ジャパンダイジェスト

赤ワインの大地: アール、ヴュルテンベルク、バーデン

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アール地方は、ボンやデュッセルドルフから日帰りで訪れることのできるワイン産地として、近年脚光を浴びています。この地方でもローマ時代にぶどう栽培が始まりました。現在栽培されているぶどうの84.4%が赤品種で、「赤ワインの楽園」と呼ばれています。アール川流域の粘板岩土壌の急斜面で育てられている赤品種は、主にシュペートブルグンダーとその突然変異種であるフリューブルグンダー。フリューブルグンダーは、その名の通り早熟のブルグンダー種で、シュペートブルグンダー種、つまり晩熟のブルグンダー種より2週間ほど早く収穫することができます。原産地フランスでは、ほぼ消滅してしまい、スローフード協会が保護品種に指定しているほどですが、ドイツでは少しずつ増えている品種です。白品種ではリースリングが主流です。

アール川はライン川に向かって蛇行している小さな川で、峡谷の急傾斜に造られたぶどう畑の景観は見事です。畑仕事の機械化は困難で、手仕事が中心。そのためワインの品質の高さと美味しさには定評があります。ぶどう畑の中を縫うように赤ワイン・ハイキング道も整備されており、赤ワイン派の方には見逃せない地域です。

ヴュルテンベルク地方も、赤ワインの生産量が全体の70.2%を占め、「赤ワインの故郷」と呼ばれています。ぶどう畑はネッカー川とその支流域、そしてボーデン湖のほとりに点在し、赤品種では主にトロリンガー、レンベルガー、シュヴァルツリースリング、シュペートブルグンダーが栽培されています。中でもトロリンガーは軽やかな味わいで、日々のワインとして地元の人々に愛されています。白品種は、ここでもリースリングが優勢です。

ローテンブルクに近いヴァイカースハイムから、シュトゥットガルトの南に位置するメッツィンゲンまでの500キロに及ぶヴュルテンベルク・ワイン街道は、ドイツの知られざるワイン街道の1つ。作家のシラーや詩人で思想家のヘルダーリンはヴュルテンベルク産のワインを好んだといわれ、この地域にはマールバッハのシラーハウスなど、シラーゆかりの地がいくつかあります。

バーデン地方は、ドイツ最南端のワイン生産地域。バーデン・バーデンなどの保養地で有名な地域ですが、ハイデルベルクからボーデン湖までのライン川右岸沿い約400キロにわたってぶどう畑が連なっています。ライン川左岸にはフランスのアルザス・ワイン街道が通っており、1日で両地域を訪れることも可能です。バーデン地方は「ブルグンダー種の産地」として知られ、広大な産地ゆえ、赤ワイン用ぶどうの栽培面積ではドイツ最大です。

同地方では、パワフルなグラウブルグンダー、エレガントなヴァイスブルグンダーのほか、アール地方とは異なる力強い味わいのシュペートブルグンダーが造られています。特に、火山岩土壌の丘陵地カイザーシュトゥールの辺りはドイツで最も温暖な地域で、世界的に評価の高い優れたシュペートブルグンダーが生まれています。また、ドイツ唯一のグートエーデル(仏語名シャスラ)の栽培地としても知られています。

Weingut Bernhard Huber ベルンハルト・フーバー醸造所
(バーデン地方)

ベルンハルト・フーバー醸造所(バーデン地方)

バーデン地方のフライブルク市に近いマルターディンゲンで、高品質のワインを生産しているベルンハルト&バーバラ・フーバー夫妻。今から700年前、ブルゴーニュからやって来たシトー派の修道士たちが、この辺りでシュペートブルグンダー(ピノ・ノワール種)を栽培し始めたと言われており、フーバー醸造所は当時の修道院の醸造所の跡地にある。入念に手入れされた美しいぶどう畑から、完璧なぶどうだけを収穫している。素材への厳しい眼が、彼らの生み出す偉大なワインの秘訣。栽培品種の7割近くがシュペートブルグンダー。特級畑別、そして樹齢別に7種類のシュペートブルグンダーをリリースしている。

Weingut Bernhard Huber
Heimbacher Weg 19, 79364 Malterdingen
Tel. 07644-1200
www.weingut-huber.com


2005 Spätburgunder, Alte Reben, trocken
2005年産シュペートブルグンダー 「アルテ・レーベン」(辛口) 28,90€
(Mövenpick Weinkeller 販売価格)

2005 Spätburgunder, Alte Reben, trocken

樹齢20年から40年のシュペートブルグンダーから造られたワイン。「アルテ・レーベン」は、ドイツ語で古木を意味する(フランス語の「ヴィエーユ・ヴィーニュ」)。ドイツでも近年、樹齢の高い木に実るぶどうを別に収穫し、醸造する生産者が増えてきた。ぶどうは樹齢20年を過ぎる頃から、実るぶどうの数が減りはじめ、一房への凝縮度が高まる。加えて、地中深くまで張った根から1つひとつの房にもたらされる養分はますます豊かになり、よりコクのあるアロマを持つぶどうが得られる。バリック樽で18カ月熟成。凝縮した味わいながら、エレガントで優しい味。
 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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