算5回、ブエルタ・ア・エスパーニャでは区間優勝が通算2回。2011、12、13年の世界選個人タイムトライアルで優勝しており、2012年のロンドン五輪・男子個人タイムトライアルでは銀メダルを獲得した。
マルセル・キッテル(28歳)
Marcel Kittel
所属:QUICK-STEP FLOORS
1988年、アルンシュタット生まれ。クイックステップ・フロアーズ所属。スプリンターとして知られ、ツール・ド・フランスでは2013、14年に合計して区間8勝、2日間続けて黄色Tシャツを着る権利を得た。2015年は体調不良のため、ツール・ド・フランスにノミネートされなかったが、2016年から復活。三大ツールのこれまでの成績は、ツール・ド・フランス区間優勝が通算9回、ジロ・デ・イタリアでは区間優勝が通算4回、ブエルタ・ア・エスパーニャでは区間優勝が通算1回。
ヨーン・デーゲンコルプ(28歳)
John Degenkolb
所属:TREK-SEGAFREDO
1989年、ゲーラ生まれ。トレック・セガフレード所属。2015年にはミラノ~サンレモ、パリ~ルーベ大会で優勝した。2016年、スペインでチーム練習をしていたところ、逆走した乗用車とぶつかり重傷を負ってしまう。そのため昨年前半は試合に出ることができなかった。ジロ・デ・イタリアでは区間優勝が通算1回、ブエルタ・ア・エスパーニャでは区間優勝が通算10回とポイント賞1回。ツール・ド・フランスの成績はまだ残していないが、十分な実力を持ったレーサーだ。
グランデパール都市を満喫
ツール・ド・フランス関連イベント
多くの市民に自転車の魅力を知ってもらおうとデュッセルドルフではイベントが盛りだくさん。ツール・ド・フランスの歴史にも触れてみよう。
ブルク広場にスターが大集合 Die Präsentation der Teams
毎年グランデパールで行われるイベント。参加者がデュッセルドルフのブルクプラッツに集まり、全22チーム、合計198人の選手が紹介される。大舞台を直前に控えた選手達の生の声を聞ける機会として注目が集まり、数百社ものメディアも駆けつける。入場制限があるため、会場に入りたい場合は早めの来場を。その後、デュッセルドルフの旧市街では自転車のパレードが予定されており、先端技術を駆使した自転車が披露される。
6月29日(木)18:00
Burgplatz, 40213 Düsseldorf
RADAKTIV feiert die Fête du vélo
毎年開催されている自転車の祭典「ラートアクティーフ」。デュッセルドルフがグランデパールに選ばれたことを記念して、さらに充実した内容で開催される。70以上の自転車の製造メーカーや関係者が集い、ライン川沿いが一大展示会場となる。ワークショップや自転車のショー、子供向けスペースもあり、家族連れでも楽しめる。
6月29日(木)18:00
Burgplatz, 40213 Düsseldorf
Schloss Benrath Lichterfest
毎年1万人以上が訪れる光の祭典が、今年はグランデパールの開幕イベントの一つとして開催される。会場はカール=テオドール選帝侯が建てたベンラート城。当日はオープンエアーのコンサートも開催される。クラシック音楽と光の共演を楽しみ、クライマックスには花火の打ち上げも。
6月30日(金)18:00~
30.35ユーロ~(割引21.15ユーロ)
Benrather Schloßallee 100-106, 40597 Düsseldorf
www.schloss-benrath-lichterfest.de
Café Vélo - das neue Fahrrad-Café am Rathaus
サイクリングとコーヒー愛好家のための場、「自転車カフェ」。リビングルームのような居心地の良いカフェは、焙煎コーヒーはもちろん、フランスの料理、壁には自転車の道具など、ツール・ド・フランスのグランデパールにふさわしい雰囲気だ。コンサートやビデオの上映会なども企画している。
8月31日(木)まで 10:00~22:00 月曜閉店
Marktplatz 6a, 40213 Düsseldorf
www.facebook.com/cafeveloduesseldorf
Mythos Tour de France
「神話ツール・ド・フランス」と名づけられたこの写真展では、常に世界で著明な写真家が英雄姿を写した作品が集まる。毎年ドラマが生まれていき、レーサーに感銘を受けるカメラマンは多い。今回は80年前からのレースの様子を知る絶好のチャンス。
6月30日(金)まで
11:00~18:00(金、土~20:00まで)
月~木6ユーロ / 割引4ユーロ
金~日8ユーロ / 割引5ユーロ
Ehrenhof 2, 40479 Düsseldorf
www.nrw-forum.de
Sport im Park' meets Tour de France
グランデパールを機に、デュッセルドルフの市民により多く自転車に乗る機会を提供しようと自転車トレーニングが開催される。スポーツジムでよく見かけるエアロバイクがアポロ広場に週2回置かれており、トレーニングに参加することができる。効果的なトレーニングのヒント、走る喜びと最先端の自転車技術を体験しよう。
6月27日(火)まで
火18:00~、金17:00~
Apolloplatz, 40213 Düsseldorf