Hanacell

キール歌劇場への誘い

キールの街の中心、市庁舎のすぐ目の前に、キール歌劇場が建っています。1907年に完成し、ベートーヴェンのオペラ「フィデリオ」で産声をあげたこの歌劇場は、第2次世界大戦中に客席と舞台やぐらの大部分が破壊されてしまいましたが、53年に修復が完了。再び「フィデリオ」の上演で蘇り、現在に至ります。「ベルリンなどの大きな歌劇場に比べると客席数も少なく(約800席)、こぢんまりしているけれど、建物の中は改装されてモダンになったし、舞台装置も充実している良い歌劇場よ」とおっしゃるのは、同歌劇場で21年間ずっと、衣装担当としてオペラ上演を裏方で支えてきたロスヴィータ(Roswita)さん。

現在、キール歌劇場の専属オーケストラ及び合唱団では、6名の日本人音楽家が活躍しています。先日、その中の1人、バリトン歌手の高田智宏さんにお話をうかがうことができました。

キール
今後ますますの活躍が期待される
バリトン歌手、高田智宏さん

高田さんは2007年からキール歌劇場の専属ソリスト歌手として活躍されています。ヨーロッパ文化であるオペラを歌うには、ヨーロッパの地で直接学ばなければいけないと考えた高田さんはドイツに留学。その後、シュトゥットガルト州立歌劇場の舞台に立ったことをきっかけに、ドイツで劇場の専属歌手になることを決意したそうです。

高田さんに、キール歌劇場の印象について尋ねたところ、「劇場の規模はそれほど大きくないですが、この歌劇場は響きがとても少ない。歌っていると、とても心細くなってしまうような感じです。逆に言えば、ごまかしが利かない分、常に良い発声で歌わなくてはいけないわけです。自分の声を磨くには打ってつけの劇場だと思います」とのこと。また聴衆については、「当地の気候とは正反対で、とても温かいです。今でも忘れられないのが、私が初めてこの劇場で歌った翌日、街を歩いていると、知らない方から何度も『昨日は良かったわよ』『次はいつ歌うの?』と温かい声を掛けていただいたことです。この経験があるからこそ、上手くいかない時やへこむことがあっても、聴衆の皆さんのためにまた頑張ろうという気持ちになれます。劇場だけでなく、キールの聴衆にも育ててもらっているのだと感じます」とのお答えが返ってきました。高田さんの言葉からは、現状に妥協せず、常により良い歌声を追求していこうとする姿勢が伝わってきました。

「目標は、より大きな劇場で歌うこと。またドイツだけでなく、いずれはヨーロッパのほかの国々でも歌うこと」と語る高田さん。皆さんもキールにいらっしゃった際は、高田さんの歌を聴きに、ぜひキール歌劇場を訪れてみてください!

キール
103年の歴史が感じられるキール歌劇場

ゼルヒャウ・ハンゼン美穂
福岡出身。2005年に渡独。夫と娘との3人家族。キール・フィルハーモニー合唱団所属の音楽好き。最近凝っているのは家庭菜園。
 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加


Nippon Express ドイツ・デュッセルドルフのオートジャパン 車のことなら任せて安心 習い事&スクールガイド バナー

デザイン制作
ウェブ制作

ドイツ便利帳サーチ!

詳細検索:
都市
カテゴリ選択