1980年代から徐々に登場し始め、ニワトコの果汁のような濃いルビー色とフルーティーさ、柔らかなテクスチャーが評判となり、人気が急上昇した赤品種、それがドルンフェルダーです。栽培においては、土壌をあまり選ばず、腐敗に強く、安定した収穫量が期待でき、栽培や醸造の手間もさほどかからないため、造り手に好まれています。現在でも、赤品種としてはシュペートブルグンダーに次いで多く栽培されています。
ドルンフェルダーは、1955年にアウグスト・ヘロルトという学者がヴュルテンベルク地方のヴァインスベルク研究所で生み出した交配品種です。彼はこの新品種に、ヴァインスベルク研究所の創設を提唱したイマヌエル・ドルンフェルトの名前を付けました。品種として正式認可されたのは、1980年のことでした。
ヘロルト氏は、1929年にヘロルトレーベ (Heroldrebe)、1931年にヘルフェンシュタイナー(Helfensteiner)という赤品種を生み出しており、この2種がドルンフェルダーの親にあたります。ヘロルトレーベの親はポルトギーザーとレンベルガー(ブラウフレンキッシュ)、ヘルフェンシュタイナーの親はフリューブルグンダーとトロリンガーです。これら4種はいずれも、今日に至るまで栽培されている伝統的な品種です。
ドルンフェルダーは、色の濃い赤ワインを生み出そうという試みの過程で誕生した品種です。それも単独で醸造するのではなく、色の薄い赤品種で造られるワインにブレンドして色を濃くするという、補助的な役割の品種として造り出されたものでした。ドイツだけでなく、フランスやイタリアにもそのような色付けの役割を果たす品種があります。
ワイン・マーケティング関連の調査資料によれば、消費者の多くが赤ワインの購入ポイントに色の濃さを挙げています。「赤ワインの色は濃いほど良い」と考える人は、意外に多いようです。濃い色のワインは見た目にも凝縮感が感じられ、満足感を与えてくれるからです。
赤ワインの色をさらに濃く、という発想は新しいものではなく、造り手は、以前から主にブレンドという手法で赤ワインの色を濃く保ってきました。フランスでは、フリーラン果汁をロゼワインに使用し、残りの果皮と果汁で赤ワインを醸す方法が採られました(セニエ法)。こうすると、果汁に対する果皮の割合が多くなるため、色素やエキスの凝縮度が高くなります。この方法は、今もボルドー地方や南フランスなどで実践されています。
さて、ドルンフェルダーですが、この品種は品質面ではあまり大きく飛躍できませんでした。10年くらい前までは、ラインヘッセン地方やプファルツ地方の一流の造り手も必ずといって良いほどドルンフェルダーを栽培し、収穫量を減らすなどして愛好家をうならせる高品質なワインを生産していましたが、今では栽培をやめ、主に伝統品種のシュペートブルグンダーの生産に専念しています。そのため、ドルンフェルダーの栽培面積はやや減少傾向にあります。
それでも、ドルンフェルダーは赤の新交配品種の中で最も愛され、最も成功した品種。ドルンフェルダーから素晴らしい赤ワインを生産している醸造所はいくつもあります。
キルヒナー醸造所(プファルツ地方)
醸造を一手に引き受けたラルフ
©Weingut Kirchner
プファルツ地方フラインスハイムの家族経営の醸造所。 1974年からは、ギュンター&ウルリケ・キルヒナー夫妻が醸造所を運営。手仕事を大切に、常に高品質なワインを生産してきた。両親が築いた堅固な基礎の上に新風をもたらしたのが、息子のラルフ。2007年から醸造を一手に引き受けて品質にさらに磨きをかけ、評価が高まっている。プファルツ地方の栽培品種は多彩。キルヒナー家でもドイツ固有の品種にこだ わらず、フランス品種にも力を入れており、ドルンフェルダーなどの新交配品種も積極的に栽培している。
Weingut Kirchner
Korngasse 14, 67251 Freinsheim
Tel. 06353-1838
www.weingut-kirchner.de
2011 Dornfelder Stadtmauer trocken
2011年 ドルンフェルダー・シュタットマウアー
(辛口)約6.60 €(専門店向けのライン
2010 Dornfelder Freinsheimer trocken
2010年 ドルンフェルダー・フラインスハイ
マー(辛口)4.70 €(2011年産は8月から販売)