一生に一度は行きたいドイツの世界遺産
世界的に価値があると考えられる建築物や自然保護区などを、人類共通の遺産として保護するユネスコの世界遺産。ドイツは、イタリアと中国に次ぐ世界第3位の世界遺産大国であり、ケルン大聖堂やバウハウスのモダン建築をはじめ、ドイツが工業国となった歴史を物語る産業遺産など、幅広い年代とジャンルの世界遺産が存在している。本特集ではドイツの世界遺産の特徴をはじめ、訪れる際のお役立ち情報など、その魅力をたっぷりご紹介しよう。(文:ドイツニュースダイジェスト編集部)
目次
ドイツの世界遺産事情
そもそも世界遺産とは、1972年にユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産および自然遺産の保護に関する条約」(世界遺産条約)に基づいて登録された遺跡や景観、自然のこと。2022年8月現在、世界194カ国が同条約に批准している。発端となったのは1960年代、エジプトのナイル川にダムの建設計画が持ち上がり、それによってアブシンベル神殿をはじめとするヌビア遺跡群が水没の危機に瀕したこと。ユネスコを中心に遺跡の移設・保護キャンペーンが行われ、遺跡はダム建設の影響を受けない高い場所に移設された。その後、世界的に価値のある遺跡や建築物、自然を、一国だけでなく人類全体の遺産として保護するための国際的な枠組みとして機能している。世界遺産の種類は、以下の三つに分類される。
❶ 文化遺産
歴史的に価値のある遺跡や建造物、記念物が対象。ドイツでは、ケルン大聖堂⑲をはじめとした48件が登録されている。
❷ 自然遺産
美しい景観、生態系、地層、地形、絶滅危惧種の生息地が対象。ドイツには、メッセル採掘場の化石発掘現場⑰など3件がある。
❸ 複合遺産
文化遺産、自然遺産の両方を兼ね備えたものが対象で、ペルーのマチュピチュ遺跡などが有名。現在ドイツでは、このカテゴリーに分類されるものはない。
2022年の世界遺産の総数は1154件で、その内訳は文化遺産897件、自然遺産218件、複合遺産39件。一方で世界遺産に登録されながらも、地域紛争や自然災害、都市・観光開発などによって危機に面している場所は「危機遺産」(現在52件)と呼ばれ、保存修復の状況が改善されない場合は登録を抹消されることも(これまでに3件)。
ドイツでは、ドレスデンのエルベ渓谷に橋がかけられたことが原因で2009年に登録を抹消された。また2003年からは、伝統舞踊や音楽、演劇、工芸技術や祭礼など、人々の営みの中で受け継がれている「無形文化遺産」の登録も行っている。
バラエティーに富んだドイツの世界遺産
ドイツでは現在、51件の世界遺産が登録されている。その特徴は、数千万年前の化石採掘場から、中世の城や街並み、そして炭鉱や製鉄所など20世紀以降の工業遺産やモダン建築まで、幅広い年代とジャンルにわたっていること。
またドイツには、ローマ帝国の国境線⑧やワッデン海㉞など、数カ国にまたがる「トランスバウンダリーサイト」(国境を超える遺産)というジャンルの世界遺産も多い。これは人為的な国境にとらわれない自然遺産や、かつて一つの民族・文化圏であった地域の文化遺産などを、数カ国が共同で保護する世界遺産のことで、大陸国ならではの特徴といえるだろう。
アーヘン大聖堂①はドイツで最初の世界遺産にして、1972年のユネスコ世界遺産の第一期に登録された12件のうちの一つ
コロナ禍と戦争に翻弄された世界遺産委員会
世界遺産委員会は、毎年7月前後に参加国の持ち回りで開催されており、そこで世界遺産への新規登録や、十分に保全されていない遺産の登録抹消について協議される。しかし2020年はコロナ禍によって延期になり、翌年の2021年に2年分の審議が行われることに。ドイツでは2年分を合わせて5件が新たに登録され、世界遺産数で第3位となった。
続く2022年、ロシアのウクライナ侵攻により、またもやイレギュラーな対応が必要に。というのも、2022年の世界遺産委員会の議長国はロシアで、開催・中止などの決定権はロシアにあったのだ。ロシアは侵攻の正当性を主張し、欧米諸国はロシアが議長国を務めるのであれば会議をボイコットすると表明。ロシアを世界遺産委員会から締め出そうとする欧米に反発する国もあり、最終的には無期限延期の措置が取られた。
2022年の世界遺産委員会では、ドイツからは「エアフルトのユダヤの中世遺産」が登録候補に上がり、全体では31件を審議予定だった。しかし、22年8月時点では開催のめどは立っていない。オリンピックのような国際的なイベントと同じく、世界平和を促進するための活動でもあるユネスコの世界遺産。激しく移り変わる世界情勢の中で、有形・無形にかかわらず、変わらぬ姿勢で人類共通の遺産を保護していくことがますます求められるだろう。
ドイツで必ず行くべき世界遺産9選
ドイツに51カ所ある多種多様な世界遺産。ここでは自他共に認める世界遺産マニアのSさんに、ドイツで必見の世界遺産をナビゲートいただく。世界遺産の訪問はもちろん、現地の見どころやグルメ情報もぜひチェックしてみて。
案内人
世界遺産マニア Sさん
デュッセルドルフ在住のサラリーマン。メジャーどころからマイナーで地味な世界遺産まで、不思議な達成感を味わえることから世界遺産巡りがやめられなくなってしまった旅中毒者。22年8月、在独7年目にしてドイツの世界遺産全51件を制覇した。
ハンザ同盟都市リューベック⑨
1143年にホルシュタイン伯アドルフによって建設されたリューベック。13〜14世紀にかけて北海・バルト海を中心とする貿易を独占し、繁栄を極めたことから「ハンザの女王」とも呼ばれた。旧市街の入り口にあるホルステン門は、都市の要ようさい塞として1478年に建てられた、リューベックの象徴ともいえる建造物。また市内には五つのゴシック様式の教会があり、それらの七つの塔が美しい街のシルエットを形作っている。
おすすめポイント
リューベックの素晴らしいところは、どの季節に行っても美しいこと。夏はバカンスに訪れる人でにぎわい、冬は市庁舎広場で大規模なクリスマスマーケットが開催されるなど、さまざまな表情を楽しめる街だと思います。もちろん、北ドイツならではの魚介料理も忘れずに!
ポツダムとベルリンの宮殿群と公園群⑩
18世紀、プロイセン王のフリードリヒ2世が、ポツダムの地に夏の離宮としてサンスーシ宮殿の建設を命じたことを皮切りに、ポツダムとベルリンには歴代のプロイセン王による宮殿と庭園が数多く建設された。プロイセン王国の歴史を現代へと継承する貴重な建造物として、サンスーシ宮殿のほかにシャルロッテンホーフ宮殿、ツェツィーリエンホーフ宮殿、ザクロウ地区の救世主教会、バーベルスベルク宮殿、孔くじゃく雀島など多くの建造物や場所が登録されている。
おすすめポイント
ドイツ国内の世界遺産でも特に人気が高いサンスーシ宮殿。「夏の離宮」というだけあって、特に夏は緑豊かな階段状のブドウ畑と優雅な宮殿が織りなす景色が美しいです。個人的には、暖かい季節の訪問をおすすめします!
ヴァイマル、デッサウおよびベルナウのバウハウスとその関連遺産群⑱
1919年、建築家のヴァルター・グロピウスによってヴァイマルに設立された、工芸・写真・デザインなどを含む美術と建築に関する総合教育の学校「バウハウス」。シンプルで美しいデザインと機能性を追求したデッサウの校舎は、ドイツのモダニズム建築の礎でもある。バウハウス・デッサウ校をはじめ、ヴァイマルにあるバウハウス大学や実験住宅「ハウス・アム・ホルン」など、その思想を体現する建築物や関連施設が世界遺産に登録されている。
おすすめポイント
世界遺産といえば、大聖堂やお城などのイメージが強いですが、実はモダニズム建築の登録にも力を入れていて、バウハウスはそのパイオニア的存在。一見普通の校舎ですが、100年前に建てられたと思うと驚きです。ちなみに格子窓は、日本の障子を参考にしているそう。
ケルン大聖堂⑲
ゴシック様式の建築物の中で、世界最大規模を誇るケルン大聖堂。600年もの長い歳月をかけて1880年に完成されたこの大聖堂は、大きくそびえる2本の塔が圧倒的な印象を与える。2004年にはケルン市の再開発を理由にユネスコから世界遺産登録抹消の警告を受けたものの、2006年に解除され、現在でも世界各国から多くの人々が訪れるドイツを代表する名所として威厳を保ち続けている。外観はもちろんのこと、美しいステンドグラスや装飾品を収める内部も必見。
おすすめポイント
ケルン中央駅に着いた瞬間に大迫力で出迎えてくれるケルン大聖堂は、街のシンボル的存在。大聖堂の周りにはケルンの地ビール「ケルシュ」の醸造所も点在しているので、ビール好きなら周辺を散策しながらはしご酒を楽しめます。私が特に好きなのは、Mühlen Kölschです。
ヴァルトブルク城㉓
ドイツには数多くの城が残るが、そのなかでも国内で初めてユネスコ世界遺産に登録されたのがこのヴァルトブルク城。伝説によると1067年に要塞として建設され、テューリンゲン州の都市アイゼナハを見守るように堂々と山の上に立つ。ハンガリー王女で後に聖人となった聖エリザベートがかつて暮らしたことや、宗教改革によって帝国を追放されたマルティン・ルターが、ザクセン選帝侯フリードリヒ3世の保護を受けて隠れ住み、ここで聖書をドイツ語に翻訳したことでも知られる。
おすすめポイント
お城の敷地内に木組の家があり、一つの街のようになっているのが面白いです。お城の中には、金色のモザイクが美しい聖エリザベートの間や、ルターが聖書を翻訳した部屋も。アイゼナハの街中には、学生時代にルターが住んだ木組の家なども残っているので、ぜひ街も散策してみてください。
エッセンのツォルフェアアイン炭鉱業遺産群㉖
石油の普及により衰退していった炭鉱は、その昔、人々の生活を支える重要な役割を果たし、近代産業の発展に大きな影響を与えた。ツォルフェアアインは、そんなドイツの歴史を垣間見ることができる、「世界で最も美しい炭鉱」と呼ばれる炭鉱跡。巨大な第12採掘坑は、バウハウス様式によってデザインされたもので、その均整のとれた美しさと大きさは見る者を魅了する。近接した場所には、2010年にプリツカー賞を受賞した日本人の建築ユニットSANAA(サナア)が手がけたデザイン学校の校舎も。
おすすめポイント
ノルトライン=ヴェストファーレン州が工業地帯として栄えたことを示す、ドイツを代表する世界遺産の一つ。緑に囲まれた広大な敷地内を歩き回るのも良し、ツアーに参加するのも良し。さびた茶色の炭鉱はどの角度からも迫力満点で、写真好きの人にはたまりません。
ライン渓谷中流上部㉘
ワインの名産地としても有名なライン川渓谷には、雄大な景色をバックに、美しい城や街並みが数多くある。なかでも最も有名なザンクト・ゴアールスハウゼン近くに位置する一枚岩ローレライは、19世紀のロマン派の詩人や画家をとりこにするほどだった。ほかにも盗賊の巣窟となったライヒェンシュタイン城、作家のヴィクトル・ユーゴーが絶賛したといわれるシェ-ンブルク城、多くの観光客でにぎわう小さな街リューデスハイムなどがこの地域に集中している。
おすすめポイント
実は私が中学生の時に家族旅行で初めて行ったドイツの世界遺産で、個人的にも思い入れがあります。車でドライブしながら城や街を訪ねるのはもちろん、コブレンツからマインツにかけてライン川をくだる遊覧船の上で、気持ちの良い風に吹かれながらビールを飲んだら最高です。
バイロイト辺境伯歌劇場㊲
欧州の中でも現存する数少ない18世紀の劇場であるバイロイト辺境伯歌劇場。この地に繁栄をもたらしたブランデンブルク= バイロイト辺境伯の妃、ヴィルヘルミーネ・フォン・プロセインが音楽をこよなく愛していたことから、本人たっての希望で建てられたという。歌劇場のファサード部分のデザインは、北イタリアの様式がモデルになっている。内部にはゴールドを基調とした豪華絢けんらん爛な装飾の数々が施され、見るものを圧倒する。
おすすめポイント
かつてワーグナーやリストも居を構えた音楽の街バイロイト。小さな街ですが、繁華街も活気があって開けた雰囲気が魅力的です。地元のバイロイター醸造所が造るヘレスビールは、きれいな金色でおいしいので、ぜひバイエルンの料理と一緒にどうぞ。
シュヴァーベンジュラの洞窟群と氷河期芸術㊷
ドイツ南部に残る六つの洞窟とそこで発見された先史時代(約3万3000~4万3000年前)の芸術作品を含めたもの。これらの洞窟からは、象牙や骨を使った装飾品や楽器をはじめ、人類が作った世界最古の創作物として知られるライオンマンなど、この地での暮らしや芸術活動の貴重な証拠が見つかっている。2008年に発見されたホーレ・フェルスのヴィーナス像は、人間をモチーフとした造形美術として最も古いとされる。
おすすめポイント
私が行ったのは、ホーレ・フェルスという最大の洞窟。中にはコウモリをはじめとするさまざまな動物が生息しているそうです。春〜秋には毎週土曜日に洞窟内のツアーも実施しているので、それに参加するのもいいですよ。ウルムから近郊電車で30分くらいと、意外とアクセスが良好です。
ちょっとニッチなおすすめ世界遺産5選
それほど有名ではないけれど、実はとんでもない魅力を持っていたり、味わい深い感動をくれたりする世界遺産がドイツにはまだまだたくさんある。引き続きSさんにご案内いただきながら、ちょっぴりニッチな世界遺産も巡ってみよう。
シュパイアー大聖堂②
ライン川のほとりにたたずむシュパイアー大聖堂は、世界最大のロマネスク様式の建築としても有名。神聖ローマ皇帝コンラート2世が、1030年に自らの墓所として建設を命じたという。後の神聖ローマ皇帝やドイツの王、その妻たちも埋葬されており、彼らが眠る地下聖堂はドイツ最大にして最も美しいといわれる。戦争による度重なる破壊に遭いながらも、その都度修復や再建がなされ、建設当時の様式がよく保存されていることから1981年に世界遺産に登録された。
おすすめポイント
ケルン大聖堂などに比べるとシンプルですが、赤と白の砂岩が交互に配置された柱の模様が特徴的でかっこいい。2021年に新たに登録されたユダヤ人共同体遺跡群㊿も同じ街のすぐ近くにあるので、ぜひ両方合わせて行ってみてください。この街のクリスマスマーケットも有名ですよ。
ランメルスベルク鉱山、歴史都市ゴスラーとオーバーハルツ水利管理システム⑫
ドイツ中央部のハルツ山地に位置する古都ゴスラー。南東に位置するランメルスベルク鉱山では968〜1988年まで約1000年にもわたって銀やすず、鉛などの採掘が行われていた。ハインリヒ2世がこの地の銀を使って銀貨を造ったことでゴスラーの街は栄え、旧市街にはロマネスク様式の皇帝居城や教会、木組の家などが当時の様子を残している。発展を支えた鉱山に加え、その採掘にかかるエネルギー供給資源となっていた水管理システムが世界遺産に登録されている。
おすすめポイント
鉱山の中は、黄色い列車に乗って見学することができます。ゴスラーのドイツらしくてかわいらしい街並みから、少し離れたところには鉱山があるというギャップが珍しくて面白い。毎年4月末には「ヴァルプルギスの夜」という魔女の祭りが行われるので、その時期に合わせて行くのも◎。
フェルクリンゲン製鉄所⑯
産業遺産として世界で初めて世界遺産に登録され、また現在でも鉄鋼業全盛期の当時の様子が完全な状態で保存されている。第二次世界大戦中には、約7万人もの強制労働者や戦争捕虜が労働を強いられたという負の歴史も。大迫力の製鉄所内はツアーはもちろん、歩いて回るのも楽しい。コンサートや美術展などの文化的な催しも行われており、産業発展を支えた製鉄所の歴史に触れることができると同時に、役割を終えた施設の多様な姿を見ることができる。
おすすめポイント
個人的に、一番推したい世界遺産です! 19世紀後半のビスマルクの時代に、国力が増強していく過程で建てられた製鉄所で、今のドイツの工業大国のイメージのもとになっているのではないかと思うくらい本当に圧巻。夜には製鉄所がライトアップされて幻想的な雰囲気になります。
メッセル採掘場の化石発掘現場⑰
ヘッセン州の村メッセルの化石採掘場では、3600万~5700万年前の新生代・始新世前期の化石が4万点以上発見されている。もともとこの一帯が亜熱帯の湖だったと考えられており、水辺の動植物や昆虫、魚類や両生類などを中心にクオリティーの高い状態で化石となって保存されていた。ビジターセンターでは、メッセル採掘場の歴史や地層について、映像や実際のサンプルの展示を通して分かりやすく解説。採掘場でのツアーもあり、実際に地層や化石に触れることもできる。
おすすめポイント
ドイツには自然遺産が三つありますが、ほかの二つは他国と共同で登録しているトランスバウンダリーサイトなので、メッセル採掘場はドイツ単独のものとしては唯一の自然遺産。観光地らしい雰囲気はありませんが、それも含めて世界遺産の幅広さを知ることができるので、あえておすすめします。
ル・コルビュジエの建築作品 - 近代建築運動への顕著な貢献㊶
ロイド・ライトやミース・ファン・デル・ローエと共に「近代建築の巨匠」と称される、建築家のル・コルビュジエ(1887-1965)。スイスで生まれ、フランスで活動したコルビュジエは、「近代建築の五原則」を定式化し、20世紀の近代建築文化に大きな影響を与えた。特にコルビュジエの思想を顕著に表す建築作品として、フランスを中心にスイス、ドイツ、ベルギー、日本、インド、アルゼンチンの7カ国にある17の建築物が世界遺産に登録されている。
おすすめポイント
複数の大陸にまたがる「トランスコンチネンタルサイト」の世界遺産であり、ドイツと日本の唯一共通する遺産として挙げました。ドイツでは、1927年にシュトゥットガルトの住宅展に出展された「ヴァイセンホフ・ジードルングの住宅」が、日本では東京・上野にある「国立西洋美術館」が登録されています。
足を運ぶからこそ見えてくる世界遺産をもっと楽しむ方法
ここまでドイツの世界遺産の魅力を教えてくれた世界遺産マニアのSさん。今までに旅した国は71カ国514都市で、全ての世界遺産では1154件中215件を訪れたという。そんなSさんに、世界遺産を訪れる醍だい醐ごみ味を聞いた。(写真提供:Sさん)
なぜ世界遺産マニアに?
高校生のころ、唯一勉強したといっても過言ではないくらい世界史が好きでした。世界史の教材の「資料集」を眺めるなかで、実際にそこへ行ってみたいというところから旅好きになりました。そしてドイツへ渡ることを決めた後に、たまたま世界遺産検定の本を手に取って。ドイツには意外とたくさん世界遺産があることを知り、渡独後はさまざまな場所を回ってみることに。30カ所くらい行くとだんだん「全クリア」が見えてきて、これは全て行かねばと思って今に至ります。
世界遺産を訪れたら、その土地の地ビールも要チェック!
マニア流世界遺産の周り方
ドイツには世界遺産が51カ所もあるので、いろいろな世界遺産をはしごできるというメリットがあります。例えばフェルクリンゲン製鉄所⑯から北上したところには、トリーアのローマ遺産群⑦がありますよ。また、バウハウス・デッサウ校⑱があるザクセン=アンハルト州は、小さな州なのに7カ所も世界遺産が集まっていて、デッサウ・ヴェルリッツの庭園王国㉔やルター記念建造物群⑳などを一緒に回ることができますよ。英仏蘭などほかの西欧諸国は、海外領土にも世界遺産があるので全クリアはなかなかハードルが高いですが、ドイツは全て陸路で周れるというのもポイントです。
Sさんがこれまでで最も感動したドイツの世界遺産は、フェルクリンゲン製鉄所⑯
前情報は調べる派?それとも、あえて調べない?
がっつり調べる派です(笑)。もちろんフレッシュな感動を楽しむためにあえて調べないという人もいますが、その街や建物がどういう場所なのかをある程度知ってから行くと、見え方も変わってくるかなと。何も知らなければ「おぉーすごい」で終わっていたものが、どういう歴史や意味があるのかを頭に入れておけば、実際にその場所へ行った時の感動はより高まると思います。
足を運び続けたからこそ分かる世界遺産の魅力
世界遺産は、その場所に普遍的な価値があると判断して、それを後世に残すために登録しているもの。だからパッと見て「すごい!」と思うような世界遺産も多いですが、小さかったり地味だったりして、「これが世界遺産なのか?」っていうものもいっぱいあるんですよね。そんなとき、「なぜここを後世に残そうとするのだろう?」という視点から見てみることは、世界を考え直すきっかけにもなりますし、それこそが世界遺産へ行くことの醍醐味だと思っています。歴史が創った壮大な遺産はもちろん、一見地味で小さな場所も含めて、ぜひドイツの世界遺産めぐりを楽しんでみてください。
ヘーゼヴューとダーネヴィルケの考古学的境界線群㊸。ちょっぴり地味な世界遺産も、訪れて見るとなかなか味わい深いという
ドイツの世界遺産ランキング
世界遺産の国別ランキング
1位 | イタリア | 58件 |
2位 | 中国 | 56件 |
3位 | ドイツ | 51件 |
4位 | スペイン | 49件 |
4位 | フランス | 49件 |
6位 | インド | 40件 |
ドイツの世界遺産・地域別ランキング
1位 | バイエルン州 | 10件 |
2位 | ザクセン=アンハルト州 バーデン=ヴュルテンベルク州 ヘッセン州 |
7件 |
3位 | ノルトライン=ヴェストファーレン州 | 6件 |
ドイツの世界遺産・人気ランキング
1位 | ケルン大聖堂⑲ |
2位 | サンスーシ公園 (ポツダムとベルリンの宮殿群と公園群⑩) |
3位 | ペルガモン美術館 (ベルリンのムゼウムスインゼル㉒) |
4位 | サンスーシ宮殿 (ポツダムとベルリンの宮殿群と公園群⑩) |
5位 | エッセンのツォルフェアアイン炭鉱業遺産群㉖ |
ドイツの世界遺産全51カ所リスト(2022年8月現在)
白丸数字:文化遺産
黒丸数字:自然遺産
★…ドイツで必ず行くべき世界遺産
☆…ちょっとニッチなおすすめ世界遺産
- アーヘン大聖堂(1978年)
- シュパイアー大聖堂(1981年)☆
- ヴュルツブルク司教館、その庭園群と広場(1981年)
- ヴィースの巡礼教会(1983年)
- ブリュールのアウグストゥスブルク城と別邸ファルケンルスト(1984年)
- ヒルデスハイムの聖マリア大聖堂と聖ミカエル教会(1985年)
- トリーアのローマ遺跡群、聖ペテロ大聖堂及び聖母マリア教会(1986年)
- ローマ帝国の国境線(1987年、2005年・2008年拡張)
- ハンザ同盟都市リューベック(1987年)★
- ポツダムとベルリンの宮殿群と公園群(1990年、1992年・1999年拡張)★
- ロルシュの大修道院とアルテンミュンスター(1991年)
- ランメルスベルク鉱山、歴史都市ゴスラーとオーバーハルツ水利管理システム(1992年、2010年拡大)☆
- バンベルク市街(1993年)
- マウルブロン修道院の建造物群(1993年)
- クヴェートリンブルクの聖堂参事会教会、城と旧市街(1994年)
- フェルクリンゲン製鉄所(1994年)☆
- メッセル採掘場の化石発掘現場(1995年)☆
- ヴァイマル、デッサウおよびベルナウのバウハウスとその関連遺産群(1996年、2017年拡張)★
- ケルン大聖堂(1996年)★
- アイスレーベンとヴィッテンベルクにあるルター記念建造物群(1996年)
- 古典主義の都ヴァイマル(1998年)
- ベルリンのムゼウムスインゼル(博物館島)(1999年)
- ヴァルトブルク城(1999年)★
- デッサウ・ヴェルリッツの庭園王国(2000年)
- 僧院の島ライヒェナウ(2000年)
- エッセンのツォルフェアアイン炭鉱業遺産群(2001年)★
- シュトラールズント歴史地区とヴィスマール歴史地区(2002年)
- ライン渓谷中流上部(2002年)★
- ムスカウ公園(2004年)
- ブレーメンのマルクト広場の市庁舎とローラント像(2004年)
- レーゲンスブルクの旧市街とシュタットアムホーフ (2006年)
- カルパティア山脈のブナ原生林とドイツの古代ブナ林群 (2007年・2011年拡張)
- ベルリンのモダニズム集合住宅群(2008年)
- ワッデン海(2009年・2014年拡張)
- アルフェルトのファグス工場(2011年)
- アルプス山脈周辺の先史時代の杭上住居群(2011年)
- バイロイト辺境伯歌劇場 (2012年)★
- ベルクパルク・ヴィルヘルムスヘーエ(2013年)
- コルヴァイのカロリング期ヴェストヴェルクとキヴィタス(2014年)
- ハンブルクの倉庫街とチリハウスを含む商館街(2015年)
- ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献(2016年)☆
- シュヴァーベンジュラの洞窟群と氷河期芸術(2017年)★
- ヘーゼビューとダーネヴィルケの境界遺跡群(2018年)
- ナウムブルク大聖堂(2018年)
- エルツ山地(クルスナホリ)鉱業地域(2019年)
- アウクスブルクの水管理システム(2019年)
- ヨーロッパの大温泉保養都市群(2021年)
- ダルムシュタットのマチルダの丘(2021年)
- ローマ帝国の国境線-下ゲルマニア・リメス(2021年)
- シュパイアー、ヴォルムス、マインツのユダヤ人共同体遺跡群(2021年)
- ローマ帝国の国境線-ドナウ・リメス(2021年)