2005年11月25日付で欧州連合(EU)食品法が改定され、ドイツでもワインに添加される酸化防止剤である亜硫酸塩、ズルフィートの表示が義務付けられました。日本では以前から表示が義務付けられていましたので、中には日本に輸出されるドイツワインだけにズルフィートが添加されていると思っておられた方も多いようですが、ズルフィートはドイツでも以前からずっと添加されていました。ごくたまに、ズルフィート・アストマ(Sulfit-Asthma)と呼ばれる喘息に似た反応を起こす人がいるそうで、そういったケースも考慮しての改定です。
醸造家たちは単に「硫黄(Schwefel)」と呼んでいますが、ズルフィートとは化学記号式ではSO2、つまり二酸化硫黄(気体)、亜硫酸(液体)、亜硫酸塩(固体)のことです。抗菌作用のある食品添加物で、その歴史は古く、18世紀半ば頃からワインに添加されていたそうです。ギリシア、ローマ時代から添加されていたと書いている専門誌もあります。
ところで、ワインにはもともと、醸造段階において酵母の働きによって形成されるズルフィートが少量含まれています。その量はワインにより30~40mg/ℓ 程度。つまりズルフィートが全く含まれないワインというのは存在しないのです。 ただ自然に含まれるズルフィートの量だけでは、ワインを保存するには不十分なケースが多いのです。EUの基準によると、たとえば白ワイン(辛口)は200mg/ℓ、赤ワイン(辛口)は150mg/ℓ、貴腐ワイン(甘口)は400mg/ℓ が総量の上限となっています。つまり白の辛口ワインで、すでに30mg/lのズルフィートが含まれている場合は、最高170mg/ℓ までの添加が認められることになります。甘口の方が様々な菌が活動しやすいので添加量が多くなります。
フリーの醸造家、ハンス=ギュンター・シュヴァルツ氏の話によると、健康なぶどうだけを収穫し、醸造においてなるべく手を加えず、衛生管理を徹底することで、ズルフィートの添加量をかなり減らすことができるとのことです。これまでに彼が手がけたワインでズルフィートの総量が最も少なかったケースは、白の辛口で100mg/ℓ、赤の辛口で60mg/ℓだったそうです。ビオワインの生産者に限らず、多くの造り手が、なるべくズルフィートの添加量を減らす努力をしています。
ちなみにワイン内には結合型亜硫酸と遊離型亜硫酸があり、結合型は酸化防止作用や抗菌作用がほとんどないため、遊離型を一定量維持する必要性があります。収穫したぶどうの質、できあがったワインの質やpHなどが、遊離型亜硫酸の量に影響を与えます。
ところで、ワイン以外でズルフィートが多く含まれている食品には、乾燥果実やナッツ類(500~2,000mg/kg)、乾燥じゃがいも(400mg/kg)、ドライトマト(200mg/kg)などがあります。また人間の体内では、食品たんぱく質から毎日およそ2,500mgのズルフィートが形成され、処理されています。ですから、グラス1杯のワインに含まれるズルフィートの量について心配する必要はなさそうです。
(ラインヘッセン地方)
創業222年のP.J.ファルケンベルク社は、ワイナリーであると同時にドイツ高級ワインの輸出業の草分けでもある。日本では、今年100周年を迎えたドイツ最古のブランドワイン「リープフラウミルヒ〈マドンナ〉」が良く知られている。〈マドンナ〉はラインヘッセン地方一帯で栽培されているぶどうを使用したデイリーワインだが、同社はオリジナルの「リープフラウミルヒ」の畑、つまりヴォルムス市のリープフラウエン教会の周囲の畑を所有しており、現在もその畑のぶどうから数々の偉大なワインを生み出している。
Weckerlingplatz 1, 67547 Worms
Tel. 06241-91110
www.valckenberg.com
2007 Liebfrauenstift-Kirchenstück trocken
2007年産 リープフラウエンシュティフト・キルヒェンシュトゥック、
トロッケン(辛口)18,50ユーロ