ドイツ語では、辛口(ドライ)のことを「トロッケン(Trocken)」といい、中辛口(セミドライ、ミディアムドライ、オフドライ)のことを「ハルプトロッケン(Halbtrocken)」と言います。例えばフランスには、スパークリングワインを除いてこのような味わいの表示は見られませんが、ドイツでは辛口、中辛口はその都度表示します。
ただ最近では、味わいを表示していない辛口ワインもあります。例えば、ドイツワイン・インスティトゥートが2000年から提唱しているクラシック(CLASSIC)というカテゴリーのワインや、ラインガウ地方のエアステス・ゲヴェックス(Erstes Gewächs)、ドイツ・プレディカーツワイン協会(VDP)が推進しているグローセス・ゲヴェックス(Großes Gewächs)というワインは、辛口であってもその表示がありません。いずれもドイツワインは辛口がスタンダードであることを印象づけようとする試みです。
ところで、トロッケンとは一体どのようなワインなのでしょう? 圧搾して得られたぶどう果汁内の糖分が、ワインとなる過程でほぼすべて発酵、分解すると、トロッケンとなります。では、ハルプトロッケンや甘口ワインはどうやって造るのでしょう? 以前はズースレゼルヴェ(Süßreserve)と言う冷蔵保存したぶどう果汁に亜硫酸塩を加えたものを、ワインとブレンドすることで、甘みのあるワインを生産するのが主流でした。現在も、この製法で甘口を生産している醸造所はあります。しかし、醸造設備が進化し、発酵タンクの冷却が容易になってからは、多くの造り手が冷却によって発酵を止め、果汁内の自然の糖分を残すという方法で、甘口ワインを生産しています。そういったワインのことを「レストズース(Restsüß)」、つまり残糖のあるワインと言ったりします。なかには、自然に発酵が止まって、甘口に仕上るワインもあります。
数値で言うと、ワインの残糖が1リットルあたり9グラムまでがトロッケン、18グラムまでがハルプトロッケン、45グラムまでがまろやかな甘口である「リープリッヒ(Lieblich)」、それ以上が甘口「ズース(Süß)」となります。最近ではワインの味わいを「洗練された辛口」を意味する「ファインヘルプ(Feinherb)」と表現するのがちょっとしたブームになっています。これは、残糖がやや多めのトロッケンからハルプトロッケンに至る味わいを表現する言葉で、ニュアンスとしては辛口寄りとなります。ハルプトロッケンのハルプ(半分)という言葉にエレガンスが感じられないので、醸造家たちはあまり使いたくないようです。
リープリッヒやズースという表示をエティケット上で見かけることはほとんどなく、味覚の表示がなければ、甘口である場合が多いです。醸造所のサイトやワインリストには、辛口、中辛口、甘口といった味覚が明記されています。購入するときに味覚の表示が見当たらなかったら、販売スタッフに尋ねてみましょう。味覚は購入の際の重要なポイントで、コミュニケーションのきっかけにもなります。
(モーゼル地方)
リースリングの産地として知られるモーゼル地方で、赤ワイン品種の栽培が認可されたのは1992年のこと。トリアー近郊ライヴェンにあるハインツ・シュナイダー醸造所では、当時、持ち畑の約半分を赤ワイン品種に植え替えるという、思い切った方向転換を行った。オーナーで醸造家のハインツ・シュナイダーさんが栽培している赤ワインは、無農薬栽培が可能な新交配品種レゲントと、伝統品種シュペートブルグンダー、そしてドイツ特有の品種ドルンフェルダーの3種。白ワインが主流の同地方で、優れた赤ワインを生み出している注目の醸造所だ。
Klostergartenstraße 34-36
54340 Leiwen
TEL:06507-99139
www.weingut-schneider.de
2005 Terra Ginestra Spätburgunder trocken
2005年産 テラ・ジネストラ・シュペートブルグンダー(辛口) 8,90€
ハインツ・シュナイダー醸造所の所有畑のうち、最も日当りのよい、デボン紀粘板岩土壌の畑、ギンスターベルク(エニシダの山)で栽培されたシュペートブルグンダーの甘口。赤ワイン品種を粘板岩土壌で育てている地域は世界でも限られているが、ドイツではモーゼル地方のほか、アール地方、ラインガウ地方に粘板岩土壌育ちの赤ワインがある。テラ・ジネストラ(ギンスターベルクのイタリア語訳)は、粘板岩土壌ゆえにエレガントに仕上った、軽やかなシュペートブルグンダーだ。
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