この章では、ドイツワインが世界市場において、どのようなポジションにあるのかを、統計の数字などを参照しながら把握してみたいと思います。
ドイツは、世界的にはワインの国としてよりも、ビールの国として知られているようです。ドイツ人のビールの年間消費量は1人当たり106.6リットルに達していますが、一方ワインは21.1リットル、ゼクトは4リットルです。分かりやすいイメージに置きかえると、ドイツ人はビールの小瓶を1日1本欠かさず飲み、ワインは週に1~2回、グラス1杯程度を嗜む、という感じでしょうか。また、ドイツ人が消費しているワインは輸入ワインの方がやや多く、全体の55%を占めています。その内訳はフランスワイン(15%)、イタリアワイン(14%)、スペインワイン(8%)、その他の欧州諸国のワイン(11%)、ニューワールドワイン*(6%)、その他(1%)となっています。
ドイツのワイン生産量は、830万ヘクトリットルで世界第10位。トップのイタリア(4490万ヘクトリットル)、2位のスペイン(4270万ヘクトリットル)、3位のフランス(4200万ヘクトリットル)の5分の1に満たない量です。そのためドイツワインは、量的にその存在感を世界に印象付けることができません。一方、質においてはドイツワインのレベルは高く、クヴァリテーツワインとプレディカーツワインの合計が約809万ヘクトリットルに達し、総生産量の約96%を占めています。つまり、ドイツワインのほぼすべてが、各指定生産地域の特色が生かされた、原産地呼称保護ワインなのです。
ドイツワインの中で、世界的に最も強くアピールできるのは、リースリングとシュペートブルグンダーでしょう。両者はドイツワインの白品種、赤品種のうち、それぞれ最も多く栽培されているものです。リースリングの栽培面積はドイツが世界第1位(約2万3293ha)で、世界全体のリースリング栽培面積の46.7%を占めており、2位の米国(4852ha)を大きく引き離しています。リースリングの品質とワインの多彩さの点で、他国がドイツを上回ることは非常に難しいでしょう。
また、ドイツにおけるシュペートブルグンダーの栽培面積は1万1775ha。1位のフランス(2万9738ha)、2位の米国(1万6776ha)に次いで世界第3位です。近年のドイツのシュペートブルグンダーの品質の向上は目覚ましく、ブルゴーニュの造り手との情報交換も盛んになっており、多くの醸造所がジャーマン・スタイルとブルゴーニュ・スタイルの両タイプのシュペートブルグンダーを醸造しています。ドイツのクローンのほかに、ブルゴーニュのクローンを栽培している醸造家も増えています。
このほかドイツでは、トロッケンとハルプトロッケンの生産量の合計が65%に達しており、甘口ワインの生産が減っています。また、赤ワインの生産量が全体の36%に達しています。「ドイツは白ワインの国」「ドイツワインは甘口」というイメージは、すでに過去のものとなっています。
*ニューワールド・ワイン
伝統的なワイン生産地である欧州以外の、新興生産地のワインのこと。北米、中米、南米、アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドなどのワインがこれに当たる。
(フランケン地方)
写真)左からパウルさん、モニカ夫人、息子のゼバスティアンさん
©Weingut Rudolf Fürst
創業1638年、フランケン地方ビュルクシュタットにある家族経営の醸造所。パウル・フュルスト氏は、1975年に亡き父の後を継いでオーナーとなり、79年には醸造所を移転して新たなスタートを切った。2003年版ゴーミヨ・ドイツワインガイドの最優秀醸造家に選ばれたフュルスト氏は、同地方における優れたワイン造りの先駆者。現在は息子のゼバスティアンもワイン造りに加わっている。フランケンならではの伝統種シルヴァーナーやリースリングから優れたワインを生産しているが、フュルスト醸造所の主力商品は、秀逸で繊細なフレンチスタイルのシュペートブルグンダーのコレクション。
Weingut Rudolf Fürst
Hohenlindenweg 46, 63927 Bügrstadt
Tel.09371-8642
www.weingut-rudolf-fuerst.de
2007 Fürst Spätburgunder Bürgstadter
2007年産ビュルクシュタッター・シュペートブルグンダー(辛口)
11,65€