ジャパンダイジェスト

旅ールのすすめ - ビールに会いに旅に出よう

山片 重嘉コウゴ アヤコ 1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。ビール好きが高じて2008年から1年半、ミュンヘンで暮らす。旅とビールを組み合わせた“旅ール(タビール)をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ビアジャーナリストとして『ビール王国』(ワイン王国)、『ビールの図鑑』(マイナビ)、『Coralway』(日本トランスオーシャン機内誌)など、さまざまなメディアで執筆。 www.jbja.jp/archives/author/kogo

醸造家だけのお楽しみビールをおすそ分け

ドイツのバイエルン州北部に位置するフランケン地方。なかでもバンベルク、バイロイト、エアランゲン、フォルヒハイムを結ぶ地域は、切り立った岩山やなだらかな丘陵が次々と現れ、起伏に富んだ景観が大変美しい。スイスにも似ていることからFränkische Schweiz(フランケン地方のスイス)と呼ばれている。フォルヒハイムはバンベルクとニュルンベルクのほぼ中間に位置する都市で、Fränkische Schweizの西の玄関口。その歴史は古く、8世紀にはフランク王国の宮廷が置かれていた。旧市街には木組み建築様式の美しい建物が多く、夏にはハイキングの拠点として、冬には市庁舎の窓を利用したアドベントカレンダーを目当てに多くの観光客が訪れる。

フランケン地方は、豊かな自然の中で独自のビール文化を育んできた。この土地ならではの伝統的ビールといえば、Zwickl(ツヴィックル)、またはZwickel(ツヴィッケル)と呼ばれるスタイル。名前の由来は、貯蔵タンクに付いたZwickelhahn(ツヴィッケルハーン)という蛇口。醸造家は、貯蔵タンクの中のビールの仕上がりを確認する際に、ツヴィッケルハーンからラガービールを注いで試飲する。本来は醸造家だけが味わえる特別なビールだ。貯蔵タンクから直接グラスに注いだ無ろ過のビールは、通常流通しているビールとは異なるおいしさであったため、店に来る常連客に振る舞われていた。それが話題を呼び、ボトルでも販売されるように。貯蔵庫から直接出すという意味で、Kellerbier(ケラービール)とも呼ばれる。

フォルヒハイムで1848年から続くグライフ醸造所の「Zwickl」もその一つ。無ろ過で酵母やタンパク質が残っているため、やや白濁した外観。キレはあるが複雑で奥行きのある味わいで、飽きることなく何杯でも飲めそうだ。今年の夏はビールに会いに、フランケン地方を旅されてはいかがだろうか。

www.brauerei-greif.de

vol.79
Zwickl

Zwickl

 
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