ヴィーティス種と呼ばれるぶどう属の品種は約70種類あるといわれ、主に北半球の亜熱帯地域を中心に分布しています。そのうちの代表的なものに、カスピ海、黒海沿岸が原産といわれるヴィーティス・ヴィニフェラ種(Vitis Vinifera)があります。欧州には、このヴィーティス・ヴィニフェラ種が分布しています。同種は、欧州からの移民によって北米にも運ばれ、アメリカ原産のヴィーティス・ラブルスカ種(Vitis Labrusca)と交配されたりもしました。
醸造家やワイン評論家たちは、ヴィーティス・ヴィニフェラ種をヨーロッパ品種、ヴィーティス・ラブルスカ種をアメリカ品種と呼んでいます。一般的にヨーロッパ品種は粒が小さく、主にワイン醸造向き、アメリカ品種は主に食用向きといわれますが、ワインも造られています。リースリング種やシュペートブルグンダー種など、現在ドイツワインの原料となっている品種はいずれもヨーロッパ品種。アメリカ品種にはコンコルド種やイザベラ種などがあり、米国やポルトガル、CIS(独立国家共同体)地域、日本、ブラジルなどでは、これらの品種からワインを生産している醸造所があります。
欧州においても当初、丈夫なアメリカ品種とヨーロッパ品種の交配が行われていましたが、アメリカ品種の影響による「フォクシーな」といわれる独特の香りが嫌われたため、その試みは進捗しませんでした。この表現はフォックスという品種名に由来するといわれています。しかし、アメリカ品種は各種カビ菌に耐性があるため、1980年代頃からはエコロジー的観点からの研究が復活しています。
ところで19世紀の半ば、米国からぶどうの木の大敵であるフィロキセラ(独語名レープラウス/ Reblaus)という害虫が運ばれ、欧州のぶどう畑は壊滅的な被害を受けました。ヴィーティス・ヴィニフェラ種には、フィロキセラに対する耐性がなかったのです。その後、欧州では、フィロキセラに耐性のあるアメリカ原産種の根をヨーロッパ品種に接ぎ木して、この害虫による被害を防ぐようになりました。
現在、接ぎ木にはヴィーティス・ラブルスカ種以上にフィロキセラ耐性のある、ヴィーティス・リパリア種、ヴィーティス・ルペストリス種、ヴィーティス・ベルランディエリ種などが使用されています。今日の欧州では、自根(独語でヴルツェルエヒト/ Wurzelecht)で育てられているワイン用ぶどうは、ごくわずかです。例えば土壌が岩盤状であるなど、フィロキセラが生息しにくいモーゼル地方などの一部の幸運な畑で、自根のぶどうを栽培している醸造家がいます。砂の多い畑もフィロキセラが生息しにくい土壌です。
さて、このヴィーティス・ヴィニフェラ種ですが、日本原産のものが1つあります。それは甲州種です。甲州種は長い間その素性が不明だったのですが、ワイン醸造向きのヴィニフェラ系品種であることが明らかになっています。甲州種からは、世界的にも評価の高い高品質のワインが生産されるようになっています。
(フランケン地方)
日本通としても知られるヨハン・ルックと息子のハンジ・ルック親子が共同でワイン造りに取り組んでいる、フランケン地方イプホーフェンにある名醸造所。創業は1839年だが、ルック家の歴史は945年まで遡り、当時すでにチュービンゲン近郊でワイン造りに関わっていたという。フランケンならではのシルヴァーナー種に力を入れているほか、リースリングやブルグンダー種も栽培。コイパーと呼ばれる陶土と泥灰岩の混在する土壌からはミネラル香の高いワインが生まれ、その気品ある味わいには定評がある。三畳紀(Trias)の土壌の個性を打ち出しながらワイン造りをしている5つの醸造所が結集したグループ、TRIASのメンバー。
Weingut Johann Ruck
Marktplatz 19, 97346 Iphofen
Tel. 09323-800880
www.ruckwein.de
2007 Iphöfer Julius Echter Berg, Silvaner TRIAS Trocken
2007年産イプヘーファー・ユリウス・エヒター・ベルク、シルヴァーナー、
トリアス(辛口) 19,00€