1971年2月5日ハンガリー国ショプロン生まれのハンガリー人。ベルリン在住。ドイツ語作家。
©Claus Setzer
ドイツの文壇での活躍が目覚ましい若手女性作家の1人である。今年9月に発表した小説『Das Ungeheuer(怪物)』が先頃、ドイツ語圏で最も優れた長編に与えられるドイツ書籍賞の2013年度作品に選ばれ、フランクフルト書籍見本市で報道陣に囲まれた。
冷戦終了直後の1990年にドイツへ入国して以来、ベルリンに住んでいる。フンボルト大学でハンガリー文学と演劇学を学び、97年に戯曲作品で文壇デビュー。以後、短編や翻訳、長編へと執筆幅を広げてきた。
生まれ育ったのは、オーストリアと国境を接するハンガリー西部の村ショプロン。ドイツ語も話すハンガリー人の少数派に属し、ドイツ語を嫌悪する村人たちからは常に疑いの目を向けられてきた。その上、詩作までしていた少女は完全なる不審者。プールで泳いでいるときだけ疎外感から開放されたという。
この原体験から、作品では社会の隅に置かれた市民や移民のパラレルワールドを描くことが多い。2009年に発表した長編小説『Der einzige Mann auf dem Kontinent(大陸でただ1人の男)』では、IT企業のセールスエンジニア、ダリウス・コップがネットと現実の狭間で翻弄されていく様を描き、その続編である今回の受賞作では、妻フローラを鬱病による自殺で失ったダリウスが、遺灰を車に積んで妻の故郷ハンガリーへと迷走する。全ページを上下に二分し、上にダリウスの悲憤の旅、下にフローラが残した日記を平行させた。
物語が終わっていないのは、ダリウス3部作の完結編を予定しているから。まさにストーリーテラーである。
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