ラインヘッセン地方もプファルツ地方*も、ローマ時代からぶどうが栽培されていたと言われる伝統的なワインの生産地。現在は、非常にダイナミックで革新的な動きが見られる、目が離せない地域です。1970年代頃までは、いずれも大量生産ワインの産地というイメージがつきまとっていましたが、そんなマイナスイメージも、高品質のワインを造ろうと地道な努力を重ねてきた醸造家たちの力によって、すっかり塗り替えられました。
ラインヘッセン地方と言えば、「ラインフロント」と呼ばれるライン川沿いのぶどう畑のワインのほか、甘口の大衆ワイン「リープフラウミルヒ」が有名でした。しかし近年では、内陸部のゆるやかな丘陵地帯のぶどう畑からも偉大なワインが誕生しています。また、リープフラウエン教会周囲の本来のリープフラウミルヒの畑では、偉大な辛口のリースリング造りが復活しています。
ラインヘッセン地方は、無数のゆるやかな丘に覆われているため、「千の丘陵地」の異名を持っています。ぶどう畑の所々には、イタリア南部の風景を彷彿させるトゥルッロと呼ばれる石造りの小屋が見られます。ラインヘッセン地方を代表するワインと言えば、エレガントなリースリングとジルヴァーナー。またヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダー、そしてシュペートブルグンダーの質の高さには定評があります。
同地域は、ドイツのビオワイン発祥の地でもあります。1955年にはすでにビオワインを造り始めた醸造家がおり、1983年に地域のビオワイン団体が発足。その2年後、ドイツで唯一、ワインに限定したビオ生産者団体の全国組織「エコヴィン(ecovin)」が活動を開始しました。
プファルツ地方には、北端のボッケンハイムから南端のフランスとの国境の街シュヴァイゲンまで全長85kmにおよぶドイツワイン街道が通っています。そしてこの街道沿いに醸造所とレストランが集中し、食文化の豊かさとレベルの高さではドイツの先端を行っています。
ところで、ドイツビールの祭典がミュンヘンのオクトーバーフェストなら、ドイツワインの祭典は3月あるいは4月に行われるノイシュタットのアーモンド開花祭を皮切りに、11月の聖マルティン祭まで、ワイン街道筋で行われる数多くのワイン祭と言っても良いでしょう。そのハイライトは、9月あるいは10月にノイシュタットで行われるぶどう収穫祭です。
プファルツ地方の西側には、プフェルツァーヴァルトというシュヴァルツヴァルトに匹敵する巨大な森がひろがり、ぶどう畑を悪天候から守っています。また、プファルツ地方も、昔からリースリングの質の良さで知られています。このほかラインヘッセン地方同様、ブルグンダー種が地域を代表する品種です。同地域においては赤ワインの生産量が37.7%を占めています。また、気候が温暖であることから、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロ、シラーなどフランスの赤品種も栽培され、成果を収めています。
*プファルツはファルツと表記することもあります。
©Volker Oehl
ラインヘッセン、フレアスハイム=ダールスハイムの家族経営の醸造所。ぶどう畑は14ヘクタール。ヴィルフリード、マリアンネ夫妻と息子アルノが共同でワイン造りに従事している。醸造所の主力品種はリースリング、グラウブルグンダー、ヴァイスブルグンダー種など。特筆すべきは、アルバロンガ種から造られる高級甘口ワイン。長年交流がある同村のトップワイナリー、ケラー醸造所のクラウス・ケラーは、昔からアルバロンガ種から造られる甘口ワインのポテンシャルを確信していたが、ゲーリング醸造所はそれを実証している。コストパフォーマンスも良い注目のワイナリー。
Weingut Göhring
Alzeyer Straße 60, 67592 Flörsheim-Dalsheim
Tel. 06243-408
www.weingut-goehring.de
2008 Muskateller trocken
2008年産ムスカテラ(辛口) 5,00€