ドイツワインと聞くと、ほとんどの方が白ワインを連想されるのではないかと思います。確かにドイツは昔から主に白ワインの産地で、1980年の時点では白品種の栽培面積が全体の88.6%を占めていました。ところが、近年では赤ワインの生産量が増え、2013年の白品種の栽培面積は全体の64.5%となっています。
ドイツは、世界的にトップクラスの白ワインを生み出すことができる伝統品種リースリングの故郷であり、その栽培面積は白品種の中で最大です。リースリングは晩熟で、ドイツのような寒冷な地域(EUワイン法上の気候区分でAゾーン。ただしバーデン地方のみ、より温暖なBゾーンに分類される)でゆっくりと育つことにより、その美味しさが開花するといわれます。また、リースリングはテロワールの特徴を実によく反映する白品種ともいわれています。
次いで多く栽培されている白品種がミュラー=トゥルガウ(別称リヴァーナー)、グラウブルグンダー、ジルヴァーナー、そしてヴァイスブルグンダー(仏語名ピノ・ブラン)です。いずれもドイツの伝統品種で、爽やかな飲み心地の辛口ワインが主に生産されています。中でもグラウブルグンダー種(旧名ルーレンダー、仏語名ピノ・グリ)と東欧にルーツがあるジルヴァーナー種はここ数年、人気が再燃しています。
グラウブルグンダー種とヴァイスブルグンダー種はブルゴーニュがルーツのいわゆる「ブルグンダー種(ピノ種)」。ブルゴーニュ系の品種の中では、シャルドネの栽培面積も増えています。同じくフランス系のソーヴィニヨン・ブランも人気があり、高品質のワインが生産されるようになっています。南欧がルーツといわれるゲヴュルツトラミーナーの生産量も増加傾向にあります。
一方で、減少傾向にあるのがドイツ品種を主とする交配により生まれたバッフス、ショイレーベ、ファーバーレーベ、オルテガ、フクセルレーベ、モリオ=ムスカートなどです。現状では栽培面積で上位を占めているミュラー=トゥルガウとケルナーも交配品種で、生産量は徐々に減っています。
栽培品種の傾向を見ると、伝統品種がより好まれ、交配品種はどんどん淘汰されつつあることが分かります。これは、造り手および飲み手の伝統への回帰、本物志向の表れでしょう。しかし交配品種にも優れたものがあり、例えばショイレーベなどから偉大なワインを生み出す生産者もいます。また、減農薬栽培が可能な新しい交配品種も誕生しており、いずれはその中から頭角を現してくる品種があるかもしれません。
参考: リースリング・イタリコと呼ばれる白品種がありますが、これはドイツ語ではヴェルシリースリングと言い、ドイツのリースリングとは別の品種。オーストリア、ハンガリーで主に栽培されています。
(ラインガウ地方)
ラインガウ地方、エストリッヒの伝統ある家族経営の醸造所。現在のオーナー、ペーター=ヤコブ・キューンは11代目。15ヘクタールのぶどう畑ではリースリング(約83%)とシュペートブルグンダー(約17%)が栽培されている。キューン氏はビオへの深い関心から、ビオディナミ(シュタイナー農法)の手法を取り入れているほか、垣根を低くし、地熱を活用したり、自然酵母による発酵を行うなど、自然の力を最大限に活かすワイン造りを行っており、世界的にも高く評価されている。
Mühlstr. 70, 65375 Oestrich
Tel. 06723-2299
www.weingutpjkuehn.de
2007 Landgeflecht Riesling Qualitätswein, trocken
2007年産 ラントゲフレヒト・リースリング、トロッケン(辛口)18,60€