Hanacell

「僕らのザントメンヒェン」が ライプツィヒにやって来た!

白いひげとボタンのような丸い目、とんがり帽子をかぶった小さな妖精。世界中を旅しながら訪れた先で人々と交流し、最後は眠りの砂をひとつまみ振りかけて、子どもたちを夜の世界へ送り出す……。1959年に東ドイツで誕生したストップモーションアニメ「僕らのザントメンヒェン」は、今もなお多くの子どもたちに愛され続けています。1991年のドイツ再統一以降は全国で放送され、今年で66歳を迎えました。その過去最大級の展覧会が、10月1日(水)から2026年2月22日(日)まで、ライプツィヒ市歴史博物館で開催されています。

入り口ではザントメンヒェンがお出迎え!入り口ではザントメンヒェンがお出迎え!

そもそもドイツの民話には、魔法の砂を目に振りかけて眠りを誘う妖精「ザントマン」(砂男)が登場します。一般には大きな砂袋を背負った老人の姿をしているとされ、古くから夜更かしをする子どもに「ザントマンが来るよ」と言って寝かしつける習慣がありました。一方、東ドイツで生まれた「ザントメンヒェン」は、そうした怖さとは無縁の、どこか親しみ深くやさしい雰囲気をまとっています。

メッセメンヒェンとの貴重なコラボメッセメンヒェンとの貴重なコラボ

今回の展覧会では、ザントメンヒェンの誕生から現在までの歴史を、オリジナルの人形や舞台装置、実際のアニメーションと共に紹介。展示物は全てバーベルスベルク撮影所から直接持ち込まれたもので、ストップモーションの技術的な側面についても丁寧に解説されています。メイン展示のほか、地下にはザントメンヒェン作品をループ上映する部屋や、お絵かきコーナーもあり、子ども連れの来館者でにぎわっていました。

特に興味深いのは、ザントメンヒェンの歴史がドイツの歴史そのものとも結びついている点です。例えば東ドイツ時代、ザントメンヒェンは社会主義の親しみやすい象徴として政治的に利用された側面がありました。そのため展示では、ピオニール(社会主義少年団)の子どもたちと交流するアニメーションも紹介されています。

クラインガルテンを訪れるザントメンヒェンクラインガルテンを訪れるザントメンヒェン

また、1965年にライプツィヒ見本市800周年を記念して制作された、ライプツィヒ見本市の公式キャラクター「メッセメンヒェン」とのコラボ映像も。近年制作されたアニメーションでは、多様な人種の子どもたちや車椅子に乗った子どもも登場し、ザントメンヒェンは「多様な社会」の象徴として描かれています。

ザントメンヒェンは、単なる子ども番組のキャラクターではなく、東西ドイツの歴史をくぐり抜け、世代や国境を越えて愛され続けてきた存在。懐かしさを覚える大人にとっても、新鮮な驚きを感じる子どもたちにとっても、心に残る温かい展覧会だと感じました。

編集部 O
三重県生まれ。ベルリン、デュッセルドルフを経て、現在はライプツィヒ在住。日本とドイツで芸術学・キュレーションを学び、アートスペースの運営や展覧会・ワークショップの制作などに従事。2019年からドイツニュースダイジェストの編集者。
 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加


Nippon Express SWISS ドイツ・デュッセルドルフのオートジャパン 車のことなら任せて安心 習い事&スクールガイド

デザイン制作
ウェブ制作

ドイツ便利帳サーチ!

詳細検索:
都市
カテゴリ選択