人口140万人を抱え、世界中から多くの人が訪れるドイツ有数の大都市ミュンヘン。住民や観光客の日々の活動に公共交通機関が果たす役割は大きく、重要です。地下鉄Uバーンは、1971年10月に路線第1号が開通し、現在は総延長100Km、駅数100を超える、ドイツ最大規模の都市交通インフラ・ネットワークです。
一方、誕生から40年以上を経た現在、老朽化が進んでいることも否めません。Uバーン駅の3分の1は、建設から30年以上が経過しているそうです。開通当時と比べて利用客が飛躍的に増加したため、従来の構造では対処可能なキャパシティを超えてしまっている駅もあります。そこで現在、駅の再開発・改修プロジェクトが順次行われています。すでにカールスプラッツ(シュタホス)駅は工事が完了し、ホワイトを基調とした明るくモダンな、欧州最大規模の地下街を併設する施設に生まれ変わりました。中央駅地下の改修工事も終了していますが、2026年を完成予定とした新駅舎建設プランもあるようです。そして、街のシンボルである市庁舎が立つマリエンプラッツ駅も、先ごろ、オレンジをシンボルカラーとした新しい内装への改装が完成しました。日々多くの利用者が行き交う駅のため、それぞれ長い工事期間が必要とされ不便な思いをすることもありましたが、クリーンにリフレッシュされた駅は気持ちが良く、明るい照明に安心感があります。
鮮やかなオレンジ色に新装されたマリエンプラッツ駅
さて、再開発プロジェクトはまだまだ続きます。2020年までに用意された予算は、約18億ユーロとか。大きな駅としては、ゼンドリンガートーアと東駅のプランが目を引きます。現在、1日の利用客が15万人に上るゼンドリンガートーア駅は、もともと5万人の利用者を想定して建設されています。そのため、地下鉄到着時にはホームが人でごったがえし、時間帯によっては乗り換えに非常に時間がかかってしまいます。将来的な都市人口の増加にも対応できるようにするための改修ですが、工期は9年(!)、8〜9000万ユーロの費用が見込まれています。本格着工は2017年からを予定しているようですが、2015年現在、すでにケーブルの設置などが始まっています。
ゼンドリンガートーア駅の完成予想図は鮮やかな黄色
そして、ミュンヘンの東の玄関口である東駅。2016年秋まで周辺地域の道路などを巻き込んだ工事が行われるため、駐車場所の不足や、該当地域のレストランやショップの営業への影響などが懸念されています。
街の開発計画は、景気を図るバロメーターの一つでもあります。絶え間なく発展するミュンヘンの交通網は都市の力強さを示していて喜ばしいことですが、大きな予算を支えるため乗車料金のさらなる値上げも有り得るかもしれません。ともあれ、使い勝手が良く清潔な公共交通網の充実は、歓迎すべきことですね。
参考URL: www.mvg.de
日独の自動車部品会社での営業・マーケティング部門勤務を経て、現在はフリーランスで通訳・市場調査を行う。サイエンスマーケティング修士。夫と猫3匹と暮らし、ヨガを楽しむ。2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。