フランクフルトから車で1時間弱、シュヴェツィンゲンという街に知る人ぞ知る美しい庭園があります。1023号の特集「桜の名所10選」でもご紹介したこの庭園は、ドイツ在住の日本人の間でお花見のスポットとして人気です。今回はこの桜の庭園を含む、シュヴェツィンゲン城の庭園をレポートします。
まずは、春晴れの青空に映える淡いピンクの壁、グレーの屋根、白い窓枠がすてきな宮殿の入り口をくぐって庭園へ。広大な敷地には、真っ直ぐに伸びる砂利混じりの道と、等間隔に植えられた木々、空高く吹き上がる噴水や色鮮やかな花壇、よく手入れされた芝が美しく配置されています。柔らかな春の陽射しの下、爽やかな解放感に包まれました。
正面入り口を抜けると広がる庭園の様子
よく手入れされた花壇や芝
プファルツ選帝侯の夏の離宮として使用されていた宮殿は、カール・テオドール選帝侯の寝室や仕事場、最初の妻であるエリザベート妃の衣装部屋や客間、図書館、さらにチャペルやロココ調の劇場など、円形の庭園を取り囲むようにして建てられた3棟の建物から成り立っています。ガイドツアーで中の様子を見学できるので、それぞれ趣きの異なる部屋や内装を楽しむのもおすすめです。
そんな広大な敷地の一角にあるのが、桜の木が並ぶ庭園です。私が訪れたときには、ちょうど桜の花が満開を迎えていました。庭園全体が淡いピンクに包まれ、近郊からお弁当を持参して花見をする日本人グループや着物を着た来園者も。薄紅色の花の美しさはドイツ人にも人気で、あちこちでシートを敷いてピクニックをしたり、桜の花を間近で鑑賞しながら庭園内を散歩する人たちでにぎわっていました。また本格的なカメラを持参して桜を撮ったり、コスプレ衣装を着て桜の下で撮影しているグループも発見。やはり日本人にとっては特別な花だけあって、小春日和の陽射しのなか、春風に舞い散る桜の花びらに日本への郷愁と春の訪れを感じるひとときでした。
美しい桜の庭園エリア
桜の庭園が広がるエリアを抜けると、今度はモスクが見えてきます。イスラム教寺院特有の2つの尖塔や、中庭を取り囲む回廊など、一気にオリエンタルな空間が広がります。ほかにも、四角や三角に剪定された木々が並ぶ一角や、彫像が佇む泉、色とりどりの花壇など、どのエリアを歩いてもそれぞれに魅力があり、楽しい散歩になりました。
5月25日までは音楽祭も開催中で、城内のロココ劇場を中心にオペラやコンサートなど多数の演目が上演されています。夏にはヴィンテージカーの品評会やガーデンフェスティバルなどのイベントも行われるので、これからの新緑の季節、素晴らしい庭園でのひとときを楽しんではいかがでしょうか。
シュヴェツィンゲン城:schloss-schwetzingen.de
2003年秋より、わずか2週間の準備期間を経てドイツ生活開始。縁もゆかりもなかったこの土地で、持ち前の好奇心と身長150cmの短身を生かし、フットワークも軽くいろんなことに挑戦中。夢は日独仏英ポリグロット。