Helmut Schmidt 1918年12月23日ハンブルク生まれ。SPD。1974~ 82年連邦首相。 ©Fabian Bimmer/DPA/PA Photos |
昨年12月末に90才を迎えた。退役首相「Bundeskanzler a.D.」という立場を自ら皮肉ったタイトルで、同9月に出版した自伝「Außer Dienst」(=a.D.)は現在、ベストセラーのトップに座る。インタビューやトークショーにも引っ張りだこなのは、現役時代に示した強い指導力を、経済危機に苦しむ国民が焦がれているからとも。
父方の祖父がユダヤ人であることを知ったのは14歳のとき。父親がアーリア人証明を偽造してナチ政権の迫害から免れた。その反動から軍国少年になり、士官学校に入隊。東部戦線で鉄十字勲章を貰う働きをしたが、1944年にヒトラー暗殺未遂事件の裁判を傍聴して国家社会主義の欺瞞に気づき、捕虜になった英国軍収容所で社会民主主義に目覚めた。
全国に知られるSPDの顔になったのは、ハンブルク市内相としてエルベ川氾濫に対処した62年。その5年後、連邦SPDのブラント政権に入閣し、73年には財務相としてオイルショックを乗り切った。さらに77年秋、ドイツ赤軍(RAF)のシュライヤー経営者連盟会長誘拐に連携してパレスチナ人過激派が起こしたハイジャック事件では、RAF初代メンバーの釈放要求に対し、連邦首相としてテロに屈しない強い国の顔を示した。
「お砂場からの幼なじみ」ロキと結婚して66年。戦後、夫の学業(国民経済学)と政治活動を教職で支え、後に希少な植物の保護と研究に多大な貢献をした妻には、今も頭が上がらない。現役の政治家たちに夫婦和合の秘訣もアドバイスしたいと笑う。
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