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240年前日本からヨーロッパに渡った椿

椿はその漢字が示す通り、春の訪れを告げる早春の花です。桜に並び日本を代表するこの花木が、ドレスデンのピルニッツ宮庭園で2月から4月の間ひっそりと咲きこぼれています。一体、いつ、どのようにして、日本の椿がドレスデンにやってきたのでしょう。

3月初め、咲きこぼれる椿の花
3月初め、咲きこぼれる椿の花

著名なスウェーデンの植物学者リンネの弟子であるカール・ツンベルクが、長崎・出島で医者として働いた後1779年にヨーロッパへ戻る際に、数多くの植物標本と共にヤブツバキ(Camellia japonica)という種類の苗木4本を持ち帰りました。その後苗木はそれぞれロンドンのキュー王立植物園、ハノーファーのヘレンハウゼン王宮庭園、ウィーンのシェーンブルン宮庭園そしてドレスデンのピルニッツ宮庭園に贈り物として移されました。ドレスデンの南東に位置するピルニッツ離宮には、18世紀に整えられた美しい庭があり、四季を問わず多くの人々が訪れます。大きな池や東屋がある庭園の一角に、椿の大木がひっそりと立っています。

東南アジア、東アジア原産の椿をここまで立派に育て上げるのは苦労の連続でした。1801年に宮廷庭師テルシェックが現在の位置に植え替え、寒い冬の間は藁やむしろを用いて保護していました。その後板屋で覆い、中にストーブを置いていましたが、1905年にこの暖房装置が原因で火事を起こし、小屋は燃えてしまいました。しかし、消火の際に小屋にかけた水が外気温マイナス20度の中で凍り、椿はその氷の山の中で幸いにも守られました。その年の春、再び花を咲かせたのだそうです。こういった手入れの困難さから、 日本からヨーロッパに渡った4本の椿のうち現在まで残るのは、ピルニッツの1本のみです。

1992年には可動式の専用温室が設えられ、冬の間は温度、湿度、換気、日照がコンピュータで管理され ています。温室の中は温度が 4~6℃に保たれ、備え付けられた通路から椿の花を間近に眺めることができます。外が暖かくなってくると温室が外され、椿は外の景色と一体化するのです。

ピルニッツ宮庭園内にある椿専用温室
ピルニッツ宮庭園内にある椿専用温室

現在この椿は、250年以上の樹齢を誇り、高さは9メートル近くに達し、樹幹の直径は11メートル、樹幹のまわりは33メートルにも及びます。花が咲くのは2月から4月と限られていますが、庭園を散策しながら、静かにドイツに生きるこの大きな先達に会いに行ってみませんか。

ピルニッツ離宮(離宮博物館、美術工芸館)と庭園:
www.schlosspillnitz.de
※椿の開花は4月中旬までの予定

勝又 友子
東京都出身。ドイツ、西洋美術への関心と現在も続く職人の放浪修行(Walz ヴァルツ)に衝撃を受け、2009年に渡独。ドレスデン工科大学美術史科在籍。
 
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