夏になるとデュッセルドルフのライン川岸に、移動遊園地の「ラインキルメス」(Größte Kirmes am Rhein)がやってきます。日本には全国各地に常設の遊園地がありますが、ここドイツにはあまり多くなく、ドイツの人々にとっての遊園地といえば、「行く」より「来る」の感覚が一般的かもしれません。今回は、その様子についてレポートしたいと思います。
キルメスとはもともと「教会のミサ」という意味で、フォルクスフェストと呼ばれる伝統的な国民のお祭りの一つです。ラインキルメスはこの地域最大の移動遊園地で、総面積は約165ヘクタール、来場者数は開催期間の10日間で約400万人。おなじみのミュンヘンのオクトーバーフェストに次ぐ規模です。
ラインキルメスの会場は、普段はヒツジの群れが草を食み、ウサギが跳び回っているような長閑なライン川の川岸。そこに毎年、開催の数週間前になると重機と遊具が現れ、少しずつ遊園地が出来上がっていく光景を通りがかりに眺めるのは、大人の私でもわくわくします。
移動式遊園地というと簡易的なものを想像しがちですが、ラインキルメスには子ども向けのゴーカートやメリーゴーランドから巨大な観覧車、お化け屋敷、大人向けの絶叫系ジェットコースターやフリーフォールまで、さまざまなアトラクションがありとても本格的。さらにはクリスマスマーケットでおなじみの屋台、射的やくじ引きのようなゲーム、デュッセルドルフ名物アルトビールの各醸造所が出展する大規模なビアテントも立ち並びます。子どもから大人まで楽しめるラインナップです。
本格的な絶叫系アトラクションも
ハイライトは、期間中の最終金曜の夜にライン川に打ち上げられる花火。この季節、ドイツは日暮れが遅いので22時半からスタートです。日本の花火大会ほど混雑しないので、夜空をゆったり眺めることができます。またキルメスは夜のライトアップも美しく、特に週末は遅くまで(なんと深夜2時まで!)オープンしているので、この期間はビールを片手に夜更かしして楽しむ人も。
ライン川岸からの眺める花火は絶景!
今年はちょうどキルメスの開催期間中、日本から妹家族が来ていたので、一緒にキルメスを訪れました。昨年はベビーカーから眺めているだけだった2歳の娘も、今年はドイツのお祭りの定番、レープクーヘンを首から下げて、メリーゴーランドに乗って、アイスクリームを食べて……いとこと一緒に会場内を走り回って楽しんでいました。
ドイツのお祭りの定番レープクーヘン
キルメスが終わってしまうと、1週間もしないうちに撤収して、また来年。跡形もなくなると少々寂しい気持ちにもなりますが、そういった移動式遊園地ならではの非日常感もまた良かったり。ラインキルメスは、デュッセルドルフの人たちにとって欠かせない夏の風物詩なのです。
出版社勤務ののち、夫の駐在に伴い2019年7月に渡独。現在は、デュッセルドルフ生まれの1歳の娘の子育てに奮闘中。趣味はライン川での散歩と、パンやお菓子を焼くこと。