ジャパンダイジェスト

世界を動かすビジネスリーダーに聞く!ドイツ発グローバル時代を生き抜くチカラ

海外進出が、大企業だけではなく、中小企業や個人にとっても必要不可欠な選択肢となっている時代。欧州の中心部に位置する地の利を活かして、ドイツを活躍の拠点としているビジネスパーソンが見いだした海外での挑戦の意義や魅力とは?


第10回

コミュニケーションで問題を解決する
アビームコンサルティング株式会社 
ドイツ支店 シニアマネージャー

原田 航平 氏原田 航平 氏
Harada Kohei

プロフィール


大学卒業後、創立まもないITコンサルティング会社を経て、アビームコンサルティングに入社。2007〜09年、欧州中近東14カ国に渡るプロジェクトを担当。以降、新会社設立などのプロジェクトマネージメントなどに従事。2015年からドイツに赴任し、日系企業向け支援を担当している。
www.abeam.com

ロボットが競合他社の商品のリサーチをしてくれる、経理処理を代わってくれる……そんな時代がもうすぐ到来する! と思っていたら、もう来ていた。2017年、1年間で100社以上が導入し、好評を得ているアビームコンサルティング株式会社の「RPA業務改革サービス」は、まさにロボットによる業務効率化が、実用段階に来ていることを示している。 ロボット元年を迎え、加速度的に変化が進む時代の道先案内人となり、人と人を繋ぐのがコンサルタントの原田航平さんだ。

コンプレックスに飛び込むチカラ

「始まったばかりなんですけど、今やらないと乗り遅れます」。原田さんは、インターネットで社会が繋がり、ロボットやAIが活用されるようになったここ数年の技術の進化に目を見張る。しかし現場では、少なくないケースでロボットの導入よりも、やるかやらないかの意思決定の方に時間がかかっているという。

「実際は、これ(RPA業務改革サービス)使いやすいんですよ。そんなに大きく構えなくても、アプリをインストールする感覚で一定の作業はすぐに始められます」

世の中の流れは不可逆的なところまで来ている。「後戻りはできない。だったら、良し悪しの判断は差し置いてでも、いち早く食らい付くべきです。食わず嫌いはやめておいた方が良い」と、原田さんは断言する。各企業や個人が持つ強みや長所と、テクノロジーを掛け合わせることで視野が広がり、新たなビジネスチャンスが生まれる。逆に、それが出来ないと生き残れない。

原田さん自身が、この世界に飛び込んだ理由もその危機感にあった。就職活動をしていたのは、「IT革命」が叫ばれていた時代。当時は、ITやテクノロジーに対する苦手意識を持っていたという原田さんは、「苦手だからこそ、仕事にしてしまえ」と、IT コンサルティングのベンチャー企業の門を叩いた。

さらけ出すチカラ

「コンサルティングは、すごく人間的な仕事。その人を写し出す」という原田さんは、「人を引っ張るよりも、リーダーを支える役割が自分には合っている」と自己分析する。

約15年間の経験を積んだ今、「魂を燃やして、自分の頭もリソースもフル回転させてお客様を変えることをサポートする。本当にのめり込める仕事だと思います。お客様に「ありがとう」といっていただけるその瞬間のために」と溢れる情熱を隠さない。原田さんが支援するのは、企業の命運をかけた変革の現場。相手の真のニーズに触れるには、相手に対する純粋な興味と、考え抜き、自分をさらけ出し、ぶつける芯の強さが求められる。「ぶつかっても、間違っても良いけど、まっすぐに」。

かなりストレートな原田さんのコミュニケーションのスタイル、その原点にはドイツのクライアントとの経験があった。

入社して数年後、ドイツの大手企業が日本の会社に資本を入れ、日本の会社の情報の可視化と合理化を求めるプロジェクトのチームの一員となった。ドイツから来た経営陣は、わざわざドイツのコンサルタントチームも連れて来ていた。日本の会社との密なヒアリングを元に入念に準備した提案が受け入れられず、苦戦していたある週末、カフェのテラス席で、ドイツ人の経営者とコンサルタントが楽しそうに談笑している現場を偶然に見かけた。その翌週、それまでとは打って変わって、パパッと決定が降りる。

カフェでの会話の内容は知る由もないが、コミュニケーションについて考え、海外での任務を与えられたクライアントの心情に思いを馳せるきっかけとなった。

「海外に初めて出たのは、20歳を超えてからです。留学経験も一切ありません。ですが、もし自分が異国の地で限られた時間や情報の中で何かを変えていくミッションを持って赴任しているお客様の立場にあったなら、自分のことを理解してくれる人の力を借りてでも、出来る限りのことを成し遂げたい。そう思いました」

これをきっかけに海外でコンサルティングをという思いを強くする。そして、お互いに母国語ではない英語でのやり取りでは、意見を述べるにしても変化球が投げられない。言いたいことを言葉にしてすべて出し合った上で進めていくという原田さんのコミュニケーションスタイルは、こうして生まれた。

繋げ、繋がるチカラ

 原田さん
クライアントにベストな提案をするため、
同僚とミーティングを重ねる原田さん(左手前)

海外駐在という目標を叶えるチャンスに恵まれ、ドイツに来て約3年。「日本企業が、より世界で存在感を発揮するには、コラボレーションという言葉がキーワードになる」と原田さん。企業間のビジネスを繋ぐ提供価値を高め、取引を拡大していく。「そのために人と人、サービスとサービスを繋ぐハブとなることで、弊社や私に関わっていただく人の成功をお手伝いすることが夢です」と意欲を語ってくれた。

仕事がロボットに奪われる可能性について聞くと、「人間にとってコミュニケーションは目的そのものでもあると思うんです。私の仕事は、AIの分析ではなく人間が考えている解決法という意味で、将来的には占い師になっちゃうかもしれないんですけど……」。

見たことのない未来にもきっと、人と人が繋がることでしか埋められない場所がある。

(Interview & Text: Megumi Takahashi / i-mim.de

 
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