ロマンチックな「恋」には国境も常識も越える力があり、「愛」の力は世界を救う。けれど、恋愛関係や結婚観に、お国柄や社会、文化的背景が色濃く反映されていることもまた事実。現代のドイツにおける恋愛事情を知れば、等身大のドイツ社会がが見えてくる。まずは、身近な人と恋愛愛トークをしてみよう!新たな発見や出会いがあるかも……。(編集部: 高橋 萌)
1. 出会い
ドイツ人の62%が一目ぼれから始まる恋があると信じている
友達の紹介やイベントで居合わせるなど、自然かつ偶然の出会いを理想とする一方で、マッチングサイトなどインターネットを活用したり、新聞の告知欄に「恋人募集」を掲載する積極的な人(年齢層は高め)も多い。49歳までの成人の11%がインターネットに出会いを求め、50〜59歳ではその数が30%に上昇し、定番の検索ワードは「金髪・碧眼」。出典:https://yougov.de
2. 恋人関係
恋人関係の始まりは2人の間の空気で感じ取れ!
ドイツでは、恋人関係(feste Beziehung)に発展する前の段階で相手との距離を縮めていく。その中で、「この人こそが自分の恋人!」との確信を深めていくようだ。裏を返せば、ほぼ恋人同士のような時間を共に過ごしていても、「恋人」とは認められていないケースもあり、「家族に紹介されなかった」「恋人ではないと言われた」と片思いを募らせることになる。
ドイツの例
最初のデート一緒に行動
初めてのキス
両思い
一夜を共に過ごす
恋人関係
……
結婚という選択肢もある
愛情が冷めたら離婚
日本の例
連絡先の交換デート
頻繁に会うようになる
両思い
交際の申し込み
初めてのキス
一夜を共に過ごす
……
結婚が一つのゴール
3. デート
デートの計画はいらない2人で過ごせれば、それで良し
気合いの入ったデートより、気の向くままに過ごすことを楽しむドイツ人カップル。デートの内容も、アウトドア派は散歩やサイクリング、インドア派はお家デートでまったり映画鑑賞など。プレゼントにお金をかけない倹約家な面もあるが、花束や手作りのものなどアイデアとムードでカバー。デートの際のお金事情も、男女平等が基本。
4. 結婚する理由
3人に1人が結婚の理由に「税制上のメリット」と現実的な回答
ドイツ人は、「結婚」という契約について、現実的かつ倹約的に吟味していることがうかがえる。実際、パートナーと同居し家計を共にしているならば、年間で数百ユーロ以上を節税できる可能性もある。一方、若い世代(14〜29歳)はまだまだ結婚に夢を描いており、75%が「結婚は愛の誓い」であると答えている。出典:Süddeutsche Zeitung(2015年5月15日)
カップル文化が強いドイツでは、外食も各種イベントへも基本はカップルで参加
5. 結婚生活
ドイツでの結婚生活は平均するとたったの(?)15年
ドイツの平均結婚継続年数は約15年。1990年には11.5年だったことと比較すると、長期化の傾向にある。ドイツ人男性の平均初婚年齢は33.8歳、女性は31.2歳と晩婚化が進んでいるのは日本と同じ。結婚したカップル数は過去60年で半減。72%のドイツ人が「永遠の愛」を信じていて、金婚式を迎えたカップルは約100万組(2012年)。出典:WeltN24(2015年2月26日)
ドイツで法的なパートナーシップ(Lebenspartnerschaften)を結ぶ同性カップルは約4万組
6. 結婚しないという選択
3人に1人が結婚を古臭い風習だと感じている
恋人と長く関係を続けるために「結婚」は必要不可欠であると答えた人は、43%。結婚せずに子供を産んだカップルは、全体の35%。中でも旧東独地域は61%に上り、旧西独地域(30%)と、倍以上の差がついた。また、第一子を出産した時に未婚だったケースに限るともっと多く、ドイツ全国平均で44%。旧東独地域で71%、旧西独地域で38%。出典:ドイツ連邦統計局プレスリリース(2016年12月19日)
子供の存在が結婚のきっかけにはなるが、第一子を生んでから考えるカップルも多い
7. 国際結婚
国際結婚したカップルは7%配偶者の国籍で一番多いのはトルコ人
全人口の約2割が移民系住民という現代ドイツにあっても、国際結婚はまだまだ少数派。ドイツ人女性の国際結婚のお相手は、トルコ人(19%)、イタリア人(12%)、オーストリア人(7%)と続き、男性の場合はトルコ人(14%)、ポーランド人(9%)、ロシア人(8%)との結婚が多い。国際結婚カップルの離婚率は、同郷カップルより64%上昇するという統計も。出典:ドイツ連邦統計局プレスリリース(2015年2月18 日)
ドイツ人同士の結婚は87%、ドイツで暮しながら夫婦ともに外国籍の場合が6%
8. 離婚
3組に1組年間約16万組が離婚
離婚件数でみると、昨年比1.7%と減少傾向にある。離婚したドイツ人男性の平均年齢は46.3歳、女性は43.3歳。晩婚化により、結婚生活のトラブルを乗り越えられるカップルが増えたと見るむきもある。離婚原因の21.3%が「浮気」。離婚を切り出すのは、女性からのケース(51%)が多く、男性からは41%。2015年に両親の離婚を経験した未成年の子供は約13万人。出典:ドイツ連邦統計局プレスリリース(2016年6月15日)
「いつまでも恋人同士のような夫婦」が、ドイツの理想の夫婦像。再婚は年間6万組
ドイツ人女子が凍りつく
日本の恋愛における「ふつう」
日本で暮したことのあるドイツ人女性3人に、ドイツ人から見る日本の恋愛事情、「これはヘン!」について語っていただきました。
求められる「女子力」に当惑
まず、日本でいうところの「かわいい」は、ドイツ人女性にはハードルが高い。というか、控えめな表現や、食事の席で取り分けたりする「女性らしい」振る舞いは、ドイツでは誰にも求められなかった。それよりも、日本人男性にもっとスキンシップと花束を求める! そして、察し合うより、お互いの意見をとことん話し合おうよ。
改まって交際を申し込まれどん引き
小・中学生じゃあるまいし、改まって「付き合ってください」なんて……照れるというより、ちょっと引く。二人の関係はじっくり作っていくもので、宣言して始めることじゃないと思ってしまう。イベントのたびに気合いの入ったデートを計画するのも日本らしい。そういう特別な演出に対して、「かわいく」リアクションするのも大変。
親にもっと気軽に紹介してほしい
日本でも、家族に対して恋人との交際をもっとオープンにしたらどうだろう。ドイツでは結婚を前提としていなくても、親に恋人を紹介し、相手の親を「Du」で呼んで敬語も使わない。そして家族の前でもイチャイチャする。日本では、親に紹介した途端に「結婚」へ向かってまっしぐら。相手の家族とももっとゆっくり知り合いたい。
「亭主元気で留守がいい」はありえない!!
パートナーとは、結婚してもロマンチックな関係を続けたいし、むしろ恋が冷めたら結婚生活も破綻すると思う。仕事ばかりで家に帰ってこない夫は、それこそ離婚です! 日本の女性が、結婚相手の条件を吟味したり、夫の留守を喜ぶ風潮に大きなカルチャーショック。「夫はATMのようなもの」なんて、きついジョークだよね?!
ドイツ人がときめく恋愛映画4選
映画を通してドイツの恋愛を観察してみましょう。恋人同士が使うドイツ語表現も出てくるので、ぜひドイツ語で!
Keinohrhasen
英題:Rabbit Without Ears公開:2007年
監督/脚本/主演:ティル・シュヴァイガー
年齢制限:12歳
ゴシップ記者のルードは、誤報の罪として幼稚園での勤労奉仕を命じられる。プレイボーイとして名を馳せる彼はそこで幼馴染アンナと再会。正反対の2人は罵り合いながら距離を縮め……。
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Männerherzen
英題:Men in the City公開:2009年
監督:ジモン・フェアヘーヴェン
年齢制限:6歳
ベルリンに住む5人の男たち、彼らの唯一の共通点は同じジムに通っていること。出会い系サイトに運命を求める男から、モテモテのエグゼクティブまで、彼らの恋愛模様と「男ごころ」が描かれる。
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Wolke 9
英題:Cloud 9公開:2008年
監督:アンドレアス・ドレーゼン
年齢制限:12歳
60歳半ばに差し掛かった女性インゲは、既婚者でありながら激しい恋に落ちた。それまでタブー視されてきた高齢者の性と裸と恋愛に、アンドレアス・ドレーゼン監督が正面から向き合った作品。
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Sommersturm
邦題:サマー・ストーム 〜夏の突風〜公開: 2004年
監督:マルコ・クロイツパイントナー
年齢制限:12歳
ドイツ各地から高校のボート部が合宿に集まる夏休み。彼女がいながら親友に特別な想いを秘めている主人公は、そこで全員がゲイだとカイミングアウトしているチームと出会い……。
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