ドイツには13のワイン生産地域があります。これらの生産地域は、1つの連邦州内に複数存在する場合もあり、例えばバーデン=ヴュルテンベルク州にはバーデンとヴュルテンベルクの2生産地域、ヘッセン州にはラインガウ、ヘッシッシェ・ベルクシュトラーセの2生産地域、ラインラント=プファルツ州にはナーエ、ラインヘッセン、プファルツ、モーゼル、アール、ミッテルラインの6生産地域がすっぽり収まっています。また、モーゼル地方はザールラント州にも広がり、アール地方、ミッテルライン地方は、ノルトライン・ヴェストファーレン州にもまたがっています。
1つの連邦州に1生産地域のみ存在するのはバイエルン州のフランケン地域。ザクセン地域はザクセン州とブランデンブルク州に、そしてザーレ・ウンストルート地域はザクセン=アンハルト州、ブランデンブルク州、チューリンゲン州の3州にまたがっています。16連邦州のうち、 原産地呼称保護ワインが生産されているのは計10州となります。
ドイツのワイン用ぶどうの総栽培面積は約10万2000ヘクタール、世界第15位です。この面積はトップのスペインの約10分の1、2位と3位を占めるフランス、イタリアの約7分の1でしかありません。ドイツのすべてのぶどう畑が、フランスのボルドー地域(約12万ヘクタール)の中にすっぽりと収まってしまうというと、その大きさがイメージできるでしょうか? とはいえ、そのボルドー地域ほどの大きさの土地では、実に多彩なワインが生産されています。例えば、ラインヘッセン地方を訪れるだけで、シャンパン・スタイルのゼクト、ブルゴーニュ・スタイルの赤ワイン、そしてドイツならではのリースリングがすべて味わえるのです。
ドイツワインのメインストリームであるクヴァリテーツワイン、そしてプレディカーツワインは、必ずこれらの13生産地域のぶどうから生産されており、1本のワインボトルの中には、1地域のぶどうしか使われていません。つまり、これらのドイツワインは当然のごとく、13の生産地域のそれぞれの特徴を表現しています。いずれの生産地域も、土壌や地形、気候などが異なり、異なる伝統を持っています。そのため、同じリースリングを栽培してもラインガウ、モーゼル、あるいはバーデンでは、その味わいに地域的な特色が表れるのです。
フランスワインを楽しむ人の中には、ボルドー派やブルゴーニュ派がいますが、ドイツワインを楽しむ人にも、ラインガウ派やフランケン派、モーゼル派がいます。自分の嗜好に合った生産地が見つかると、その地域に愛着が生まれ、ワイン選びが一層楽しくなります。ちなみに私は、元ラインヘッセン派。ラインヘッセンから徐々に守備範囲を広げ、今では13生産地域すべてのワインを楽しむようになりました。
それでは、次回から5回にわたって13生産地域を順にめぐって行きましょう。
(ザーレ・ウンストルート地方)
旧東独に位置するザーレ・ウンストルート地方は、ドイツ最北のワイン生産地域。ライプツィヒの南西約60キロに位置する。リュツケンドルフ醸造所は、このワイン地方の中心地であるザーレ川流域のバート・ケーゼンにある。オーナーのウヴェ・リュツケンドルフは、ドイツが再統一した1990年に旧東独フンボルト大学醸造学科を卒業。翌91年に、旧東独政府に没収されていたぶどう畑が32年ぶりに返却されると、本格的にワイン造りに取り組み始めた。彼のワインの品質の向上ぶりは年々めざましく、2007年のドイツ最北の地のコレクションは秀逸。
Weingut U.Lützkendorf
Saalberge 31, 06628 Bad Kösen
Tel. 034463-61000
www.weingut-luetzkendorf.de
2007 Karsdorfer Hohe Gräte Riesling Großes Gewächs
2007年産カースドルファー・ホーエ・グレーテ、リースリング、
グローセスゲヴェックス(辛口) 17,00€