ジャパンダイジェスト

旅ールのすすめ - ビールに会いに旅に出よう

山片 重嘉コウゴ アヤコ 1978年東京生まれ。杏林大学保健学部卒業。ビール好きが高じて2008年から1年半、ミュンヘンで暮らす。旅とビールを組み合わせた“旅ール(タビール)をライフワークに世界各国の醸造所や酒場を旅する。ビアジャーナリストとして『ビール王国』(ワイン王国)、『ビールの図鑑』(マイナビ)、『Coralway』(日本トランスオーシャン機内誌)など、さまざまなメディアで執筆。 www.jbja.jp/archives/author/kogo

シュヴァーベンの田舎町が生んだ発明一家

グリュービンゲンは、バーデン=ヴュルテンベルク州のシュヴェービッシェ・アルプの麓に位置する人口2200人ほどの小さな街だ。ヒルゼンベック=ラム醸造所は1728年から続く、地元に根付いた家族経営の醸造所。伝統的なビールだけでなく、クラフトビールやウイスキー造り、さらには環境に配慮した発想豊かな取り組みが注目されている。

その一つが消毒用アルコールだ。コロナ禍に消毒用のアルコールが不足したのは記憶に新しい。ドイツの複数のビール醸造所では、既存の設備を使用して消毒用アルコールを精製。同醸造所でも、アルコールフリービールの製造過程で発生する廃棄物であるアルコールを集めたり、ビールを蒸留したりして消毒用アルコールを造り、地域の薬局で販売した。

2022年には地元のパン屋で売れ残ったものを原料の一部に使用した「Brotbier」(パンのビール)をリリース。パンとビールは共に麦芽と酵母、水を原料としており、ドッペルボックなど麦芽比重の高いビールは「液体のパン」と呼ばれるほど親和性が高い。ドイツでは毎日大量のパンが廃棄されているが、そうしたフードロスを減らすのが狙いだという。ただし、パンの使用はビール純粋令に準拠していないため、特別な許可を得て製造している。

枠にとらわれない発想は代々続くもののようだ。定番商品「Brunnenbier」(井戸のビール)にも、名前の由来になったユニークなエピソードがある。昔、醸造所にも近いマイエルホフ広場の落成を祝い、特別に改造された井戸からこのビールを提供した。井戸のビールは無料で振る舞われ、人々はこぞって飲んだという。Brunnenbierは無ろ過でやや濁りがある。麦芽の香ばしさと甘みに続いて、テトナング地方のホップの特徴であるスパイスやハーブを連想させる香りと苦味が穏やかに顔をのぞかせる。すいすいと飲める一杯だ。

URL: www.gruibinger.de

vol.92
Gruibinger Brunnenbier

Gruibinger Brunnenbier

 
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