酒井 高徳 VfB シュトゥットガルト
1991年3月14日生まれ。日本人の父親とドイツ人の母親を持つ。現在は自身も2児の父親。新潟で過ごした中学時代に、豪雨と中越地震で被災した経験を持つ。昨年の東日本大震災の際は、「今こそ必死にプレーする」と、若いながらもプロフェッショナルな姿勢を見せたのが印象的だった。ピッチで見せる激しく献身的なプレーとは反対の、にこやかかつ真摯な話し振りは好感度大。ロンドン五輪出場世代ではあるが、フル代表入りも期待される有望株だ。
この1月からシュトゥットガルトへレンタル移籍している酒井高徳。1991年生まれの21歳は、新天地でめきめきと成長中だ。現在、酒井がシュトゥットガルトで務めているのは左サイドバック。だが、獲得時は左右両方のサイドバックをこなせるという点が高く評価された。複数のポジションをこなせるということは、指揮官の意向や戦術、対戦相手、チーム状況によって臨機応変に対応できることを意味し、重宝されるのだ。プレーにおいては、精度の高いミドルからロングレンジのキックを武器とする。サイドバックは守備陣の一角ではあるが、戦術によっては攻撃参加が求められるポジション。ラッバディア監督が志向するサッカーではサイドバックの攻撃参加が必須で、監督は攻撃陣を動かす、または攻撃を始める役割を担うキックを持つ選手を重視している。
「攻撃については評価してもらっていた。課題は守備だけれど、試合ごとに良くなっていると監督から言われている」。第28節終了時点で8試合連続先発出場を果たしているのは、守備面の成長を指揮官が感じているから。サイドでの1対1の対応、味方との連携も今やスムーズにこなしており、時には味方のポジショニングを叱責する。その姿は、加入後数カ月の選手とは思えない。「言われる方も分かっているとは思うけれど、思ったことは言わなければならないと思うから」と、動じる様子もないのだ。
酒井は、日独のハーフ。とは言え日本で育っており、日常会話は日本語で行っているが、「ドイツ語を聞き取ることは大体できるけど、話す方は、思ったことをスムーズに言えないこともある」というほどのレベ ル。これだけでも大きなアドバンテージであり、堂々 としたプレーにつながっているはずだ。
今の目標は、完全移籍を勝ち取ること。「1年半のレンタル契約だが、日本に返されたくはない」と話す。 このまま行けば、確実にシュトゥットガルトの主力選手となり、さらなる飛躍が待っているだろう。
ブンデスリーガ戦力分析
第28節を経て、ドルトムントの独走に待ったを掛けたいバイエルンという2強の構造がはっきりしてきた。ドルトムントとバイエルンの勝ち点差は3、3 位シャルケとは9、4位メンヒェングラットバッハとは12。終盤戦では何が起こるか分からないが、2強がリーグ優勝を、3、4位は来季のチャンピオンズリーグ出場権を争うというのが現実的な見方だろう。
こうなると、メディアの関心は移籍市場へと移る。誰がどこに移籍するのか、移籍金はどのくらい か……。ピッチの上で起こることだけでなく、クラ ブが企業としてどう判断していくのかまでをゲームのように見守るのだ。
日本人関連では、香川真司の動向が連日のように伝えられている。大方の報道ではドルトムント残留を本人もクラブも希望しているとのことだが、本人としては「タイミングを誤りたくない」というのが本音だろう。ビッグクラブへの移籍は当然の目標であって、問題はいつどこへ行くかということ。中途半端なビッグクラブでは、香川にとって意味がないはずだ。
バイエルンの宇佐美貴史のニュルンベルク入りも報じられているし、現在J1セレッソ大阪に所属する清武弘嗣のブンデスリーガ移籍も秒読みと言われ、今夏もまたドイツに来る日本人選手が増えそうだ。
残留争いでは、最下位を走り続けていたフライブルクが監督交代以降好調で、ついには自動降格圏から脱している。また、その1つ上を行くアウグスブ ルクは必死に残留へのトライを見せ、降格経験のないハンブルクに大きなプレッシャーが掛かっている。