子どもの頃に鉄道模型で遊んだ思い出は、多くの人が持っているかと思います。レールをつなぎ、ポイント切り替えや踏切を設置して、新幹線や機関車を走らせる……。何度でも新しいアイデアを取り入れて作り直し、上手にできても最後にはバラバラにして片付けなくてはいけないのが、残念なものでした。ドイツの鉄道模型用のアイテムには、子ども向けのみならず、大人が中心となって楽しむために作られた、精巧かつ豊富なバリエーションを誇るものまであります。自宅の一角にコツコツと長い時間をかけてこだわりに満ちたジオラマを作り上げていくような、凝り性の模型マニアが多くいるようです。
とはいえ、ドイツの広い住宅事情であっても、自宅のスペースは限られてしまうものです。そこで外部に場所を確保して長い年月をかけて共同で模型を製作し、一般公開する人々もいます。2001年に創設されたハンブルグの運河沿いの倉庫街にあるミニアチュア・ワンダーランド(Miniatur Wunderland)が有名ですが、ミュンヘン近郊に、さらに長い歴史を誇る鉄道模型展示場がありました。
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フェルトキルヒェン(Feldkirchen)にあるミニランド(Miniland)には、35年かけて製作された模型が展示されています(入場有料、開館日注意)。規模の拡大に伴い、2008年に大変な手間をかけて現在の場所に移設されたということです。ワンフロアの室内には、ドイツ全土から選りすぐった風景を模したジオラマが広がります。北海の浜辺から、ライン川中流域、典型的なドイツの工業都市、そしてバイエルンアルプスにスイス国境のボーデン湖まで。街、空港、駅、採掘場、サッカースタジアム、お祭り、山間の村や冬季のスキー場、そして刑務所など、ありとあらゆるドイツの風物詩が再現され、その中を縦横に鉄道、ロープウェイ、登山鉄道が走り回っています。規模的には、世界最大であるミニアチュア・ワンダーランドには及びませんが、ドイツの風景にテーマを絞っているため、見慣れたディテールが見つかると思わず嬉しくなってしまいます。一定間隔で夜から朝、昼と照明が変化するため、夜景の美しさにほっとしたり、昼間の光でじっくり見たり、と時間の移り変わりを楽しむこともできました。夜の中央駅の様子は特に美しく、多くのプラットフォームを行き交う電車と照明に輝く駅舎を見ていると、旅心がくすぐられます。
鉄道模型
ドイツらしさがちりばめられた鉄道模型に刺激を受け、もしも私が日本の風景でジオラマを作るとしたら、どんな場面を取り上げるかな? とふと想像を巡らせてしまいました。メインテーマを同じくしても、作る人によって違ったものになるのがジオラマ製作の面白さなのかもしれませんね。皆さまにとっての日本の風景は、そして、ドイツの風景は、どんなものでしょうか。
www.miniland.de
日独の自動車部品会社での営業・マーケティング部門勤務を経て、現在はフリーランスで 通訳・市場調査を行う。サイエンスマーケティング修士。夫と猫3匹と暮らし、ヨガを楽しむ。 2002年からミュンヘン近郊の小さな町ヴェルトに在住。