ドイツには、昔から主に赤ワインが生産されてきた地域がいくつかあります。バーデン地方には9世紀頃にシュペートブルグンダーが持ち込まれ、以来、赤ワインの栽培が行われているという説もあります。このほか、ラインガウ地方のアスマンスハウゼン一帯、アール地方、そしてヴュルテンベルク地方が赤ワインの産地として知られています。アール地方の赤ワイン品種の栽培面積は全体の84.4%、ヴュルテンベルク地方では70.2%を占めています。
ドイツの赤を代表するシュペートブルグンダー種(仏語名ピノ・ノワール)は、ラインガウ地方のアスマンスハウゼンでは13世紀から、アール地方では18世紀から栽培されていたといわれています。ドイツにおける同品種の栽培面積は赤品種の中では最大で、最近では世界的に通用する「ピノ・ノワール」という名称をエチケットに表示する造り手も増えています。シュペートブルグンダーもリースリングと同様に土壌の特徴をよく反映し、造り手によって異なるニュアンスのワインが生まれます。ヴュルテンベルク地方ではトロリンガー(別称ヴェルナッチ)を中心に、シュヴァルツリースリング(仏語名ピノ・ムニエ)、レンベルガー(別称ブラウフレンキッシュ)が栽培されています。
ドイツの赤品種のリストも、白品種と同じくらい長くなります。シュペートブルグンダーに次いで多く栽培されているのが、ドイツ系の交配品種ドルンフェルダーとオーストリアがルーツといわれるポルトギーザー。ただ、シュペートブルグンダーが増加傾向にあるのに対し、この2品種は現在、減少傾向にあります。
代わりに人気が出てきているのが、レンベルガー、ザンクト・ラウレント(仏語名ピノ・サンローラン)、フリューブルグンダー(仏語名ピノ・マドレーヌ)などの伝統品種です。いずれもヴュルテンベルクでは古くから栽培されており、同地方をこえて少しずつ栽培面積が増えています。中でもフリューブルグンダー(早熟ブルゴーニュ種の意)はその名の通り、シュペートブルグンダー(晩熟ブルゴーニュ種の意)より早熟で、シュペートブルグンダーの突然変異種でもあり、質の良いワインができるため、両方を栽培する醸造家も増えています。
ほかにも栽培面積が増加している品種があります。それは、これまでドイツでは栽培が不可能だったフランス品種、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロです。中にはカベルネ・フランやシラーを栽培している醸造家もおり、赤ワインにおいても白ワイン同様フランス品種がどんどん北上しています。この傾向は近年の気候変動とも関連があります。
カベルネ・ソーヴィニヨンは非常に優れたワインができる晩熟種です。ドイツでもすでに1970年代から同品種をベースとする交配種の研究が行われており、10年程前から徐々に栽培が始まっています。現在、カベルネ・ソーヴィニヨンとドイツ品種との交配であるカベルネ・ミトスとカベルネ・クビン(ともにレンベルガーとの交配)、カベルネ・ドリオとカベルネ・ドルサ(ともにドルンフェルダーとの交配)の栽培面積が少しずつ増えています。このほか、ビオの造り手を中心に減農薬栽培が可能な交配種レゲントも増加傾向にあります。
(アール地方)
シュトッデン家は、ドイツでは例外的な赤ワインの産地アール地方で1578年からワイン造りを営んできた。特級畑、レッヒャー・ヘレンベルクを所有。「赤ワインの醸造所」と看板を掲げている通り、シュペートブルグンダーとフリューブルグンダーが、合わせて90%以上を占めている。極限まで剪定し、さらに房を間引いて平均収穫量を1ヘクタール当たり47ヘクトリットルにまで抑え、凝縮したワインを造ることに精力を傾けている。
Rotweinstrasse 7-9, 53506 Rech
Tel. 02643-3001
www.stodden.de
2006 Spätburgunder JS
2006年産 シュペートブルグンダーJS(辛口)19,00€