24時間営業のコンビニエンスストア、深夜まで営業している大型店舗。必要なものは、すぐに手に入る日本からドイツに来て、最初に出会うカルチャーショックが、日曜のあり方だろう。お店も労働者も、休まなければいけない日曜日。21世紀の経済大国に、こんな不便がある理由とは? ドイツ人読者300人にアンケートを実施し、市民の声に耳を傾けてみた。
(ドイツニュースダイジェスト編集部)
決まりごとがいっぱい!
ドイツの日曜日の7不思議
ドイツの日曜閉店法を理解するために知っておきたいルールや法律をご紹介。トラブルを回避し、休息の日を満喫しよう。
1EU最大の経済大国ドイツでは、
日曜に買い物ができない!
基本的に、ドイツ国内のスーパーマーケットや小売店は、日曜は店を閉じている。というか、営業することができない。小売店の営業時間について定める法律「閉店法 (Ladenschlussgesetz)」が導入されているからだ。日曜・祝日は、大都市でも町が静まりかえるのが、ドイツの日常風景。クリスマスなど大型連休には、都市機能がほぼ停止状態に。
国が定める閉店法の閉店時間帯は?
- 日曜と祝日
- 平日(月~土)の6時までと、20時以降
- 12月24日が平日の場合、6時までと、14時以降
- パン屋は、平日5時半からの開店が認められている
2閉店法の規制緩和は進んでいるけど、
コンビニはない
もちろん、すべての営業活動が禁止されているわけではない。病院や薬局、消防など救命に 関わる活動は制限されず、空港や駅、ガソリンスタンドなどもOK。2006年以降は、州政府が閉店法の規定を定めることができるようになり、規制緩和も一部で進んでいる。その結果、現在では多くの州で平日の24時間営業が可能だ。しかし、それを選択しないのがドイツ。
規制緩和が一番進んでいる州は?
- ベルリン
月~土まで24時間営業可/年に6回、日曜・祝日に営業可 - ブランデンブルク
月~土まで24時間営業可/年に6回、日曜・祝日に営業可
日曜閉店法に厳格な州は?
- バイエルン
国の定める閉店法に準ずる/日曜・祝日は営業不可 - ザクセン
平日夜の閉店を22時以降に緩和。年5回24時間営業可/年4回、日曜・祝日に営業可
3日曜大工はご法度、
休息時間にもご注意!
日曜の閉店法と並び、ドイツに引っ越してきたばかりの外国人が気を付けなければならない決まり事が、「Ruhezeit(休息時間)」。日曜は終日、平日も早朝・昼・深夜の騒音を排除しなければならない。ご近所さんとの訴訟問題になりやすい騒音問題。シャワーを浴びる時間にまで気を付けなければならないという厳しさ。日曜大工なんてもってのほかなのだ。
一般的なドイツの休息時間
- 夏時間 22:00~6:00
- 冬時間 22:00~7:00
- 平日の昼間 13:00~15:00
- 日曜・祝日 終日
4でも、買い物したかったら
隣国へ!
ドイツは、9カ国と国境を接していて、ポーランドなど日曜の営業を制限していない国やオランダなど規制緩和の進んだ国がある。ベルギーも町によっては第一日曜は営業している。国境沿いの町にとって、週末は大挙してドイツ人がショッピングに来るというのは、もう見慣れた風景、かつ国境沿いの町の大切な財源となっているようだ。
5日曜閉店法を固持したいのは
教会と労働組合
そもそも、ドイツで日曜を初めて休息日と定めたのは、今から1600年以上前、コンスタンティヌス大帝の時代。キリスト教の安息日である日曜の活動を禁止し、教会に行かせるためだった。しかし、19世紀に入り、近代化が進むと、労働者の権利保護と健康の問題によりフォーカスされ、ドイツ帝国時代の1892年、戦後は1957年に旧西ドイツで閉店法が試行された。
6大手企業より、
小規模小売店を守る法律
日曜にお店をオープンした方が、国内経済が潤うという見方は、現在も根強くある。そして、日曜閉店法の撤廃を求める声は、年々高まっている。特に、大手小売店の経営陣は、日曜を閉店するかどうかは、国が定めることではないと、強気だ。しかし、一方で、日曜閉店法は競争力の弱い小規模小売店を保護するという目的もある。
閉店法に違反するとどうなる?
経営者は、故意に、または怠慢により労働者の健康を危険にさらしたとして、
- 6カ月以下の懲役
- または、180日分の収入を罰金として科される
7日曜のパパとママは
僕のもの
さて、買い物の出来ないドイツの週末の予定はというと、老いも若きも散歩し、文字通りウインドーショッピングしている人が多数。また、日曜閉店法にまつわるキャッチコピーとして「日曜のパパとママは僕らのもの(Sonntags gehören Mami und Papi uns!)」とうたわれることから、家族と過ごす時間を大切にしていることも分かる。
閉店法の例外、日曜も営業してOKなのは?
- 薬局
- キオスク
- 駅構内
- ガソリンスタンド
- 空港内
- 保養地
- 農村地域
- 州政府が定めた日曜日
ドイツ人にアンケート
日曜閉店法 YES or NO?
YES - 賛成派の意見
- 家族のためにも日曜日は休みを取るべき。
- 現代はなかなか休息を取る時間がないので、ゆっくり過ごす日が必要。
- 6日間買い物をする日があるのだから、それで十分です。
- すべての人、すべての家族が日曜日に休む権利を持つことが必要だと思います。
- 消費とストレスが人生を決めるべきではありません!
- 逆になぜ自分自身と家族のために休む日をつくってはいけないのでしょうか?
- 週に一度はゆっくり休んで、体力と精神力を回復すべき。
- 売り手に自由な時間を!
- 日曜閉店法がすでに根付いている中で生まれ育っているので、日曜日にお店が開いていないことに対して気になったことがありません。
- 日曜閉店法は経済にとっても良いことではないでしょうか。
- ドイツ人は皆、「日曜日は静かに過ごす日」という共通認識があります。
【考察】 ドイツ人にとって日曜日は「静かに過ごす日」という認識が根付いているのがよく分かる。また、利便性よりも家族や友人、恋人など、大切な人との時間を重視していることもこの結果から知ることができるだろう。
NO - 反対派の意見
- 日曜日に他都市を旅行した際に買い物ができないのは不便!
- 国ではなくお店が個々に決めれば良いことではないのでしょうか。
- 他国では日曜日も営業しています。なぜドイツは違うのでしょう。
- この状況は現在の生活スタイルにマッチしていないと思います。
- もっとフレキシブルにしてはどうでしょうか。
- 多くの働く人は週末にしか用事を済ませる時間がありません。
- 日曜日も営業をすれば、新たな雇用を生み出せるのでは。
- 経済効果が期待できますし、観光産業にとってもメリットがあるのではないでしょうか。ビジネスをしている人にとってはうれしいことだと思います。
- 仕事をしている人は平日の買い物に十分な時間を確保できません。そのため、日曜日もお店が開いていると便利です。
- 義務的に日曜日に休みを取らざるを得ないので、学生の身としては非常に困ります。
【考察】 反対派にはさまざまな見解があり、週末しか休みが取れないため困るという声から、他国と比較した意見、働き手側の意見として稼げないので困るという声などがある。また、国 が決めるのではなく、経営者が個々の判断で決めるべきという意見も多かった。
ドイツで暮らす日本人の声
YES - 賛成派
- 週に1度くらいは何もせずにゆっくり過ごす日があっても良いと思います。日曜日が必ず休みなら、次の日のことを考えず土曜日の夜に友人をディナーに誘いやすいなど、予定を決める際にも助かります。(在独4年 / 20代 / 女性)
- 以前滞在していた国では365日何かしらが動いていました。なかなか気が休まる時がなかったので、国全体が「日曜日は皆休み」という雰囲気なのはとてもありがたい。このまま変わらずにいてほしいです。(在独1年 / 20代 / 男性)
NO -反対派
- 単純に不便です。平日に働いている身としては、土曜日しか買い物に行くチャンスがないので困ります。そのため、ドイツに来てからはインターネットで買い物をすることが増えました。(在独7年 / 40代 / 男性)
- 平日は半日働いている上、土曜日は子供の補習校があるので忙しいです。そのためゆっくり買い物できる時間がないので困っています。(在独4年 / 40代 / 女性)
- ふらっと買い物をしたい時にお店が開いていないのは不便だと感じます。ただ、毎日忙しく過ごしていた日本での日々を思い出すと、ゆったり過ごせる日があることは贅沢なことなのかもしれません。(在独1年 / 30代 / 女性)
ドイツ人に聞いた
日曜日を楽しむアイデア
- ガールフレンドとたっぷり朝食を取った後、身支度したら散歩へ。途中のカフェでお茶をしたりケーキを食べたりして夕方に家に戻ります。その後はディナーを取りながら映画を見ます。時には友人を家に呼ぶこともあります。(20代 / 男性)
- 天気の良い日は友人と一緒にスポーツを楽しむことが多いです。ドイツでは一般的に家族で団らんを取ることが多いと思います。あとは、ガーデニングをするという人もいますね。(20代 /女性)
- 天気の良い日は、夫婦で一緒に公園に出かけたり、サイクリングをして楽しみます。(60代 /夫婦)
- 日曜日は何もしない日。家でくつろいでいます。晴れた日には散歩に出かけることが多いですね。その昔は、日曜日には家族で教会に行くのが一般的でした。(30代 / 男性)
- 家事も何もしません。ただリラックスするだけ。(40代 / 男性)
- 友人に会いに出かけることが多いです。(40代/女性)
- カフェでコーヒーやケーキを楽しむのが日曜日の定番スタイルです。(60代 / 女性)
日曜でも買い物ができる場所
駅構内
各町の中央駅(Hauptbahnhof)の構内に入店しているパン屋やカフェ、小さいスーパー、ドラッグストアなどは夜まで開いている。少し割高だが、誰もが利用しやすい。
レストラン・カフェ
家族や友人と食事に出かけたり、コーヒーを楽しむことができる。特に冬の寒い時期は、おしゃれなお店で読書をしたり、おしゃべりしながら過ごすのがドイツ流。
キオスク
アルコールやスナックを買いたい場合は、キオスクが便利。オーナーによっては日曜日に閉店の店舗もあるので、事前にオープン日をチェックするのがベター。
ガソリンスタンド
飲み物やスナックはもちろん、カップ麺やパスタ、冷凍ピザなど食料品も売っているので、緊急時には便利。ただ、中心部になかなかなく、価格が最も割高。
空港
駅構内よりもバラエティー豊かなショップが軒を連ねる。日曜日や休日を挟んで観光に来た家族や友人がお土産を買いたい場合にも使えるのがうれしい。
ドイツ以外の国の日曜日はどうなっている?
EU各国と日本の状況
EU日曜閉店法なし、休息についての規定あり
欧州連合基本権憲章の31条によると、すべての被雇用者は、週に1日の休息を与えられる。EUの労働時間ガイドラインにも、週に一度、最低24時間は休息時間が続くこと、と記されている。EU法においても、以前は日曜日を休息日と記していたが、欧州裁判所は日曜日を休息日に定めることを認めない判決を出した。ユーロスタットの調査によると、EUに加盟する28カ国の被雇用者のうち13%(2015年)が、日曜に定期的に働いている。
日本日曜閉店法なし、法定労働時間外、深夜時間帯の割増賃金あり
日本の労働基準法では週1日以上、または1カ月に4日以上の休日(法定休日)を与えなければならないと定められている。法定休日に働く場合を休日労働とし、割増賃金を支払わなくてはいけないという制度がある。365日営業が当たり前の日本では、現在は働き方に関する改革が行われており、今年1月には一部のファミリーレストランで24時間営業の廃止が決定し、そのほかの業種も時短営業による効率化を図る動きが広まっている。
ベルギー日曜閉店法あり、移民系小規模小売店はオープン
ベルギーにも日曜の営業を制限する法律がある。パン屋と肉屋は日曜の午前中もオープンしているが、それ以外は基本的に閉店。ただし、移民が多いベルギーというお国柄、アジア系やトルコ系の小規模な小売店は平日に休みを設け、日曜に営業している。また、観光地やスパリゾートなどでも例外が認められている。隣国ルクセンブルクは2015年以降、日曜営業が認められている。
ポーランド日曜閉店法なし、年13日の祝日は休まなければならない
カトリックを信仰するポーランドだが、日曜閉店法のような規定は存在しない。大手スーパーマーケットやディスカウントストアは、日曜でも8時~20時までオープンしている。ただし、国が定めている13の祝日については、閉店を義務付けられている。日曜閉店法はないもの、定期的に日曜に労働している人の割合はEUで一番少ない3%。
オランダ日曜閉店法あり、規制緩和が進む
オランダにも日曜を休息日と定める法律はある。しかし、1984年には年間4日の日曜の営業を許可し、2015年には各自治体でその日数を定めて良しとの規制緩和が進み、今では大都市で年間52週、日曜に営業している。そのため、隣国ドイツから日曜や祝日に買い物客が押し寄せる。日曜に定期的に労働している被雇用者は18.4%。
英国日曜閉店法なし、日曜ボーナスもなし
日曜の営業を規制するような法律はほとんどなく、イングランドとウェールズでは制限付きで日曜営業が認められている。英国の最低賃金法においても、日曜の労働に対するボーナスは規定されていない。日曜に定期的に労働する被雇用者の割合は17.9%。EU内で一番この割合が高いのはスロバキアで20.9%。
フランス日曜閉店法あり、日曜の給与手当は倍額に
フランスでは、法律により年間12日、日曜に営業することを認められている。しかし、雇用者は日曜の労働を強制してはならず、日曜の手当は、通常の倍額支払わなくてはならない。また、観光地の店については例外が適用されている。日曜に働いている人は、全体の12.5%。
スウェーデン日曜閉店法なし、日曜ボーナスは手厚い
スウェーデンの国内法には、日曜の労働時間についての特別な規定は見当たらない。多くの場合、労働組合との労働協定の中で、日曜の処遇についての規定が設けられ、日曜の特別手当は2倍とされることも多い。日曜に定期的に働く被雇用者は、約13%。北欧でもデンマークやノルウェーには日曜営業の制限あり。デンマークは月の第一日曜日は営業している。