ドレスデンの新市街の北側に、ザクセン王国時代に騎馬隊の練習場であったアラウン公園(Alaunpark)があります。その北には兵士のための教会があり、周囲一帯は軍事関連施設が集まっています。その広大な敷地の一角に建つ軍事史博物館(MilitärhistorischesMuseum der Bundeswehr)が10月15日、6年におよぶ大掛かりな工事を経てリニューアルオープンしました。1873年に兵器庫として建てられたこの博物館を大変身させたのは、米国人のスター建築家ダニエル・リベスキンド。ベルリンのユダヤ博物館(2001年開館)の設計が記憶に新しい建築家です。
建物の正面。クラシカルな建物に鋭利な構造体が突き刺さる
翼を広げたような左右対称の新古典主義の堂々とした佇まいの建築と、その中央の建物のすぐ左側に突き刺さるような鋭利な構造体。さすがにかつての武器庫だけあり、天井の高さも申し分のない大空間ですが、新たに追加した現代建築の要素と展示品がその空間を無駄にすることなく埋めているところに、建築家の手腕が感じられました。
内部の展示は、「1300年~1914年」「1914年~1945年」「1945年~現在」の時系列による3部構成になっています。鎧や鉄兜、刀、弓などの武器、戦闘に関する絵や史料類にはじまり、続いて現れる大砲や銃、大型ミサイルなどが、軍事技術の発達の歴史を伝えます。
潜水艦の実物やコンクリート製の1人用バンカー、ソ連製の通信傍受機器も興味深いのですが、女性が生まれたばかりの子どもの頭髪を同封して戦地の夫に送った1870年の手紙や、兵士のために用意されたタバコの寄付箱など、非人間的な戦争とセットになっている人間くささが垣間見られる展示も目を引きました。ちなみに、ベルリンで行われた東ドイツ建国25周年記念パレードで使用された黒塗りの“スーパー”トラバントも展示されており、おもちゃのようなカラフルなトラバントしか見たことがなかった私は、軽いショックを受けました。
軍事技術を紹介するコーナー
軍事関連の展示とあって、50代前後の4、5人の男性グループや明らかにミリタリーファンといった出で立ちの来場者が目立ちました。お洒落なレストランやミュージアムショップもあり、ドレスデンの新たな観光スポットになることでしょう。年内は入場無料です。
横浜出身。2005年からドレスデン在住。ドイツ人建築家の夫と娘と4人暮らしの建築ジャーナリスト。好奇心が向くままブログ「monster studio」公開中。
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