ドイツにおけるぶどう畑の格付けは、1984年に結成されたラインガウのカルタ同盟(Charta Vereinigung)によって始められ、1992年に格付けされたリースリングが初登場しました。このカルタ同盟の活動がベースとなり、1999年にはラインガウ地方で公式に、伝統品種リースリングとシュペートブルグンダーに限定しての畑の格付けが実施されるようになりました。また、2002年からはVDP(ドイツ・プレディカーツワイン生産者協会)も本格的な格付けに取り掛かり始めました。
現在も、格付けシステムは確立の途上にあります。法的に認可されているのは既述のラインガウ地方の格付けだけで、エアステス・ゲヴェックス(Erstes Gewächs)と呼ばれます。格付けされた畑は40ほどで、ラインガウ地方のぶどう畑の約3分の1に相当します。また、法的には認可されてはいないものの、VDPはドイツの全ワイン生産地において、着々と格付け作業を進めています。
VDPのシステムは試行錯誤を経て、2012年ヴィンテージから、エステートワインに相当するVDP.グーツワイン(VDP.Gutswein)、村名ワインに相当するVDP.オルツワイン(VDP.Ortswein)、1級畑に相当するVDP.エアステ・ラーゲ(VDP. Erste Lage)、特級畑に相当するVDP.グローセ・ラーゲ(VDP.Große Lage)の4段階となっています。VDP.グローセ・ラーゲのワインは、長年にわたって偉大なワインを生み出してきた、恵まれた畑が対象となっています。ドイツワイン法では、最も小さなぶどう畑の単位を単一畑(Einzellage)と言い、ドイツ全体で2600ほどありますが、VDPがエアステ・ラーゲ、グローセ・ラーゲとして格付けしているのは、そのうちのおよそ1割ほどです。また、格付けされているのは各々の単一畑のうちのVDPの会員が所有する部分に限定されています。
VDP.エアステ・ラーゲ、 VDP.グローセ・ラーゲのワインは、 格付けされた畑のぶどうが使用されているだけでなく、ぶどうがそれぞれの地方の規定品種であること、手摘み収穫であること、収穫量が規定量以下であることなど、様々な厳しい条件と審査をクリアしたものです。それは、優れたテロワールと優れたぶどう樹と造り手の丁寧な手仕事が一体となって生まれるワインなのです。
VDP.グローセ・ラーゲに指定された畑で造られるワインで、条件を満たした「辛口ワイン」をグローセス・ゲヴェックス(Großes Gewächs)と言います。ラインガウ地方で、エアステス・ゲヴェックスと呼ばれているワインは、これと同等と考えて良いでしょう。また、甘口ワインには従来のカビネットからトロッケンベーレンアウスレーゼまでの肩書きがそのまま使われています。格付けされた畑のワインは一目でそれと分かるよう、キャップシールにVDP.グローセ・ラーゲ、VDP.エアステ・ラーゲと書かれています。また、グローセス・ゲヴェックスは、エティケットにGGと表示されています。
飲み手にとって VDP.エアステ・ラーゲ、 VDP.グローセ・ラーゲという「ブランド」は、ワインを購入する際の1つの目安になります。とはいえ、VDP非会員の醸造所が同一の畑を所有し、高品質のワインを生産しているケースはいくつもあり、そのようなワインを発掘するのは楽しいものです。
非常に複雑ではありますが、エアステス・ゲヴェックス、グローセス・ゲヴェックス、あるいはエアステ・ラーゲ、グローセ・ラーゲという言葉を耳にしたら、それは格付けされている畑のことなのだ、と覚えておけば良いでしょう。格付けされた畑のワインは高価ですが、特別な日には、ぜひドイツワインの最高峰を楽しんでみてください。
(ミッテルライン地方)
写真)©Weingut Toni Jost
ミッテルラインの家族経営の醸造所。オーナーのペーター・ヨーストは、醸造所を継いだ1970年代半ばから現在に至るまでその名声を保ち続けている。リースリング(8割)とシュペートブルグンダーを中心とする、ドイツ・ワインの王道をゆく品種構成。VDPがエアステ・ラーゲに指定しているデボン紀のスレート岩土壌の畑「バッハラッハー・ハーン」を所有し、ライン川に面するこの急斜面の畑からは、グローセス・ゲヴェックス(辛口)のほか、カビネットから貴腐ワインに至る数々の偉大なリースリングを生み出している。
Weingut Toni Jost
Oberstr. 14, 55422 Bacharach
Tel.06743-1216
www.tonijost.de
2007 Bacharacher Riesling Spätlese feinherb
2007年産バッハラッハー・リースリング、シュペートレーゼ(ファインヘルプ)
9,80€