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ビオワインの世界 12 Demeter(デメター)

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「Demeter」は、世界最古の「ビオ」生産者団体と言えるでしょう。その理念は、人智学の祖ルドルフ・シュタイナーが 1924年に行った「農業講座」に集約されています。この団体が結成されたのは1927年、翌28年にはデメター(ギリシャの豊穣の神)というブランド名が導入され、1930年頃からはドイツでも実践されるようになります。1932年の時点で会員農家数は1000に達し、オーストリアやドイツのみならず、スイス、オランダ、スウェーデン、ノルウェー、英国でも実践されるようになり、1939年にはニュージーランドにも支部ができました。

1941年にナチスがデメターの活動を禁じましたが、戦後まもなく再開されます。ドイツの本部はダルムシュタットにあり、会員生産者数は1400、農地面積は計6万8000ヘクタールに及びます。このほかに330の生産者、加工業者、契約パートナー、そして500カ所の販売所(Reformhausなど)があります。醸造所会員はうち47社です。

デメターはとてもインターナショナルな組織で、50カ国8000の農家が会員となっており、その農地面積の合計は26万ヘクタールにも上ります。ちなみに、全世界におけるワイン醸造所会員数は540、農地面積は計7600ヘクタールです。

ダルムシュタットには、1950年に設立されたビオディナミ研究所(IBDF)もあり、国内外の大学やほかの組織と共同でビオディナミ農法を科学的に研究しています。また、1970年代からはビオディナミをテーマにした学位論文も書かれるようになりました。 デメターの基準は欧州連合(EU)のビオ基準より厳格で、伝統農薬のほかに牛糞、珪石、薬草などの自然素材から作られる独自のプレパラートを使用して、ぶどう畑の生態系とぶどうを守ります。肥料もデメターの基準に叶った牛糞や植物由来のコンポストを使用します。EUの認証に加えて、年に1度の団体による認証と開発ミーティング(Entwicklungsgespräch)への参加が義務付けられています。

ビオディナミは自然を総合的に把握する農法であり、その処方の成果は非常にゆっくりと現れてくるため、強固な意志がなければ継続できないと言われます。しかし、その効果を確信するに至った造り手が増え、現在では、ほかのビオ団体もデメターの活動に注目するようになっています。昨年からは、エコヴィン(ECOVIN)とデメターがパートナーシップを組み、共同で勉強会などを開催しています。

「Demeter」基準例  ※〈〉内はEUビオ基準
会員は、所有するすべての畑において「Demeter」基準に則ってぶどうを栽培しなければならない。〈畑の一部でビオの実践が可能〉
ボルドー液用硫酸銅の上限は年間3kg/haまで。〈年間6kg/ha〉
ワインに添加する亜硫酸量(一例)は、辛口白・ロゼワインで150mg/L、 辛口赤ワインで100mg/L(いずれも残糖分2g/L以下の場合)。〈同一〉
www.demeter.de

 
Weingut Odinstal
オーディンスタール醸造所(プファルツ地方)

 

アレクサンダー・プリューガー

19世紀初頭にヴァッヘンハイム村長が海抜350メートルの地に設立した醸造所。1998年以降、バート・デュルクハイム出身のトーマス・ヘンゼル氏がオーナーとなり、大規模な改修が行われた。醸造所は20ヘクタールの敷地を擁するが、ぶどう畑は5ヘクタールで、残りは森林と牧草地。単一畑「ヴァッヘンハイマー・オーディンスタール」はミッテルハルト地区で最も高い位置にある。90年代からビオ栽培を実践、2006年にビオディナミに移行。豊かな自然に恵まれ、ビオディナミの実践には理想的な環境だ。 04年に栽培・醸造責任者として醸造所に加わったアンドレアス・シューマン氏は、ミュラー・カトワール醸造所、ヴィットマン醸造所などで経験を積んだ意欲的な造り手。彼の経験の蓄積はオーディンスタール醸造所において、独自のスタイルとして実を結び始めている。デメター会員。

Weingut Odinstal
オーディンスタール醸造所(プファルツ地方)
Odinstalweg, 67157 Wachenheim
Tel. 06322-9495312
www.odinstal.de


2012 Odinstal Silvaner 350 N.N.
2012年 オーディンスタール・ジルヴァーナー
350 N.N. 14.00€

ワインオーディンスタールは玄武岩、雑色砂岩、貝殻石灰岩、コイパー(赤色泥灰土)などが混在する多彩な土壌。単一畑内の土壌がかくも多彩なため、それをさらに区分し、それぞれの土質に合った品種を栽培するなど工夫している。栽培品種はリースリング、ヴァイスブルグンダー、オクセロワ、ゲヴュルツトラミーナ、ジルヴァーナーという個性的なコレクション。ジルヴァーナーはコイパー土壌の畑で栽培されている。森に囲まれた高台の畑では、ぶどうの成熟もゆっくりで、より豊かな風味が引き出される。リンゴや洋梨のみずみずしい果実香、芯のある味わい、爽やかな酸味とクリーミーな余韻が魅力的。500リットル容量のプファルツ産オーク樽内で醸造。ジルヴァーナーの持つ高貴さを最大限に引き出したワイン。

 
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岩本順子(いわもとじゅんこ) 翻訳者、ライター。ハンブルク在住。ドイツとブラジルを往復しながら、主に両国の食生活、ワイン造り、生活習慣などを取材中。著書に「おいしいワインが出来た!」(講談社文庫)、「ドイツワイン、偉大なる造り手たちの肖像」(新宿書房)他。www.junkoiwamoto.com
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