私たちの生活にすっかり溶け込んでいるコンピューター。職場でも家庭でも、コンピューターのない日常というのは、もはや考えられないほどですよね。しかしその反面、コンピューターがいつ発明されて、どのような変遷を経て現在の形になったのかについては、意外に知られていない気がします。それを分かりやすく展示したコンピューター博物館が去る6月15日、キール湾の東側にあるキール単科大学のキャンパス内にオープンしました。博物館の建物は、なんと元防空壕(Bunker)! 2メートルの分厚い壁と4メートルの強固な天井を持つ一見不気味な建物が州によって買い取られて2010年から改築が始まり、内装もきれいでモダンな博物館に生まれ変わりました。
中に入ったらまず、1階の視聴覚室で博物館の概要を説明する8分ほどの3D映画を鑑賞。その後4階まで、年代順に配置された約300の展示品を観て回るようになっています。ちなみに、コンピューターが生まれるきっかけとなった物とは何だと思いますか? それは、計算機。ここでは、公衆電話くらいの大きさのものから駅のロッカーのように大型のものまで、1920年代から生産が始まった大小さまざまな計算機が展示されており、中には見物客が実際に使ってよいものもありました。私も挑戦してみましたが、思った以上に複雑で使えませんでした……。
さて、話をコンピューターに戻します。米アップル社からデスクトップ型のコンピューターが発売されたのは1984年のこと。しかし、実はそれ以前の1941年にドイツで世界初のフル機能コンピューターが作られていたのです。発案したのは、コンラート・ツーゼ(Konrad Zuse)という技術者。当博物館には彼が手掛けた11番目の作品「Z11」のオリジナルが展示されています。
印刷機、記憶装置等も付いたフルセットの
コンピューター「Z11」
初期のコンピューターは、どれもものすごく大型で複雑怪奇に見えました。また、今でこそデータの保存には指先程度の大きさのUSBスティックを使っていますが、初期の記憶装置などはまるで大型冷蔵庫のように巨大です。たった数十年の間にコンピューターがすさまじい進化を遂げてきた様子が、肌で感じられました。
展示を見るだけでは分かりにくいのでは? と思われる方には、コンピューター博物館の向かい側にあるメディアドーム(Mediendom)のプラネタリウム用大画面でコンピューターに関する詳細な解説映画を観てから当博物館を見学するのがお勧めです。
元防空壕だった博物館の建物
Computermuseum der Fachhochschule Kiel
Eichenbergskamp 8, 24149 Kiel
開館:金 17:00~20:00・土 15:00~20:00、
大人6ユーロ(学生割引4.50ユーロ)
福岡出身。2005年に渡独。夫と娘との3人家族。キール・フィルハーモニー合唱団所属の音楽好き。最近凝っているのは家庭菜園。